10 / 17
囚われの身
しおりを挟む
「何なのこれ。魔法が効かない」
私は焦っていた。いつでも逃げ出せると思っていたのだが、そうではなさそうなのだ。
まず縛られているロープがびくともしない。多少の火傷を覚悟して燃やそうと思っても、火がつかない。
万一の場合は念波で両親に連絡すればいいと思っていたのだが、念波も妨害されてしまって両親に届かない。
このまま人知れず、監禁されてしまうのかと不安になって来た。
王家の本気の力を舐めてしまっていたのかもしれない。いったん婚約を承諾して、後で婚約破棄した方が良かったのかもしれない。
もう三十分ほど護送車に揺られているが、今はどの辺りなのだろうか。
そう思っていたとき、護送車が停止した。
ギギギという門が開くような音が聞こえる。
私は護送車の上に乗せられた大きな箱の中に入れられているが、どうやらこの箱ごと監禁されるようだ。
箱から移される隙に魔法で何とかしようと思った目論見も外れてしまった。
でも、いつか必ずチャンスが来るはずだ。それまでは、軽はずみな行動は慎もう。
***
リングは学園長室に踏み込んだ。
留置場は大使館に近いため、兄への報告のついでに、護衛官の一人をルミエールと一緒に向かわせている。
学園長はリングの表情を見るや否や、いきなり頭を下げて来た。
「申し訳ございません。アンソニー王子に脅されて、殿下にあのような報告しか出来なかったのです」
「学園長、今ならまだ間に合うんじゃないか? サーシャをどこに連れて行った?」
リング皇子はいつもの軽い口調ではなかった。
「申し訳ございません。私も場所は知らされておりません。留置場ではないです。アンソニー王子は無理矢理サーシャをご自分のものにするおつもりです」
「サーシャの魔法は強力だ。無理矢理なんて無謀だ。下手するとアンソニー王子は死んでしまうぞ」
「魔法耐性のある箱の中に監禁しておりますので、逃げられないはずです。王子は抵抗したら両親の命を取ると脅すおつもりです」
リングはこいつらは馬鹿なのかと吹き出してしまった。
学園長がキョトンとしている。
「ははは、それは愉快だ。そんな脅しが効くものか。軍隊を派遣しても彼女の両親に擦り傷一つもつけられるものか」
リングは安堵しかけたが、サーシャは両親の正体を昨日聞かされたばかりだ。ひょっとするとまだ信じていないかもしれないと思い直した。
だが、こちらの不安を敵に教える必要はない。
リングは鋭い視線で学園長を問い詰めた。
「アンソニー王子は何処にいる?」
「殿下が先ほど来られた少し前に、監禁場所へと向かわれました」
二十分ほど前だ。
「学園長、この二十分が貴様の命取りにならねばいいがな」
リングはそう言い残して、アンソニー王子の捜索を帝国の諜報部隊に指示した。
私は焦っていた。いつでも逃げ出せると思っていたのだが、そうではなさそうなのだ。
まず縛られているロープがびくともしない。多少の火傷を覚悟して燃やそうと思っても、火がつかない。
万一の場合は念波で両親に連絡すればいいと思っていたのだが、念波も妨害されてしまって両親に届かない。
このまま人知れず、監禁されてしまうのかと不安になって来た。
王家の本気の力を舐めてしまっていたのかもしれない。いったん婚約を承諾して、後で婚約破棄した方が良かったのかもしれない。
もう三十分ほど護送車に揺られているが、今はどの辺りなのだろうか。
そう思っていたとき、護送車が停止した。
ギギギという門が開くような音が聞こえる。
私は護送車の上に乗せられた大きな箱の中に入れられているが、どうやらこの箱ごと監禁されるようだ。
箱から移される隙に魔法で何とかしようと思った目論見も外れてしまった。
でも、いつか必ずチャンスが来るはずだ。それまでは、軽はずみな行動は慎もう。
***
リングは学園長室に踏み込んだ。
留置場は大使館に近いため、兄への報告のついでに、護衛官の一人をルミエールと一緒に向かわせている。
学園長はリングの表情を見るや否や、いきなり頭を下げて来た。
「申し訳ございません。アンソニー王子に脅されて、殿下にあのような報告しか出来なかったのです」
「学園長、今ならまだ間に合うんじゃないか? サーシャをどこに連れて行った?」
リング皇子はいつもの軽い口調ではなかった。
「申し訳ございません。私も場所は知らされておりません。留置場ではないです。アンソニー王子は無理矢理サーシャをご自分のものにするおつもりです」
「サーシャの魔法は強力だ。無理矢理なんて無謀だ。下手するとアンソニー王子は死んでしまうぞ」
「魔法耐性のある箱の中に監禁しておりますので、逃げられないはずです。王子は抵抗したら両親の命を取ると脅すおつもりです」
リングはこいつらは馬鹿なのかと吹き出してしまった。
学園長がキョトンとしている。
「ははは、それは愉快だ。そんな脅しが効くものか。軍隊を派遣しても彼女の両親に擦り傷一つもつけられるものか」
リングは安堵しかけたが、サーシャは両親の正体を昨日聞かされたばかりだ。ひょっとするとまだ信じていないかもしれないと思い直した。
だが、こちらの不安を敵に教える必要はない。
リングは鋭い視線で学園長を問い詰めた。
「アンソニー王子は何処にいる?」
「殿下が先ほど来られた少し前に、監禁場所へと向かわれました」
二十分ほど前だ。
「学園長、この二十分が貴様の命取りにならねばいいがな」
リングはそう言い残して、アンソニー王子の捜索を帝国の諜報部隊に指示した。
1
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
魔王に誘拐された花嫁
さらさ
恋愛
王子様との結婚式当日に魔王に誘拐された花嫁。
魔王は花嫁のことを知っているようだけれど・・・花嫁は魔王に出会った記憶もない。
何故か甘い魔王に少しずつ心を奪われていく主人公。けれど、所詮魔族と人間。
距離を置こうとする主人公だが・・・
甘々な魔王様と主人公の恋のお話です。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる