異世界転生少女奮闘記

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第5章「新人傭兵」

第68話「最終試験2」

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 そして現在。私たちは必要なものをそろえ無線機のブローチを片手に学園に忍び込んだ。
 
「ごめんね・・・しばらくここで我慢してて。」

 何も罪のない子を縄でしあるのは忍びないが仕方がない。
 安全に一週間寝れる薬を飲ませ彼女の個室に寝かせた。一週間この部屋でお世話になります。


「こちらアス。無事なり替わることに成功したよ。そっちはどう?どーぞ。」
『こちらユウシャ。たった今彼女を捕まえたところだ。これから彼女の自室に向かい制服を借りる予定だ。どーぞ。』
『こっちはようやく試験の申請が終わったぜ。なー本当にこれでいいのか?暇だぞ?ドーゾ。』
「いいのヴァドはそれで。とりあえずこれから一週間はその子になり替わって授業受けたりご飯を食べる。くれぐもボロは出さないようにしよう。勝負を仕掛けるのは6日目に行われる最終入団試験の時。私とユウシャはそれぞれ騎士団長の部屋の場所や入り方、盗む対象がどこにいるのかを情報収集。ヴァドは6日目になるまで待機!」
「「了解」」

 さてと。今は朝の8時。彼女が履修している一限目の授業は歴史。指定された教室へ向かおう。
 彼女のカバンに今日受ける授業で必要なものを詰め込み部屋から出た。
 部屋を見る限り物は大切に扱う性格であろうと考えていたため、やけに汚れていた教科書に違和感を感じる。

 部屋から出た瞬間、ぺしゃりと頭に液体状のモノが垂れてきた。
 おそるおそる手を伸ばし触れてみるとぬめりけがある物体。泥だこれ。

 クスクスと笑い声が聞こえる方へ眼を向けると、が口を歪め取り巻きを周りに従えている。
 彼女たちの表情を見る限り、私に泥を投げつけた犯人であると分かる。

「ごきげんよう、地味子さん。」
「教科書はご無事ですの?新しいもの買って差し上げましょうか?」

 なるほどね。これは資料に書いてなかった。
 なり替わった女の子、ちゃんは学園長の娘に目をつけられてたのか。
 
 何か言い返したいけど絶対逆鱗に触れちゃう。
 ああいうタイプは無視が一番効くものだ。さー授業にいこーっと。

「ちょっと待ちなさいよ!私を無視するつもり?!」
「あ!逃げたわよあの子!」

 全速力ダ‐ーーっシュ!!
 にゃははは焦っているお貴族様は面白いなあーー!

「いった!!」
「っ!」

 油断した。そりゃあ学園の校舎を全速力で走ってれば人にぶつかるわな。
 丁度巻いたと思った瞬間、曲がり角で人とぶつかってしまった。 
 背後に襲う衝撃に備えたが、いつまでもこない。
 
「・・・あれ?」
「すまない。大丈夫か君。」

 顔数センチの近距離で強面の男が心配そうにのぞき込んできた。
 ・・・この人は、資料でみた。

「はい大丈夫です!すすすいません私の方こそ!!」
 
 動揺を隠すなど鼻から頭になかった。
 いや、隠す方がおかしいのか。

 腰に回された逞しい腕から逃れたくて、慌てて体制を立て直し距離を取る。
 そして支えてくれた相手を瓶底眼鏡越しからじっくり観察をした。

 目の堀が深影を落とし、鋭く突きさすような三白眼が今は困惑の色を浮かべている。
 大きく傷跡が唇の上にあり少し不整合で歯が見える。紅く燃え上がる髪の毛はサイドを刈り上げトップの髪は後ろに撫で付けられている。

「カバンの中身が出てしまったな。」

 言われて気づく。中身が全て床にぶちまけられ、あと少しで始まりのチャイムがなる。
 慌てて一緒に教科書を拾い始めようとしたら、偶然にも手が重なってしまった。
 また謝ったが相手からの返事がない。
 不思議に思い動かない彼の顔を覗き込むと、、、まあ、ゆでだこみたいになってました。

「っす、まない!決して私は、その、柔らかいなとか。いいにおいがするなとか考えてはいない!」

 全部正直に話しちゃってんじゃん。
 案外ちょろいのか???この「騎士団長」。でもここ女子学園だぞ?

 この強面の名は『ジン』。ここの国の騎士団長としてこの学園を守っており、今回の任務で重要になってくる。
 しかしこの騎士団長。女性に慣れていない様子だ・・・漬け込んでみるか?

「あ、いえ。拾ってくれてありがとうございます。あの、お名前をうかがっても・・・。」
「私は名乗るものじゃありません!それでは・・・。」


 ありゃー警戒心鬼つよだなさすがに。
 でも積極的に仲良くなった方が有利にことが進みそう。

 一限目二限目の授業をこなした後、人気の少ない中庭へと向かった。
 事前調査でノエルちゃんはこの場所でご飯を食べていたためである。
 学食はあるが恐らく学園長の娘のせいで使えないのだろう。友達がいないのもそのせいだ。



