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第5章「新人傭兵」
第51話「いざ新人研修」
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「今日から糞虫共の教育係になった。ゲルドだ。」
よく通る声が広場に届く。
鍛え上げた無駄のない筋肉から血管が浮き立ち、上につり上がった眉は有無を言わせない威圧を際立たせる。
「俺の配下になったからには一番を目指せ。他の糞虫共に負けることは許さねえ。
この新人教育期間である3ヶ月はこの五人で衣食住全てともにする。初めに忠告しておくが、これは協力し合うんじゃねえ。落とし合え。以上。一時間後にエリアBに集合。遅刻者は-50点だ。」
新人傭兵に人権は認められない。まだ日も出ていない早朝に叩き起こされ、恐らくこれからの訓練場になるであろう広場に集合させられる。
複数のグループに分けられ其々一人の教官が監視する。
迷彩柄がアイデンティティのゲルドさんは、最高なことに一番厳しい教官として有名であった。
この教育期間は実はこの傭兵団体に必要な人物であるかふるい落とす期間でもあり、当然脱落者も出てくる。この脱落者が一番出てしまう班は決まって、このゲルドさんが教官である所だ。
チームで行動するのに落としあえと爆弾発言をし、さっさと別の場所に行ってしまった教官。
「えーっと、自己紹介しますか!」
いかにもリーダー格の好青年が発言し、みんなの緊張が少し解けた。
リーダー格の青年の名前はユーシャ。少し口調が荒い青年の名はセンシ。剣術が得意で力持ち。よくしゃべるあの子はマホウで魔術に長けている。蝶を見ている不思議ちゃんの名前子ソウリョ。昔から回復魔法が得意らしい。
話してみると皆其々夢があり、どこにでもいる平和なチームであった。気まずい雰囲気は薄れ其々憧れる傭兵団の話に移った。
教育期間中基本的に100点を満点とする点数制の成績がつけられる。その点数は教官によってつけられ、成績の良い順に配属先が決まる。
一番与えられる点数が大きいものは実践を交えた模擬戦で優勝すること。所謂期末試験のようなもので、その順位と教育期間中の点数を合計して総合順位が決まるらしい。
「やっぱオレは一番隊かなー!」
「私も!!」
「アスはどこにするの?」
「え、僕?……えーと、まだ決まってない。」
「皆大体入りたい隊があるからこの傭兵ギルドに加入するから珍しいね」
「そ、そうかな~。」
どうやら出会い方が最悪だっただけ、この傭兵団は基本民衆から大人気のギルドであるらしかった。
「ねえ、どうして集合時間が一時間後だと思う?」
「それ思った!てっきり直ぐに訓練始まると思ってたからさー。俺気が抜けちまったぜ。遅刻するわけがねえ。」
「まあまあ。これはゲルド教官からの細やかな気遣いじゃないか?これから始まる厳しい鍛錬に備えて心を落ち着かせよう!」
…このグループ、なんて言えばいいのか分かんないけど、主人公気質があるタイプだ。あの、数年後に世界救っちゃう感じ。
だっていかにもツンデレな魔法使い(っぽい女のコ)と、天然な僧侶(以下略)。ちょいワル戦士(っぽい青年)と、目がキラキラした希望しか知らなそうな金髪勇者(っぽい青年)。
名前も役者名に沿ったような感じだし。
脳内で勝手に名前を漢字変換してしまう。
「てか、落とし合いってなに?終始何言ってたのか分かんなかった!」
「うーん。俺は良きライバルとして戦えってことだと解釈したよ。」
「だっせー表現。」
「私…なにか嫌な予感がするの。アス君はどう思う?」
「さあ??」
天然僧侶に話を振られてドギマギしてしている途中、異様な叫び声が別の広間から聞こえてきた。耳をよく傾けると剣と剣が激しくぶつかり合うような音も聞こえる。
「俺が様子を見に行ってくる。」
「俺も行くぜ。おかしいだろ普通にこの音は。」
「僕も付いてっていいか?」
「勿論だよ!女の子達はここで待ってて!」
叫び声が聞こえた方向へ足早に移動した。
「なんだ、これは?」
「俺ら、同じ訓練生同士だったよな?」
「……なるほどね。」
納得した。そういうことか。
「どういうことだよアス!説明しろよ!!」
「ポイントだよポイント。この教育期間は100点満点の成績だろ?一時間後の集合時間に遅れるだけで初っ端から-50点。これからの加点方法によるけど普通の場合、そこから挽回するのは無理。」
「それが何でこの意味わかんねえ状況につながるんだよ。」
「・・・なるほど、ね。」
「勇者君は察せたみたいだね。本来自分たちの実力で正々堂々と競うあうのが理想だが、僕たちはどうもそう美しくは生きていけないのさ。じゃあどう戦うのか。
今後の成績に大きく響くであろう今回の課題を利用して、少しでもライバルを減らす。つまり気絶させるか眠らせるかで集合場所に間に合わせないよう争うっていう手段を選ぶ。」
予想以上の糞な状況であることをようやく理解した戦士君はひどく顔を歪めてしまう。
恐らくこの二人はだいぶ恵まれた環境で育ってきたのだろう。人間の負の面を見る機会が少なかったのだ。
いつの間にか騒ぎの音がやんでいたことに気づき、慌てて辺りを見渡した。
「ありゃー・・・遅かったか。」
この乱闘で勝ち残ったチームに囲われていました。
緊張した顔で二人は後ずさり、私を含め三人で背中合わせになって敵チームと向かい合う。
え、なんか私主要メンバー的な感じになってない?
