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傭兵ギルド
第78話「来やがったな」
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さて初日の入団式が終わった後、各団体ごとに指導者や団長の元へ行かなければいけない。
しかし見ての通り我らがバロウ団長が不在であるため仕方無しにハジメさんの元へ向かった。
「お前ら3人が新人だな?この第13傭兵団の副団長を務めているハジメだ。よろしく頼む。」
「「宜しくお願いします。」」
「宜しくおねしゃす。」
きちんとした正装をする場面のはずだ
が、ハジメさんは大分格好が違う。いわば和装だ。黒く染め上げた衣を着こなし腰には刀を二本刺している。
よく見たら目の下に隈が見える。この入団式でもひと悶着あったのだろうか。
「よくやった小僧。」
またわしゃわしゃと頭を撫でられる。
ハジメさんとはこのギルドに来て初めて私にやさしくしてくれた人だった。3か月ぶりに会話を交わしたが相変わらず優しい目をしている。
「は?お前副団長とも交流があったのか?」
「目上の方の前では私語を慎めヴァド。」
「そこの生意気な奴がヴァドで、第一印象とは別な野郎がユウシャだな?お前ら3人の噂はかねがね俺の耳に届いているよ。蒼の事件を引き起こしやがった馬鹿野郎共の再教育をゲルドが意気揚々と語っていたぞ。覚悟した方がいい。」
げげっと私たちがお互いの目を見合わせ青ざめる。
あの3か月で死者こそ出なかったものの、あまりにも厳しい訓練による後遺症が残った人までいた。あれよりも厳しくなるとさすがに私たちでも無事では済まされない。
「お前らの訓練場はちと遠い場所にあるが挨拶もそこでしよう。ついてこい。」
そういうや否やハジメさんの姿が消えた。
いや、消えてはいない。すでに走り去った後で彼の後ろ姿だけが森の中に入っていくのが見えた。
迷う隙は無い。ついてこいと彼が言い残したのだ。
私たち3人は即座に足を動かしハジメ副団長の背を追いに駆けだした。
「ぜえ、はあ、うっ、、、ぼえぇっ。」
「糞、早すぎんだろあいつ!!俺たちまだ新人だぞ⁉」
「はあ、はあ。流石副団長の座にいるだけあるな。あれを見てみろ。俺たちも体力づくりに手を抜いていなかったとはいえ彼との差は歴然だ。、、、呼吸が一切乱れていない。」
吐く寸前まで走り抜けた後、ハジメ副団長はようやく立ち止まった。
ユウシャのいう通り、あの速さで駆け抜けたのにもかかわらず彼は涼しい顔をして私たちが呼吸を整えるまで待っている。
「よくついてこれたな。手加減したとはいえ初めから俺のスピードについてこられるとは。」
あの、主に私の方を見ながら言わないでもらえますか?
途中でヴァドとユウシャに抱えられながら走りましたけどね。
「早朝のベルが鳴らされる前に起床してここまで走ってこい。道順は覚えたな?2度はねえぞ。」
普通に山2つぐらいの距離に早朝駆け抜けないとだめってこと??
絶望している中彼が歩く背についていく。
木々の先を抜け森が開けたと思ったら平行線まで平坦な平野と山が広がっていた。開放的な風景と所々抉れている岩や山の腹が苔で覆われているのが見える。
のどかな風景に溶け込む戦いの跡。
山々にちょうど囲まれるように建っている大きな建物へと歩みを進めた。
3ヶ月前に見た中央吹き抜けの広場に出る。ここでゲルド教官やドグロさんがわちゃわちゃやっていたなと思い出す。
「基本第13傭兵団の団員はある程度訓練を積めば個人部屋が与えられる。」
「待遇が良いですねやけに。」
「いや、個人部屋を与えざるを得ないというのが正しい言い方だな。ここの団員は共同生活という言葉は頭の辞書にない。寮に入っても必ず問題を起こす。」
まだ胃がキリキリしているのか顔をしかめ胃を擦るハジメさん。苦労人だな相変わらず、、、、。
「同じ理由で13傭兵団は他の団員たちとは別の場所に隔離されている。ダレイオスさんの希望で今回お前らは始めて寮生活を許可された。何を期待されているのか俺にはわからんが、まあ、問題は起こすな。」
既に起こしてしまっている私達に何を期待しているのか、、、。
そうこうしているうちに団長の部屋についた。
「ハジメだ。開けるぞ。」
部屋の主が返事をしたあと扉が開かれる。あの乱暴者の団長だからどうせ荒れているという予想は大幅に外れ、意外にも整理整頓された内装が出迎えてくれた。
少々乱雑に積まれた紙束や謎の機械が机を散乱しているが特に目立った汚れはなく、床び余り物が置かれていない。
3ヶ月前地獄のような交換条件を交わした時はろくに部屋のことなんざ見ていなかった。
「来やがったなお前ら。」
幹部のメンバーが集まっており、彼が座っている椅子を中心に立っていた。
一斉に目線が集まり息を飲んだ。
私達を隅々まで見つめ、どういじめてやろうかギラギラしているように感じる。
「ようこそ。そして俺の傭兵団へ入団したことを誇りに思え。歓迎するぜ?地獄のような世の中で焙れた出来損ない共の巣窟だ。」
