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第5章「新人傭兵」
第70話「最終試験4」
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さてこの調子で一週間のうち四日目のお昼になった。
初日の進捗のようにはいかず停滞状態が続き私たちは焦りを感じている。
ユウシャと私はそれぞれ仲を深めているだけで有力な情報は得られていない。ヴァドは初日以来ジン騎士団長にしごかれているらしい。
「こんにちは。今日も来てくれたんですね。」
「こんにちは。丁度この時間帯は休憩なので。」
「余分に作ってきたので一ついりますか?」
「有難く頂戴します!」
一つサンドイッチを渡すと中庭のベンチに座り、お互いのお弁当を取り出し食べ始める。
ここ四日間の仲だが彼の事について徐々にわかってきた。
まず意外とよく笑う人だった。訓練生に対しては厳格な騎士団長としての顔はある。私も初めはしかめっ面しか見れなかった。が、今では表情が豊かでついいじめたくなる人だったという印象が強い。簡潔に言うと可愛い人だ。
強面で普段はしかめっ面なため生徒からも騎士からも怖がられているのがもったいない。
そして好きな食べ物はサンドイッチだ。一回上げたらやけに気に入ったらしくお弁当がサンドイッチのようなものになっていた。しかしどうしても私のサンドイッチの方が数倍おいしいと嘆いていたため今日あげたのだ。餌付けである。
また他愛のない話をした後、それぞれの仕事に戻った。
さて、あと数日しかないがどう進展させようかと考えながら帰りの廊下を歩く。
夕日が差し込み地面に廊下を装飾する柱の影が伸びる。中庭を囲む廊下で真ん中にある噴水は涼し気に水の彫刻を作り続けている。数日ここにいるがあまり干渉していなかったな。眺めるか。
噴水に近づきまじまじと眺めていると、、、誰かから声を掛けられた。嫌な予感がする。
後ろを振り向くと案の定学園長の娘がユウシャ含め取り巻き達を引き連れ、意地悪い笑みを浮かべている。
「あら、男垂らしのノエルじゃないの。」
「はい?」
「最近自分のうわさを聞かないのかしら?ジン様を体でたぶらかし訓練生にも手を出す売女がいるって。他にも複数人の愛人がいるらしいじゃない。」
「身に覚えのない噂を流しているのは貴方がたでしょう?」
そんなくだらない噂を流しているとユウシャから報告されているので知っている。
まさか私から反撃されるとは思っていなかったのか驚きで目を見開く学園長の娘。ユウシャも驚いた顔をしている。やらかした、、、焦る気持ちを抑えきれずついイライラして言い返してしまった。
「この、、っ薄汚い売女の癖に、私に口答えするなんてっ!!」
どんっと力強く押されバシャン、、、いやドボンという音とともに噴水に落とされた。
避けることもできたが運動が苦手なはずのノエルは避けれないだろうと考えあえて押されたが、これは聊かやりすぎではなかろうか。
制服が体に張り付き、瓶底眼鏡は噴水の水受けの底に落ちてしまった。
「は、無様な恰好ねノエル!お似合いだわ!」
弱者をいじめ必死に虚勢を張る彼女。あまりにも幼稚で落とされたことに対する怒りは消滅してしまう。代わりに哀れの目を彼女に向ける。
「何よその目は!気に入らないのよその私を見下すような目と態度。最近お貴方は特にイラつくわ!」
「・・・」
パシャリと噴水の中で立ち上がるとスカートのすそを絞る。髪の毛もずぶ濡れのためほどく。
「何かしゃべったらどうなのよ。」
周りを見渡すといつの間にか野次馬が沢山いる。そりゃこんなに騒がしくしたら気づかれるもんね。
「・・・。」
眼鏡を拾い上げかけなおそうとすると彼女に叩き落され割れてしまった。
あもうめんどくさいことしてくれたなこの子。
バッと髪の毛を掻き揚げると何も声を掛けないまま噴水からでる。靴下を脱ぎはだしで芝生の上を歩き始める。
「ちょっと!!ねえ!!」
「私から貴方にいうことは何もありません。」
夕日が背中側にあるため私の影が向き合った彼女にまで伸びている。強い風に吹かれ濡れた服が体にさらに張り付くのが分かり気持ちが悪い。
「これをお使いください。あとは俺が。」
「有難うございます。」
さすが騎士。ジン騎士団長の上着が私の体を覆い隠してくれ温かい。
肩に触れた彼の熱がやけに熱くも感じたのは風邪をひき始めている証拠なのだろうか。
ジンside
体中に稲妻が走った。
夕日に照らされた彼女の顔はただ冷静に噴水に落とした本人を見つめ、風になびかれる。今まで眼鏡で隠れていた力強く芯が通った瞳が俺の脳を支配する。
なんと美しい光景を目にしているのだろう。俺はなぜかそう思った。
水で濡れた制服は彼女のボディーラインを強調し、彼女に艶やかな色気をまとわせる。黒々とした髪の毛から落ちる水のしずくは上品に輝く宝石のように見える。
彼女の力強い芯と上品かつ艷やかな雰囲気に目を奪われ、思わず立ち尽くしてしまった。
ふっと正気に戻り彼女の恰好を隠すため近づく途中、一連の様子を眺めていた生徒たちにも数人か同じ現象になっている者共がいた。
今後彼女の周りに群がる虫どもが増える。そう確信した俺はそうそうに彼女を部屋に帰らせ、今後も変な気を起こした輩が彼女に近づかないよう守ると密かに心に誓った。
決意と同時に心で疼く浅ましい心に気づく。
彼女に支配されたい。
思い浮かんでは消そうとするが離れない。
おかしい。俺はノーマルな者だと考えていたため戸惑ってしまう。
