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~ブルーノとオルコット侯爵~
しおりを挟む「オルコット侯爵、本日は私のためにお時間をいただき、ありがとうございます」
「はあ・・・ま、立ち話ではすまないのだろう?座りたまえ」
「はい。では失礼いたします」
「・・・言いたいことはわかるよ。君の御父上、ノーマン公爵から早文が届いている。そのことだろう?」
「はい。父に頼んで急ぎ文をお願いしました」
「君の気持ちは知っていたけどね。たぶん知らないのはフィリーネ本人だけじゃないかな?」
「はは。彼女はそういうことに、少し疎いといいますか。むしろ、そこが私には愛おしくてたまらないのですが」
「娘の父親に向かってよくもまあ・・・ま、それくらいの気概がなければとは思うがね」
「お褒めいただき、ありがとうございます」
「誰も褒めておらんわ。まったく」
「申し訳ありません」
「して、これからどのように娘を守るつもりだ?
婚約を破棄された娘だ。周りの者どもが大人しくしているわけがない。あの手この手で、あの子を引きずり出しいたぶってくることだろう。お前にあの子を守りぬくことができるのか?」
「今はまだ学生の身ゆえ、社交界で守り切ることはできません。
しかし、卒業後は第二王子殿下の側近としてお傍に仕え、ゆくゆくはこの国の宰相になるつもりでおります。その権力を持ってすれば、彼女を一生守り切ることができます」
「ほぉ、宰相に?第二王子の側近が、宰相にと?」
「・・・第一王子殿下は国王の器にはありません。それはあなた様もよくわかっておられるはず。
私がお傍に仕える以上、必ずや第二王子殿下を国の頂点に立たせてみせます。あの方はそれだけのお力のある方です」
「ほほほ、飛んでもないことを言う。だが、それが叶う保証はない」
「先を見据えればおのずとわかること。国を司る者は、産まれた順位で決めて良いわけではありません。先見の明の無いものが第一王子についているだけのこと。そう、メイナードのように。
私は違えない。フィリーネを妻に迎えるために、最大の力を持って彼女を手に入れます。
私にはそれだけの能力がある。あいつとは違う」
「はぁ・・・お前は昔からそうだった。子供のくせに妙に頭が切れる。我々大人の言う事を小馬鹿にして聞いていたんだろう?ひねた目つきの小生意気なガキだったよ」
「ふふ。ひどいなぁ。でも、おじさんの事を馬鹿にしたことは一度もないですよ。
おじさんは唯一僕を子供扱いせずに、ちゃんと向き合ってくれた。
わからないことは根気よく最後まで教えてくれたし、大体僕がこんな生意気なガキになったのはおじさんのせいだと思うんですけどね」
「ふん。知ったことか。そうやって私の大事な娘を奪おうとする。わしにとっては宿敵以外の何物でもないわ」
「僕はおじさんには本当に感謝しているんですよ。僕がここまで頑張れたのはおじさんの教えのお陰ですからね。
公爵家跡取りの兄が全てのノーマン家で、居場所のなかった僕を拾ってくれたのは誰でもない、おじさんだけだった。
あなたの良い所はフィリーネや、オルコット家嫡男で弟のケイシーが引きついだけど、あなたの黒い部分は全てこの僕が教えを賜った。おじさんの思うままになったでしょう?」
「俺はお前ほど腹黒くはないわ。一緒にするな」
「ええ?そんなこと言っていいんですか?僕、知ってますよ。メイナードの浮気相手のこと。
そうなるように仕向けたのが誰かってことも。ちゃんと調べはついていますから」
「お前は・・・その情報はどこからのものだ?」
「いやだなあ、そんなこと教えるわけないじゃないですか。
だから、僕を誰だと思ってるんです?将来の宰相になる男ですよ。あまり見くびらない方が良いとだけお伝えしておきますよ」
「その笑顔が怖いんだよ。フィリーネは知らんのだろうな?あの男爵家の小娘のことも、お前の腹黒さも」
「ええ、もちろん誰にも言いません。僕の胸に留めておきます。
それに、フィリーネには僕は昔のまま、可愛い幼馴染だと思ってもらっていますから。そこは絶対に間違えませんよ。もちろん一生ね」
「はんっ!何をしたってフィリーネが『うん』と言わなければ、婚約など許しはせんからな。せいぜい頑張ることだな」
「では、フィリーネが良いと言えば婚約を許していただけるのですね?」
「ああ、認める。ただし、そんな簡単ではないと思うぞ」
「ふふふ。だから僕を誰だと思ってるんですか?絶対『うん』と言わせて見せます。それもちゃんと合法的に、彼女の気持ちを僕のものにしてみせますから、義父様は見物していてください」
「誰が義父と呼んで良いと言った?まだ早すぎる!お前などケチョンケチョンに振られてしまえばいいのだ!!」
「そんな照れないでください、義父様。もうすぐそうなりますから、学園を卒業したらすぐに結婚します。そしたらすぐにお爺ちゃんですよ。楽しみにしていてください」
「うわーーーーー!!!早く消えろ!!」
「はい。では、さっそくフィリーネの心を僕のものにして参ります。義父様、失礼します」
「二度と来るな!!ばかもん!」
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