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銀次と鈴は、与市の店のそばにある宿屋に部屋を取った。
素泊まりで飯は与市の物を食う。
しばらくは与市の店の手伝いをしながら、住処を捜そうと思っていた。
与市の店の上にも部屋は余っていたが、鈴の事を考えればそれはできない。
早くに新居を決め、鈴と二人で生活することを誓うのだった。
気の良さそうな女将の宿屋は繁盛しているようで、銀次たちを含め満室になっていた。その晩は旅の疲れもあり、銀次も鈴も早々に床に入るのだった。
銀次は商売道具の髪結い道具を枕元に置くと、鈴と並んで布団に入り瞼を閉じた。長旅の疲れで身体は疲れ切っている。それなのに、瞼を閉じても眠りに落ちることはなかった。
久しぶりの与市や権八との再会で、興奮しているせいかもしれない。
そんな銀次の隣で、鈴もまた眠りにおちることが出来ずにいた。
何かわからない。そんな感覚を心に置きながら、寝返りを打った。
「眠れねえのか?」
銀次は寝返りを打ち、自分に背を向けた鈴に声をかけた。
「……、うん。お兄ちゃんも眠れないの?」
「ああ、そうだな。なんだかガラにもなく興奮してるのかもしれねえな」
鈴の心の闇とは別に、銀次の声は少しだけ明るさを宿していた。
「この町にはどのくらいいるの?」
銀次が喜んでいることは鈴にもわかっていた。それでも、敢えて聞いてみた。
「うん、まあ。俺ももういい年になって来てる。ここらで落ち着ける町を捜してもいいんじゃねえかと思っててな。鈴は、この町は嫌えか?」
「私は……。わからないわ。だって、着いたばっかりだし」
「ま、そうだな。わかるはずもねえか」
そんな取り留めも無い話を二人はしばらく続けた。
この町に長く居座るつもりなのだと、鈴は感じ取りながら。
心に残る違和感を隠しつつ、それに対しての不満は口にしない。
鈴ももういい年齢になってきている。良い仲の男がいてもおかしくはない。
針仕事をする中、同じ長屋の女衆たちとの間でそんな話が出ないわけはない。
それは銀次も知っているはずだった。
それでも、二人はそのことを口にすることはしなかった。
嫁いでしまえば、新所を持ってしまえば「縁」が切れることを互いに知っているから。同じ血をわけた兄妹ではないと知りつつも、それでも切っても切れないものを感じ取っていたのだろう。
だが、もうそろそろそれも終いの頃合いかもしれない。と、そんなことを胸の奥に芽生えさせる鈴だった。
翌朝から二人は長屋を回り、新しい住処を捜し始めた。
与市の飯屋からそう遠くないところに目星をつけ、与市たちにも相談しながら住まいを決めた。
旅籠町は人の流れが多い分、流れ者も多い。入れ替わりの多い人並みは、自分の姿を隠すには丁度良いが、大勢と顔を合わせる分危険もともなうことを知っている。それでも与市のそばで、彼のためになりたいという思いが強い銀次はこの町を選んだ。そして、自らも転々としているという与市についてこの先は移動していこうと考えていた。
しばらくは与市の店で手伝いをする銀次をよそに、鈴は自らの足で仕事を取りに動き始めた。一緒に店を手伝ってくれないかと言う銀次の言葉に、「客商売なんかしたことないもの。足手まといにはなりたくないから」と、断った。針仕事は間をおくと勘を取り戻すのに時間がかかるからとも。
針仕事が好きだから続けたいと言われれば、銀次も強くは出られなかった。
この滝見里は東から北に向かう者達の通り道になっていた。山を抜けるよりも少しだけ遠回りにはなるが、老いた者や、女こども連れには歩きやすい道のりのために、多くの者が通り抜ける旅籠町だ。
旅の疲れを癒すための湯屋もある。
この町では髪結い一本にすると誓った銀次は、大抵の時間をこの湯屋で過ごし仕事を取っていた。
大きな町では湯屋に専属の髪結いがおり、洗髪後にそのまま結い上げたりするのが一般的になりつつあった。だが、田舎では大きな湯屋がある町の方が少なく、井戸の水で汗を流すことの方が多かった。
