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リングドラキシール
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私はセバスチャンに連れられ、皇子たちが滞在しているホテルの前に到着した。
ここは王都の最高級ホテルで、確か平民の出入りは禁止のはずだ。
私は学園の平民用の制服を着ていたので、ホテル中の客から場違いだと睨まれるような気がして緊張した。
「こちらをお召し下さい」
馬車から降りる前にセバスチャンがローブを手渡してきた。
かなり上質のローブで、白地に金の刺繍が施されており、前を赤いリボンで閉じるようになっている。
「ありがとうございます」
上品で可愛らしい。これを羽織れば、ホテルでも浮いてしまうことはないだろう。
私はセバスチャンに連れられてホテルに入った。
初めて見るホテルの豪華な装飾に私は目を奪われた。
「サーシャ様、帝国ホテルは初めてですか?」
私ったら、思わずキョロキョロしてしまったわ。
「はい、帝国ホテルどころか、ホテルが初めてです」
「左様でございますか。これから何度も来られることになります」
セバスチャンがにっこりと微笑んだ。どういう意味だろうか。
「やあ、よく来てくれたね。セバス、ありがとう。ここからは僕が案内するから、下がっていいよ」
声のする方を見ると、弟君がにこやかに微笑んでいた。
「あ、あの、お招き頂きありがとうございます」
本当に綺麗な男性で、まともに顔を見ることが出来なかった。
「ははは、そんなに畏まらなくていいよ。兄さんが魔闘技場で待っている。さあ、こちらにどうぞ」
私は弟君の後に続いた。
「あの、私はサーシャと申します。お名前をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、僕の名前かい? ちょっと長いよ。リングドラキシールっていうんだ。リングでいいよ」
「リング様、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。強引に誘ってしまって悪かったね。僕たちは君が登校するのをずっと待ってたんだよ」
私は歩きながら、リングと会話を続けた。ホテルの客がリングに一礼して、その後、私をそれとなく観察しているのが分かった。
ホテルの広大な敷地内に魔闘技場があるという。闘技場まで自動走行するという魔道車にリングと私は乗り込んだ。
車に乗り込むときにリングが手を貸してくれたのだが、近くで見るリングの顔はますます美しく、思わず見惚れてしまうほどだ。
私は四人乗りの車の後ろに乗ろうとしたのだが、リングの隣に乗せられてしまった。
「僕が前で君が後ろだと、僕がまるで運転手のようだろう?」
「も、申し訳ございません。お隣に座る方が失礼かと思ってしまいました」
「ははは、冗談だよ。でも、失礼とか、そういうのは考えなくていいからね」
そういって、リングは軽くウィンクをした。
「リング様は幼少の頃から帝国でお育ちなのでしょうか?」
「うん、そうだよ。王国は今回が初めてだ。王国語の発音は大丈夫かな?」
「大丈夫どころか、王国の方とお変わりないです」
「そう? ところどころで帝国訛りが出るみたいで、兄からよく馬鹿にされるんだ」
「お兄様のお名前は何とおっしゃるのでしょうか?」
「それは兄さんに直接聞くといいよ。さあ、もうすぐ着くよ」
ここは王都の最高級ホテルで、確か平民の出入りは禁止のはずだ。
私は学園の平民用の制服を着ていたので、ホテル中の客から場違いだと睨まれるような気がして緊張した。
「こちらをお召し下さい」
馬車から降りる前にセバスチャンがローブを手渡してきた。
かなり上質のローブで、白地に金の刺繍が施されており、前を赤いリボンで閉じるようになっている。
「ありがとうございます」
上品で可愛らしい。これを羽織れば、ホテルでも浮いてしまうことはないだろう。
私はセバスチャンに連れられてホテルに入った。
初めて見るホテルの豪華な装飾に私は目を奪われた。
「サーシャ様、帝国ホテルは初めてですか?」
私ったら、思わずキョロキョロしてしまったわ。
「はい、帝国ホテルどころか、ホテルが初めてです」
「左様でございますか。これから何度も来られることになります」
セバスチャンがにっこりと微笑んだ。どういう意味だろうか。
「やあ、よく来てくれたね。セバス、ありがとう。ここからは僕が案内するから、下がっていいよ」
声のする方を見ると、弟君がにこやかに微笑んでいた。
「あ、あの、お招き頂きありがとうございます」
本当に綺麗な男性で、まともに顔を見ることが出来なかった。
「ははは、そんなに畏まらなくていいよ。兄さんが魔闘技場で待っている。さあ、こちらにどうぞ」
私は弟君の後に続いた。
「あの、私はサーシャと申します。お名前をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、僕の名前かい? ちょっと長いよ。リングドラキシールっていうんだ。リングでいいよ」
「リング様、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。強引に誘ってしまって悪かったね。僕たちは君が登校するのをずっと待ってたんだよ」
私は歩きながら、リングと会話を続けた。ホテルの客がリングに一礼して、その後、私をそれとなく観察しているのが分かった。
ホテルの広大な敷地内に魔闘技場があるという。闘技場まで自動走行するという魔道車にリングと私は乗り込んだ。
車に乗り込むときにリングが手を貸してくれたのだが、近くで見るリングの顔はますます美しく、思わず見惚れてしまうほどだ。
私は四人乗りの車の後ろに乗ろうとしたのだが、リングの隣に乗せられてしまった。
「僕が前で君が後ろだと、僕がまるで運転手のようだろう?」
「も、申し訳ございません。お隣に座る方が失礼かと思ってしまいました」
「ははは、冗談だよ。でも、失礼とか、そういうのは考えなくていいからね」
そういって、リングは軽くウィンクをした。
「リング様は幼少の頃から帝国でお育ちなのでしょうか?」
「うん、そうだよ。王国は今回が初めてだ。王国語の発音は大丈夫かな?」
「大丈夫どころか、王国の方とお変わりないです」
「そう? ところどころで帝国訛りが出るみたいで、兄からよく馬鹿にされるんだ」
「お兄様のお名前は何とおっしゃるのでしょうか?」
「それは兄さんに直接聞くといいよ。さあ、もうすぐ着くよ」
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