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第六話「デヴィッド3」

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 雨に濡れ、地面には血が広がる。
 ステラは荒く呼吸を繰り返しながら、一人の男に肩を貸し足を必死に動かす。
 


 何故かばってくれたのか。





 その疑問だけがグルグルと彼女の頭を巡っていた。

「血が、血が止まらないわ。」
「ハンッ、、、女王様のその顔初めて拝見したぜ。あーあガチで痛ぇ。」
「どうしてあんな事したの?」
「……さあな。」

 肩を上下し明らかに軽症ではない傷を抑えているデヴィッド。

 試合開始から数時間後、順調に向かってくる敵を迎え撃ち生き残った彼ら。
 完全に油断していた彼女は太い槍が向かってくるのを避けれず目をつぶった瞬間、彼が彼女の体を押し脇腹を犠牲に救ってくれたのだった。
 幸運なことに豪雨が降りはじめ風も出てきたため姿を上手く隠し、とある洞窟に立てこもった。

「これ飲んで。」
「なんだぁ?その糞怪しいお薬は」
「強力な回復薬よ。副作用が出るけど即効性が強いらしいわ。」
「・・・ハハっ流石女王様。俺たち従僕のことを駒にしか考えてねえな。」

 デヴィッドの言葉に苦虫を噛み潰したように顔を歪ませた。

「ええ、そうよ。私は非道の人だわ。貴方がこのような目にあっているのにまだ、試合に勝つことを考えている。」

 強く拳を握りしめる。壁により掛かるように体を預け肩で息をしている彼の側に移動していく。

「ゲーム中ずっと考えていた。ここで死ぬのも別にいいんじゃないかと。生きるのを諦めようとしたわ。でも、どうしても悔しいの。今でも心が、怒りでどうにかなりそうなの!!人にもののように扱われて終わる自分に腹が立つ!」

 デヴィッドの前で初めて本音を曝け出した彼女は、物事がうまく行かなく癇癪を起こす子供のようだった。
 彼は暫く驚いたように目を見開き彼女の方をじっと見つめたあとようやく目を薬の方に移す。

「……そのお薬を俺に飲ませることが出来たら良いぜ?」
「っ!?」

 飲ませる。
 何処で観客の目があるかわからない状態で薬を飲ませる行為をする。これは彼からの挑戦状であり、彼女のプライドもがなり捨てて生きることを選べるかどうか本気度を探るものだった。
 震えていた彼女の手が止まった。
 静かに動向を観察する彼に近づき薬を口に含んだ彼女はそのまま彼のかさついた唇に自身の唇を重ねた。
 ガッドから教え込まれた一週間の記憶を頼りに動く。はじめは小鳥のように彼の唇をついばむ。乾いた彼の唇が湿り気を帯び柔らかくなってくる。トントンと小さく震える舌で彼の口を突くと、難なく彼は彼女の進行を許した。
 舌先に乗せていた薬を彼の口奥へ押し込んだ後、目的を達成させたため離れようとするが彼の手が彼女の後頭部を掴み離さない。
 されるがままであった彼の舌が動きはじめ上手く舌を絡め取られる。ガットの優しくも捕食するようなキスとは異なり、唯只管欲をぶつけるような一方的なキス。彼のよく吹かす煙の香りが脳を支配する。
 度々離れる唇のその間に呼吸を整えていたら、整う前に角度を変えて重ねられるそれに、くぐもった声が抵抗の声の代わりにもれる。
 そして、目の前が白くなりかけている状態になった時、彼の苦しそうなうめき声と共に突如終わった。

「ぐっ、~があああぁあっ!!!くそ、なんだこの薬は!!!!熱い、痛ぇ痛ぇ!!!!!」

 瞳孔を見開き汗を振り乱して床に転がる彼の姿に思わず後退りする。彼女自体もこの薬はどのような副作用が起こるか説明はされていない。しかしドクターから処方された物でデヴィッドに命の危機が訪れたら飲ませろと言伝を預かっただけであった。

「ぐがああああぁぁぁああああ!!!!」

 彼の荒い呼吸が空間を支配する。我に返った彼女は苦しそうな様子の彼に近づき状態を確認しようとした。

 おずおずと床に蹲る彼の背中に触れると勢いよく手を掴まれ引き倒された。
 勢いよく視界が反転したため彼女は押し倒されたのだという事実にすぐ気づかなかった。

 あまりにも激痛だったのか彼の頬から汗が滴り、ウェーブをかいて顔にかかる髪の毛が少し湿っている。

「、、、なんだこの香りは。おい、何で女王サマからこんないい匂いがする??」
「は?」
「甘ったるくて、芳しくて、上品で、吸えば吸うほど俺の脳が、意識が飛びそうになる。」