そんな中にうまいこと潜り込めた銀次は、昔ほどの羽振りはないがそれでも鈴と二人食うには困らない稼ぎを得ることが出来ていた。
そして鈴も銀次と同じく、古着屋で針仕事を請け負うようになった。
長旅でほつれた着物や、足袋の繕い。金子に余裕のある者は、古着屋で着物を買い着替えていく。着古された着物は洗い、修繕した後に再び安い値段で店頭に並べられる。それも無理なら財布や巾着、最終的には子供のおむつや雑巾へと代わり、使い倒されていくのだ。
人の出入りが多い分、針仕事も需要は多かった。鈴もまた、以前同様に針仕事は順調に進んでいた。
銀次はちょくちょく与市の店に顔を見せているようだが、鈴はたまに店に行き飯を食べるにとどまった。与市たちもまた、鈴を可愛がってくれているのがわかり、最初の頃の違和感は次第に薄れていったのだった。
次第に打ち解けていく様は、兄妹と親戚に近い感覚になっていったのかもしれない。それは、鈴や銀次だけでなく、与市や権八も同じだった。
「まさか、おめえがここまであの娘の面倒見続けるとは思ってもいなかったぜ」
ある夜、与市と権八とともに三人で酒を酌み交わしていた時だった。
与市は穏やかな笑みを浮かべて話し出した。
「おめえらの事は弥吉から報告が上がってる。てっきり、すぐに捨て去るもんだと思ってたからな。それも妹として育ててるなんざ、思いもしねえだろう」
クククと笑いを堪えて酒を飲み干す。隣で権八も口角を上げているのがわかった。
「そりゃあ、必死でしたよ。俺が勝手に拾った命だ、消すわけには行かねえから。それこそ熱がでりゃあ看病し、夜泣きすりゃあ一緒に寝てやって。
ようやくここまで何とかきたんでさあ」
「ああ、その姿が目に浮かぶようだぜ。向こうさんもおめえに懐いてるようだし、上手いこといってるみたいじゃねえか。それがなによりさ」
「へえ。あいつ、昔のことは覚えてねえんです。連れ帰ったあと酷い熱を出して、元気になった時には忘れちまってたんでさぁ。
鈴って、自分の名前だけを叫ぶだけで。だから丁度よかったんです。
俺のいうことは素直に聞くから、面倒見るのも楽だったですし」
「そうか、たとえ小娘でも養うってなったらてえへんなのは変わりねえ。
おめえが髪結いだけじゃねえで、自分も売っちまうとは思わなんだが。ま、その顔だ。周りの女がほっとかねえだろうしな。ははは」
「いや、それは……」
弥吉からその辺の報告もしっかりと上がっていたらしい。銀次は少しばかりいたたまれない思いになった。
しばらくはこのことを酒の肴にされるだろうと、覚悟を決めて。
「鈴には、黙っててくだせえよ」と、一応念を押してもみた。
「ところで、長松兄さんは元気ですかい?」
「ああ。ご苦労だが、長松は未だに宮浦で仕事してもらってる。おめえらの分け前分はそこから出してるんだ。俺もあいつには頭が上がらねえよ」
年に一、二回。弥吉から渡される金は、長松が変わらずに盗みを働いて手にしていた金だった。あの夜以降、バラバラに散ってしまった仲間たちだ。これで解散と告げてしまえば済むものを、与市は律義にも全員に目を配り、食うに困らぬ分を分け与えてくれていた。
自分が拾い盗賊の世界に沈めてしまったその責を、彼は死ぬまで追い続けると覚悟を決めているのだろう。
「長松は自分から好きでやってることです。親父がやれと言ったわけじゃない。
あいつも、それだけ親父に恩義を感じてるんでさあ」
寡黙な権八がぽつりとつぶやいた。
それを聞いて与市もまた「ありがてえなあ」と、つぶやくのだった。
こんな穏やかに酒を酌み交わせる日が来るとは思っていなかった。
こんな平和な暮らしを与市とともに送れると思っていなかった。
銀次は幸せだった。
鈴と共に与市の元を去ったあの日から早、十二年の年月が過ぎていた。
人も代わり、土地も代わり、時代が変わっていった。
あの夜を、おかめ盗賊の存在を覚えている人間すらもまた、消え失せてしまったと勘違いするほどに、時間は過ぎたのだ。
そうして銀次は忘れかけて行くのだった。
かつての自身の生活を。
