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婚約
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婚約
今日は、以前から約束していたドラガル様のご両親に挨拶に行く日だった。王宮の正面入り口でドラガル様と待ち合わせをし、今回は馬車でドラガル様の屋敷へ向かうことになっていた。待ち合わせ時間の三十分前には私は到着しドラガル様が来るのを待っていた。今日は簡素ではあるが私の魅力が出るよう好きなワインレッドのドレスを身につけ勿論ドラガル様にプレゼントしてもらったネックレスも身につけている。まぁ、ずっと身につけているのだが・・そうしてややソワソワしながら待っていると見知らぬ男性に声を掛けられた。
「お嬢さん、今日は一人ですか。よかったら街でも一緒に散歩しませんか」
私はそれどころではなかったため
「申し訳ありませんが、人と待ち合わせをしているので・・」
と軽い感じで断った。これで相手が諦めてくれればよかったのだが・・男性はまだ
「そんなこと言って、相手まだ来ないみたいだけど」
としつこくその場に居続けた。私は面倒くさくなり無視することにした。すると男性は私の横に立ち何やら話を始めた。内容はどうも剣の訓練のようだった。
「それで・・先輩が凄く強くていつも俺は負けてばかりその先輩はいつも無口で女なんか興味はないって顔してるのに最近、婚約したらしいんだ。その相手がさぁ公爵令嬢で・・そうそうその先輩って男爵家なんだけど・・なんとその令嬢をものにしたんだようなぁ。俺もそんな風になりたいよ。強くて身分なんて関係なく好きな女性をものにするなんて普通の男ではできないでしょ。ところでお嬢さんは公爵令嬢ってことはないよねぇ」
と笑いながら私の顔を見てきた。私は何だか私たちのことを言っているような気がしたため
「あなたはもしかして護衛騎士なのですか」
と前を向いたまま問い掛けた。
「凄いねぇ。どうしてわかったの。そう護衛騎士。そうそうさっき言っていた先輩って向こうの方に見えるあの男の人みたいな人・・」
男性がそう言いながら私の視線の先にも見える男性を指さした時、その男性がこちらに向かって手を振ってきた。男性は、かなり驚いた表情で
「って、もしかしてドラガルさんですか・・待ち合わせの人って・・」
と尋ねてきたので
「はい、そうです」
私は、男性の方を見ると笑顔でそう返答した。
「まずい、声を掛けたことがばれるとどんな稽古が待っているか・・」
と男性は顔を強張らせていた。
「エリーゼ、待ったか」
ドラガル様はそう言うと横の男性を見て
「おい、どうしてお前がここにいるんだ」
と男性をやや睨みながら問い掛けた。
「いえ、別に・・」
男性は挙動不審になりながら返答していたがうまく言葉が出ずかなり焦っているようだった。そこで
「ドラガル様の後輩の方みたいですね。さっきそこで私が躓いたのを助けてくれたのです。体格がいいからもしかしてドラガル様と同じ騎士様かと思い声を掛けたらそうだったので、しばらくお話を聞かせてもらっていたんです」
私はそう言うと男性に笑顔を見せた。
「はい、そうであります。紹介が遅れました。私は皇太子護衛騎士をしているダニエルといいます。いつもドラガルさんにはお世話になっています」
と改めて挨拶をされた。
「はじめまして、ドラガル様とこの度婚約することになりましたエリーゼ・バルシャールです。よろしくお願いします」
と私も挨拶をした。すると
「こんなお綺麗な方と婚約できたドラガル様が本当に羨ましいです」
と凄い勢いで言ってきた。その様子を見ていたドラガル様は、鬱陶しいとも言いたげにまだ睨んでいたが
「ダニエル、今日は非番なのか」
「はい、そうであります。街で買い物をしようかと出掛ける所でした」
「そうか」
ドラガル様はそう言うと私の方を向き
「エリーゼ、そろそろ行こうか。向こうに馬車を待たせているから」
と私に声を掛け私に腕に掴まるよう促してきた。私はドラガル様の腕の飛びつくと満面の笑みをドラガル様に見せた。するとドラガル様も嬉しそうに微笑まれた。
「えっ」
後ろで驚きの声が聞こえたので振り返り
「ダニエル様、それでは失礼いたします」
と頭を下げると再びドラガル様を見ながら歩き出した。
「嘘だろうー」
と叫ぶ声がしたが無視して歩き続けた。
