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ルミエール
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大火傷を負ったことになっているため、しばらくの間、私は授業を休み、平民用の宿舎で過ごすことにした。
宿舎の食堂に行くときは、顔に包帯を巻いていったのだが、意外にも私は大人気で、色々な人が私と一緒に食事をしたがった。
王女に目をつけられていた私は、これまでは皆から敬遠されていたので、こんなにも多くの人が積極的に話しかけて来るようになるとは思いもしなかった。
あの後、学園側が実技の授業も貴族と平民を分けて実施するようにしたらしい。
生徒が自ら顔を焼いたという事件は、学園にも衝撃的だったようだが、父兄にも噂が広がり、改善を求められたのだそうだ。
平民といっても、中には豪商や広大な領地を持つ地主もいる。決して軽んじることは出来ないのだ。
「フランソワ様は国王陛下にかなりお叱りを受けたらしいわよ」
そう教えてくれたのは、情報屋を自称するルミエールだった。
クリっとした目がよく動く話好きの子で、貴族の隠し子だという噂だ。
「民の声に耳を傾けるべき王家のものが、一方的に民を追い込むとは何事だってね」
「よく国王陛下の仰った内容まで分かるわね」
「そこは私が優秀な情報屋だからよ。そうそう、話は変わるけど、今度、帝国の皇子二人が、うちの学園にご留学されるそうよ」
帝国は隣国の大国で、王国とは比べ物にならないほどの強国だ。
なぜそんな国の皇子がわざわざ王国に留学に来られるのだろうか。
「いったいどこからそんな情報を掴んでくるのよ」
「情報屋として、情報ソースは明かせないの。ごめんなさいね」
ルミエールはその後も私とよく話すようになった。
「帝国の皇子様が来られたわよ。ご滞在先は、貴族用の宿舎ではなく、ホテルみたい。四年生と二年生に編入されたの。二人ともすごく格好いいのよ。お兄様の方がクールで理知的で、弟様の方は女の子みたいに綺麗で優しげな感じなの。学園は二人の話題で持ちきりよ」
私は驚いた。ルミエールのガセネタだと思っていたのだ。
「なぜ強国である帝国の皇子様が、小国の王国なんかにご留学されるのかしら?」
私はこの前疑問に思ったことをルミエールに聞いてみた。
「前から思っていたけど、サーシャって世間知らずよね。王国は小国だけど、魔法技術は大陸随一なのよ。賢者様も聖女様も代々王国から選ばれるでしょう?」
初耳だった。確かに私は田舎育ちで、世間のことがよく分かっていなかった。
「そうなのね。じゃあ、皇子様は魔法のお勉強に来られたのかしら?」
「それがね、お二方とも魔法の強さも扱える数も凄いのよ。さすがのあなたでも敵わないと思うわ」
「何言ってるのよ。私のような凡人が相手になるわけないでしょ」
ルミエールが驚いた顔で私を見ている。
「何なのよ?」
「サーシャ、あなた、相当な天然ね。あなたの魔法が学園一なのは、フランソワ様でさえ認めておられるじゃない。もっと自覚持ってね」
「フランソワ様がそんなこと仰るわけないでしょう」
「サーシャ、魔法理論ちゃんと勉強している? 魔法回避は魔法レベルが上でないと出来ないのよ。あなたは学園の誰からの魔法も回避できるでしょう。先生の魔法でさえもね。フランソワ様もそう仰っていたでしょう」
「知らなかったわ。魔法は実技しかして来なかったから」
私は魔法を両親から習ったが、実践あるのみという極端な教え方だった。
幼いころは、習うより慣れろで、魔法が一番伸びる時期に、基礎を繰り返しみっちりと叩き込まれたのだった。
「あなた、学園に来るまでどうやって育ったの? 貴族のような話し方だし、その美貌は平民とは思えないんだけど」
「田舎育ちの世間知らずなの。ルミ、頼りにしているわ」
「いいわよ。王女や王子と対等に張り合う平民なんて、格好良すぎだから。でも、私は知能派だから、暴力沙汰からは逃げるからね」
