異世界転生少女奮闘記

傭兵ギルド

第77話「期待しているぞ。」

　ここの傭兵団ギルドでは中心に西洋の巨大な本拠地を構え、その周りを囲うように訓練所や食堂が設立されている。第1～13傭兵団の人々は本拠地に用意されている依頼をこなすため地方に散らばり、最終的に報告書などを本拠地に提出しに来る。私たちのこれから生活する寮は本拠地に併設された建物に位置していた。
　しかし第13傭兵団は共同生活ができない者たちが多いため本拠地から離れた建物に収容されており、他の傭兵団との関りは少ない。
　今回の新人三名が共同の場所にいることが前代未聞の事らしかった。


　まあそんなことはおいといて。
　部屋の挨拶や荷物の整理を午前中に済ませた私たちは本拠地の目の前にある広場に行き、午後から入学式に参加した。
　大勢の傭兵たちが整列し始めており、各団長が前で集まり会話を交わしている。
　先輩を含め各地方にまで散らばった傭兵団がこの日のために集まってくるらしい。このギルドでは強制参加行事となっていることからギルドが入団式を重視しているかがうかがえる。
　そして私たちが所属するはずの第13傭兵団はというと・・・。

「ハジメさんとゲルド教官しかいないじゃん。」
「やはりな。そもそも存在すら怪しいとまでされる傭兵団だ。ゲルド教官やドグロさん、ハジメさん以外はあまり表舞台には立たないらしい。」
「何人くらいいるの？」
「不明だ。」

　そうこうしているうちに一人の男が登壇に立った。

「静粛に!!ギルド長からのお言葉だ。」

　ゲルド教官の咆哮で屈強そうな傭兵たちが背をただし前を向く。
　次に登壇に立ったのは私に鬼畜な課題を与えたThe 騎士団長のような見た目をしたダレイオス・スコット・ドランだった。

 「まずはおめでとう。晴れてこのギルドに仲間入りした君達に祝福を。そして別れを告げよう。君たちと同じように入ってきたはずの故人達よ。」

　穏やかだがオーラのある雰囲気を纏い、淡々と言葉を綴る。

「さて。この場を借りてやっと弟子候補が揃ったから紹介しよう。左から順にギルド総括長の弟子は～……」

　あれ?私も一応弟子候補だよね?
　え前に出るべき?

「そして第13傭兵団の弟子を紹介したいのだが、生憎団長が欠席だろうからまた後程紹介しよう。」

　ぱちりと目があってしまった。
　どういう意味を込めた笑みなのだろうか。

　順調に入団式が終わり解散となった。
　さっさと部屋に帰ろうとしたら屈強そうな男に捕まり、ギルド長まで連れて行かれる。

「よう！小さき少年よ。良くやったな。」

　わしわしと頭を掻き混ぜられる。首が痛い。

「まさか本当に一位を取るとはな～。絶対無理だと思っていたよ。」

　衝撃の嵐。やはりこのギルドの長を務めるだけありかなり厳しい人だ。
　しかし表裏がない所がきっと傭兵ギルドの全員に慕われバランスが取れているのだろう。

「おめでとうアス。君は晴れて俺の傭兵ギルドに一人の傭兵として入った。きっとゲルドの教育を耐え切れたから覚悟は決まっているはずだ。期待しているぞ。」

　ポンポンと肩を叩かれダレイオスギルド長は去っていってしまった。
　期待しているぞ。その言葉は果たして純粋な意味なのか、牽制の意味なのか。




　暑い気温で汗が垂れる。
　新生活に足が震え、生き残れるか不安が残るがやるしかない。
　逃げる場所なぞどこにもないのだ。