馬車に到着すると二人で乗り込み座った。どうしてかドラガル様は私の横に座った。私が不思議そうにドラガル様の顔を見上げると口づけをされた。そうして私のことを抱き締めると
「できれば・・あまり他の男と話をしてほしくはないのだが・・」
と私の首元で呟いた。私はドラガル様がさっきの男性に嫉妬していると知り嬉しくなり
「ドラガル様、もしかして嫉妬してます?」
とドラガル様に尋ねた。すると
「そうだ」
素直に認めてくれたことが嬉しくて私はドラガル様に自分から口づけた。そうして
「私が好きなのはドラガル様です。ドラガル様が言われるのでしたらこれからはドラガル様以外の男性とは話しません」
と私が言うと
「いや、いい。それぐらい許容できなくては男としてどうかと思う・・だから今のままでいい」
ドラガル様はそう言うと馬車の窓から外を眺めた。私はふと寂しくなりドラガル様の肩に頭を置いて手を握った。そうして一緒に窓の外を眺めた。
ドラガル様の屋敷に到着すると玄関でドラガル様一家が出迎えてくれた。
「エリーゼさんいらっしゃい。さあ、中へどうぞ」
ドラガル様のお母様がそう声を掛けてくれた。
「はじめまして、エリーゼ・バルシャールです。よろしくお願い致します」
私は挨拶した後、促されるまま中へと入って行った。応接室に到着するとテーブルへと促された。私はドラガル様の隣に腰を掛けた。するとドラガル様の前にお父様、私の前にお母様が座った。
「エリーゼさんは、このドラガルと本当に結婚してくれるのだろうか」
とお父様がやや顔を引きつらせながら暗い表情で私に尋ねてきた。
「はい、結婚したいです」
と私がはっきり返答すると、さっきまでの暗い表情が嘘だったかのように満面の笑みで
「そうか、ありがとう」
と言うと私の両手を掴んできた。
「貴方ばっかりずるいですわ。私も仲間に加えてください」
お母様もそう言うと一緒になって私の手を掴んできた。するとドラガル様が
「おい、エリーゼが困っているだろう。いい加減離したらどうだ」
と言った。するとご両親は慌てて私の手を離すと座り直し
「では改めて婚約の書類をバルシャール家に送らせていただく。本当にいいんだね」
「しつこいぞ」
ドラガル様がそういう横で私は再び
「はい、よろしくお願い致します」
とはっきりと言った。
「じゃあ、早速、書類を準備してくる」
お父様はそう言うと部屋から出ていってしまった。
「あらあら、主人は気が動転しているみたいで、ごめんなさいね」
お母様はそう言って微笑まれた。流石ドラガル様のお母様なので笑顔を向けられると同性であってもクラっとくる色気である。
「じゃあ、話も終わったみたいだし俺たちは部屋に行くがいいか」
と尋ねていた。
「そうねぇ、ドラガルも私が居ると邪魔でしょうし、ドラガルの私室へ行っていいわよ。エリーゼさん今日は昼食をご一緒していただけるのでしょう」
そう問われたため
「はい、よろしくお願い致します」
と返答した。するとドラガル様に手を掴まれ引っ張られるように部屋を後にすることになった。後ろからお母様の笑い声が聞こえていた。
ドラガル様の私室は二階の角にあり中に入ると壁紙が紺で家具もややダークなものが置いてありシックな感じでまとめられていた。私はドラガル様に促されるままソファーに座った。するとドラガル様がお菓子とジュースを持って私の横に座った。私はドラガル様の部屋が気になりちらちら部屋の中を見ていた。
「エリーゼ、そんなに見られるとなんだか恥ずかしいのだが・・」
とドラガル様が言ってきた。
「ドラガル様も私の部屋を見たでしょう。一緒です」
「あぁ、あの時は暗かったからほとんど見えなかった」
「そうなんですか・・じゃあ、今度明るい時に招待するので今日は私が部屋の中を見るのを許してください」
「仕方ないなぁ。特に何もないが歩いて見て回ってもいいぞ」
私はドラガル様にそう言われたので遠慮なく立ち上がると部屋の中を見て回った。
本棚には、難しそうな本がたくさん並んでいた。私がじっと見ていると横に立ったドラガル様が
「今は騎士だが・・いずれは村や町を治めることができるよう行政や地方についての勉強も一応しているんだ」
と言った。凄いなぁと思いながらさらに歩いて見て回っている暖炉の上に飾ってある剣があった。
「これは・・」
「あぁ、これは祖父にプレゼントしてもらったものだ」
「へぇー、私これに似た短剣をおじいちゃんに最近貰ったの」
と言うと笑っているおじいちゃんの顔が思い浮かんだ。
「なにか企みみたいなものを感じるのは私だけ・・」