私は何とか学園に残れるように、王女たちからの攻撃をかわしているだけなのだが、ルミエールたちにはそう映るのかもしれない。
宿舎の食堂に行くときは、顔に包帯を巻いていったのだが、意外にも私は大人気で、色々な人が私と一緒に食事をしたがった。
王女に目をつけられていた私は、これまでは皆から敬遠されていたので、こんなにも多くの人が積極的に話しかけて来るようになるとは思いもしなかった。
あの後、学園側が実技の授業も貴族と平民を分けて実施するようにしたらしい。
生徒が自ら顔を焼いたという事件は、学園にも衝撃的だったようだが、父兄にも噂が広がり、改善を求められたのだそうだ。
平民といっても、中には豪商や広大な領地を持つ地主もいる。決して軽んじることは出来ないのだ。
「フランソワ様は国王陛下にかなりお叱りを受けたらしいわよ」
そう教えてくれたのは、情報屋を自称するルミエールだった。
クリっとした目がよく動く話好きの子で、貴族の隠し子だという噂だ。
「民の声に耳を傾けるべき王家のものが、一方的に民を追い込むとは何事だってね」
「よく国王陛下の仰った内容まで分かるわね」
「そこは私が優秀な情報屋だからよ。そうそう、話は変わるけど、今度、帝国の皇子二人が、うちの学園にご留学されるそうよ」
帝国は隣国の大国で、王国とは比べ物にならないほどの強国だ。
なぜそんな国の皇子がわざわざ王国に留学に来られるのだろうか。
「いったいどこからそんな情報を掴んでくるのよ」
「情報屋として、情報ソースは明かせないの。ごめんなさいね」
ルミエールはその後も私とよく話すようになった。
「帝国の皇子様が来られたわよ。ご滞在先は、貴族用の宿舎ではなく、ホテルみたい。四年生と二年生に編入されたの。二人ともすごく格好いいのよ。お兄様の方がクールで理知的で、弟様の方は女の子みたいに綺麗で優しげな感じなの。学園は二人の話題で持ちきりよ」
私は驚いた。ルミエールのガセネタだと思っていたのだ。
「なぜ強国である帝国の皇子様が、小国の王国なんかにご留学されるのかしら?」
私はこの前疑問に思ったことをルミエールに聞いてみた。
「前から思っていたけど、サーシャって世間知らずよね。王国は小国だけど、魔法技術は大陸随一なのよ。賢者様も聖女様も代々王国から選ばれるでしょう?」
初耳だった。確かに私は田舎育ちで、世間のことがよく分かっていなかった。
「そうなのね。じゃあ、皇子様は魔法のお勉強に来られたのかしら?」
「それがね、お二方とも魔法の強さも扱える数も凄いのよ。さすがのあなたでも敵わないと思うわ」
「何言ってるのよ。私のような凡人が相手になるわけないでしょ」
ルミエールが驚いた顔で私を見ている。
「何なのよ?」
「サーシャ、あなた、相当な天然ね。あなたの魔法が学園一なのは、フランソワ様でさえ認めておられるじゃない。もっと自覚持ってね」
「フランソワ様がそんなこと仰るわけないでしょう」
「サーシャ、魔法理論ちゃんと勉強している? 魔法回避は魔法レベルが上でないと出来ないのよ。あなたは学園の誰からの魔法も回避できるでしょう。先生の魔法でさえもね。フランソワ様もそう仰っていたでしょう」
「知らなかったわ。魔法は実技しかして来なかったから」
私は魔法を両親から習ったが、実践あるのみという極端な教え方だった。
幼いころは、習うより慣れろで、魔法が一番伸びる時期に、基礎を繰り返しみっちりと叩き込まれたのだった。
「あなた、学園に来るまでどうやって育ったの? 貴族のような話し方だし、その美貌は平民とは思えないんだけど」
「田舎育ちの世間知らずなの。ルミ、頼りにしているわ」
「いいわよ。王女や王子と対等に張り合う平民なんて、格好良すぎだから。でも、私は知能派だから、暴力沙汰からは逃げるからね」
私は何とか学園に残れるように、王女たちからの攻撃をかわしているだけなのだが、ルミエールたちにはそう映るのかもしれない。
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