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パーティ仲間を紹介されました
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私は午後、王宮に招かれた。剣士とレンジャーとの顔合わせだ。
王はベルサイユ宮殿みたいなところに住んでいて、私は思わず目を奪われてしまった。
写真でしかみたことのない豪華な装飾が施された部屋がいくつもある。大きな絵画や彫刻は、ヨーロッパの文化と似通っていると思った。
(素敵なところだわ。ここに住めたりするのかしら。でも、男に縛られたくはないけど、男が一人もいないというのは、さすがにつまらないわね)
宮殿ですれ違う人の全てが女性というのは異様だった。ただ、心が男性の人は、男性の格好をしている。場所柄からか、眉目秀麗な人が多い。
(まるで宝塚だわ)
騎士のような格好の人に、ダイニングルームに案内された。一緒にランチすることになっていて、私以外はすでにテーブルについていた。
剣士は呪われて女性になっているらしい。背が百八十センチ以上あって、非常に整った容姿をしている。
(この人、格好いい……)
レンジャーは絶世の美女だった。こちらは呪いなしの本物の女性で、ハーフエルフだというが、見た目は完全に人間だ。ハーフエルフはエルフからは忌み嫌われるが、人間からはその美貌ゆえに羨望の眼差しで見られるらしい。
(エルフって、どんだけ綺麗なのよ)
私は王よりも偉いみたいで、一番上の上座に座り、次に王、剣士、レンジャーの順に座っての食事会が始まった。
少し緊張していたが、私はこれから始まる冒険を楽しみにしていた。
(こんな気持ち、何年ぶり、いや何十年ぶりだろう)
体が若返ったことで、気持ちも若返っているような気がする。今度は夫のためとか子供のためではなく、自分自身のための人生を送りたい。
「エリカ様、まずはご紹介させて頂きます。剣士のスイ、レンジャーのモクです」
(この国では名前は二文字って決まっているのかしら。月水木と覚えよう。キンも入れたら月水木金だわ。偶然かしら?)
「エリカです。昨日、異世界からこちらに来たばかりなの。前の世界では看護師をやっていたわ。よろしくね」
後から知るが、こちらにも看護師の職業はある。ナイチンゲールが提唱したような看護学が、この世界でも別の偉人によって提唱され、後続たちが実践し、進化させている。
「そうだったのですね。だから、治癒系の神通力が開花したのでしょう」
こちらの世界では、「治癒」の力を持つものが看護師になるらしい。ただ、私の「治癒」の奇跡とは、呼び名が同じだけで雲泥の差がある。薬の効果を少し上げる程度のものらしい。
私以外の全員が、金髪碧眼で彫りが深い顔立ちをしている。私だけ黒髪黒目のアジア系なので、ちょっと劣等感が出てしまうのだが、彼女たちからすると、黒髪黒目は美の頂点らしく、盛んに私の髪の色と目の色を褒め称えてくる。
(茶髪にしないで、黒髪を維持していて良かったわ)
「では、改めて私も自己紹介します。ゲツです。アルタリア王朝七代目の国王です。即位二年目ですが、いまだに妃を持てません。早く男に戻って、妃を娶りたいです」
王の自己紹介に皆がおおっと拍手をする。合コンか、ここは。王といえども、合コンでの挨拶は、軽く聞こえてしまい、思わず吹き出しそうになった。
「拙者はスイと申す。先王の時代から、王の剣になると決めて、剣の道に邁進して参ったでござる。趣味は釣りでござる」
侍口調の人か。釣りとかこっちにもあるのね。
「モクでございます。私は人間とエルフの架け橋になりたいと思っておりますの。エルフの男は人間の女性と交わろうとは致しません。私はエルフの男を誘惑し、男のエルフと交わって、史上初のスリークオーターのエルフを出産するのが夢ですわ」