と私が呟くと後ろで溜息つくドラガル様がいた。クローゼットの前に来て私がそこで止まると
「もしかして・・クローゼットの中も気になるのか」
と尋ねてきた。私は振り向くと笑顔で
「ドラガル様の事をもっと知りたいです」
と言った。するとドラガル様は仕方ないといった表情でクローゼットを開けてくれた。中にはジャケットやコート・ズボンなどが掛けてあるスペースと多分シャツなどをしまっておく棚があった。クローゼットの中も紺で統一されていて棚はやはりダーク系で統一してあった。そうして棚の上には私がプレゼントした手袋がトレイに乗せて置いてあった。私はそれを見て嬉しくなった。一通り部屋を見終わると再びソファーに座った。
「もう、いいのか」
「はい、満足しました」
私が笑顔で言うと
「じゃあ、昼までに時間があるからお菓子でも食べるか」
と言って私の前に前に一緒に食べたガラス容器に入ったデザートを置いた。私がそれを見て目を輝かせていると
「この間凄く幸せそうに食べていたから、我が家のコックに頼んで作ってもらった。ジュースをフルーツにしたからデザートはチョコレートが主になっているが、どうだろう」
とドラガル様が尋ねてきた。
「美味しそうです。もう食べていいですか」
とドラガル様の質問には返答せず食べてもいいかの確認をした。するとドラガル様は笑って
「どうぞ」
と言った。私はすぐにひとくち口に運んだ。
「美味しいです。この間はフルーツだったけど・・今日は大好きなチョコレートなのでもっと美味しいです。これってチョコレートケーキも一部入っているんですねぇ。凄く美味しいです」
と満面の笑みで感想を言った。すると急にドラガル様が顔を近づけると私の口元を舐めた。
「口元にチョコが付いていた」
私は顔に熱が溜まるのを感じながら食べ続けた。そうしてふとドラガル様が食べていないことに気が付いた。
「あれっ、ドラガル様の分はないんですか」
「あぁ、俺はいい」
「そうなんですか。美味しいですよ。ちょっと食べてみます」
と私は声を掛けた。するとドラガル様は
「じゃあ、また食べさせてもらおうかなぁ」
と言ってきた。私はドラガル様は私がこう言うのを待っていた?でも、一人で食べるにはやはり量が多かったのでドラガル様にも一緒に食べてもらうことにした。
「はい、あーん」
私が言うとドラガル様は嬉しそうに口を開けていた。その姿はやはり可愛くこれが母性本能を擽られるってことなのだと実感した。私はやはり照れながらドラガル様の口にスプーンを運んだ。そうして時間をかけて二人で一個のデザートを食べ終わった。するとドラガル様が立ち上がり一冊の本を持ってきた。その本は世界の有名な剣が載っている図鑑だった。私はそんな図鑑を見たことがなかったので食い入るように見ていた。すると横で図鑑を一緒に見ていたドラガル様が私の頬に口づけてきたのだ。私が驚いてドラガル様の方を見ると
「図鑑は見なくてもいいのか」
と言ったので見たかった私は図鑑に視線を戻した。すると今度は私の首元に口づけてきたのだ。私は無視することにした。そうして何も言わずに口づけを受けていると今度は私の右手を掴んできた。私は左手で図鑑のページをめくることができたので何も言わずまだ見続けていた。するとドラガル様は私の手を離すと右手を私の太ももに乗せてきたのだ。私は手を乗せられビクリと反応したが何も言わずそのまま図鑑に視線を落とし続けた。しかし・・ドラガル様が手を置いているところの熱を異常に意識してしまい、実際は本を見ている余裕は全くない状況だった。そこでドラガル様が私の耳元で
「エリーゼ」
と私の名前を呼んだのだ。私はもう限界となりドラガル様の方を見た。するとドラガル様から何とも言えない色気を感じた。そうして目が合うと口づけをされそのままソファーに押し倒されたのだ。しかし、私はどうしてか抵抗できずドラガル様の口づけをそのままの体勢で受け続けていた。するとドラガル様が
「エリーゼ、いつも言っているだろう。警戒しないと、と」
と言ってきたのだ。私は
「ドラガル様を警戒するだなんてできません」
と言った。するとドラガル様は
「そうそう、エリーゼ、既成事実について勉強はしたのか」
とまた尋ねてきたのだ。私はソフィアにほんの少し教えてもらったことを思い出し顔に熱が溜まるのを感じた。その様子を見たドラガル様は
「ははーん、もう知っているようだな」
と言ってきたのだ。私はさらに赤くなり
「まだ、知らないです」
