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73 魔の手
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アリスは、地理の担当教師アンダーソン先生に頼まれて、資料室へ
授業で使用した教材を運んでいた。
教材を資料室の棚に置いて、教室へ戻る途中に中庭の渡り廊下を通りかかった。
そういば、この中庭でウナ〇イヌを見かけたのよね。
花壇のほうへ歩いて行く。
「う~~ん。いないわね~。」
ウナギ〇ヌって、もしかしたら泳げるのかしら?
池の方へと歩いて行く。
「ウナ〇イヌ~。出ておいで~。」
しゃがみ込んで、池を覗き込みながら呼びかける。
ドンッ!!!
突然、背中を押された。
あっ!
瞬間に、すでに池に落ちていた。
この池は、見た目より深かった。
スカートが纏わりついて、上手く身動きが取れない。
私、泳げないのに・・・・。
遠くで、4限目の授業開始の鐘が鳴るのが聴こえた。
===========================
「おや、アリス・ハート嬢は、席に着いていないようだが。」
国語の担当教師のバート先生が尋ねる。
「バート先生。ハート様はアンダーソン先生に頼まれて資料室へ行っています。」
レナちゃんが、バート先生へ答えた。
「そうか、では授業を始めよう。」
[[ キャーーーーーーーー!!! ]]
学園内に大きな悲鳴が上がった。
教室が騒めく。
「中庭の池に女の子が浮いているぞ!」
「急げ!」
どこかの教室で、慌てる声が聞こえる。
授業どころではない騒ぎになった。
ジークは嫌な予感が過ぎった。
立ち上がり、教室を飛び出した。
急いで、中庭へと走り出す。
「ジークハルト様!」
ウイリアム君も後を追いかける。
中庭に着くと、池の側にアリスが横たわっていた。
ジークはアリスを見つけ、フラフラと近づく。
ウイリアム君は、立ちすくんでいる。
「引き上げた時には、もう息をしていなかった。
どうして、こんなことに・・・・」
学園の職員が、ジークに話す。
「アリス。起きろよ。」
ジークが、震える声で話しかける。
「ほら、目を開けろ。」
アリスの頬を撫でる。とても冷たい頬だ。
「アリス、お昼の時間だよ。お弁当を食べよう。」
頭を撫で、頬を撫でる。
周囲から、すすり泣く声が聞こえる。
「おい、アリス・・・。冗談はよせよ。」
嘘だろう。
これは、絶対に嘘だ。
信じない。
アリスがいなくなるわけがない。
これからも、ずっと一緒にいるんだろう。
・・・・・・・・・。
「「「 !!! 」」」
ジークは、アリスのリボンタイをほどき、首元のボタンを外す。
ジークの突然の行動に周囲は驚く。
「スペード君、やめるんだ。もう、亡くなっている。教会にもハート家にも
遣いを出している。そっとしてやってくれないかい?」
職員がジークを宥める。
「まだ、やれることはある。」
ジークは、アリスの肋骨の下半分に両手を重ねて圧迫を始めた。
テンポよく圧迫を続ける。
「アリス、起きろ。」
アリスに呼びかける。
手を休めず、続ける。
「アリス、目を開けろ。」
アリスに声を掛けながら、心肺蘇生を続ける。
「アリス、アリス・・・・。」
ジークの額に大粒の汗が流れだす。
人工呼吸を組み合わせる。
アリスの気道を確保して、アリスの鼻をつまむ。
ジークは大きく口を開き、アリスの口を覆う。
その瞬間、周囲から声なき悲鳴が上がった。
アリスの胸が上がるか注意しながら、息を吹き込む。
胸が上がらない・・・・。
もう一度、気道を確保する。
アリスの鼻をつまみ、口を覆って息を吹き込む。
・・・・・・・!
