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第5章「新人傭兵」
第54話「負けるはずがない」
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先に攻撃を仕掛けたのはヴァドだった。
地面をけってありえない高さまで跳躍し、ゲルド教官に向かって膝蹴りをくらわそうとしてた。
難なくよけた彼は、カウンターとしてヴァドの後頭部に肘をくらわす。
「いで!にゃろう!」
戦闘民族の身体能力ってどうなってんの?地面に腕をついた瞬間に上体を起こし、距離をとる。
脳をふるわせられたのか少し頭がふらふらしている様子だった。
「ヴァド。一人で倒せるほど彼は弱くありません。手伝います。」
「いい!俺がやる!」
「・・・こんの糞餓鬼が。」
おっと聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気がする。こっわ。
結局ワトさんも参戦し、まさに阿吽の呼吸で攻撃を交互に繰り返す。
前線でヴァドが戦い、後ろからワトが回復や補助魔法をかけ、時々目くらましのために教官に攻撃を繰り出す。
二対一という劣勢の状態であるのも関わらず教官はほぼ互角、いや余裕さえ見せて応戦している。
「・・・なるほど。この餓鬼は自身の身体能力に身を任せ、貴様は補助の役割をしているのか。」
「なにか問題でもありますか?」
「あ?補助?」
双方再び呼吸を整えるため距離を取る。
「ンゴンドロ族の末裔は何を目的にこのギルドへ?」
「おいおいw、個人情報は聞かないんじゃなかったか?」
「別に。話したくなければいい。」
肩をすくめ構えを取り直す。
「糞虫に引っ付いている寄生虫は戦闘に参加しないのか?」
明らかな嫌味を影を薄めていた私に投げかけてきた。
寄生虫・・・めっちゃ図星で草。
だってだってこの戦闘に私参加しても邪魔しちゃうだけなんだもん。
「僕の役目はここじゃないのでおとなしくしときまーす。」
「・・・。」
何かを考えているのか、私の方をちらりと見た。
その隙を見逃すものはいない。
ヴァドとワトがすかさず攻撃を仕掛けた。
ですよね・・・。明らかに戦闘慣れしてる人が隙を作るはずがないもんね。
あっけなく二人はダウンさせられ、ゲルド教官はこちらを見たまま近づいてきた。
「貴様を少し見くびっていたようだ。今だ成人していないと思っていたが、精神は少々成熟しすぎている。不思議な寄生虫だな。」
「あざーす。・・・いや近づいてこないでください。いっそ一瞬で気絶させてください。」
「すぐに死ぬはずだった貴様がなぜ団長の弟子として認められたのがずっと疑問だった。俺が唯一尊敬する団長の弟子の座をなぜこんな弱い糞虫に与えられたのか。」
どんどん近づいてくる教官。
「ただの愛玩道具だと思っていたが、どうやら違うようだ。さっさと犯して精神的に殺そうと思っていたが、調教次第で化ける素質があるな。」
何気に凄いこと聞いたぞ??犯す??殺す??調教?
刺激しないようゆっくりと後ずさりしたが間に合わない。
木の幹まで追い詰められ、逃がさないよう頭のサイドに両手を置き、足の間に彼の太ももが割り込む。
見事閉じ込められ、彼の顔から目が離せない。
黒いサングラス越しに見える彼の眼には狂気がくすぶり、私をのぞき込む。
「俺が直々に教育者となってやろう。」
地に這う低い声。
乙女ゲームだったら絶対ときめいているシーンだけど、この場合ただの死刑宣告されてるだけだぞ?
あっははー無理だ、生きていける気がしねえ。
無事に砲撃がやんだ。
ゲルド教官はさっさと二人を蹴り起こした後、他にいる教官に指示を出し怪我を負った訓練兵の回復を専念させた。
「この二グループは+10。砲撃の場所を割り当てたグループは+5点。」
「アス!!大丈夫か?何が起こったんだ?」
陣地を守ってくれていたユウシャ君たちに現状を説明した。ユウシャ君たちはひたすら耐えていたらしい。おかげて支給された食料は無事であり、すっかり夜が更けってしまったなか温かいシチューを作ることができた。
「お疲れ様アス。点数もらえたなんてすごい。」
「ナイス!おかげでまた一歩前進で来たわ!」
うれしそうな女子二人。センシ君は戦い疲れたのか、さっきからいびきをかいている。
「・・・。」
「ん?どうしたのユウシャ君?」
表情が曇っているユウシャ君に思わず声をかけた。
「いや、何でもない!今回も助けてくれてありがとうアス。俺たちはなんもできていないのに君はすごいな。」
「僕は何もやってないよー。魔力も筋力もないし。」
「・・・まあ、得意不得意あるし、大丈夫。今度こそ、僕らが頑張るさ。」
「うん。頼りになるよ。」
「それじゃあ俺はもう寝るね。明日のために。おやすみ。」
そそくさと気まずそうにセンシ君の隣に横になったユウシャ君。
なんか引っかかるけどまあいっか。
No side
俺は、この町で一番強く、賢かった。
皆が俺に憧れ、尊敬した。
俺の仲間も一人を除いて全員が俺に憧れついてきた。
だが、実際このチームが優位に立っているのはこの謎の人物のおかげだった。俺じゃない。
俺以上に頭が切れ、どこか上から俺たちを客観視しているような態度。
鼻につく。
他の三人は何も思わないのか、彼をも尊敬しはじめ受け入れている。
やめてくれ。
お前らが尊敬するのは俺だけだろう?
筋力も魔力もない弱い存在に俺というものが負けるのか?