と言って横を向いた。するとドラガル様は私をうつ伏せにすると背中のドレスのボタンを外しだしたのだ。私が焦っているとボタンを四つほど外した時点でボタンを外すのを止めそこから見える背中に口づけてきたのだ。その口づけはいつもと違いドラガル様の顔が見えないせいなのか、いつも以上にドラガル様の唇の感触が鮮明で口づけされた箇所に熱を感じた
「あぁー、ドラガル様止めてください。恥ずかしいです」
と私は言ったがドラガル様は止めてくれずその後も何度も場所を変えて口づけを続けた。そうして私が息絶え絶えに
「ドラガル様、苦しいです」
と言うと
「じゃあ、もっとボタンを外そうか」
と耳元で言ってきたのだ。私はこれ以上は耐えられないと
「ドラガル様、今日はこれぐらいでおしまいにしていただけないでしょうか」
と言うと
「仕方ないなぁ」
と言ってドレスのボタンを留め始めた。私が安堵していると
「今日はこれくらいでおしまいにしたから今度はこれ以上のことをさせてくれるって期待していいのかなぁ」
と言ってきたのだ。私は「えっーこれ以上は耐えられない」と思ったが・・実際はドラガル様に触られることは嫌ではなくどちらかというと恥ずかしいけど気持ちいいので
「はい」
と小さな声で返答した。それを聞いてドラガル様の手が一瞬止まったようだったがすぐにボタンを留め終わると私を座らせ、また一緒に図鑑に目を通しだした。私ははじめ図鑑どころではなかったがドラガル様が今度はどの剣がいいや持った感じがどうだなど色々説明をしてくれたので途中から話に夢中になりさっきあった出来事をすっかり忘れてドラガル様と楽しい時間を過ごした。すると時間はあっという間に過ぎ昼食の時間になった。昼食はドラガル様のご両親とお兄様夫婦とご一緒することになった。私はダイニングに入るとお兄様夫婦に挨拶をして席についた。
「母上、よかったですねぇ。こんな綺麗なお嬢さんがドラガルのお嫁さんになってくれて」
「そうなのよ、女性に興味がないのかと思って心配して色々策を練っていたのに実はもう決まった相手がいましたですもの、もう驚いたのなんのって・・でも本当に良かったわ」
と私たちに笑顔を向けられた。
「ところで、どこでこんな綺麗な女性を引っかけたんだ」
「厩舎」
「はぁ、厩舎だと」
お兄様はなにを言っているんだと言った表情で再度問い掛けてきた。するとドラガル様はやや面倒くさそうに
「エリーゼは、仕事が終わってから厩舎で馬の世話をしているんだ。そこで出会った」
「そうなのか」
「あぁ、エリーゼはおとなしそうに見えて馬にも乗れるし剣も扱えるんだ」
とドラガル様は言った。私は普通の令嬢がしないことをしているので言われたことが恥ずかしかったがそれを聞いたご両親とお兄様が
「エリーゼさんは公爵令嬢でありながら乗馬も剣術までもできるのか。なんて凄いんだ普通の令嬢はそんなこと出来ないぞ。普通はお茶会でペチャクチャ話すくらいだろう。そうして話す内容も悪口って決まっておる。ドラガルよかったなぁ。エリーゼさんならお前と一緒に遠乗りもできるし剣の稽古をしていても嫌がられることはないだろう」
とお父様は笑顔で言ってきたのだ。そうしてその横でお母様とお兄様もうんうんと頷いていた。私は素の私を受け入れてくれるドラガル様の家族を凄く身近に感じ嬉しくてなってドラガル様の方を見た。するとドラガル様は嬉しそうに微笑んでくれた。それから色々な話をしながら昼食をとった。昼食が終わると私たちはドラガル様の屋敷を後にした。また馬車に乗ると王宮へと向かった。帰りの馬車でもドラガル様は私の横に腰かけると窓から外を眺めていた。私も外を眺めていたがドラガル様の家族への挨拶が終わった安堵感と昼食後の満腹感からどうも眠ってしまっていたようだった。気付くと私はドラガル様にもたれかかる形で眠ってしまっていた。私は眠りから覚めると
「ドラガル様、すみません」
「あぁ、よく眠れたか。今日は俺の家族に会って緊張しただろう。着いたら起こすからもう少し眠っていたらどうだ」
と声を掛けてくれた。私はその言葉に甘えもう少し肩を借りることにした。そうして肩にもたれながら
「今日は緊張しました。でも問題なく婚約もできそうですし、ドラガル様のご家族の方も私の事を聞いても嫌がっておられなかったので安心しました」
「俺の婚約者に文句は俺が言わせない。まぁ俺の家族は俺の家族だからエリーゼの事は気に入ると思っていたよ。なんせ祖父に仕込まれているからなぁ」
と笑った。私も釣られて笑いながら再び眠りについた。