今度はお嬢様口調だ。架け橋って、そっち系での架け橋か。エルフの男が人間と交われば、人類は混血だらけにはなるが、滅亡は防げる。だが、そうできない理由があるということなのだろうか。
「どうして、エルフの男は人間の女と交わらないの?」
「宗教上の理由ですわ。エルフの中では、人間の女性は不浄の生き物とされておりますの」
イスラム教の豚と同じか。ちなみに人間の男とエルフの女が交わると、必ず女が産まれるらしい。エルフからはハーフエルフは人間の女性よりも不浄とされ、最も忌み嫌われるそうだ。モクは大変なことにチャレンジしようとしているのだ。こんなに美人なのに……。
それはさておき、私はふと気になった。
「ちょっと質問したいのだけど、そんな不浄とされている生き物が、エルフの森に入れるのかしら?」
「入れませんわ。エルフたちは、徹底的に排除してくると思いますわ」
人間には女しかいなくなって、エルフとの会話はより難しくなっているということか。
「でも、エリカ様は大丈夫です。人間ではありませんから」
王が太鼓判を押してくれるのだが、言い方がよくない。
「人間ではないとか、そういう言い方は、何だか傷つくわ」
「すいません。でも、エルフの目は種族を見ることができるのです。エリカ様は『神人』のはずです。エルフも神人様には敬意をもって接しますし、神人様の従者たる我々をそう簡単に排除するとは思えないのです」
「だといいけど」
王の目論見は完全に外れることになるのだが、それはもう少し先の話で、我々はランチを終えた後、王宮の宝物殿で、冒険に備えて、武器と防具の選定を始めた。
最初から最強の武器と防具を取り放題って、かなり恵まれているかと思いきや、人間界にある武器と防具はそんなに強くはないらしい。
「世界の宝のほとんどは、最強生物のドラゴンが押えているのです。それから、ドラゴンですら手が出せない強力なガーディアンに守られた古代遺跡の宝物庫には、神話級の防具や武器やアイテムがあると言われています」
「最強の武器と防具は揃えなくても大丈夫なの?」
「ドラゴン相手ならまだしも、相手はエルフですから大丈夫です」
「そういうこと言っちゃうと、エルフがドラゴンと組んだりする展開になったりするんじゃないの?」
「それはないと思います。ドラゴンは最強ゆえに、どの国にも力を貸さないポリシーのはずです」
「そういうのって、決めつけはよくないと思うけど、まあ、組まれてから対応してもいいのかな」
「はい、それで大丈夫です」
急がば回れとも言うが、拙速は巧遅に勝るとも言う。まずは素早く行動を起こそう。
私は巫女装束風の防具とお遍度さんの金剛杖のような杖にした。私は圧倒的な防御力があるので、何を着ても誤差程度だし、そもそも攻撃できないので、武器は要らない。そのため、雰囲気で選んだ。魔法少女みたいな衣装もあったが、もちろん手はつけなかった。
王は「魔界のローブ」と呼ばれる漆黒のローブを羽織り、「魔界のロッド」というこれまた漆黒の杖を身に付けた。魔法の衣装は自動的にサイズが調整され、王にピッタリだ。
「エリカ様、どうです? 格好いいでしょう。王家の持ち物の中では一番いいものです。使い込めば、神話級とは言わないまでも、伝説級になる可能性だってあります。この赤い蝙蝠を形どったマークが超格好いいです」
バットマンなの? と突っ込みたくなるデザインだった。見た目が中学生だけあって、王は厨二病かもしれない。
スイは侍風の着流しに、名刀「斬鉄剣」を選んだようだ。おっぱいが丸見えにならないようにさらしを巻いているが、見えないようにではなく、邪魔にならないようにしているらしい。足がチラチラ見えてセクシーで、この人はとにかく格好良い。
モクは自衛隊の迷彩服のような装備を選んだ。武器は「零式」という魔法銃だ。顔が綺麗でスタイルがいいので、何を着ても似合う。帽子を取ると長い髪がファサッとなり、人間の男ならイチコロだ。自衛隊のポスターにしたら、応募が殺到するに違いない。