胸が上がった。
もう一度、繰り返す。
「アリス、目を開けろ!」
・・・・・・ ゴホッ。
アリスの口から水が零れた。
ジークの瞳から涙が溢れた。
授業で使用した教材を運んでいた。
教材を資料室の棚に置いて、教室へ戻る途中に中庭の渡り廊下を通りかかった。
そういば、この中庭でウナ〇イヌを見かけたのよね。
花壇のほうへ歩いて行く。
「う~~ん。いないわね~。」
ウナギ〇ヌって、もしかしたら泳げるのかしら?
池の方へと歩いて行く。
「ウナ〇イヌ~。出ておいで~。」
しゃがみ込んで、池を覗き込みながら呼びかける。
ドンッ!!!
突然、背中を押された。
あっ!
瞬間に、すでに池に落ちていた。
この池は、見た目より深かった。
スカートが纏わりついて、上手く身動きが取れない。
私、泳げないのに・・・・。
遠くで、4限目の授業開始の鐘が鳴るのが聴こえた。
===========================
「おや、アリス・ハート嬢は、席に着いていないようだが。」
国語の担当教師のバート先生が尋ねる。
「バート先生。ハート様はアンダーソン先生に頼まれて資料室へ行っています。」
レナちゃんが、バート先生へ答えた。
「そうか、では授業を始めよう。」
[[ キャーーーーーーーー!!! ]]
学園内に大きな悲鳴が上がった。
教室が騒めく。
「中庭の池に女の子が浮いているぞ!」
「急げ!」
どこかの教室で、慌てる声が聞こえる。
授業どころではない騒ぎになった。
ジークは嫌な予感が過ぎった。
立ち上がり、教室を飛び出した。
急いで、中庭へと走り出す。
「ジークハルト様!」
ウイリアム君も後を追いかける。
中庭に着くと、池の側にアリスが横たわっていた。
ジークはアリスを見つけ、フラフラと近づく。
ウイリアム君は、立ちすくんでいる。
「引き上げた時には、もう息をしていなかった。
どうして、こんなことに・・・・」
学園の職員が、ジークに話す。
「アリス。起きろよ。」
ジークが、震える声で話しかける。
「ほら、目を開けろ。」
アリスの頬を撫でる。とても冷たい頬だ。
「アリス、お昼の時間だよ。お弁当を食べよう。」
頭を撫で、頬を撫でる。
周囲から、すすり泣く声が聞こえる。
「おい、アリス・・・。冗談はよせよ。」
嘘だろう。
これは、絶対に嘘だ。
信じない。
アリスがいなくなるわけがない。
これからも、ずっと一緒にいるんだろう。
・・・・・・・・・。
「「「 !!! 」」」
ジークは、アリスのリボンタイをほどき、首元のボタンを外す。
ジークの突然の行動に周囲は驚く。
「スペード君、やめるんだ。もう、亡くなっている。教会にもハート家にも
遣いを出している。そっとしてやってくれないかい?」
職員がジークを宥める。
「まだ、やれることはある。」
ジークは、アリスの肋骨の下半分に両手を重ねて圧迫を始めた。
テンポよく圧迫を続ける。
「アリス、起きろ。」
アリスに呼びかける。
手を休めず、続ける。
「アリス、目を開けろ。」
アリスに声を掛けながら、心肺蘇生を続ける。
「アリス、アリス・・・・。」
ジークの額に大粒の汗が流れだす。
人工呼吸を組み合わせる。
アリスの気道を確保して、アリスの鼻をつまむ。
ジークは大きく口を開き、アリスの口を覆う。
その瞬間、周囲から声なき悲鳴が上がった。
アリスの胸が上がるか注意しながら、息を吹き込む。
胸が上がらない・・・・。
もう一度、気道を確保する。
アリスの鼻をつまみ、口を覆って息を吹き込む。
・・・・・・・!
胸が上がった。
もう一度、繰り返す。
「アリス、目を開けろ!」
・・・・・・ ゴホッ。
アリスの口から水が零れた。
ジークの瞳から涙が溢れた。
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