かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール

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2章:セントフィリアの冒険

41話.古城の防衛戦⑦:終幕

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「国を作る、ねぇ」

古城の襲撃があってから一日後。セレーネから提案について怪鳥王フェルミナは頭を悩ませていた。

領主カイル・エル・ハートブルクの屋敷で私たち魔獣四王はそれぞれの部屋を用意された。
セレーネもオルもそれぞれの部屋で休んでいるところだ。

年季の入ったロッキングチェア(椅子の脚の下に、カーブをつけた板が二本取り付けられているもの)を揺らしながら、天井をみつめる。

そもそも私たち魔獣四王は同窓会で13年前の昔話や今の話、昔できなかったあれやこれやをするために集まったのだと
フェルミナは考えていた。

それだというのに建国ってなによ。結局今回の集まりもセレーネの謀略にすぎなかったてわけ。

正直その点に関して不満に思ってるのは私だけかもしれない。

マクラは昔からセレーネの言う事に対してはイエス以外の返答を聞いたこともなく、不満があるようにも見えなかった。

オルは、私みたいに細かいところまで考えを巡らせるタイプではない。
それにオルは魔獣四王の中で唯一国を持たないというのも大きいのだろう。

国を作ると聞いて何だかわくわくしているようにさえ見えた。
本人的には海の砂浜で砂でお城を作るような感覚に近いのだろう。
国を運営するということの大変さを全く分かっていない。

私が普段からどれだけ忙しいか。防衛体制の監修、人間との貿易管理、民意の反映etc。

毎日てんてこ舞いだ。
そんな中で無理矢理にでも時間を作り出して参加したのに。

フェルミナが支配するコルニクスランドの国営という観点で考えたら国を作るのはありだ。
魔獣四王同士が協力する事で得られる利益は大きい。

私はただ、そういう目的でセレーネが集まったのだとしたら何か友情が裏切られたような気がしてもやもやしているだけだ。
我ながらめんどくさいなと自分でも思う。

「はぁ、やめよやめよ」

セレーネが国を作りたいと考えているのなら、そこには何か考えがあるのだろう。

あの子の目的のために協力を惜しむ理由はない。今は考えても仕方ないことより、今後やることについて具体的に考えなければ。

まずはマクラと合流しなければ。マクラが負けるというのは考えづらいが、
襲撃があったというのに何の返事もないのはやはり気になる。

リアのことも気になる。

リアはクラーケンにやられた傷が深かったため、部屋をカイルから一室貸してもらい、静養している。

本人はまだやることがあるのだといって出ていこうとしたが、それはカイルから止められた。
そのやることとやらが何かは話してもらえなかったが、負傷者は退避し、動ける冒険者だけでその任にあたっているようだ。

本人も頭では私たち魔獣四王と同盟を組むということに納得したようだったが、
気持ちではそうではないように見えた。

今までの流れを見たら私はリアをだましたともいえるし、そのことについても一応謝らなければ。

「はぁ、休暇で来たのに意外とやることが多いのね」

その時、

ゾワッとする感覚が全身をつつむ。

余りにも禍々しい魔力の波動
この魔力は…

急いで外に出て、魔力の発生源と思われる場所へ飛ぶ。

場所は街の広場だった。魔獣四王のせいで人々が避難しているエリア。

マクラかしら。いや、でもあの子なら糸で連絡してこない理由が分からない。一体何者?

横を見るとオルもセレーネもついてきていた。
それと…

後ろからリアも追ってきている。さすがに人間の足じゃ私たちには追い付けていないが。
重症なんだから寝てればいいのに。

まぁそりゃ無理かしら。あの子は街の危機とみたら来るわよねぇ。けど魔力は・・・クラーケンの比じゃない。
万全でない彼女にとっては危険でしかない。もし戦いになったら・・・

広場に降り立つ。

そこにいたのは数人の集団だった。
この強大な魔力を発しているのは真ん中の

「………」

「やっ!来てくれてよかったわぁ」
にこりと軽快に笑うマクラだった。

それと後ろにいるのはセレーネの部下のマナフとマクラの部下の紫苑。それと

「フェルミナ様ぁ!会いたかったっす~!!」
私の胸の中飛び込んできたのは私の可愛い右腕、バーナードだった。
よく見ると体中に包帯を巻いているし、あちらこちらにけがをした痕がある。
…おそらく襲撃によって負った傷だろう。バーナードがここまでやられるなんて、敵は相当強かったと見える。

「あらあら、どうしたの。甘えちゃって」

バーナードを優しく抱きしめて頭を撫でてあげる。そして、優しく離した。
もう少し頑張ってくれた部下をねぎらってあげたかったが、それよりも私はやることがある。

「マ・ク・ラ~」
「あ、フェルミナちゃん?どうしたん?そんな怖い顔して」

ポカリと上から拳をお見舞いしてやった。
「あんたねぇ。紛らわしいのよ!あんな魔力垂れ流して!ご近所迷惑も考えなさい」
そのままマクラの首を腕で絞めてやる。

「ちょっ!待って待って。ギブやギブ。悪かったて。しょうがなかったんや。連絡用の糸は切られてもうたんや」
「「切られったって、あんたの糸が!?一体どんな相手だったわけ?」

腕を離してあげる。もっとも、こんな方法で私たちを呼び出したのは事実なわけで結局マクラが悪いことに
変わりはないけど。

「はぁ、はぁ、もう暴力反対や。まったく。敵はヴァンパイアの真祖、カーミラ・ヴァレンタイン…
、自由の騎士団タナ・アウグスモンドや」

よく見ると、マクラでさえ腕に包帯を巻き、怪我を負っているように見える。
ヴァンパイアの真祖、カーミラ・ヴァレンタインのことは聞いたことがある。

私たちが魔獣四王と呼ばれる前、魔獣のトップとされたS級魔獣。

マクラがのし上がるために汚い罠にかけて滅ぼしたと聞いている。生きていたのだとしたらそりゃぁさぞかしマクラのことを恨んでいるでしょうね。

けどそれを従えたとは?

「一体何があったの?」
「そのことについて話さんとね。今後のことにも関わるやろし。同じ自由の騎士団の底のお嬢さんにもね」

マクラが後から来たセレーネ、オル、そして、リアに言った。










_______________________

読んでくださりありがとうございます。

魔力とかMPといってわかりにくいと思いますが、
どちらも同じものです。

魔力は魔獣、もしくは人間が持ってる魔法を使うためのエネルギーの名前。
MPはその魔力の量を示す単位です。









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リアのスピンオフ「ヴァイロン家の少女が探す夢の続き~名家から追放された天才女騎士が最強の冒険者を目指すまでの物語~」も投稿してるのでよかったらそちらも是非。

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