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~11~ 侍女候補の秘密
しおりを挟む第二王子フランシスの執務室では、定期的にリリアーナ会議が繰り広げられる。
フランシスの側近であるアンジールと近衛騎士であるジアンは幼馴染で、同い年。
学園でも同じ時をかけて青春時代を過ごした。
そこにリリアーナの護衛兼侍女として迎え入れられたのがエミリーである。
エミリーはダンテス伯爵家の3女であるが、出自はダンテス伯爵領地にある孤児院出身の平民で養女だ。
ダンテス家は代々王家の影や間者として働く家系である。
代々恋愛結婚を貫き、妻は自分の領地の娘を娶っていた。よくある貴族間の政略結婚や、平民蔑視のような物は一切ない。そして、子だくさんである。
しかし、それは世の中の目を欺くための所業で、領地にある孤児院は密偵者を作り上げる養成所であり、その中から特に優秀な者を養子に迎える。
そして領主の妻もまた、その中から選ばれる。
そうやって長きにわたり他貴族からの血を交えないことで、ダンテス家が王家の犬であることをひた隠しにしてきた歴史があるのだ。
先ほどのリリアーナ会議の後、アンジールが人数分の紅茶を入れてテーブルに並べ始める。
「ジアンも少し休んだ方が良いよ。はい、どうぞ。」
そう言って、ソファーに座るよう促す。
しばらくお茶を飲みながら気を落ち着かせていると
「ところで、エミリーの本当の年齢はいくつなんだ?」
フランシスが不思議な事を聞いてくる。
「・・・・・・・・リリアーナ様と同級生ですので17歳かと?」
「いや、そういうのはいいから。実年齢ってやつ?」
「ええ、ですから、リリアーナ様とおな・・」
「だから!そういうのはいいから。実際、僕らより年上だろ?」
フランシスの言葉に、残りの男二人は「え?」という顔でエミリーを覗き込む。
「女性に年齢を聞くのは大変失礼だと思いますが、リリアーナ様と同い年です。としか」
エミリーも負けていない。
「わかった。じゃあ、質問を変える。お前、学園に何回入学した?何人分通ったんだ?
直近は何年前だ?」
ますます残りの男二人は目を丸くしてエミリーを凝視する。
「私がエミリー様と学園に通うようになって3年目で・・・」
「ああ、もういいや。わかった。すまん。」
フランシスもついに諦めたかと思ったが
「ところでエミリー、お前の本当の髪の地毛は何色なんだ?」
またしても『なに?』と目を見張る、残りの男二人。
「私は生まれながらに玉虫色の髪と瞳をしておりまして、日によって違ったり・・・」
「いや、いい。わかった。お前が立派なダンテス家の娘という事がよくわかった。」
フランシスがため息交じりに答えると
「わかっていただけたようで何よりです。」とにこやかにエミリーが答える。
しばらく思案していたフランシスだが、
「エミリーには、リリアーナと結婚して妃になってからもずっと侍女としてついていてもらいたいと思っている。そしてゆくゆくは乳母になってもらいたいとも考えていたんだが。
どうなんだ?年齢的に難しいのか?」
乳母?このエミリーが?とまたまた驚きの目で見返す残りの男二人。
「そうですね、私に乳母は難しいかもしれません。
なにせ毒見要員として耐性をつけるための訓練もしておりましたので、そもそも子供は難しいと思っておりました。
それに、出産の間リリアーナ様のおそばを離れるのは問題があるかと思いますし。
むしろ、ここにいる男性方の奥様に頼んでみてはいかがでしょう?」
そう言って、残りの男二人に目を向ける。
「「え?おれ?」」
「いやいや、俺もジアンも結婚どころか婚約者すらいないからね。そんなの無理だから。
なあ?ジアン?」
「ああ。そんなすぐに結婚相手が見つかるとは思えない。」
残りの男二人は及び腰である。
「そうか、なるほどな。でも、まだ結婚までには時間はあるぞ。
それにすぐに子供をつくるつもりはない。しばらくは二人の時間を持ちたいと思っているし。だから、それまでになんとかしておいてくれ。」
何かを想像してニヤニヤしている気持ちの悪い主を前に、「そんなこと言ったってなあ?」と瞳で合図をしながら見つめ合う、残りの男二人であった。
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