異世界転生少女奮闘記

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第5章「新人傭兵」

第61話「仲がいいのか悪いのか」

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 さて困りました。肝心の捕虜作戦。
 なんと爺さんを攫うまでは合致していたのに・・・。
 
「だから、ユウシャ君には申し訳ないけども、この石像を盾におびき寄せて爺さんだけ捕まえれば戦闘を避けれるじゃん!確実だよ確実。」
「断る。第一そううまく爺さんをおびき出せるとは保証できない。加えてこの石像、いやこの遺跡を傷つけることは同じくビクトリア様を崇拝する俺も許さない。」
「なんでもいい。とりあえずあいつら全員ぶっ飛ばせばいいんだろ?」

 ユウシャ君は頭は切れるが今回ばかりは分が悪い。敵方と同様ビクトリア信者だったのだ。対して私は無宗教派。
信仰するがゆえに生まれる弱点を利用しようとする私の意見と、信者なため石像を守ろうとするユウシャ君の意見が対立してしまったのだ。

 言い合いをしている様子を向こうが察知したのか、段々と距離を詰めてきている。

「とにかく。俺はここを離れ、一度っ。」
「ーーーーっ!!ーーっ、ーーーーーー!」

 喚き散らす爺さんの言葉。急に静かになったユウシャ君。
 みるみるユウシャ君の目が大きく開かれ顔色が青白くなっていくのがよく見えた。

「伏せろっ!!」





 次の瞬間には後頭部をフードごと乱暴にひっつかまれ、地面にたたきつけられていた。
 脳を震わすほどの爆発音がすぐ後方で鳴り響き、粉々に砕け散った柱がパラパラと頭に降ってくる。

「この、、、外道どもめ。」

 腹の奥から出た低い声とともに、私の頭を押さえていたユウシャ君の手が離れていく。
 攻撃したのだ敵方が。自分たちが信仰しているはずの像が直ぐそばにあるにもかかわらず、だ。

「不意打ちなんざ男が廃るな・・・おいW。」

 ぶち切れ寸前の男二名がゆらりと立ち上がる。ゆっくりと遺跡の前に出ていくと一呼吸置いて・・・。

「「ぶち殺す」」

 
 吐き出した言葉がシンクロし、それぞれ左右の方向に飛び出していった。

 流れるような剣さばきで相手を切り伏せるユウシャ君は優雅だ。時々敵方の眉間に直径一センチほどの穴が開き倒れていくのが見えた。相当怒ってるわこれ。水の銃弾で射抜いているのだ。初対面の時、彼の得意魔法は水であることは分かっていた。おそらく剣で目の前の敵を切り伏せながら、周囲に水を発生させる。そして目にも見えぬ速さで放出し、ヘッドショットを決めているのだ。

 一方ヴァドの戦いはまさに嵐のごとく暴れまわっている。全身に炎をまとわりつかせ、近くに来た者を見境なく吹き飛ばす。逃げようと試みるものがいたならば腕から鎖状の火の塊を出して足に絡ませ動きを封じ、蹴り飛ばす。この炎鎖は私が毎日逃げ出すので動きを封じる策として思いついたそうだ。最強で最凶である。

「頑張れ二人とも・・・。」

 あの中私が参戦しても足を引っ張るだけなのでおとなしくすることにした。
 周りを蹴散らしてくれている間、わたしは捕獲対象である爺さんを探しておこうと周囲を見渡した。

 爺さんを守るかのように固まった敵方をヴァドが相手しているのが見えた。自分の仲間を盾にして逃げ出した爺さんの姿に呆れつつ、おかげで一人になったとチャンスを逃さないため走った。

「はーい爺さんちょっとストップ。」

 急に頭上から登場した私に動揺したのか腰が抜け地面に座り込んでしまった爺さん。また訳の分からない言葉を喚きながら必死に杖をぶん回している。
 恐らく周りに助けを求めながら威嚇してると思う。

「おとなしくしてねーちょっと痛いだけだから。」

 遠慮なく咽喉ぼとけあたりを一突きし、気絶させる。

 そして私も後ろから忍び歩いてきた敵に捕まった。

 いやテンポいいな。
 
「ーーーっ!」

いやー完全に油断してた。男は大声でヴァドとユウシャ君に向かって何かを叫ぶ。
 二人とも雰囲気を感づき動きを止めた。その場にいた全員が私と男に注目する。

「ーーー、ーーーー!!」

 多分抵抗をやめないとこいつを殺すぞ、とか脅してんでしょ。
 二人はまんまと捕まった私に呆れたのかジト目でにらんでくる。

 ごめんってば。今抜けまーす。

 乱暴にフードがはぎとられ、私の顔が皆の前でさらけ出される。
 まあ、顔あまり見られないようにしてるから対して変わらないんだけどね。
 でもね・・・アスチルベ時代いかに自分の顔が整っている方か理解したからさ。生きるためだ。

「・・・痛い。」

 吊り上がっている目じり、眉尻を最大限まで下に下げるよう心掛け、あざとく下から後ろの男の顔を覗き込む。うまく男のツボに入ったみたいで、ちょうどお尻あたりに来ていた男の下半身が少し動いた。

「潰れろ。」

 思いっきり力を籠め、膝を下半身に直撃させる。情けない悲鳴を上げ、男は大事なところを抑えて崩れ落ちた。

「ぎゃはははWWW」
「・・・・ご愁傷様。」

 二人もまだあっけにとられている敵方をまた倒し始め、また乱闘が始まった。
 その間に気を失っている爺さんを背負い二人のもとへ向かう。

「ヴァド、ユウシャ君!テレポートするよ!」
「じじいじゃねえか!手際いいなてめえ!」
「、まあそろそろいい時間だし、移動するには俺も賛成だよ。」

 テレポートを発動させるには魔法石を持っている人の体の一部には触れなければいけない。
そのため戦いながらこちらに近づいていく必要があるため、自然と背中を合わせる形態になる。

「いくよーっ!うわっ!」

 どこからか火の弾が飛んできたが、すぐに水と炎でかき消されていった。
「「邪魔するな」」

 また言葉をシンクロさせると、、、先ほどから繰り広げていた魔法よりも数倍・・の威力で相手を蹴散らした二人。

「なんだまだ本気出してなかったんだ二人とも。流石ですわ。」

 苦笑しつつ後ろを向くと、魔法を発動させた張本人たちが一番驚いていたのが見えた。
 僅かな疑問を持ちつつ魔法石を発動させ、無事任務をこなし生還したのだった。

 
 

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