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あらぬ疑惑
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ホテルからぐったりとして宿舎に帰って来た私を見て、ルミエールが頬を染めた。
「お疲れ様……」
なぜルミエールは私の部屋の前で、顔を赤くして座り込んでいるのだろうか。
「ルミ、こんなところで何してるの? さっきまでお二方を同時にお相手して大変だったのよ」
「お二方を同時にお相手に!?」
「そうよ。お二方ともすごく熱心で、その点は私と相性ばっちりだけど、何度も何度もせがまれて、もうくたくたよ」
「そう、すごいのね……」
「すごい? どういう意味? まあ、いいわ。今日はもう疲れたから寝るわ。明日もしようっておっしゃるのよ」
「お勤め、ご苦労様」
「なによ、変な子ね。おやすみなさい」
私は部屋に入って、お風呂につかり、今日の夕食のときに両殿下から聞いた話を思い出していた。
父が元賢者で母が元聖女で、帝国では父は公爵だという話だ。
私は帝国では公爵令嬢だから、かしこまる必要はないと何度も言われたが、平民根性が染みついてしまっていて、今更直せそうもないし、王国では間違いなく平民なのだ。
両親が王国で暮らしているのは、いろいろと理由があるようだが、結局のところ、父が帝国の貴族社会を嫌っているのが原因のようだ。
ただ、帝国の皇帝とは古くからの友人らしく、皇子と皇女の魔法教育は引き受けたらしい。
だが、どうやって王国にいながら、帝国の皇子たちに教育出来るのか。
最初は不可能だと思ったのだが、可能性は二つある。
一つは瞬間移動だ。非常に高位の魔法で、私には出来ないが、父や母なら出来るかもしれない。
もう一つは精神世界での修行だ。父の頭の中に皇子の精神体を呼び込んで、訓練する方法だ。
私もこの方法で何度か両親から訓練を受けている。怪我をしないため、思い切った訓練ができるのだが、両親の負担が大きいため、頻度は少なかった。
だが、果たして、遠隔地の精神体を呼び込むことが出来るのだろうか。
「うーん、お父様かお母様に直接聞くしかないわね」
***
翌朝、朝食の席で、ルミエールがとんでもない誤解をしていることがわかった。
「平民の女が皇族に呼ばれて、ぐったりして帰って来たのよ。考えられることって、それぐらいしかないわよ。あなた自覚ないみたいだけど、すごく綺麗なのよ」
「いくら何でも、想像力がたくましすぎるでしょう。私は魔法が見たいと言われて呼ばれたのよ。魔法の訓練を一緒にしていたに決まっているじゃない」
「あなたが紛らわしい言い方するからよ」
「誰かに話した?」
「ううん、あなたが窮地に陥るから誰にも話してないわ。でも、疲れて帰って来たあなたを目撃した人は私の他にもいると思うわよ」
ルミエールの言う通りだった。
学園に行くと、私は白い目で見られるようになっていた。
昨日まで親しげだった平民たちも明らかによそよそしい。
ルミエールがすぐに状況を私に教えてくれた。危惧した通りの噂が広まってしまっていると。
どうやら、ルミエールの聞き込みによると、アンソニー王子が積極的に噂を広めているらしい。緊急の職員会議も開かれ、私を退学にすべきという意見が出ているそうだ。
しかも、まずいことに、皇子たちは本日は公務のため、学園には来られない。
そして、私は学園長から呼び出しを受けた。
「お疲れ様……」
なぜルミエールは私の部屋の前で、顔を赤くして座り込んでいるのだろうか。
「ルミ、こんなところで何してるの? さっきまでお二方を同時にお相手して大変だったのよ」
「お二方を同時にお相手に!?」
「そうよ。お二方ともすごく熱心で、その点は私と相性ばっちりだけど、何度も何度もせがまれて、もうくたくたよ」
「そう、すごいのね……」
「すごい? どういう意味? まあ、いいわ。今日はもう疲れたから寝るわ。明日もしようっておっしゃるのよ」
「お勤め、ご苦労様」
「なによ、変な子ね。おやすみなさい」
私は部屋に入って、お風呂につかり、今日の夕食のときに両殿下から聞いた話を思い出していた。
父が元賢者で母が元聖女で、帝国では父は公爵だという話だ。
私は帝国では公爵令嬢だから、かしこまる必要はないと何度も言われたが、平民根性が染みついてしまっていて、今更直せそうもないし、王国では間違いなく平民なのだ。
両親が王国で暮らしているのは、いろいろと理由があるようだが、結局のところ、父が帝国の貴族社会を嫌っているのが原因のようだ。
ただ、帝国の皇帝とは古くからの友人らしく、皇子と皇女の魔法教育は引き受けたらしい。
だが、どうやって王国にいながら、帝国の皇子たちに教育出来るのか。
最初は不可能だと思ったのだが、可能性は二つある。
一つは瞬間移動だ。非常に高位の魔法で、私には出来ないが、父や母なら出来るかもしれない。
もう一つは精神世界での修行だ。父の頭の中に皇子の精神体を呼び込んで、訓練する方法だ。
私もこの方法で何度か両親から訓練を受けている。怪我をしないため、思い切った訓練ができるのだが、両親の負担が大きいため、頻度は少なかった。
だが、果たして、遠隔地の精神体を呼び込むことが出来るのだろうか。
「うーん、お父様かお母様に直接聞くしかないわね」
***
翌朝、朝食の席で、ルミエールがとんでもない誤解をしていることがわかった。
「平民の女が皇族に呼ばれて、ぐったりして帰って来たのよ。考えられることって、それぐらいしかないわよ。あなた自覚ないみたいだけど、すごく綺麗なのよ」
「いくら何でも、想像力がたくましすぎるでしょう。私は魔法が見たいと言われて呼ばれたのよ。魔法の訓練を一緒にしていたに決まっているじゃない」
「あなたが紛らわしい言い方するからよ」
「誰かに話した?」
「ううん、あなたが窮地に陥るから誰にも話してないわ。でも、疲れて帰って来たあなたを目撃した人は私の他にもいると思うわよ」
ルミエールの言う通りだった。
学園に行くと、私は白い目で見られるようになっていた。
昨日まで親しげだった平民たちも明らかによそよそしい。
ルミエールがすぐに状況を私に教えてくれた。危惧した通りの噂が広まってしまっていると。
どうやら、ルミエールの聞き込みによると、アンソニー王子が積極的に噂を広めているらしい。緊急の職員会議も開かれ、私を退学にすべきという意見が出ているそうだ。
しかも、まずいことに、皇子たちは本日は公務のため、学園には来られない。
そして、私は学園長から呼び出しを受けた。
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