後日、スカイガード家から正式な婚約の申し入れがありバルシャール家が了承し婚約成立となった。
今日は、以前から約束していたドラガル様のご両親に挨拶に行く日だった。王宮の正面入り口でドラガル様と待ち合わせをし、今回は馬車でドラガル様の屋敷へ向かうことになっていた。待ち合わせ時間の三十分前には私は到着しドラガル様が来るのを待っていた。今日は簡素ではあるが私の魅力が出るよう好きなワインレッドのドレスを身につけ勿論ドラガル様にプレゼントしてもらったネックレスも身につけている。まぁ、ずっと身につけているのだが・・そうしてややソワソワしながら待っていると見知らぬ男性に声を掛けられた。
「お嬢さん、今日は一人ですか。よかったら街でも一緒に散歩しませんか」
私はそれどころではなかったため
「申し訳ありませんが、人と待ち合わせをしているので・・」
と軽い感じで断った。これで相手が諦めてくれればよかったのだが・・男性はまだ
「そんなこと言って、相手まだ来ないみたいだけど」
としつこくその場に居続けた。私は面倒くさくなり無視することにした。すると男性は私の横に立ち何やら話を始めた。内容はどうも剣の訓練のようだった。
「それで・・先輩が凄く強くていつも俺は負けてばかりその先輩はいつも無口で女なんか興味はないって顔してるのに最近、婚約したらしいんだ。その相手がさぁ公爵令嬢で・・そうそうその先輩って男爵家なんだけど・・なんとその令嬢をものにしたんだようなぁ。俺もそんな風になりたいよ。強くて身分なんて関係なく好きな女性をものにするなんて普通の男ではできないでしょ。ところでお嬢さんは公爵令嬢ってことはないよねぇ」
と笑いながら私の顔を見てきた。私は何だか私たちのことを言っているような気がしたため
「あなたはもしかして護衛騎士なのですか」
と前を向いたまま問い掛けた。
「凄いねぇ。どうしてわかったの。そう護衛騎士。そうそうさっき言っていた先輩って向こうの方に見えるあの男の人みたいな人・・」
男性がそう言いながら私の視線の先にも見える男性を指さした時、その男性がこちらに向かって手を振ってきた。男性は、かなり驚いた表情で
「って、もしかしてドラガルさんですか・・待ち合わせの人って・・」
と尋ねてきたので
「はい、そうです」
私は、男性の方を見ると笑顔でそう返答した。
「まずい、声を掛けたことがばれるとどんな稽古が待っているか・・」
と男性は顔を強張らせていた。
「エリーゼ、待ったか」
ドラガル様はそう言うと横の男性を見て
「おい、どうしてお前がここにいるんだ」
と男性をやや睨みながら問い掛けた。
「いえ、別に・・」
男性は挙動不審になりながら返答していたがうまく言葉が出ずかなり焦っているようだった。そこで
「ドラガル様の後輩の方みたいですね。さっきそこで私が躓いたのを助けてくれたのです。体格がいいからもしかしてドラガル様と同じ騎士様かと思い声を掛けたらそうだったので、しばらくお話を聞かせてもらっていたんです」
私はそう言うと男性に笑顔を見せた。
「はい、そうであります。紹介が遅れました。私は皇太子護衛騎士をしているダニエルといいます。いつもドラガルさんにはお世話になっています」
と改めて挨拶をされた。
「はじめまして、ドラガル様とこの度婚約することになりましたエリーゼ・バルシャールです。よろしくお願いします」
と私も挨拶をした。すると
「こんなお綺麗な方と婚約できたドラガル様が本当に羨ましいです」
と凄い勢いで言ってきた。その様子を見ていたドラガル様は、鬱陶しいとも言いたげにまだ睨んでいたが
「ダニエル、今日は非番なのか」
「はい、そうであります。街で買い物をしようかと出掛ける所でした」
「そうか」
ドラガル様はそう言うと私の方を向き
「エリーゼ、そろそろ行こうか。向こうに馬車を待たせているから」
と私に声を掛け私に腕に掴まるよう促してきた。私はドラガル様の腕の飛びつくと満面の笑みをドラガル様に見せた。するとドラガル様も嬉しそうに微笑まれた。
「えっ」
後ろで驚きの声が聞こえたので振り返り
「ダニエル様、それでは失礼いたします」
と頭を下げると再びドラガル様を見ながら歩き出した。
「嘘だろうー」
と叫ぶ声がしたが無視して歩き続けた。
馬車に到着すると二人で乗り込み座った。どうしてかドラガル様は私の横に座った。私が不思議そうにドラガル様の顔を見上げると口づけをされた。そうして私のことを抱き締めると
「できれば・・あまり他の男と話をしてほしくはないのだが・・」
