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ダンジョン篇
殺人依頼
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(うちの孤児院は最悪なんです)
リズの話で地上の世界のことが色々とわかった。
ここはアステラル帝国のミントという名前の都市で、主要産業は奴隷売買のようだ。
全国からミントに孤児が集められ、孤児院で十五歳になるまで育てられ、奴隷商人に売られて行く仕組みが出来上がっているらしい。
(十五歳未満は何をしているんだ?)
(十歳からは商店の丁稚などいろんなところで働きます。運が良ければ雇ってくれて、奴隷にならなくて済むから、みんな必死で働きます)
(冒険者になるのもいるということか)
(働き口が見つからない子が冒険者になります。十五歳までに開放金が貯まれば、孤児院から解放され、奴隷にならなくて済みます。それ以外はそのまま孤児院付きの冒険者になるか、奴隷として売られるかです)
(酷い話だな)
(え? ここまでの話は普通ですよ。親のいない私たちを育ててくれたんだから、恩を返すのは当たり前ですから)
本気でそう思っているようだ。いいように教育されてしまっている。
(ふむ、じゃあ、どこが最悪なんだ)
(うちの孤児院は青田売りをしているんです)
「青田売り」とは十五歳未満の孤児を非合法に奴隷商人に売り渡すことらしい。奴隷売買は国が認めているらしいが、認めているのは十五歳以上からで、十五歳未満の子供の売買を行うと、厳しく罰せられるらしい。
そのため、冒険中にさらって、そのまま未成年専門の奴隷商人に売り渡し、罪に問われないようにして、「青田売り」をカムフラージュしているのが、リズの孤児院だ。
(じゃあ、リズたちを襲おうとした冒険者は?)
(うちの孤児院付きの冒険者だと思います。私をさらいに来たのでしょう。ほら、私、きれいでしょう?)
(きれいか?)
しまった。思わず念じてしまった。
(おじさん、目が見えないの?)
リズの目がすっと細くなる。子供のくせに俺の嫁と同じ表情をする。
(い、いや、見えるが、アンデッドは美的感覚がおかしいんだ。気にするな)
ガリガリのごぼうのようで、どこがきれいなのか分からない。だが、確かによく見てみると、顔が小さくすらっとしていて、目鼻立ちは整っている。もう少しふっくらして女らしく変われば、美人になるかもしれない。女の子は、がらっと変わるから。
(いいですっ。人それぞれ趣味は違いますから。それで、今回はおじさんのおかげでさらわれずに済みましたが、孤児院は事故だと思って、またさらいに来るはずです)
(それから守ってくれってことか?)
(うちの孤児院だけでなく、全ての孤児院の子供が狙われています。ですので、青田売りに手を染めているうちの孤児院所属の冒険者を全員殺して欲しいのです)
(全員が青田売りしているのか?)
(はい。私たちの孤児院付きの冒険者は、自分が奴隷として売られないために、未成年者をさらって売ることを決意したろくでなしなのです)
(断ったら?)
(私や子供たちが変質者に売られて行くだけです……)
随分と頭のいい娘だ。
(リズはいくつなんだ?)
(十三歳です)
(分かった。どうやって見分ければいいんだ?)
(これと同じ首飾りをしているのが、うちの孤児院所属の冒険者です。赤いのが大人、青いのが子供だから、赤いのを殺してください)
(殺すってのは物騒な話だが、何かあったのか?)
(一年ほど前、大好きだった血の繋がった姉さんがさらわれたんです。私は孤児院も冒険者も絶対に許せないっ)
リズの話で地上の世界のことが色々とわかった。
ここはアステラル帝国のミントという名前の都市で、主要産業は奴隷売買のようだ。
全国からミントに孤児が集められ、孤児院で十五歳になるまで育てられ、奴隷商人に売られて行く仕組みが出来上がっているらしい。
(十五歳未満は何をしているんだ?)
(十歳からは商店の丁稚などいろんなところで働きます。運が良ければ雇ってくれて、奴隷にならなくて済むから、みんな必死で働きます)
(冒険者になるのもいるということか)
(働き口が見つからない子が冒険者になります。十五歳までに開放金が貯まれば、孤児院から解放され、奴隷にならなくて済みます。それ以外はそのまま孤児院付きの冒険者になるか、奴隷として売られるかです)
(酷い話だな)
(え? ここまでの話は普通ですよ。親のいない私たちを育ててくれたんだから、恩を返すのは当たり前ですから)
本気でそう思っているようだ。いいように教育されてしまっている。
(ふむ、じゃあ、どこが最悪なんだ)
(うちの孤児院は青田売りをしているんです)
「青田売り」とは十五歳未満の孤児を非合法に奴隷商人に売り渡すことらしい。奴隷売買は国が認めているらしいが、認めているのは十五歳以上からで、十五歳未満の子供の売買を行うと、厳しく罰せられるらしい。
そのため、冒険中にさらって、そのまま未成年専門の奴隷商人に売り渡し、罪に問われないようにして、「青田売り」をカムフラージュしているのが、リズの孤児院だ。
(じゃあ、リズたちを襲おうとした冒険者は?)
(うちの孤児院付きの冒険者だと思います。私をさらいに来たのでしょう。ほら、私、きれいでしょう?)
(きれいか?)
しまった。思わず念じてしまった。
(おじさん、目が見えないの?)
リズの目がすっと細くなる。子供のくせに俺の嫁と同じ表情をする。
(い、いや、見えるが、アンデッドは美的感覚がおかしいんだ。気にするな)
ガリガリのごぼうのようで、どこがきれいなのか分からない。だが、確かによく見てみると、顔が小さくすらっとしていて、目鼻立ちは整っている。もう少しふっくらして女らしく変われば、美人になるかもしれない。女の子は、がらっと変わるから。
(いいですっ。人それぞれ趣味は違いますから。それで、今回はおじさんのおかげでさらわれずに済みましたが、孤児院は事故だと思って、またさらいに来るはずです)
(それから守ってくれってことか?)
(うちの孤児院だけでなく、全ての孤児院の子供が狙われています。ですので、青田売りに手を染めているうちの孤児院所属の冒険者を全員殺して欲しいのです)
(全員が青田売りしているのか?)
(はい。私たちの孤児院付きの冒険者は、自分が奴隷として売られないために、未成年者をさらって売ることを決意したろくでなしなのです)
(断ったら?)
(私や子供たちが変質者に売られて行くだけです……)
随分と頭のいい娘だ。
(リズはいくつなんだ?)
(十三歳です)
(分かった。どうやって見分ければいいんだ?)
(これと同じ首飾りをしているのが、うちの孤児院所属の冒険者です。赤いのが大人、青いのが子供だから、赤いのを殺してください)
(殺すってのは物騒な話だが、何かあったのか?)
(一年ほど前、大好きだった血の繋がった姉さんがさらわれたんです。私は孤児院も冒険者も絶対に許せないっ)
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