「おいおいおい。てめえら、ちょっと汚いんじゃねぇの?ww
俺たちが戦っているのを高みの見物してたのか?そんで弱ったところを横っ腹からかっさらおうとしてただろ。」
じゃりじゃりと広間の少し荒い砂を音立てて、こちらに歩み寄るボス的な人物。
茶色というよりもほぼ黒に近い肌と乱雑に高めの位置にまとめ上げられたドレッドヘア。
語尾にwをつけるようなふざけた話し方をしているが、目つきは射貫くように鋭く私たちをにらみつけて逸らさない。
周りの人たちもよく見たら似たり寄ったりな見た目で、全員肌が黒い。
「あなたたちは・・・ンゴンドロ族の。」
「なにそれしりとりで無双しそうな名前は。」
「あ?知らねえのかよアス。あいつらは陸上生物の中で体術において右に出る者はいないと言われるほど有名な戦闘民族だ。」
「へー?」
「それ何十年前の話w?そのサイキョウと言われた俺らの家族は今も汚ねぇ人間様に仕えてるけどなww。」
「戦争に負けたの?」
この世界は弱肉強食であることはアスチルベであった頃、身をもって学んだ。
戦争に勝つものが正義。負けたら勝者に必ず従わねばならない。
「・・・てめえらに話す義務はねえ。殺れ。」
図星をついていた。地雷を踏んでしまった。
殺意マシマシの人たちに一気に距離を詰められ戦闘が始まってしまう。
ほぼリンチだけどね。
「くっ、アス!君が一番動きやすそうだからここは俺らに任せて、女の子たちに報告してきてくれ!多分集合広場にチームの中で誰かが到着できれば減点は免れるかもしれない!」
「はあ?!もし僕だけが逃げちゃったらどうすんのさ!」
「てめえはんな糞な野郎じゃねえだろうが!!いけ!!」
「戦士君も!?」
今日初対面なのになんでこんな全力で私に命を預けるのか理解できない。
あほだ。
「分かった。ここは任せた!」
「道は俺は作るよ!頼んだよアス!」
魔法の才能があるなこれ。勇者君が剣を一振りすると一本の水柱が勢いよく走り出た。火柱を避ける敵チームを横目に私も走り出す。
「おっと?こりゃ今までの雑魚どもとは違げぇなw。」
「君の相手は俺だ。」
そんなナチュラルに主人公的なセリフを吐いた勇者君たちを背後にどんどん水柱が作る道を駆けていく。彼らの願いを叶えるために。
ん?あんなにボロカス言っておいて協力するのと突っ込みを入れたくなる?