と私の首元で呟いた。私はドラガル様がさっきの男性に嫉妬していると知り嬉しくなり
「ドラガル様、もしかして嫉妬してます?」
とドラガル様に尋ねた。すると
「そうだ」
素直に認めてくれたことが嬉しくて私はドラガル様に自分から口づけた。そうして
「私が好きなのはドラガル様です。ドラガル様が言われるのでしたらこれからはドラガル様以外の男性とは話しません」
と私が言うと
「いや、いい。それぐらい許容できなくては男としてどうかと思う・・だから今のままでいい」
ドラガル様はそう言うと馬車の窓から外を眺めた。私はふと寂しくなりドラガル様の肩に頭を置いて手を握った。そうして一緒に窓の外を眺めた。
ドラガル様の屋敷に到着すると玄関でドラガル様一家が出迎えてくれた。
「エリーゼさんいらっしゃい。さあ、中へどうぞ」
ドラガル様のお母様がそう声を掛けてくれた。
「はじめまして、エリーゼ・バルシャールです。よろしくお願い致します」
私は挨拶した後、促されるまま中へと入って行った。応接室に到着するとテーブルへと促された。私はドラガル様の隣に腰を掛けた。するとドラガル様の前にお父様、私の前にお母様が座った。
「エリーゼさんは、このドラガルと本当に結婚してくれるのだろうか」
とお父様がやや顔を引きつらせながら暗い表情で私に尋ねてきた。
「はい、結婚したいです」
と私がはっきり返答すると、さっきまでの暗い表情が嘘だったかのように満面の笑みで
「そうか、ありがとう」
と言うと私の両手を掴んできた。
「貴方ばっかりずるいですわ。私も仲間に加えてください」
お母様もそう言うと一緒になって私の手を掴んできた。するとドラガル様が
「おい、エリーゼが困っているだろう。いい加減離したらどうだ」
と言った。するとご両親は慌てて私の手を離すと座り直し
「では改めて婚約の書類をバルシャール家に送らせていただく。本当にいいんだね」
「しつこいぞ」
ドラガル様がそういう横で私は再び
「はい、よろしくお願い致します」
とはっきりと言った。
「じゃあ、早速、書類を準備してくる」
お父様はそう言うと部屋から出ていってしまった。
「あらあら、主人は気が動転しているみたいで、ごめんなさいね」
お母様はそう言って微笑まれた。流石ドラガル様のお母様なので笑顔を向けられると同性であってもクラっとくる色気である。
「じゃあ、話も終わったみたいだし俺たちは部屋に行くがいいか」
と尋ねていた。
「そうねぇ、ドラガルも私が居ると邪魔でしょうし、ドラガルの私室へ行っていいわよ。エリーゼさん今日は昼食をご一緒していただけるのでしょう」
そう問われたため
「はい、よろしくお願い致します」
と返答した。するとドラガル様に手を掴まれ引っ張られるように部屋を後にすることになった。後ろからお母様の笑い声が聞こえていた。
ドラガル様の私室は二階の角にあり中に入ると壁紙が紺で家具もややダークなものが置いてありシックな感じでまとめられていた。私はドラガル様に促されるままソファーに座った。するとドラガル様がお菓子とジュースを持って私の横に座った。私はドラガル様の部屋が気になりちらちら部屋の中を見ていた。
「エリーゼ、そんなに見られるとなんだか恥ずかしいのだが・・」
とドラガル様が言ってきた。
「ドラガル様も私の部屋を見たでしょう。一緒です」
「あぁ、あの時は暗かったからほとんど見えなかった」
「そうなんですか・・じゃあ、今度明るい時に招待するので今日は私が部屋の中を見るのを許してください」
「仕方ないなぁ。特に何もないが歩いて見て回ってもいいぞ」
私はドラガル様にそう言われたので遠慮なく立ち上がると部屋の中を見て回った。
本棚には、難しそうな本がたくさん並んでいた。私がじっと見ていると横に立ったドラガル様が
「今は騎士だが・・いずれは村や町を治めることができるよう行政や地方についての勉強も一応しているんだ」
と言った。凄いなぁと思いながらさらに歩いて見て回っている暖炉の上に飾ってある剣があった。
「これは・・」
「あぁ、これは祖父にプレゼントしてもらったものだ」
「へぇー、私これに似た短剣をおじいちゃんに最近貰ったの」
と言うと笑っているおじいちゃんの顔が思い浮かんだ。
「なにか企みみたいなものを感じるのは私だけ・・」
と私が呟くと後ろで溜息つくドラガル様がいた。クローゼットの前に来て私がそこで止まると
「もしかして・・クローゼットの中も気になるのか」
と尋ねてきた。私は振り向くと笑顔で