 焦点が合わない彼の様子にステラはさっと顔が青くなった。ゆっくりと唇を舐める彼の姿は前に何度も見たことがある。ドラッグをやった時の症状に似ているのだ。

「逃げんなよ。なあ、何の香りだって聞いてんだよ女王様。教えろよ。おい。」

 全身鳥肌が立ち本能が彼に対して警告を鳴らしている。何を飲ませたのだろうか。何が彼をこのようにさせたのか。

「あんたの首と体から香る匂いが異なるのは何でだ?あんたの太ももからの匂いが美味そうなのは何でだ?全部、全部嗅ぎてぇ。」

 いつの間にか足の間に彼の体が侵入して来ており、首筋に顔が埋められていた。
 熱心に嗅がれ度々噛みつかれ、彼女はすっかり恐怖で動けなくなってしまう。

「っいた、痛い。」
「やべぇ、やべぇよこの香り。おい、女王様あんたこれが副作用か?あんたの香りで飛べるようになるのが?」
「し、らない。知らないわよ!」
「あ"あ"~~っやばい勃ってきた。……まじでこれ、病みつきになりそう。」

 服越しに伝わる彼の下腹部が硬くなり、彼女の秘部に擦り付け始める。ユサユサと体が揺さぶられ、挿れてはいない筈なのに犯されている錯覚に襲われ彼女は耳まで真っ赤になってしまう。

「匂いが、変わった。おいおいおい女王様まさか興奮すると更に噛みつきたくなる匂いを出すのかよ。えろすぎるな、おい。」

 酒焼けした掠れた低音ボイスをわざと彼女の耳元で囁く。さらなる辱めを受け彼女は顔全体に熱が集まり真っ赤になってしまう。潤んだ瞳と必死に声を出さないように唇を噛みしめる様子に彼の目は釘付けになる。

「誘ってんだろそれ。おい。っ~~。」

 ぶるりと一度体を震わせた彼は深く深呼吸すると彼女を抱きしめる力を抜く。
 開放されたと一息ついた彼女を裏切るかのようにバサリと上を脱ぎベルトを緩め始める。
 ガットとは違い少し毛深い彼の体は僅かな光に照らされ青白く光る。意外と鍛えられ筋肉の筋が浮かび上がり、興奮しているのか胸が大きく上下に動く。
「何じっくり見てんだよ。えろい目をしやがって。」
「っ!待って、いやよ絶対に!飲ませれば良いんじゃなかったのかしら?」
「生きたきゃ俺を満足させねえと。飲ませたのはあんただし副作用の症状が収まるまではあんたが俺の#お世話調_するべきじゃねえの?」

 ニヤリと意地悪く笑みを浮かべた彼は再度彼女を組み敷くと彼女の下に履いている服を下着含め全て下に下ろした。
 キスのお陰で少し湿り気を帯びた彼女の秘部に顔を近づけ、まるで花を香るように吸い込む。
「何しているのっやめて、デヴィッドっ!」

 ガッドにもされたことがないことで戸惑う彼女を無視し夢中で嗅ぐデヴィッド。そこには満足そうな笑みを浮かべ、瞳には狂気が混じっている。

「畜生、ずっと嗅いでいたいぜこの香り!味はどんななんだろうな?女王様?」
「っあ!……やだ、やだ!」

 抵抗も虚しく舐め上げられ嫐られる。ガッドに散々仕込まれた快楽の拾い方で簡単に濡れていく自身の秘部に更に恥ずかしくなる。

「…ああ、そうか。あの堅物の物だったよなああんた。これは俗に言う寝取られってやつかぁ??おいおい興奮するじゃねえかよ。」
「っっいや、あ、きちゃう、んっっ~~!」

 痙攣する体に抗えず、収まった後の脱力感。久々に味わった刺激にドッと疲れがではじめ、次のガットの行動に抵抗ができなかった。
 一気に熱く長いモノが彼女のイッたばかりの秘部に侵入してきた。

「あ、あああああ!!!!んっはぁ、いっ!」
「ははは!なに考えてたんだよさっきからよ!あの堅物のこと思い出してんじゃねえのか??」
「っ!」
「図星かよ。………今は俺が犯してんだよ。集中しろ。」
「っあ!」