 もくもくとサンドイッチを食べていると誰かが荒々しくこちらに近づく音があった。
 やけに聞いたことがある足跡だ。

「よう!元気か?」
「・・・はじめまして。急に距離が近いですね。」
「おっと、そ、そうだ俺は距離が近い人間なんだ。」

 動揺を隠せないに内心ため息をつく。
 相変わらず嘘がへたくそである。

「見たことない顔ですね。騎士の試験を受ける人ですか?」
「申し込みはした。訓練はだりぃからサボってる途中」
「・・・・あっそうですか。」

 どこいても自由人であり野蛮人なのか。
 初対面であると演技しながら彼の行動を一応確認しておく。

「にしてもお前前髪あげた方がいいんじゃね?」
「ほおっといてください。個人の自由です。」

 急に前髪を上げようと伸びてきた彼の腕を必死に止める。
 一応顔は隠しておかないと身が危険だ。なぜならアスチルベ時代、嫌というほど顔は整っている方だと自覚したためだ。顔がイイと男であれ変な目で見られる可能性すらある。

「俺は見てぇ。」
「触らないでいただけます?」

 いつものように攻防戦を繰り広げていると、私の後ろから誰かの腕が伸びてきてヴァドの顔を鷲頭紙にした。

「女性に乱暴を働こうとするなど笑止千万。騎士の風上にも置けない行為だな。」
「!? あなたは・・・。」
「げえぇ!その声はジン?!」
「ジン騎士団長だ。あと敬語を使え新人。」
「も、モウシワケゴザイマセン。」

 いくら名の取った騎士団長とは言えヴァドの顔面を鷲頭紙にして持ち上げるなんて、、、。彼も化け物の部類だな。
 青筋を浮かべぎりぎりとヴァドを締め上げる巨体の騎士団長。

「あの、そろそろ話してあげてもいいと思いますが、、、。」
「いいのですか?この者は貴方に危害を加えようとしたのですよ?」
「そ、そうなんですがもう十分罰は与えたかと、」
「・・・分かりました。貴方に免じてこの愚か者を許しましょう。良かったな新人。」
「うす。」

 全く反省して無さそうな表情を隠せ小学生。
 ジン騎士団長はとっととヴァドを追い返すと私の座っているベンチのそばに立ち動かなくなった。
 すぐに立ち去るかと思っていたため戸惑ってしまう。

「・・・あの、お昼ご飯は食べに行かないのですか?」
「お気になさらず。俺はこの学園の秩序を守る任務があるので。貴方の優雅なお昼ご飯時間を守るのが最優先です」
「それはいけません。私なんぞ平民出身ですので高貴な騎士様に守ってもらう資格などないのです。」
「俺も平民の成り上がりです。」
「ならば立場は平等です。私は高貴な人々のために学ばねばならず、貴方は高貴な人々のために鍛えねばなりません。」
「・・・・高貴な方。」
「ええ。世間一般で言われる貴族ではありません。自身が仕えたいと思える高貴な心を持つ人の事を言ってます。」

 ようやく彼と目が合った。
 目のうろこが取れたような顔をし、まじまじと私を見つめる。

「、、、そう、ですね。ではここで食べてもいいですか?」
「もちろんです。」

 かしゃんと彼の身にまとっていた鎧が音を鳴らす。
 僅かな感覚を開け同じベンチに座り、懐からパンを取り出す。
 一口が大きく、私であったらなん十口も噛まないと食べきれないパンを僅か数口で食べている。
 男性はやはり女性とは違うなあ。と性差があることをまた実感していると、眉間のしわをさらに深くひそめ気まずそうにしている彼と目が合ってしまった。

「、っなにか私の顔についていますか?」
「あ、いえごめんなさい。」

 しまったついしっかりと観察してしまった。
 ぱっと目をそらしとっさに頭を回転させる。

「お幾つなのかなっと、、、」
「は?ああ、、、26です。」

 何の質問してるんだろう、、、。
 やばいなんか会話しないと。

「あ、熱くなりましたよね最近。」
「どうして助けを求めないのですか?」
「へ?」

 突然の質問に一瞬何を言っているのか理解できなかった。
 しかし今日彼と出会ってその質問が出てくるということは、今朝の事を指しているのだろう。

「えーっと、いじめ、の事ですか?」
「はい。」
「助けを求めても無駄ですから。」
「なぜ?」
「いじめはなくなりません。狭い世界に閉じ込められたらどうしても排除される存在は一人出てしまいます。今回の場合私がその対象になっただけですので。」
「不思議です貴方は。」

 焙られた干し肉をしばらく咀嚼し飲み込んだ後言葉を紡ぐ。

「見た目とは裏腹に心の底では力強く輝く何かがある。見た目と中身が一致していない。・・・以前のあなたはこんな矛盾していなかった。」

 っは?まてまてノエルちゃんとジン騎士団長なんて交流全くないんじゃないの?
 いや、情報を信じろ。

「私は貴方と今日初めて会ったと思っていたのですが。」
「・・・。」

 ん?待てよ?
 もしかして・・・。

「私がいじめられていたのを傍観していたのですか?今朝の時だけじゃない。ずっと前から。」
「・・・。」
「無言は肯定ということですね。なるほど。」
「怒らないのですか?」
「その質問が出てくるということは罪悪感は持っているのですね。怒りませんよ。貴方が動いてもいじめはなくなりません。立場というものが邪魔をします。平民出身ならば猶更です。すぐに辞職をさせられるかもしれませんし。」
「、、、立場なんてあやふやなものに縛られるのは癪です。」

 この騎士団長初対面の私に色々としゃべりすぎでは?
 私が貴族にチクればすぐに国家反逆罪で物理的な首が飛ぶ。

 ま、チクらないけどね。




 以降奇妙なお昼時間が続くことになった。
 



 
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