「ドラガル様の事をもっと知りたいです」
と言った。するとドラガル様は仕方ないといった表情でクローゼットを開けてくれた。中にはジャケットやコート・ズボンなどが掛けてあるスペースと多分シャツなどをしまっておく棚があった。クローゼットの中も紺で統一されていて棚はやはりダーク系で統一してあった。そうして棚の上には私がプレゼントした手袋がトレイに乗せて置いてあった。私はそれを見て嬉しくなった。一通り部屋を見終わると再びソファーに座った。
「もう、いいのか」
「はい、満足しました」
私が笑顔で言うと
「じゃあ、昼までに時間があるからお菓子でも食べるか」
と言って私の前に前に一緒に食べたガラス容器に入ったデザートを置いた。私がそれを見て目を輝かせていると
「この間凄く幸せそうに食べていたから、我が家のコックに頼んで作ってもらった。ジュースをフルーツにしたからデザートはチョコレートが主になっているが、どうだろう」
とドラガル様が尋ねてきた。
「美味しそうです。もう食べていいですか」
とドラガル様の質問には返答せず食べてもいいかの確認をした。するとドラガル様は笑って
「どうぞ」
と言った。私はすぐにひとくち口に運んだ。
「美味しいです。この間はフルーツだったけど・・今日は大好きなチョコレートなのでもっと美味しいです。これってチョコレートケーキも一部入っているんですねぇ。凄く美味しいです」
と満面の笑みで感想を言った。すると急にドラガル様が顔を近づけると私の口元を舐めた。
「口元にチョコが付いていた」
私は顔に熱が溜まるのを感じながら食べ続けた。そうしてふとドラガル様が食べていないことに気が付いた。
「あれっ、ドラガル様の分はないんですか」
「あぁ、俺はいい」
「そうなんですか。美味しいですよ。ちょっと食べてみます」
と私は声を掛けた。するとドラガル様は
「じゃあ、また食べさせてもらおうかなぁ」
と言ってきた。私はドラガル様は私がこう言うのを待っていた?でも、一人で食べるにはやはり量が多かったのでドラガル様にも一緒に食べてもらうことにした。
「はい、あーん」
私が言うとドラガル様は嬉しそうに口を開けていた。その姿はやはり可愛くこれが母性本能を擽られるってことなのだと実感した。私はやはり照れながらドラガル様の口にスプーンを運んだ。そうして時間をかけて二人で一個のデザートを食べ終わった。するとドラガル様が立ち上がり一冊の本を持ってきた。その本は世界の有名な剣が載っている図鑑だった。私はそんな図鑑を見たことがなかったので食い入るように見ていた。すると横で図鑑を一緒に見ていたドラガル様が私の頬に口づけてきたのだ。私が驚いてドラガル様の方を見ると
「図鑑は見なくてもいいのか」
と言ったので見たかった私は図鑑に視線を戻した。すると今度は私の首元に口づけてきたのだ。私は無視することにした。そうして何も言わずに口づけを受けていると今度は私の右手を掴んできた。私は左手で図鑑のページをめくることができたので何も言わずまだ見続けていた。するとドラガル様は私の手を離すと右手を私の太ももに乗せてきたのだ。私は手を乗せられビクリと反応したが何も言わずそのまま図鑑に視線を落とし続けた。しかし・・ドラガル様が手を置いているところの熱を異常に意識してしまい、実際は本を見ている余裕は全くない状況だった。そこでドラガル様が私の耳元で
「エリーゼ」
と私の名前を呼んだのだ。私はもう限界となりドラガル様の方を見た。するとドラガル様から何とも言えない色気を感じた。そうして目が合うと口づけをされそのままソファーに押し倒されたのだ。しかし、私はどうしてか抵抗できずドラガル様の口づけをそのままの体勢で受け続けていた。するとドラガル様が
「エリーゼ、いつも言っているだろう。警戒しないと、と」
と言ってきたのだ。私は
「ドラガル様を警戒するだなんてできません」
と言った。するとドラガル様は
「そうそう、エリーゼ、既成事実について勉強はしたのか」
とまた尋ねてきたのだ。私はソフィアにほんの少し教えてもらったことを思い出し顔に熱が溜まるのを感じた。その様子を見たドラガル様は
「ははーん、もう知っているようだな」
と言ってきたのだ。私はさらに赤くなり
「まだ、知らないです」
と言って横を向いた。するとドラガル様は私をうつ伏せにすると背中のドレスのボタンを外しだしたのだ。私が焦っているとボタンを四つほど外した時点でボタンを外すのを止めそこから見える背中に口づけてきたのだ。その口づけはいつもと違いドラガル様の顔が見えないせいなのか、いつも以上にドラガル様の唇の感触が鮮明で口づけされた箇所に熱を感じた