皮肉げに片頬を挙げたあと言い放つ。
「精々狂うなよ。新人。」
しかし見ての通り我らがバロウ団長が不在であるため仕方無しにハジメさんの元へ向かった。
「お前ら3人が新人だな?この第13傭兵団の副団長を務めているハジメだ。よろしく頼む。」
「「宜しくお願いします。」」
「宜しくおねしゃす。」
きちんとした正装をする場面のはずだ
が、ハジメさんは大分格好が違う。いわば和装だ。黒く染め上げた衣を着こなし腰には刀を二本刺している。
よく見たら目の下に隈が見える。この入団式でもひと悶着あったのだろうか。
「よくやった小僧。」
またわしゃわしゃと頭を撫でられる。
ハジメさんとはこのギルドに来て初めて私にやさしくしてくれた人だった。3か月ぶりに会話を交わしたが相変わらず優しい目をしている。
「は?お前副団長とも交流があったのか?」
「目上の方の前では私語を慎めヴァド。」
「そこの生意気な奴がヴァドで、第一印象とは別な野郎がユウシャだな?お前ら3人の噂はかねがね俺の耳に届いているよ。蒼の事件を引き起こしやがった馬鹿野郎共の再教育をゲルドが意気揚々と語っていたぞ。覚悟した方がいい。」
げげっと私たちがお互いの目を見合わせ青ざめる。
あの3か月で死者こそ出なかったものの、あまりにも厳しい訓練による後遺症が残った人までいた。あれよりも厳しくなるとさすがに私たちでも無事では済まされない。
「お前らの訓練場はちと遠い場所にあるが挨拶もそこでしよう。ついてこい。」
そういうや否やハジメさんの姿が消えた。
いや、消えてはいない。すでに走り去った後で彼の後ろ姿だけが森の中に入っていくのが見えた。
迷う隙は無い。ついてこいと彼が言い残したのだ。
私たち3人は即座に足を動かしハジメ副団長の背を追いに駆けだした。
「ぜえ、はあ、うっ、、、ぼえぇっ。」
「糞、早すぎんだろあいつ!!俺たちまだ新人だぞ⁉」
「はあ、はあ。流石副団長の座にいるだけあるな。あれを見てみろ。俺たちも体力づくりに手を抜いていなかったとはいえ彼との差は歴然だ。、、、呼吸が一切乱れていない。」
吐く寸前まで走り抜けた後、ハジメ副団長はようやく立ち止まった。
ユウシャのいう通り、あの速さで駆け抜けたのにもかかわらず彼は涼しい顔をして私たちが呼吸を整えるまで待っている。
「よくついてこれたな。手加減したとはいえ初めから俺のスピードについてこられるとは。」
あの、主に私の方を見ながら言わないでもらえますか?
途中でヴァドとユウシャに抱えられながら走りましたけどね。
「早朝のベルが鳴らされる前に起床してここまで走ってこい。道順は覚えたな?2度はねえぞ。」
普通に山2つぐらいの距離に早朝駆け抜けないとだめってこと??
絶望している中彼が歩く背についていく。
木々の先を抜け森が開けたと思ったら平行線まで平坦な平野と山が広がっていた。開放的な風景と所々抉れている岩や山の腹が苔で覆われているのが見える。
のどかな風景に溶け込む戦いの跡。
山々にちょうど囲まれるように建っている大きな建物へと歩みを進めた。
3ヶ月前に見た中央吹き抜けの広場に出る。ここでゲルド教官やドグロさんがわちゃわちゃやっていたなと思い出す。
「基本第13傭兵団の団員はある程度訓練を積めば個人部屋が与えられる。」
「待遇が良いですねやけに。」
「いや、個人部屋を与えざるを得ないというのが正しい言い方だな。ここの団員は共同生活という言葉は頭の辞書にない。寮に入っても必ず問題を起こす。」
まだ胃がキリキリしているのか顔をしかめ胃を擦るハジメさん。苦労人だな相変わらず、、、、。
「同じ理由で13傭兵団は他の団員たちとは別の場所に隔離されている。ダレイオスさんの希望で今回お前らは始めて寮生活を許可された。何を期待されているのか俺にはわからんが、まあ、問題は起こすな。」
既に起こしてしまっている私達に何を期待しているのか、、、。
そうこうしているうちに団長の部屋についた。
「ハジメだ。開けるぞ。」
部屋の主が返事をしたあと扉が開かれる。あの乱暴者の団長だからどうせ荒れているという予想は大幅に外れ、意外にも整理整頓された内装が出迎えてくれた。
少々乱雑に積まれた紙束や謎の機械が机を散乱しているが特に目立った汚れはなく、床び余り物が置かれていない。
3ヶ月前地獄のような交換条件を交わした時はろくに部屋のことなんざ見ていなかった。
「来やがったなお前ら。」
幹部のメンバーが集まっており、彼が座っている椅子を中心に立っていた。
一斉に目線が集まり息を飲んだ。
私達を隅々まで見つめ、どういじめてやろうかギラギラしているように感じる。
「ようこそ。そして俺の傭兵団へ入団したことを誇りに思え。歓迎するぜ?地獄のような世の中で焙れた出来損ない共の巣窟だ。」
皮肉げに片頬を挙げたあと言い放つ。
「精々狂うなよ。新人。」
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