上 下
7 / 55
ダンジョン篇

孤児の冒険者

しおりを挟む
 あれから数日経ったが、俺はいったい何をしているのだろうか。

 冒険者を尾行して、ダンジョンを効率よく探索したいのだが、この冒険者たちは間抜けすぎるのだ。

 こいつらは孤児たちだ。兄貴分のロキ、お姉さん役のリズ、弟分のビート、妹分のチェキの四人組だ。見た目は中学生だが、ひょっとするとチェキはもう少し下かもしれない。

 話を聞く限り、孤児院では十歳以上は働きに出ないといけないようだ。日本での俺の娘は11歳だったが、とても働くなんて感じではなかった。俺には親の気持ちがしっかりと残っていて、どうにも子供を放って置けない。

 荷物を忘れそうになったときに音を立てて気づかせたり、ビートが落とし穴に落ちたのに気づかずに進んで行くのを止めたり、今さっきは、背後から魔物に襲われそうになっていたところを助けた。

(俺がいなかったら、全員死んでるぜ、今頃)

 ロキたちに気づかれずに助けを続けられるのは、現在いる地下三階で取得した数々のスキルのおかげだ。このフロアはビーストフロアで獣系の魔物が生息している。

 今の俺のステータスはこうなっている。

  名前:ボーン
  種族:スケルトンメイジ レベル98
  魔法:マップ、フィア、フレア、デス、
     チャーム
  技能スキル:無痛、復活、剣技、拳闘、鑑定、
     迷彩、跳躍、俊足、無音、索敵、
     集音
  経過日数:36

 特に迷彩と無音がいい感じで、魔物からもほとんど気付かれなくなった。

(真っ暗だし、俺ってば、無臭だし、息してないし)

 人間はどうやら人間のスキルしか取得できないようだが、俺は今のところ、何でも取得出来るようだ。だが、最強になる気はまるでしない。聖女を見てしまっているからだ。

 ロキたちは今日帰るつもりだったようだが、孤児院に持っていく薬草をもう少し採取しないといけないようで、もう一泊することに決めた。こんなことまで分かるのは、耳の長いビーストから取得した集音のスキルが役立っているからだ。

(動物並みというか、俺ってば動物そのものだ)

 実は地下三階に落ちてしばらくしてから、ガラの悪い冒険者二人組がロキたちをつけているのだが、そいつらにも俺は気づかれていない。

(しかし、人間てのはどこの世界にも悪い奴がいるんだなあ)

 何が目的か分からないが、子供を狙うとはとんでもない奴らだ。まさか俺と一緒で、守ってやっているわけではないだろう。

 ビーストフロアは森のように木々に覆われており、安全部屋というものが存在しない。そのため、ロキたちは眠るときには交代で見張りをしている。

 今の見張りはビートで、焚き火の前で、こっくりし始めていた。

 ガラの悪い冒険者二人組は、ビートが寝てしまったと見て、行動を開始した。

 何をするのか泳がせておいたところ、狙いはリズとチェキのようだ。

 人間 レベル32
 魔法 ファイア、サンダー
 スキル 投擲

 人間 レベル35
 魔法 キュア
 スキル 解錠

という情報が頭に入ってくる。

 ロキたちのレベルは10そこそこだ。とても敵わないだろう。

(キュアを持っているのか。先にそいつから殺すか)

 二人はリズとチェキが寝ているテントに入ろうとしている。

 俺は瞬足で近づき、二人の正面に立ってからフィアをかけた。二人の顔が恐怖に歪む。叫び声を出す前に、二人の剣を抜いて、心臓に突き刺して殺した。

(キュアを警戒するまでもなかったな)

『レベルが100になりました。スケルトンナイトに進化しました。イリュージョンの魔法を覚えました。投擲のスキルを覚えました。解錠のスキルを覚えました』

 俺は遺体を担いで早々に立ち去ろうとしたのだが、ビートが目を見開いて、俺を見ていた。どうやらビートに一部始終を見られてしまったようだ。

 俺はすぐに立ち去り、姿を消した。どうせビートの言うことは、誰も信じやしないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました

山田うちう
ファンタジー
帝国の皇女に転生するも、生後3日で誘拐されてしまう。 犯人を追ってくれた騎士により命は助かるが、隣国で一人置き去りに。 たまたま通りかかった、隣国の伯爵に拾われ、伯爵家の一人娘ルセルとして育つ。 何不自由なく育ったルセルだが、5歳の時に受けた教会の洗礼式で真名を与えられ、背中に大きな太陽のアザが浮かび上がる。。。

スローライフは仲間と森の中で(仮)

武蔵@龍
ファンタジー
神様の間違えで、殺された主人公は、異世界に転生し、仲間たちと共に開拓していく。 書くの初心者なので、温かく見守っていただければ幸いです(≧▽≦) よろしくお願いしますm(_ _)m

前世は悪神でしたので今世は商人として慎ましく生きたいと思います

八神 凪
ファンタジー
 平凡な商人の息子として生まれたレオスは、無限収納できるカバンを持つという理由で、悪逆非道な大魔王を倒すべく旅をしている勇者パーティに半ば拉致されるように同行させられてしまう。  いよいよ大魔王との決戦。しかし大魔王の力は脅威で、勇者も苦戦しあわや全滅かというその時、レオスは前世が悪神であったことを思い出す――  そしてめでたく大魔王を倒したものの「商人が大魔王を倒したというのはちょっと……」という理由で、功績を与えられず、お金と骨董品をいくつか貰うことで決着する。だが、そのお金は勇者装備を押し付けられ巻き上げられる始末に……  「はあ……とりあえず家に帰ろう……この力がバレたらどうなるか分からないし、なるべく目立たず、ひっそりしないとね……」  悪神の力を取り戻した彼は無事、実家へ帰ることができるのか?  八神 凪、作家人生二周年記念作、始動!  ※表紙絵は「茜328」様からいただいたファンアートを使用させていただきました! 素敵なイラストをありがとうございます!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

処理中です...