嫉妬をしている俺にも嫌気がさす。
やめよう。俺はこんな汚い感情は持ちたくない。
今までが偶然の重なりだったのだ。
俺が、負けるはずがない。
地面をけってありえない高さまで跳躍し、ゲルド教官に向かって膝蹴りをくらわそうとしてた。
難なくよけた彼は、カウンターとしてヴァドの後頭部に肘をくらわす。
「いで!にゃろう!」
戦闘民族の身体能力ってどうなってんの?地面に腕をついた瞬間に上体を起こし、距離をとる。
脳をふるわせられたのか少し頭がふらふらしている様子だった。
「ヴァド。一人で倒せるほど彼は弱くありません。手伝います。」
「いい!俺がやる!」
「・・・こんの糞餓鬼が。」
おっと聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気がする。こっわ。
結局ワトさんも参戦し、まさに阿吽の呼吸で攻撃を交互に繰り返す。
前線でヴァドが戦い、後ろからワトが回復や補助魔法をかけ、時々目くらましのために教官に攻撃を繰り出す。
二対一という劣勢の状態であるのも関わらず教官はほぼ互角、いや余裕さえ見せて応戦している。
「・・・なるほど。この餓鬼は自身の身体能力に身を任せ、貴様は補助の役割をしているのか。」
「なにか問題でもありますか?」
「あ?補助?」
双方再び呼吸を整えるため距離を取る。
「ンゴンドロ族の末裔は何を目的にこのギルドへ?」
「おいおいw、個人情報は聞かないんじゃなかったか?」
「別に。話したくなければいい。」
肩をすくめ構えを取り直す。
「糞虫に引っ付いている寄生虫は戦闘に参加しないのか?」
明らかな嫌味を影を薄めていた私に投げかけてきた。
寄生虫・・・めっちゃ図星で草。
だってだってこの戦闘に私参加しても邪魔しちゃうだけなんだもん。
「僕の役目はここじゃないのでおとなしくしときまーす。」
「・・・。」
何かを考えているのか、私の方をちらりと見た。
その隙を見逃すものはいない。
ヴァドとワトがすかさず攻撃を仕掛けた。
ですよね・・・。明らかに戦闘慣れしてる人が隙を作るはずがないもんね。
あっけなく二人はダウンさせられ、ゲルド教官はこちらを見たまま近づいてきた。
「貴様を少し見くびっていたようだ。今だ成人していないと思っていたが、精神は少々成熟しすぎている。不思議な寄生虫だな。」
「あざーす。・・・いや近づいてこないでください。いっそ一瞬で気絶させてください。」
「すぐに死ぬはずだった貴様がなぜ団長の弟子として認められたのがずっと疑問だった。俺が唯一尊敬する団長の弟子の座をなぜこんな弱い糞虫に与えられたのか。」
どんどん近づいてくる教官。
「ただの愛玩道具だと思っていたが、どうやら違うようだ。さっさと犯して精神的に殺そうと思っていたが、調教次第で化ける素質があるな。」
何気に凄いこと聞いたぞ??犯す??殺す??調教?
刺激しないようゆっくりと後ずさりしたが間に合わない。
木の幹まで追い詰められ、逃がさないよう頭のサイドに両手を置き、足の間に彼の太ももが割り込む。
見事閉じ込められ、彼の顔から目が離せない。
黒いサングラス越しに見える彼の眼には狂気がくすぶり、私をのぞき込む。
「俺が直々に教育者となってやろう。」
地に這う低い声。
乙女ゲームだったら絶対ときめいているシーンだけど、この場合ただの死刑宣告されてるだけだぞ?
あっははー無理だ、生きていける気がしねえ。
無事に砲撃がやんだ。
ゲルド教官はさっさと二人を蹴り起こした後、他にいる教官に指示を出し怪我を負った訓練兵の回復を専念させた。
「この二グループは+10。砲撃の場所を割り当てたグループは+5点。」
「アス!!大丈夫か?何が起こったんだ?」
陣地を守ってくれていたユウシャ君たちに現状を説明した。ユウシャ君たちはひたすら耐えていたらしい。おかげて支給された食料は無事であり、すっかり夜が更けってしまったなか温かいシチューを作ることができた。
「お疲れ様アス。点数もらえたなんてすごい。」
「ナイス!おかげでまた一歩前進で来たわ!」
うれしそうな女子二人。センシ君は戦い疲れたのか、さっきからいびきをかいている。
「・・・。」
「ん?どうしたのユウシャ君?」
表情が曇っているユウシャ君に思わず声をかけた。
「いや、何でもない!今回も助けてくれてありがとうアス。俺たちはなんもできていないのに君はすごいな。」
「僕は何もやってないよー。魔力も筋力もないし。」
「・・・まあ、得意不得意あるし、大丈夫。今度こそ、僕らが頑張るさ。」
「うん。頼りになるよ。」
「それじゃあ俺はもう寝るね。明日のために。おやすみ。」
そそくさと気まずそうにセンシ君の隣に横になったユウシャ君。
なんか引っかかるけどまあいっか。
No side
俺は、この町で一番強く、賢かった。
皆が俺に憧れ、尊敬した。
俺の仲間も一人を除いて全員が俺に憧れついてきた。
だが、実際このチームが優位に立っているのはこの謎の人物のおかげだった。俺じゃない。
俺以上に頭が切れ、どこか上から俺たちを客観視しているような態度。
鼻につく。
他の三人は何も思わないのか、彼をも尊敬しはじめ受け入れている。
やめてくれ。
お前らが尊敬するのは俺だけだろう?
筋力も魔力もない弱い存在に俺というものが負けるのか?
嫉妬をしている俺にも嫌気がさす。
やめよう。俺はこんな汚い感情は持ちたくない。
今までが偶然の重なりだったのだ。
俺が、負けるはずがない。
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