スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

文字の大きさ
上 下
28 / 55
ミント篇

孤児院の占拠

しおりを挟む
「はい。どなた?」

 扉の向こうから聞こえてきたのは若い女の声だ。

「リズです。シスターテレサ」

「まあ、リズ!? 今、開けるわね」

 孤児院の扉が開いた。出て来たのは修道女のような衣装の女だった。

「リズ、この方々はどなた?」

 シスターテレサの目は俺のところで止まっている。

 俺はシスターテレサを指さして、リズに確認した。

「リズ、この人は悪い人?」

「いいえ、まだ来たばかりの新米シスターで、悪い人ではないです。悪いのは院長とシスターグレーです。他にもいるかもしれませんが」

「あなた方は何を言って……。きゃっ」

 俺はリズとアリサの腕から抜け出して、あっという間にシスターテレサを縛り上げ、さるぐつわをかませた。

 リズが孤児院の構造の説明を始めた。

「ここは玄関ホールです。左側がシスターたちの部屋で、右側には厨房や食堂などの共同施設があります。二階の左側が女子部屋、右側が男子部屋です。もう就寝時間を過ぎてますので、子供たちはトイレ以外は部屋から出てはいけない規則です」

「じゃあ、まずは一階の左側だな。シスターを一人ずつ縛り上げるぞ。サーシャ、シスターテレサを持って来てくれるか?」

「はい、おじさま」

 サーシャは三人の中では一番力が強い。シスターテレサぐらいの体格であれば、指一本で持ち上げられるだろう。

 リズに順番に部屋をノックしてもらい、出て来たシスターを一人ずつ縛り上げ、廊下に並べて行った。シスターグレーというのは、神経質そうな痩せた中年女性だった。

 最後は院長だ。自室か院長室にいるはずだという。自室にいたので、同じように縛り上げた。俺は院長が男だと勝手に思っていたのだが、女だった。シスターアネモネという名で、意外にも、まだ三十代前半ぐらいの美人だった。

 廊下には、院長を含めた十人のシスターたちが縛られている。俺は彼女たちに説明を始めた。

「俺の名前はボーンだ。リズの保護者だ。今から縄とさるぐつわを解くが、逃げようとしたら、手加減を失敗して、殺してしまうかもしれん。だから、逃げない方がいいと思うぞ。じゃあ、みんなで手分けして、縄をほどこう」

 俺たちはシスター全員の縄とさるぐつわを解いた。シスターたちは逃げようとはせず、黙って俺たちを見ている。

 俺は説明を続けた。

「今日からこの孤児院は奴隷取引をやめる。これは決定事項だが、反対意見のものはいるか?」

 シスターたちを見回すと、やはりというか、院長が手を挙げて、口を開いた。

「ここに集められている子供は全て異教徒で、教会からも奴隷として良いと許可されています」

(キリスト教のような一神教なのか?)

「俺からすれば、お前が異教徒だ。お前の理屈で言うと、俺はお前を奴隷として扱ってもよいのだな?」

「どうぞ」

 院長は出来っこないと決めつけている感じだ。

「ほう。じゃあ、明日、奴隷商にお前を売ろう。買ってくれるといいがな。そんなことできないと思っているようだが、奴隷として売れなかったら、冒険者としてダンジョンに入ってもらう。稼がざるもの食うべからずだからな。他に反対はいるか?」

 次はシスターグレーが手を挙げた。

「この街は国から奴隷売買を認められています。私たちは合法な商売をしながら、孤児たちを育てているつもりです」

「『青田売り』もか?」

「『青田売り』などには手を染めていません」

「お前、俺に嘘をついて、どうなるかわかっているのだろうな?」

「何をおっしゃって。証拠はあるのですか?」

「何で証拠を用意する必要があるんだ? 俺が『青田売り』をやっていると言ったら、やってるんだよ。仮に俺が間違っていたとしても、お前が俺に合わせろ。もう一度、聞くぞ。この孤児院は『青田売り』をしているだろう」

「やっていません」

「お前、話を聞いていたのか? やっていてもいなくても、俺に話を合わせろと言っただろう。ひょっとして、痛い目に合わせないと分からないバカか?」

「神に仕える身ですので、嘘は申し上げられません」

「はあ、仕方ない。子供たちの前で拷問するわけにもいかないからな。実はいい手があるんだ。チャーム」

 俺はチャームの魔法をかけた。シスターグレーの目が俺を熱く見つめてくる。正直、気持ち悪いが、我慢だ。

「シスターグレー、この孤児院での『青田売り』の構造を教えてくれ」

 シスターグレーは俺に喜んでもらおうと嬉々として話を始めた。

「はい。未成年専用の奴隷商から要件をお聞きして、協力関係のある孤児院に適合する孤児がいるかどうかを問い合わせます。適合する孤児がいた場合、私たちの孤児院付きの冒険者に誘拐を依頼し、そのまま奴隷商に届けます。その後、奴隷商から入金があります。以上です」