この四人でエルフの森へと向かった。
王はベルサイユ宮殿みたいなところに住んでいて、私は思わず目を奪われてしまった。
写真でしかみたことのない豪華な装飾が施された部屋がいくつもある。大きな絵画や彫刻は、ヨーロッパの文化と似通っていると思った。
(素敵なところだわ。ここに住めたりするのかしら。でも、男に縛られたくはないけど、男が一人もいないというのは、さすがにつまらないわね)
宮殿ですれ違う人の全てが女性というのは異様だった。ただ、心が男性の人は、男性の格好をしている。場所柄からか、眉目秀麗な人が多い。
(まるで宝塚だわ)
騎士のような格好の人に、ダイニングルームに案内された。一緒にランチすることになっていて、私以外はすでにテーブルについていた。
剣士は呪われて女性になっているらしい。背が百八十センチ以上あって、非常に整った容姿をしている。
(この人、格好いい……)
レンジャーは絶世の美女だった。こちらは呪いなしの本物の女性で、ハーフエルフだというが、見た目は完全に人間だ。ハーフエルフはエルフからは忌み嫌われるが、人間からはその美貌ゆえに羨望の眼差しで見られるらしい。
(エルフって、どんだけ綺麗なのよ)
私は王よりも偉いみたいで、一番上の上座に座り、次に王、剣士、レンジャーの順に座っての食事会が始まった。
少し緊張していたが、私はこれから始まる冒険を楽しみにしていた。
(こんな気持ち、何年ぶり、いや何十年ぶりだろう)
体が若返ったことで、気持ちも若返っているような気がする。今度は夫のためとか子供のためではなく、自分自身のための人生を送りたい。
「エリカ様、まずはご紹介させて頂きます。剣士のスイ、レンジャーのモクです」
(この国では名前は二文字って決まっているのかしら。月水木と覚えよう。キンも入れたら月水木金だわ。偶然かしら?)
「エリカです。昨日、異世界からこちらに来たばかりなの。前の世界では看護師をやっていたわ。よろしくね」
後から知るが、こちらにも看護師の職業はある。ナイチンゲールが提唱したような看護学が、この世界でも別の偉人によって提唱され、後続たちが実践し、進化させている。
「そうだったのですね。だから、治癒系の神通力が開花したのでしょう」
こちらの世界では、「治癒」の力を持つものが看護師になるらしい。ただ、私の「治癒」の奇跡とは、呼び名が同じだけで雲泥の差がある。薬の効果を少し上げる程度のものらしい。
私以外の全員が、金髪碧眼で彫りが深い顔立ちをしている。私だけ黒髪黒目のアジア系なので、ちょっと劣等感が出てしまうのだが、彼女たちからすると、黒髪黒目は美の頂点らしく、盛んに私の髪の色と目の色を褒め称えてくる。
(茶髪にしないで、黒髪を維持していて良かったわ)
「では、改めて私も自己紹介します。ゲツです。アルタリア王朝七代目の国王です。即位二年目ですが、いまだに妃を持てません。早く男に戻って、妃を娶りたいです」
王の自己紹介に皆がおおっと拍手をする。合コンか、ここは。王といえども、合コンでの挨拶は、軽く聞こえてしまい、思わず吹き出しそうになった。
「拙者はスイと申す。先王の時代から、王の剣になると決めて、剣の道に邁進して参ったでござる。趣味は釣りでござる」
侍口調の人か。釣りとかこっちにもあるのね。
「モクでございます。私は人間とエルフの架け橋になりたいと思っておりますの。エルフの男は人間の女性と交わろうとは致しません。私はエルフの男を誘惑し、男のエルフと交わって、史上初のスリークオーターのエルフを出産するのが夢ですわ」
今度はお嬢様口調だ。架け橋って、そっち系での架け橋か。エルフの男が人間と交われば、人類は混血だらけにはなるが、滅亡は防げる。だが、そうできない理由があるということなのだろうか。