 動き出す彼のピストンの衝撃は大きく、最奥いとも簡単に届く彼のモノに翻弄され、頭がぐちゃぐちゃになる。
 普段の人を馬鹿にしていた声色とは異なることに違和感を覚え、生理的に浮かぶ涙で霞みながらも彼の表情を見る。
 口角を引き上げる笑みを浮かべていると考えていたが、真顔で何を考えているか分からない珍しい表情を浮かべていたのに驚く。

「っっ、はぁ、んだよ、俺の顔になにか付いてんのか?」
「っ、あ、なんで、そんな顔している、の?」
「あ?」

 ピタリと動きを止めた彼は不思議そうに彼女を見つめ自身の頬をつねる。
 自分でもどんな表情をしているのか自覚がない様子だった。

「……。」

 暫く考え込んだ彼ははっと閃いたのか彼女の顔を再度見つめた。

「なあ、あんたさ。あの堅物との一週間過ごしたあとからやけに表情が豊かになったな。何でだ?」

 質問の意味が分からなかった彼女は恥ずかしい行為をされているのを忘れ静かに彼の言葉を聞く。

「あんた、誰でもいいから愛してほしかったんだろ。」
「っそんなわけ」
「そんな訳あんだろ。明らかにあの堅物はあんたに惚れている。話を聞くからに相当昔からだ。その想いっつーのをあの一週間で教え込まれたんじゃねぇの?」

 どくりと心臓が大きく脈打った。彼女は本能的に気づいてはいけないと彼の言葉を拒絶し始める。
「あ、」
「今まで誰も自分を見てくれないと失望している中、ようやく堅物からの熱烈な告白でんだろ。自分を愛してくれる存在がいるっていう事実に安心してんだろ。」
「あ、ああ。やめて、お願い。」
「はは、ははは!図星かよ。」

 薄っすらと自覚があったんだろう。彼女は耳を塞ぎ目を逸らす。あんなに熱心に想いを伝えてくれたガッドに酷いことをしているという罪悪感が襲ってくる。

「んんっっあ、まっ!」
「………。」

 先程とは打って変わってデヴィッド
無言で乱暴に動きはじめ彼女を掻き乱す。
 部屋には情けなく縋りつき甘い声で喘ぐ彼女の声と、打ち付ける肉音が鳴り響く。
 徐々に早くなる動きに合わせ、彼女の理性があやふやになりいつの間にかデヴィッドの首にしがみつき密着度を高めていた。

「いっ、イっちゃうっあ、とまっで~~~~っ!!!!」
「フッ~~っっ、、、、ハア。っチュ。」

 お互いの息切れした吐息が混ざり合う。耳元では聞いたことがなかったデヴィッドの荒々しい鼻息に彼女の体が反応する。

「っ抜いて。狂ってるわ。何もかも。」
「……なあ、受け止めねぇの?その自分を。」
「当たり前でしょ?私をあい、愛してくれた人を利用するようなことするなんて、人としてどうかしてるわ。」

 泣くつもりもなかった彼女だったが、理性が緩んでいるせいか目から溢れるものを止められなかった。
 酷く自身が汚く思え、ほぼ強姦されている状況だと言うのに感じてしまった自身にも腹が立っていた。

「……っ、世の中の所謂で繋がれた恋人や夫婦はよ。で成り立ってると思うぜ。」
「、美しい、誤解?」

 息を整えたデヴィッドは未だに大人しく彼の下に収まる彼女の乱れた髪を優しく払う。先程まで行われた行為で火照った頬と潤んだ瞳が顕になる。

「結局はお互いに相手に理想を求め近づく。高尚な愛なんざねえよ。」
「……驚いたわ。貴方そんなこと考えるようには見えなかった。」
「あん?ヤク漬けにするぞ?」

 おかげで少し冷静になった彼女はつい笑いが込み上げてきてしまった。あんな酷いことしてきた男と今はこうして愛について語り合っている。何と面白い光景であろうか。
 笑っていた彼女はようやくまじまじと観察していたデヴィッドに気づく。自身だけ笑っていることが恥ずかしくなり顔が熱くなる。
「…。糞、このガキ、、、」
「あっ、なんで?」

 入れっぱなしの彼のモノがまた硬くなる感触がし、ステラは小さく声を出してしまう。

「状況が読み込めてねぇみたいだから教えこんでやるよ。幸運なことにまだ雨は止まねえみてぇだからよ。」
 その後も長く行われる行為は雨音で掻き消され、邪魔者が入ることはなかった。
 試合に参加した者たちは其々の疲れを癒やす時間であり、残酷なゲームの一日目が終了した。



    
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