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第5章「新人傭兵」
第55話「はあ、やってらんねえ」
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「まさか二つの返事で承諾してくれるとはな。言っちゃあ悪いが意外だな。ゲルド。」
「ふん。」
「あの小僧は今後も重要な人物になる。くれぐれも死なせるなよ。」
「ああ。みっちり教育してやるから安心しろ。」
「それが怖えんだよ。ほどほどにしろほどほどに。」
畳のひかれた和室にそぐわない迷彩柄の軍服を着た男と、東洋の大陸から輸入した酒をひょうたんから直飲みしている男が話している。
「団長の様子は。」
「相変わらずギルド長と言い争いしている。第13隊団は高難易度の依頼を押し付けられるくせに報酬の四割はギルドに持ってかれる。不満を垂れるのも無理はねえ。」
「前回の物資支援もないに等しい状態で戦のど真ん中に突入させられた時は、ぶっ殺そうかと思った。」
「ま、生きているだけでも儲けものさ。私も君も、本来死んでいるはずだったしな。」
「・・・。」
それぞれ持っていたアルコールを煽り、過去を想い出す。
おはようございます。
今日はいったい何をやらされるかと思ってさ、広間に行ったんよ。
明らかに人数が少なくなってるって感じ。
まあ、初日から現実突きつけられるわ、人間不信になりかけるわ大変だったしな。
ようやく本格的な訓練が始まり、基礎体力を鍛えるため過酷な鍛錬メニューを渡される。
「え、、しぬよ?」
「まあこれくらいなら頑張れるんじゃない?」
「女子はずりーよなー、俺たちの課されたメニューの半分じゃねえか。」
「やっぱり、アスは男・・・。」
「性別が女と言われても違和感ないわね。」
後ろうるさいぞー。女言うなバレたかとひやひやしちゃうから。
あと少しづつユウシャ君が私に対して冷たい態度をとるようになった。
初日だったら励ましてくれたが、今日はこれくらい当然でしょというニュアンスを含んで頑張れと言った・・・気がする。いや、被害妄想かも。
「メニューを上からこなす。走れ糞虫ども。」
「「「「サーイエッサー!!」」」」
無事胃の中がひっくり返りました。つんとした感覚が鼻に来たと思った瞬間、ひっくり返りましたよええ。
最初のメニューですべての体力を使い果たすのはいかがと思いますがね?
「遅い!走れ愚図!」
遠慮のない罵倒。愚図とは私の事です。そりゃあ傭兵にあこがれて訓練してきた男どもに何も考えてない女の私が勝てるはずもなく、見事最下位を独占中。
みんながゴールして水分を取っている中一人で走っています。
「おいアス頑張れよ!」
「いいってセンシ。ほおってこう。」
「あ?なんだユウシャ。喧嘩でもしたのか?」
「そんなわけない。ほらやっぱ自分を乗り越えないと成長できないっていうしさ。」
「なるほどなー、さすがユウシャ!考えていることが違えな!」
聞こえてるぞぉあんたら。
てか明らかな敵意で草超えて森。
いつまで走らされんのこれ、、、なんかゲルド教官逆に楽しんでない?
心なしか生き生きしてない??