「あぁー、ドラガル様止めてください。恥ずかしいです」
と私は言ったがドラガル様は止めてくれずその後も何度も場所を変えて口づけを続けた。そうして私が息絶え絶えに
「ドラガル様、苦しいです」
と言うと
「じゃあ、もっとボタンを外そうか」
と耳元で言ってきたのだ。私はこれ以上は耐えられないと
「ドラガル様、今日はこれぐらいでおしまいにしていただけないでしょうか」
と言うと
「仕方ないなぁ」
と言ってドレスのボタンを留め始めた。私が安堵していると
「今日はこれくらいでおしまいにしたから今度はこれ以上のことをさせてくれるって期待していいのかなぁ」
と言ってきたのだ。私は「えっーこれ以上は耐えられない」と思ったが・・実際はドラガル様に触られることは嫌ではなくどちらかというと恥ずかしいけど気持ちいいので
「はい」
と小さな声で返答した。それを聞いてドラガル様の手が一瞬止まったようだったがすぐにボタンを留め終わると私を座らせ、また一緒に図鑑に目を通しだした。私ははじめ図鑑どころではなかったがドラガル様が今度はどの剣がいいや持った感じがどうだなど色々説明をしてくれたので途中から話に夢中になりさっきあった出来事をすっかり忘れてドラガル様と楽しい時間を過ごした。すると時間はあっという間に過ぎ昼食の時間になった。昼食はドラガル様のご両親とお兄様夫婦とご一緒することになった。私はダイニングに入るとお兄様夫婦に挨拶をして席についた。
「母上、よかったですねぇ。こんな綺麗なお嬢さんがドラガルのお嫁さんになってくれて」
「そうなのよ、女性に興味がないのかと思って心配して色々策を練っていたのに実はもう決まった相手がいましたですもの、もう驚いたのなんのって・・でも本当に良かったわ」
と私たちに笑顔を向けられた。
「ところで、どこでこんな綺麗な女性を引っかけたんだ」
「厩舎」
「はぁ、厩舎だと」
お兄様はなにを言っているんだと言った表情で再度問い掛けてきた。するとドラガル様はやや面倒くさそうに
「エリーゼは、仕事が終わってから厩舎で馬の世話をしているんだ。そこで出会った」
「そうなのか」
「あぁ、エリーゼはおとなしそうに見えて馬にも乗れるし剣も扱えるんだ」
とドラガル様は言った。私は普通の令嬢がしないことをしているので言われたことが恥ずかしかったがそれを聞いたご両親とお兄様が
「エリーゼさんは公爵令嬢でありながら乗馬も剣術までもできるのか。なんて凄いんだ普通の令嬢はそんなこと出来ないぞ。普通はお茶会でペチャクチャ話すくらいだろう。そうして話す内容も悪口って決まっておる。ドラガルよかったなぁ。エリーゼさんならお前と一緒に遠乗りもできるし剣の稽古をしていても嫌がられることはないだろう」
とお父様は笑顔で言ってきたのだ。そうしてその横でお母様とお兄様もうんうんと頷いていた。私は素の私を受け入れてくれるドラガル様の家族を凄く身近に感じ嬉しくてなってドラガル様の方を見た。するとドラガル様は嬉しそうに微笑んでくれた。それから色々な話をしながら昼食をとった。昼食が終わると私たちはドラガル様の屋敷を後にした。また馬車に乗ると王宮へと向かった。帰りの馬車でもドラガル様は私の横に腰かけると窓から外を眺めていた。私も外を眺めていたがドラガル様の家族への挨拶が終わった安堵感と昼食後の満腹感からどうも眠ってしまっていたようだった。気付くと私はドラガル様にもたれかかる形で眠ってしまっていた。私は眠りから覚めると
「ドラガル様、すみません」
「あぁ、よく眠れたか。今日は俺の家族に会って緊張しただろう。着いたら起こすからもう少し眠っていたらどうだ」
と声を掛けてくれた。私はその言葉に甘えもう少し肩を借りることにした。そうして肩にもたれながら
「今日は緊張しました。でも問題なく婚約もできそうですし、ドラガル様のご家族の方も私の事を聞いても嫌がっておられなかったので安心しました」
「俺の婚約者に文句は俺が言わせない。まぁ俺の家族は俺の家族だからエリーゼの事は気に入ると思っていたよ。なんせ祖父に仕込まれているからなぁ」
と笑った。私も釣られて笑いながら再び眠りについた。
後日、スカイガード家から正式な婚約の申し入れがありバルシャール家が了承し婚約成立となった。
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