異世界転生少女奮闘記

第5章「新人傭兵」

小話1

　とある男side
　



「・・・・なにやってんだあれ。」
「さあ？頭がおかしくなったんじゃないですか？」

　面倒な会議へ久々に参加し、帰路についているときだった。
　訓練生は疲れ果てて寝ている時間だというのに、一ヶ月前に連れてきた例のガキと成績優秀で嫌でも噂が耳に入ってくる野郎2人が、訓練場に残って何かをやっている。
　鼻につく笑みをいつものように浮かべているウォレッドという男は、あざ笑っている。
　やけに青白く目元の深い隈がさらに不気味さを醸し出している。

　いい・・性格をしているところが気に入っている。

「そういえばあの子がもし1位を取れなかったらどうするんです？」
「あ？」
「結局第13傭兵団に入れるんでしょう？」
「・・・必要のない奴は入れる気はねえ。俺にとって最大限に活用できる道を提案してやったがな。」
「ふーん。拒否して自ら茨の道を進んだんだあの子。」

　最初は甘ったれたやつだと心の底から軽蔑していたが・・・あの鬼畜野郎の行う過激な訓練にしがみついている姿勢を見ているとどうも違うらしいと分かった。

「どうやら意外と骨がある奴だったらしいな。」

　俺の目から逃れず、まっすぐと見つめるガキの瞳。
　恐怖心を抱いているくせに必死に抑え込み真正面からぶつかってくる。

　心臓の奥にくすぶっている本能をいちいち刺激してくるガキだな、っとその時考えていた。
　

「うっわ、団長・・。….今自分がどんな顔してるか分かってます？」

　鳩尾に肘を食らわしたつもりだがウォレッドは難なく避ける。
　明かりがともっている訓練場から目線をそらし足早に自室へ向かった。



　無意識に吊り上がった俺自身の口角に違和感を覚えながら。