気のせいだろう。俺は普通だ。そう言い聞かせ騒動を収めようと体を動かした。
初日の進捗のようにはいかず停滞状態が続き私たちは焦りを感じている。
ユウシャと私はそれぞれ仲を深めているだけで有力な情報は得られていない。ヴァドは初日以来ジン騎士団長にしごかれているらしい。
「こんにちは。今日も来てくれたんですね。」
「こんにちは。丁度この時間帯は休憩なので。」
「余分に作ってきたので一ついりますか?」
「有難く頂戴します!」
一つサンドイッチを渡すと中庭のベンチに座り、お互いのお弁当を取り出し食べ始める。
ここ四日間の仲だが彼の事について徐々にわかってきた。
まず意外とよく笑う人だった。訓練生に対しては厳格な騎士団長としての顔はある。私も初めはしかめっ面しか見れなかった。が、今では表情が豊かでついいじめたくなる人だったという印象が強い。簡潔に言うと可愛い人だ。
強面で普段はしかめっ面なため生徒からも騎士からも怖がられているのがもったいない。
そして好きな食べ物はサンドイッチだ。一回上げたらやけに気に入ったらしくお弁当がサンドイッチのようなものになっていた。しかしどうしても私のサンドイッチの方が数倍おいしいと嘆いていたため今日あげたのだ。餌付けである。
また他愛のない話をした後、それぞれの仕事に戻った。
さて、あと数日しかないがどう進展させようかと考えながら帰りの廊下を歩く。
夕日が差し込み地面に廊下を装飾する柱の影が伸びる。中庭を囲む廊下で真ん中にある噴水は涼し気に水の彫刻を作り続けている。数日ここにいるがあまり干渉していなかったな。眺めるか。
噴水に近づきまじまじと眺めていると、、、誰かから声を掛けられた。嫌な予感がする。
後ろを振り向くと案の定学園長の娘がユウシャ含め取り巻き達を引き連れ、意地悪い笑みを浮かべている。
「あら、男垂らしのノエルじゃないの。」
「はい?」
「最近自分のうわさを聞かないのかしら?ジン様を体でたぶらかし訓練生にも手を出す売女がいるって。他にも複数人の愛人がいるらしいじゃない。」
「身に覚えのない噂を流しているのは貴方がたでしょう?」
そんなくだらない噂を流しているとユウシャから報告されているので知っている。
まさか私から反撃されるとは思っていなかったのか驚きで目を見開く学園長の娘。ユウシャも驚いた顔をしている。やらかした、、、焦る気持ちを抑えきれずついイライラして言い返してしまった。
「この、、っ薄汚い売女の癖に、私に口答えするなんてっ!!」
どんっと力強く押されバシャン、、、いやドボンという音とともに噴水に落とされた。
避けることもできたが運動が苦手なはずのノエルは避けれないだろうと考えあえて押されたが、これは聊かやりすぎではなかろうか。
制服が体に張り付き、瓶底眼鏡は噴水の水受けの底に落ちてしまった。
「は、無様な恰好ねノエル!お似合いだわ!」
弱者をいじめ必死に虚勢を張る彼女。あまりにも幼稚で落とされたことに対する怒りは消滅してしまう。代わりに哀れの目を彼女に向ける。
「何よその目は!気に入らないのよその私を見下すような目と態度。最近お貴方は特にイラつくわ!」
「・・・」
パシャリと噴水の中で立ち上がるとスカートのすそを絞る。髪の毛もずぶ濡れのためほどく。
「何かしゃべったらどうなのよ。」
周りを見渡すといつの間にか野次馬が沢山いる。そりゃこんなに騒がしくしたら気づかれるもんね。
「・・・。」
眼鏡を拾い上げかけなおそうとすると彼女に叩き落され割れてしまった。
あもうめんどくさいことしてくれたなこの子。
バッと髪の毛を掻き揚げると何も声を掛けないまま噴水からでる。靴下を脱ぎはだしで芝生の上を歩き始める。
「ちょっと!!ねえ!!」
「私から貴方にいうことは何もありません。」
夕日が背中側にあるため私の影が向き合った彼女にまで伸びている。強い風に吹かれ濡れた服が体にさらに張り付くのが分かり気持ちが悪い。
「これをお使いください。あとは俺が。」
「有難うございます。」
さすが騎士。ジン騎士団長の上着が私の体を覆い隠してくれ温かい。
肩に触れた彼の熱がやけに熱くも感じたのは風邪をひき始めている証拠なのだろうか。
ジンside
体中に稲妻が走った。
夕日に照らされた彼女の顔はただ冷静に噴水に落とした本人を見つめ、風になびかれる。今まで眼鏡で隠れていた力強く芯が通った瞳が俺の脳を支配する。
なんと美しい光景を目にしているのだろう。俺はなぜかそう思った。
水で濡れた制服は彼女のボディーラインを強調し、彼女に艶やかな色気をまとわせる。黒々とした髪の毛から落ちる水のしずくは上品に輝く宝石のように見える。
彼女の力強い芯と上品かつ艷やかな雰囲気に目を奪われ、思わず立ち尽くしてしまった。
ふっと正気に戻り彼女の恰好を隠すため近づく途中、一連の様子を眺めていた生徒たちにも数人か同じ現象になっている者共がいた。
今後彼女の周りに群がる虫どもが増える。そう確信した俺はそうそうに彼女を部屋に帰らせ、今後も変な気を起こした輩が彼女に近づかないよう守ると密かに心に誓った。
決意と同時に心で疼く浅ましい心に気づく。
彼女に支配されたい。
思い浮かんでは消そうとするが離れない。
おかしい。俺はノーマルな者だと考えていたため戸惑ってしまう。
気のせいだろう。俺は普通だ。そう言い聞かせ騒動を収めようと体を動かした。
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