「腕立て伏せ!!」
やり切ったけど腕破壊。
「スクワット!」
無理。見事教官と一対一で個別指導。
この調子で他の子と比べて明らかに劣る体力をあざ笑い始めた訓練生達と、心配してくれるそぶりを見せる訓練生達。双方自分より劣る存在がいることで余裕が出たのか、他人を心配し始めたりあざ笑ったりしている。
「愚図め。貴様ほど基礎体力がない者は初めてあったぞ。残りのものは休憩!愚図は俺と特訓だ有り難く思え。」
げえ~……。
「返事は」
「サー!イエッサー!!」
「ああああ、もう無理っす!!」
「ふむ。もう夕食の時間か。今日はここまでだあとで団長の部屋に行くことを忘れるな。」
もー、むり。なんも考えられない。
ヘロヘロのまま食堂へ向かうと、丁度ユウシャ君たちに出会った。
「よう!しごかれてるか?」
「うるっさいな。センシ君だって今日いっぱい怒られてたじゃん。」
「フード取った姿初めてみたわ。意外とかっこいいじゃない!」
「かっこいいというよりカワイイ系統ね。」
「はいはい。そういえばユウシャ君は?」
「向こうで先輩と話ししてる。なんか強い先輩に目をつけられて親しくなったみたい。」
三人のテーブルよりもっと奥の方で屈強そうな先輩と楽しそうに会話しているユウシャ君が見えた。
うっわあれだこれ。精一杯先輩との交流を深めてなんとか優秀なコネを作ろうとしている感じだ。わかるかな。複雑な気持ち。
「おいアスじゃねえか!飲むか?」
「げ、、、ドグロさん。」
「その反応はないぜぇ、お?コイツラ新人か?」
「ど、どドグロさん!?初めまして俺、センシと言います!!」
センシをふくめ三人が慌てて立ち上がり自己紹介し始めた。
「なるほどね~おめえらがアスの同僚か。良かったなアス!」
グシャグシャと頭を掻き混ぜられる。おいてめえもし私が女のコの姿だったら度付き回してるぞ。
「初めましてドグロさん。俺の名前はユウシャと言います。兼ね兼ね貴方の好評や話は聞いておりました。」
「てめえもアスの知り合いか?」
「はい。仲良くやらせていただいております。」
グイグイと詰め寄るユウシャ君。さり気なくアピールし、私とドグロとの距離を遠ざける。
うっわー、、、
「センシ君はなんか食べた?」
息苦しすぎてついセンシ君の首に腕を回し自ら二人との距離を離す。
「うおっ!?え?え?」
「おっし奢るから注文しに行こうぜ!」
「お、おう!!」
耳まで真っ赤にしまったセンシ君を引き連れ席を外す。後に女子二人がコソコソはなしていたらしいが知らん。
「…これは、自覚し始めちゃったのかもね。」
「うん。やっぱ美形って罪。センシ、これから大変そう…。」
「優しく見守ってこうね私達。」
そう静かに決意を固めた女子二人。
そしてアスに明らかな敵意が芽生え始めている男一人。
アスから女の子みたいないい匂いと、首に回された二の腕が予想以上に柔らかくて動揺している思春期真っ只中の男一人。
これから上手く生きていけるか将来が心配な男装女子一人。
「ふん。」
「あの小僧は今後も重要な人物になる。くれぐれも死なせるなよ。」
「ああ。みっちり教育してやるから安心しろ。」
「それが怖えんだよ。ほどほどにしろほどほどに。」
畳のひかれた和室にそぐわない迷彩柄の軍服を着た男と、東洋の大陸から輸入した酒をひょうたんから直飲みしている男が話している。
「団長の様子は。」
「相変わらずギルド長と言い争いしている。第13隊団は高難易度の依頼を押し付けられるくせに報酬の四割はギルドに持ってかれる。不満を垂れるのも無理はねえ。」
「前回の物資支援もないに等しい状態で戦のど真ん中に突入させられた時は、ぶっ殺そうかと思った。」
「ま、生きているだけでも儲けものさ。私も君も、本来死んでいるはずだったしな。」
「・・・。」
それぞれ持っていたアルコールを煽り、過去を想い出す。
おはようございます。
今日はいったい何をやらされるかと思ってさ、広間に行ったんよ。
明らかに人数が少なくなってるって感じ。
まあ、初日から現実突きつけられるわ、人間不信になりかけるわ大変だったしな。
ようやく本格的な訓練が始まり、基礎体力を鍛えるため過酷な鍛錬メニューを渡される。
「え、、しぬよ?」
「まあこれくらいなら頑張れるんじゃない?」
「女子はずりーよなー、俺たちの課されたメニューの半分じゃねえか。」
「やっぱり、アスは男・・・。」
「性別が女と言われても違和感ないわね。」
後ろうるさいぞー。女言うなバレたかとひやひやしちゃうから。
あと少しづつユウシャ君が私に対して冷たい態度をとるようになった。
初日だったら励ましてくれたが、今日はこれくらい当然でしょというニュアンスを含んで頑張れと言った・・・気がする。いや、被害妄想かも。
「メニューを上からこなす。走れ糞虫ども。」
「「「「サーイエッサー!!」」」」
無事胃の中がひっくり返りました。つんとした感覚が鼻に来たと思った瞬間、ひっくり返りましたよええ。
最初のメニューですべての体力を使い果たすのはいかがと思いますがね?