 シスターグレーが手のひらを返したようにスラスラと内情を話し出したので、他のシスターたちは呆気に取られている。

「なるほど。協力関係のある孤児院のリストと、青田買いしている奴隷商のリストを後で提出してくれ。次に『青田売り』に協力しているシスターを教えてくれ」

 シスターたちがざわついたが、時すでに遅しだった。

「全員が関わっています」

「シスターテレサもか?」

「はい。彼女は飴と鞭の飴役です」

「そうか。では、次にお前たちが手なづけている子供たちがいれば教えてくれ」

「ロキ、チェキ、ベン、リック、リサ、ミリアの六人です」

「え? ロキとチェキが……」

 リズがショックを受けている。

 俺は、次々と悪事を暴露されておろおろしているシスターたちを睨みつけた。

「いいか、お前たち。実はこんな感じで、何でも聞き出せるんだ。何が『神に仕える身』だ。嘘をついてもバレるから、最初から素直に話した方がいい。いいか、今日から俺に従うんだ。裏切っても今見た通りで、丸わかりだからな」

 シスターグレー以外のシスターたち全員が青くなっている。

「もう一つ、俺たちの力を見せておこう。そうだな。アリサ、死なない程度に院長にグラビティをかけてくれ」

「いいよ、おじさん」

「うぐっ」

 といううめき声を出して、院長が床にうつ伏せに張り付いた。頬が床について、全く身動き出来ず苦しんでいる。しばらくして、アリサが魔法を解除した。

「見ての通りだ。俺たちはいつでも瞬時にお前たちを殺すことが出来るし、殺すことを躊躇しない。ゆめゆめ忘れぬことだ。あと、俺はお前たちの居場所が分かる能力がある。逃げ出そうなんて考えないことだ。以上だ。部屋に戻って寝ていいぞ」

 シスターたちはいそいそと部屋に戻っていった。院長だけが部屋に戻ろうとしない。

「どうした? 何かあるのか」

「子供たちのいないところで、お話しさせて頂きたいです」

 院長が妖艶な目を俺に向けて来た。

「ああ、そういうのは無しだ。部屋に戻れ」

 院長は俺を誘惑するのを諦め、部屋に戻って行った。

 シスター全員が部屋に戻ったのを確認して、俺はバックパックからスケルトンの本体を取り出した。

「リズ、アリサとサーシャを適当な部屋に案内してやってくれ。お前たちはもう寝た方がいい。俺は朝まで玄関ホールで見張りをするから。こいつの召喚を解いてくれ」

「分かりました。おじさん、お休みなさい。さあ、アリサ、サーシャ、こっちです」

「おじさん、お休み」
「おじさま、お休みなさい」

 俺はイリュージョンの男性の姿で、子供たちを見送った。そうなのだ。レベルが上がって、男に化けることも出来るようになったのだ。

 予想はしていたが、前世の俺の姿だった。子供たちからは特に反応なしだ。意外と傷つく。

 気を取り直して、見張りを始める。こういったとき、アンデッドは便利だ。寝なくていいし、疲れないため、長時間の見張りはお手のものだ。

(明日はサーシャの孤児院だな)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スローライフは仲間と森の中で(仮)

武蔵@龍
ファンタジー
神様の間違えで、殺された主人公は、異世界に転生し、仲間たちと共に開拓していく。 書くの初心者なので、温かく見守っていただければ幸いです(≧▽≦) よろしくお願いしますm(_ _)m

神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか

佐藤醤油
ファンタジー
 主人公を神様が転生させたが上手くいかない。  最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。 「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」  そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。  さあ、この転生は成功するのか?  注:ギャグ小説ではありません。 最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。 なんで?  坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

村人からスケルトンになってしまいまして

石崎楢
ファンタジー
異世界のお話。普通の村の若者が大魔王の手下に殺されてスケルトンになってしまいました。勇者候補たちを100人倒せば、大魔王様の魔力で新たなる魂と肉体を得て新たなる世界へ転生させてくれるようなので頑張ります。

処理中です...