だって、途中まで本気で裏切るつもりだったけどあんな高度な魔法を軽々と使いこなす勇者君見たら絶対今のうちに恩売っておいたほうがいいに決まってるでしょ。
将来有望だよあの人。見た目もいいし。戦士君は知らんけど普通あの流れだと勇者君と切磋琢磨する良い相棒となるし。
自分の中では最高速度で走り、やっとこさ魔法使いちゃんと僧侶ちゃんに合流した。
息絶え絶えで死にそうになりながら、あの二人の状況を説明する。
案の定二人はあの場に残ってくれた青年たちの援助に向かおうとしたが私は必死になって集合場所へ無理やり行くうよう説得させた。
「どうしよう死んじゃったら・・・。」
「おちついて。このギルドで唯一禁止されているのは殺人だから。殺されることはないと思う。」
「僧侶ちゃんその話まじ?」
結構大事なことをポツリと呟く僧侶ちゃん。
「ええそうよ。ただここで注意してほしいのは殺人の定義が身体的なことしか明言していないところよ。
たとえ精神が殺されようと殺人としては扱われないの。だから、、、もしかしたら再起不能になってしまう可能性が・・・。」
「もっといやよ!!」
このような会話を繰り返しているような気がする。
なるべく急ぎ足で目的地を目指しているが、何せ女三人だ。急ぐ速度は男と比べ物にもならない。
「アス・・・君?ちゃん?あんた性別はどっちなのよ!ややこしいわね」
「それは、私も気になってた。」
「えーそれは今関係なくない?」
お侍さん、もといハジメ副団長から譲ってもらった全身をすっぽり覆い隠してくれるマント。フードをかぶれば完全に不審者と化す。性別は分からないはずだ。念入りにさらしを巻いており、実は下に詰め物を詰めてかりそめのアレを作っている。一応男のつもりだ。
「俺も気になるわ。教えろよw。」
「なんでyっ!!ちょ、なんでお前がここに。」
ドレッドヘアーの男がいつの間にか目の前を立ちふさがっていた。
もう少しで広場につくはずだが、この男のせいで先に進めない。
「・・・戦士君と勇者君は?」
「あんなの雑魚過ぎて話になんねぇよw。さっさと眠らせてきた。」
「へ、へー強いんだね。」
「くだらねえ会話を続けて逃がそうとすんじゃねえよ阿保だろw。」
ばれてたか。意外と頭いいなこいつ。
やばい私、ほんとにグラデウスに頼ってたからな戦闘。自分自身の戦闘能力はどれくらいかはたかが知れている。
負ける未来しか見えない。
「おいお前ら、女二人は頼んだ。俺はこいつとやり合う」
「「「「「アイアイサー!」」」」
おいいいい。なんでタイマンの状態をつくっちゃうんだよ。
やばいやばい。
「顔くらい見せろよ不公平だろw。」
「いやだ。」
「・・・俺好奇心旺盛だからさ、隠されたものは暴きたくなるタチなんだよっな!」
「うっわ!こっわよしよく避けた自分!」
「ほらほら次行くぜ?」
ニヤニヤと完全にお遊び程度のテンションでジョブを繰り返してくる。
ふざけんなこっちはマスターの拳骨を避け続けてきたんだぞ。それくらい避けられるわ。
「意外とやんじゃねぇかw!」
段々と拳の軌道が読めなくなってきた。彼が少しづつ本気を出し始めたのだろう。
目の前に来る拳を避けようとさらに集中しようと気を引き締めた瞬間。
足蹴りされて後ろに倒れてしまった。してやられたのだ。
「はは!戦いなれてねぇ野郎が調子乗ってんじゃねえぞw。」
男に上に乗っかられ両足を固定されてしまう。両手をつかまれると凄い力で上に固定され抵抗する隙も無くなってしまった。
一見細いと見せかけて、近くで見ると筋肉の筋が服の隙間から見える。
さすが戦闘民族。
現実逃避が済んだところで今、フードを取られた。
「・・・。」
「・・・。」
なんだろうこの無言の時間。
目が合った状態で数十秒。その間向こうは瞬きすらしなかった。
「、、、。」
「・・・。」
隙あり。
「い”っっっで!!何しやがる!!」
「うるさい。」
よし。わずかな魔力を使い足にだけ力のバフをかけ思いっきり彼の大事なところを蹴り上げてやった。
完全に油断してたので隙をついたのだ。
「「「「り、リーダーーーーー!!」」」」
「君たちのリーダーを倒したんだからもう文句はないだろ?そこを通してもらおう。」
戦闘民族だから弱肉強食の規則が根付いていると信じて言葉を紡ぐ。
私の予測はあっていたらしく、無抵抗で道を譲ってくれた。
「魔法使いちゃん、僧侶ちゃん大丈夫?」
私が勝てると思っていなかったのかぽかんと口を開けて驚く二人を連れて、集合場所に着いた。
よく通る声が広場に届く。
鍛え上げた無駄のない筋肉から血管が浮き立ち、上につり上がった眉は有無を言わせない威圧を際立たせる。
「俺の配下になったからには一番を目指せ。他の糞虫共に負けることは許さねえ。