「遅い!走れ愚図!」
遠慮のない罵倒。愚図とは私の事です。そりゃあ傭兵にあこがれて訓練してきた男どもに何も考えてない女の私が勝てるはずもなく、見事最下位を独占中。
みんながゴールして水分を取っている中一人で走っています。
「おいアス頑張れよ!」
「いいってセンシ。ほおってこう。」
「あ?なんだユウシャ。喧嘩でもしたのか?」
「そんなわけない。ほらやっぱ自分を乗り越えないと成長できないっていうしさ。」
「なるほどなー、さすがユウシャ!考えていることが違えな!」
聞こえてるぞぉあんたら。
てか明らかな敵意で草超えて森。
いつまで走らされんのこれ、、、なんかゲルド教官逆に楽しんでない?
心なしか生き生きしてない??
「腕立て伏せ!!」
やり切ったけど腕破壊。
「スクワット!」
無理。見事教官と一対一で個別指導。
この調子で他の子と比べて明らかに劣る体力をあざ笑い始めた訓練生達と、心配してくれるそぶりを見せる訓練生達。双方自分より劣る存在がいることで余裕が出たのか、他人を心配し始めたりあざ笑ったりしている。
「愚図め。貴様ほど基礎体力がない者は初めてあったぞ。残りのものは休憩!愚図は俺と特訓だ有り難く思え。」
げえ~……。
「返事は」
「サー!イエッサー!!」
「ああああ、もう無理っす!!」
「ふむ。もう夕食の時間か。今日はここまでだあとで団長の部屋に行くことを忘れるな。」
もー、むり。なんも考えられない。
ヘロヘロのまま食堂へ向かうと、丁度ユウシャ君たちに出会った。
「よう!しごかれてるか?」
「うるっさいな。センシ君だって今日いっぱい怒られてたじゃん。」
「フード取った姿初めてみたわ。意外とかっこいいじゃない!」
「かっこいいというよりカワイイ系統ね。」
「はいはい。そういえばユウシャ君は?」
「向こうで先輩と話ししてる。なんか強い先輩に目をつけられて親しくなったみたい。」
三人のテーブルよりもっと奥の方で屈強そうな先輩と楽しそうに会話しているユウシャ君が見えた。
うっわあれだこれ。精一杯先輩との交流を深めてなんとか優秀なコネを作ろうとしている感じだ。わかるかな。複雑な気持ち。
「おいアスじゃねえか!飲むか?」
「げ、、、ドグロさん。」
「その反応はないぜぇ、お?コイツラ新人か?」
「ど、どドグロさん!?初めまして俺、センシと言います!!」
センシをふくめ三人が慌てて立ち上がり自己紹介し始めた。
「なるほどね~おめえらがアスの同僚か。良かったなアス!」
グシャグシャと頭を掻き混ぜられる。おいてめえもし私が女のコの姿だったら度付き回してるぞ。
「初めましてドグロさん。俺の名前はユウシャと言います。兼ね兼ね貴方の好評や話は聞いておりました。」
「てめえもアスの知り合いか?」
「はい。仲良くやらせていただいております。」
グイグイと詰め寄るユウシャ君。さり気なくアピールし、私とドグロとの距離を遠ざける。
うっわー、、、
「センシ君はなんか食べた?」
息苦しすぎてついセンシ君の首に腕を回し自ら二人との距離を離す。
「うおっ!?え?え?」
「おっし奢るから注文しに行こうぜ!」
「お、おう!!」
耳まで真っ赤にしまったセンシ君を引き連れ席を外す。後に女子二人がコソコソはなしていたらしいが知らん。
「…これは、自覚し始めちゃったのかもね。」
「うん。やっぱ美形って罪。センシ、これから大変そう…。」
「優しく見守ってこうね私達。」
そう静かに決意を固めた女子二人。
そしてアスに明らかな敵意が芽生え始めている男一人。
アスから女の子みたいないい匂いと、首に回された二の腕が予想以上に柔らかくて動揺している思春期真っ只中の男一人。
これから上手く生きていけるか将来が心配な男装女子一人。
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