あの夜の事を……。
素泊まりで飯は与市の物を食う。
しばらくは与市の店の手伝いをしながら、住処を捜そうと思っていた。
与市の店の上にも部屋は余っていたが、鈴の事を考えればそれはできない。
早くに新居を決め、鈴と二人で生活することを誓うのだった。
気の良さそうな女将の宿屋は繁盛しているようで、銀次たちを含め満室になっていた。その晩は旅の疲れもあり、銀次も鈴も早々に床に入るのだった。
銀次は商売道具の髪結い道具を枕元に置くと、鈴と並んで布団に入り瞼を閉じた。長旅の疲れで身体は疲れ切っている。それなのに、瞼を閉じても眠りに落ちることはなかった。
久しぶりの与市や権八との再会で、興奮しているせいかもしれない。
そんな銀次の隣で、鈴もまた眠りにおちることが出来ずにいた。
何かわからない。そんな感覚を心に置きながら、寝返りを打った。
「眠れねえのか?」
銀次は寝返りを打ち、自分に背を向けた鈴に声をかけた。
「……、うん。お兄ちゃんも眠れないの?」
「ああ、そうだな。なんだかガラにもなく興奮してるのかもしれねえな」
鈴の心の闇とは別に、銀次の声は少しだけ明るさを宿していた。
「この町にはどのくらいいるの?」
銀次が喜んでいることは鈴にもわかっていた。それでも、敢えて聞いてみた。
「うん、まあ。俺ももういい年になって来てる。ここらで落ち着ける町を捜してもいいんじゃねえかと思っててな。鈴は、この町は嫌えか?」
「私は……。わからないわ。だって、着いたばっかりだし」
「ま、そうだな。わかるはずもねえか」
そんな取り留めも無い話を二人はしばらく続けた。
この町に長く居座るつもりなのだと、鈴は感じ取りながら。
心に残る違和感を隠しつつ、それに対しての不満は口にしない。
鈴ももういい年齢になってきている。良い仲の男がいてもおかしくはない。
針仕事をする中、同じ長屋の女衆たちとの間でそんな話が出ないわけはない。
それは銀次も知っているはずだった。
それでも、二人はそのことを口にすることはしなかった。
嫁いでしまえば、新所を持ってしまえば「縁」が切れることを互いに知っているから。同じ血をわけた兄妹ではないと知りつつも、それでも切っても切れないものを感じ取っていたのだろう。
だが、もうそろそろそれも終いの頃合いかもしれない。と、そんなことを胸の奥に芽生えさせる鈴だった。
翌朝から二人は長屋を回り、新しい住処を捜し始めた。
与市の飯屋からそう遠くないところに目星をつけ、与市たちにも相談しながら住まいを決めた。
旅籠町は人の流れが多い分、流れ者も多い。入れ替わりの多い人並みは、自分の姿を隠すには丁度良いが、大勢と顔を合わせる分危険もともなうことを知っている。それでも与市のそばで、彼のためになりたいという思いが強い銀次はこの町を選んだ。そして、自らも転々としているという与市についてこの先は移動していこうと考えていた。
しばらくは与市の店で手伝いをする銀次をよそに、鈴は自らの足で仕事を取りに動き始めた。一緒に店を手伝ってくれないかと言う銀次の言葉に、「客商売なんかしたことないもの。足手まといにはなりたくないから」と、断った。針仕事は間をおくと勘を取り戻すのに時間がかかるからとも。
針仕事が好きだから続けたいと言われれば、銀次も強くは出られなかった。
この滝見里は東から北に向かう者達の通り道になっていた。山を抜けるよりも少しだけ遠回りにはなるが、老いた者や、女こども連れには歩きやすい道のりのために、多くの者が通り抜ける旅籠町だ。
旅の疲れを癒すための湯屋もある。
この町では髪結い一本にすると誓った銀次は、大抵の時間をこの湯屋で過ごし仕事を取っていた。
大きな町では湯屋に専属の髪結いがおり、洗髪後にそのまま結い上げたりするのが一般的になりつつあった。だが、田舎では大きな湯屋がある町の方が少なく、井戸の水で汗を流すことの方が多かった。
そんな中にうまいこと潜り込めた銀次は、昔ほどの羽振りはないがそれでも鈴と二人食うには困らない稼ぎを得ることが出来ていた。