「どうして、エルフの男は人間の女と交わらないの?」
「宗教上の理由ですわ。エルフの中では、人間の女性は不浄の生き物とされておりますの」
イスラム教の豚と同じか。ちなみに人間の男とエルフの女が交わると、必ず女が産まれるらしい。エルフからはハーフエルフは人間の女性よりも不浄とされ、最も忌み嫌われるそうだ。モクは大変なことにチャレンジしようとしているのだ。こんなに美人なのに……。
それはさておき、私はふと気になった。
「ちょっと質問したいのだけど、そんな不浄とされている生き物が、エルフの森に入れるのかしら?」
「入れませんわ。エルフたちは、徹底的に排除してくると思いますわ」
人間には女しかいなくなって、エルフとの会話はより難しくなっているということか。
「でも、エリカ様は大丈夫です。人間ではありませんから」
王が太鼓判を押してくれるのだが、言い方がよくない。
「人間ではないとか、そういう言い方は、何だか傷つくわ」
「すいません。でも、エルフの目は種族を見ることができるのです。エリカ様は『神人』のはずです。エルフも神人様には敬意をもって接しますし、神人様の従者たる我々をそう簡単に排除するとは思えないのです」
「だといいけど」
王の目論見は完全に外れることになるのだが、それはもう少し先の話で、我々はランチを終えた後、王宮の宝物殿で、冒険に備えて、武器と防具の選定を始めた。
最初から最強の武器と防具を取り放題って、かなり恵まれているかと思いきや、人間界にある武器と防具はそんなに強くはないらしい。
「世界の宝のほとんどは、最強生物のドラゴンが押えているのです。それから、ドラゴンですら手が出せない強力なガーディアンに守られた古代遺跡の宝物庫には、神話級の防具や武器やアイテムがあると言われています」
「最強の武器と防具は揃えなくても大丈夫なの?」
「ドラゴン相手ならまだしも、相手はエルフですから大丈夫です」
「そういうこと言っちゃうと、エルフがドラゴンと組んだりする展開になったりするんじゃないの?」
「それはないと思います。ドラゴンは最強ゆえに、どの国にも力を貸さないポリシーのはずです」
「そういうのって、決めつけはよくないと思うけど、まあ、組まれてから対応してもいいのかな」
「はい、それで大丈夫です」
急がば回れとも言うが、拙速は巧遅に勝るとも言う。まずは素早く行動を起こそう。
私は巫女装束風の防具とお遍度さんの金剛杖のような杖にした。私は圧倒的な防御力があるので、何を着ても誤差程度だし、そもそも攻撃できないので、武器は要らない。そのため、雰囲気で選んだ。魔法少女みたいな衣装もあったが、もちろん手はつけなかった。
王は「魔界のローブ」と呼ばれる漆黒のローブを羽織り、「魔界のロッド」というこれまた漆黒の杖を身に付けた。魔法の衣装は自動的にサイズが調整され、王にピッタリだ。
「エリカ様、どうです? 格好いいでしょう。王家の持ち物の中では一番いいものです。使い込めば、神話級とは言わないまでも、伝説級になる可能性だってあります。この赤い蝙蝠を形どったマークが超格好いいです」
バットマンなの? と突っ込みたくなるデザインだった。見た目が中学生だけあって、王は厨二病かもしれない。
スイは侍風の着流しに、名刀「斬鉄剣」を選んだようだ。おっぱいが丸見えにならないようにさらしを巻いているが、見えないようにではなく、邪魔にならないようにしているらしい。足がチラチラ見えてセクシーで、この人はとにかく格好良い。
モクは自衛隊の迷彩服のような装備を選んだ。武器は「零式」という魔法銃だ。顔が綺麗でスタイルがいいので、何を着ても似合う。帽子を取ると長い髪がファサッとなり、人間の男ならイチコロだ。自衛隊のポスターにしたら、応募が殺到するに違いない。
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