この新人教育期間である3ヶ月はこの五人で衣食住全てともにする。初めに忠告しておくが、これは協力し合うんじゃねえ。落とし合え。以上。一時間後にエリアBに集合。遅刻者は-50点だ。」
新人傭兵に人権は認められない。まだ日も出ていない早朝に叩き起こされ、恐らくこれからの訓練場になるであろう広場に集合させられる。
複数のグループに分けられ其々一人の教官が監視する。
迷彩柄がアイデンティティのゲルドさんは、最高なことに一番厳しい教官として有名であった。
この教育期間は実はこの傭兵団体に必要な人物であるかふるい落とす期間でもあり、当然脱落者も出てくる。この脱落者が一番出てしまう班は決まって、このゲルドさんが教官である所だ。
チームで行動するのに落としあえと爆弾発言をし、さっさと別の場所に行ってしまった教官。
「えーっと、自己紹介しますか!」
いかにもリーダー格の好青年が発言し、みんなの緊張が少し解けた。
リーダー格の青年の名前はユーシャ。少し口調が荒い青年の名はセンシ。剣術が得意で力持ち。よくしゃべるあの子はマホウで魔術に長けている。蝶を見ている不思議ちゃんの名前子ソウリョ。昔から回復魔法が得意らしい。
話してみると皆其々夢があり、どこにでもいる平和なチームであった。気まずい雰囲気は薄れ其々憧れる傭兵団の話に移った。
教育期間中基本的に100点を満点とする点数制の成績がつけられる。その点数は教官によってつけられ、成績の良い順に配属先が決まる。
一番与えられる点数が大きいものは実践を交えた模擬戦で優勝すること。所謂期末試験のようなもので、その順位と教育期間中の点数を合計して総合順位が決まるらしい。
「やっぱオレは一番隊かなー!」
「私も!!」
「アスはどこにするの?」
「え、僕?……えーと、まだ決まってない。」
「皆大体入りたい隊があるからこの傭兵ギルドに加入するから珍しいね」
「そ、そうかな~。」
どうやら出会い方が最悪だっただけ、この傭兵団は基本民衆から大人気のギルドであるらしかった。
「ねえ、どうして集合時間が一時間後だと思う?」
「それ思った!てっきり直ぐに訓練始まると思ってたからさー。俺気が抜けちまったぜ。遅刻するわけがねえ。」
「まあまあ。これはゲルド教官からの細やかな気遣いじゃないか?これから始まる厳しい鍛錬に備えて心を落ち着かせよう!」
…このグループ、なんて言えばいいのか分かんないけど、主人公気質があるタイプだ。あの、数年後に世界救っちゃう感じ。
だっていかにもツンデレな魔法使い(っぽい女のコ)と、天然な僧侶(以下略)。ちょいワル戦士(っぽい青年)と、目がキラキラした希望しか知らなそうな金髪勇者(っぽい青年)。
名前も役者名に沿ったような感じだし。
脳内で勝手に名前を漢字変換してしまう。
「てか、落とし合いってなに?終始何言ってたのか分かんなかった!」
「うーん。俺は良きライバルとして戦えってことだと解釈したよ。」
「だっせー表現。」
「私…なにか嫌な予感がするの。アス君はどう思う?」
「さあ??」
天然僧侶に話を振られてドギマギしてしている途中、異様な叫び声が別の広間から聞こえてきた。耳をよく傾けると剣と剣が激しくぶつかり合うような音も聞こえる。
「俺が様子を見に行ってくる。」
「俺も行くぜ。おかしいだろ普通にこの音は。」
「僕も付いてっていいか?」
「勿論だよ!女の子達はここで待ってて!」
叫び声が聞こえた方向へ足早に移動した。
「なんだ、これは?」
「俺ら、同じ訓練生同士だったよな?」
「……なるほどね。」
納得した。そういうことか。
「どういうことだよアス!説明しろよ!!」
「ポイントだよポイント。この教育期間は100点満点の成績だろ?一時間後の集合時間に遅れるだけで初っ端から-50点。これからの加点方法によるけど普通の場合、そこから挽回するのは無理。」
「それが何でこの意味わかんねえ状況につながるんだよ。」
「・・・なるほど、ね。」
「勇者君は察せたみたいだね。本来自分たちの実力で正々堂々と競うあうのが理想だが、僕たちはどうもそう美しくは生きていけないのさ。じゃあどう戦うのか。
今後の成績に大きく響くであろう今回の課題を利用して、少しでもライバルを減らす。つまり気絶させるか眠らせるかで集合場所に間に合わせないよう争うっていう手段を選ぶ。」
予想以上の糞な状況であることをようやく理解した戦士君はひどく顔を歪めてしまう。
恐らくこの二人はだいぶ恵まれた環境で育ってきたのだろう。人間の負の面を見る機会が少なかったのだ。
いつの間にか騒ぎの音がやんでいたことに気づき、慌てて辺りを見渡した。
「ありゃー・・・遅かったか。」
この乱闘で勝ち残ったチームに囲われていました。
緊張した顔で二人は後ずさり、私を含め三人で背中合わせになって敵チームと向かい合う。
え、なんか私主要メンバー的な感じになってない?