そして鈴も銀次と同じく、古着屋で針仕事を請け負うようになった。
長旅でほつれた着物や、足袋の繕い。金子に余裕のある者は、古着屋で着物を買い着替えていく。着古された着物は洗い、修繕した後に再び安い値段で店頭に並べられる。それも無理なら財布や巾着、最終的には子供のおむつや雑巾へと代わり、使い倒されていくのだ。
人の出入りが多い分、針仕事も需要は多かった。鈴もまた、以前同様に針仕事は順調に進んでいた。
銀次はちょくちょく与市の店に顔を見せているようだが、鈴はたまに店に行き飯を食べるにとどまった。与市たちもまた、鈴を可愛がってくれているのがわかり、最初の頃の違和感は次第に薄れていったのだった。
次第に打ち解けていく様は、兄妹と親戚に近い感覚になっていったのかもしれない。それは、鈴や銀次だけでなく、与市や権八も同じだった。
「まさか、おめえがここまであの娘の面倒見続けるとは思ってもいなかったぜ」
ある夜、与市と権八とともに三人で酒を酌み交わしていた時だった。
与市は穏やかな笑みを浮かべて話し出した。
「おめえらの事は弥吉から報告が上がってる。てっきり、すぐに捨て去るもんだと思ってたからな。それも妹として育ててるなんざ、思いもしねえだろう」
クククと笑いを堪えて酒を飲み干す。隣で権八も口角を上げているのがわかった。
「そりゃあ、必死でしたよ。俺が勝手に拾った命だ、消すわけには行かねえから。それこそ熱がでりゃあ看病し、夜泣きすりゃあ一緒に寝てやって。
ようやくここまで何とかきたんでさあ」
「ああ、その姿が目に浮かぶようだぜ。向こうさんもおめえに懐いてるようだし、上手いこといってるみたいじゃねえか。それがなによりさ」
「へえ。あいつ、昔のことは覚えてねえんです。連れ帰ったあと酷い熱を出して、元気になった時には忘れちまってたんでさぁ。
鈴って、自分の名前だけを叫ぶだけで。だから丁度よかったんです。
俺のいうことは素直に聞くから、面倒見るのも楽だったですし」
「そうか、たとえ小娘でも養うってなったらてえへんなのは変わりねえ。
おめえが髪結いだけじゃねえで、自分も売っちまうとは思わなんだが。ま、その顔だ。周りの女がほっとかねえだろうしな。ははは」
「いや、それは……」
弥吉からその辺の報告もしっかりと上がっていたらしい。銀次は少しばかりいたたまれない思いになった。
しばらくはこのことを酒の肴にされるだろうと、覚悟を決めて。
「鈴には、黙っててくだせえよ」と、一応念を押してもみた。
「ところで、長松兄さんは元気ですかい?」
「ああ。ご苦労だが、長松は未だに宮浦で仕事してもらってる。おめえらの分け前分はそこから出してるんだ。俺もあいつには頭が上がらねえよ」
年に一、二回。弥吉から渡される金は、長松が変わらずに盗みを働いて手にしていた金だった。あの夜以降、バラバラに散ってしまった仲間たちだ。これで解散と告げてしまえば済むものを、与市は律義にも全員に目を配り、食うに困らぬ分を分け与えてくれていた。
自分が拾い盗賊の世界に沈めてしまったその責を、彼は死ぬまで追い続けると覚悟を決めているのだろう。
「長松は自分から好きでやってることです。親父がやれと言ったわけじゃない。
あいつも、それだけ親父に恩義を感じてるんでさあ」
寡黙な権八がぽつりとつぶやいた。
それを聞いて与市もまた「ありがてえなあ」と、つぶやくのだった。
こんな穏やかに酒を酌み交わせる日が来るとは思っていなかった。
こんな平和な暮らしを与市とともに送れると思っていなかった。
銀次は幸せだった。
鈴と共に与市の元を去ったあの日から早、十二年の年月が過ぎていた。
人も代わり、土地も代わり、時代が変わっていった。
あの夜を、おかめ盗賊の存在を覚えている人間すらもまた、消え失せてしまったと勘違いするほどに、時間は過ぎたのだ。
そうして銀次は忘れかけて行くのだった。
かつての自身の生活を。
あの夜の事を……。
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