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王子の企み
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テリィとリングは帝国大使館の二百周年記念の式典に向かう馬車の中だった。
「兄さん、サーシャは美人だったね」
「聖女様によく似ていたな。でも、娘に手を出したら殺すって、師匠に言われているだろう」
「師匠は笑顔だったけど、目が本気だったよね。僕たちを皇子とは思っておられないから、本当に殺されると思うよ」
「あの容姿だと、サーシャを陛下も気に入られるのではないか」
「父上、聖女様の大ファンだからね。あれだけ似ていると、義娘に欲しいって仰るかも」
「あり得るな。立候補したいところだが、マリンが聖女様から聞いたらしいぞ。娘を不幸にする男は地獄に落とすそうだ」
マリンは兄弟の妹の皇女マリナブルスジャーナのことだ。
「聖女様は若い頃に言い寄った父上の股間を蹴り上げたらしいからね。僕も立候補したいけど、師匠だけでなく、聖女様がセットでついてくるんだよね」
二人してサーシャの母の訓練中の冷ややかな目を思い出し、背筋を寒くしていたとき、早馬が馬車に追いついてきた。
馬上の護衛官がきびきびと報告をし始めた。
「殿下、失礼します。学園で大変なことが起きています。サーシャ様がご退学となりました」
「なんだと!?」
「なんだって!?」
「兄さん、僕が戻るよ。式典は皇太子の兄さんが行けば大丈夫でしょう」
「皇太子の俺が戻った方が、不測の事態に対応できるのではないか?」
「じゃあ、こうしようよ。まずは僕が戻って、僕が対応できそうもなかったら、兄さんを呼びに行く。どう?」
「仕方ない。一刻を争うから、躊躇している時間が惜しい。すぐに戻ってくれ。そして、逐一報告を頼む」
「了解」
リングはもう護衛官の馬上に飛び乗っていた。
「殿下、しっかりつかまっていて下さい。とばします」
***
私は留置所に護送されるらしい。
学園長は取り付く島がなかった。私の言い分は全く聞いてもらえず、王子からの証言を一方的に採用し、退学処分どころか、王子に対する不敬罪と不貞行為で、最悪死罪になるらしい。
王子から婚約に同意すれば助けると言われたが、きっぱりと断ったら、すぐに警官が駆けつけて来て、縛り上げられてしまった。
学園長は婚約に同意するなら魔法使い認定もすぐに出すと言っていたので、完全に王子に取り込まれていると見ていいだろう。
皇子たちが公務で休むことも知っていて、今日のこの日に彼らは勝負を賭けていたようだが、私が最後まで拒否するとは思わなかったようだ。
だが、王子のあの表情を見る限り、まだ奥の手を残しているような感じだった。恐らく、留置場に護送するというのは嘘で、どこかに連れて行って監禁するつもりなのかもしれない。
王子が私にここまで執着していたのは誤算だったが、私の両親を敵に回して、王国はやって行けるのだろうか。
やはり行き先は留置場ではないようだ。護送車は王都からどんどん離れて行く。いつでも抜け出すことは出来るが、急いては事を仕損じる。もうしばらく大人しく様子をみてみよう。
「兄さん、サーシャは美人だったね」
「聖女様によく似ていたな。でも、娘に手を出したら殺すって、師匠に言われているだろう」
「師匠は笑顔だったけど、目が本気だったよね。僕たちを皇子とは思っておられないから、本当に殺されると思うよ」
「あの容姿だと、サーシャを陛下も気に入られるのではないか」
「父上、聖女様の大ファンだからね。あれだけ似ていると、義娘に欲しいって仰るかも」
「あり得るな。立候補したいところだが、マリンが聖女様から聞いたらしいぞ。娘を不幸にする男は地獄に落とすそうだ」
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「なんだと!?」
「なんだって!?」
「兄さん、僕が戻るよ。式典は皇太子の兄さんが行けば大丈夫でしょう」
「皇太子の俺が戻った方が、不測の事態に対応できるのではないか?」
「じゃあ、こうしようよ。まずは僕が戻って、僕が対応できそうもなかったら、兄さんを呼びに行く。どう?」
「仕方ない。一刻を争うから、躊躇している時間が惜しい。すぐに戻ってくれ。そして、逐一報告を頼む」
「了解」
リングはもう護衛官の馬上に飛び乗っていた。
「殿下、しっかりつかまっていて下さい。とばします」
***
私は留置所に護送されるらしい。
学園長は取り付く島がなかった。私の言い分は全く聞いてもらえず、王子からの証言を一方的に採用し、退学処分どころか、王子に対する不敬罪と不貞行為で、最悪死罪になるらしい。
王子から婚約に同意すれば助けると言われたが、きっぱりと断ったら、すぐに警官が駆けつけて来て、縛り上げられてしまった。
学園長は婚約に同意するなら魔法使い認定もすぐに出すと言っていたので、完全に王子に取り込まれていると見ていいだろう。
皇子たちが公務で休むことも知っていて、今日のこの日に彼らは勝負を賭けていたようだが、私が最後まで拒否するとは思わなかったようだ。
だが、王子のあの表情を見る限り、まだ奥の手を残しているような感じだった。恐らく、留置場に護送するというのは嘘で、どこかに連れて行って監禁するつもりなのかもしれない。
王子が私にここまで執着していたのは誤算だったが、私の両親を敵に回して、王国はやって行けるのだろうか。
やはり行き先は留置場ではないようだ。護送車は王都からどんどん離れて行く。いつでも抜け出すことは出来るが、急いては事を仕損じる。もうしばらく大人しく様子をみてみよう。
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