異世界転生少女奮闘記

第5章「新人傭兵」

小話3

センシ目線

　ゲルド教官のもと訓練を初めてだいぶ時が流れた。
　毎日が過酷でマホウツカイ達にも疲れが見え始めている。
　
　そんな訓練を軽くこなすユウシャ。相変わらず超人じみた実力で上位を走り続けている。
　追いつけねえな・・・。
　ふとそんな考えが頭をよぎる。


「どりゃあああああ!!」
「させるかよ!」

あれは、アスとヴァドだ。

　すっかり夜が更け、だれも訓練場には残っていないとおもっていた。明かりを一か所にだけともし、ヴァドを相手に対戦している。
　彼の動きは最近格段に素早くなり、急所を正確に狙うようになってきた。
　常に最下位だった彼は着実に実力をつけ、どんどん人をぬかしていく。

「向き不向き、か。」

　先程言われた言葉が何百回も俺の脳内で再生を繰り返している。
    









「おい糞虫。」
「は、はい!」
「今日の最下位はてめえだ。」
「……はい。」

　分かってんだよ。俺に戦闘の才能がねぇって事ぐらい。見た目だけのハリボテだ。
　村にいた時はユウシャの次に強い奴は俺しかいなかった。それで満足だったんだ俺にとっては。
　広い社会では俺よりも、ユウシャよりも強いやつは5万といる。


気づいちまったんだよ。

「ここにいるべきか悩んでんだろ。」
「はい。俺、このギルドに入って第一傭兵団にはいりたいっつー夢持ってたんですけど、ほんとにそうだったのかなって。」
「・・・正直言っててめえのセンスは壊滅ってほどではない。だがな、それだけだ。平凡だから最下位付近を彷徨っちまう。」
「そっすよね。・・・ユウシャと住んでるとこも食べてるもんも同じなのに、、」
「残念だがこの世には向き不向きがある。てめえは向いてなかった。」

　ゲルド教官は決して訓練生に飴をくれねえ。冷酷に現実を突きつける。
　だが、俺にとって逆にそれが良かったのかもな。

　心の整理が少しづつついてきた。

「ゲルド教官。ありがとうございました。」
「礼を言われることはしてねえよ。」









　焚火を囲んで俺ら三人は座り込む。
　長いようで短かった鬼の訓練生活に思い出話を咲かす。


「センシ。私たちも同じこと考えてた。」
「結局、ユウシャのお荷物になるだけだった。」
「・・・楽しかったな。」

　マホウツカイも、ソウリョも満足気な笑みを浮かべていた。
　俺たちは、長年ユウシャとともに目指してきた夢を、諦めた。