「おいおいおい。てめえら、ちょっと汚いんじゃねぇの?ww
俺たちが戦っているのを高みの見物してたのか?そんで弱ったところを横っ腹からかっさらおうとしてただろ。」
じゃりじゃりと広間の少し荒い砂を音立てて、こちらに歩み寄るボス的な人物。
茶色というよりもほぼ黒に近い肌と乱雑に高めの位置にまとめ上げられたドレッドヘア。
語尾にwをつけるようなふざけた話し方をしているが、目つきは射貫くように鋭く私たちをにらみつけて逸らさない。
周りの人たちもよく見たら似たり寄ったりな見た目で、全員肌が黒い。
「あなたたちは・・・ンゴンドロ族の。」
「なにそれしりとりで無双しそうな名前は。」
「あ?知らねえのかよアス。あいつらは陸上生物の中で体術において右に出る者はいないと言われるほど有名な戦闘民族だ。」
「へー?」
「それ何十年前の話w?そのサイキョウと言われた俺らの家族は今も汚ねぇ人間様に仕えてるけどなww。」
「戦争に負けたの?」
この世界は弱肉強食であることはアスチルベであった頃、身をもって学んだ。
戦争に勝つものが正義。負けたら勝者に必ず従わねばならない。
「・・・てめえらに話す義務はねえ。殺れ。」
図星をついていた。地雷を踏んでしまった。
殺意マシマシの人たちに一気に距離を詰められ戦闘が始まってしまう。
ほぼリンチだけどね。
「くっ、アス!君が一番動きやすそうだからここは俺らに任せて、女の子たちに報告してきてくれ!多分集合広場にチームの中で誰かが到着できれば減点は免れるかもしれない!」
「はあ?!もし僕だけが逃げちゃったらどうすんのさ!」
「てめえはんな糞な野郎じゃねえだろうが!!いけ!!」
「戦士君も!?」
今日初対面なのになんでこんな全力で私に命を預けるのか理解できない。
あほだ。
「分かった。ここは任せた!」
「道は俺は作るよ!頼んだよアス!」
魔法の才能があるなこれ。勇者君が剣を一振りすると一本の水柱が勢いよく走り出た。火柱を避ける敵チームを横目に私も走り出す。
「おっと?こりゃ今までの雑魚どもとは違げぇなw。」
「君の相手は俺だ。」
そんなナチュラルに主人公的なセリフを吐いた勇者君たちを背後にどんどん水柱が作る道を駆けていく。彼らの願いを叶えるために。
ん?あんなにボロカス言っておいて協力するのと突っ込みを入れたくなる?
だって、途中まで本気で裏切るつもりだったけどあんな高度な魔法を軽々と使いこなす勇者君見たら絶対今のうちに恩売っておいたほうがいいに決まってるでしょ。
将来有望だよあの人。見た目もいいし。戦士君は知らんけど普通あの流れだと勇者君と切磋琢磨する良い相棒となるし。
自分の中では最高速度で走り、やっとこさ魔法使いちゃんと僧侶ちゃんに合流した。
息絶え絶えで死にそうになりながら、あの二人の状況を説明する。
案の定二人はあの場に残ってくれた青年たちの援助に向かおうとしたが私は必死になって集合場所へ無理やり行くうよう説得させた。
「どうしよう死んじゃったら・・・。」
「おちついて。このギルドで唯一禁止されているのは殺人だから。殺されることはないと思う。」
「僧侶ちゃんその話まじ?」
結構大事なことをポツリと呟く僧侶ちゃん。
「ええそうよ。ただここで注意してほしいのは殺人の定義が身体的なことしか明言していないところよ。
たとえ精神が殺されようと殺人としては扱われないの。だから、、、もしかしたら再起不能になってしまう可能性が・・・。」
「もっといやよ!!」
このような会話を繰り返しているような気がする。
なるべく急ぎ足で目的地を目指しているが、何せ女三人だ。急ぐ速度は男と比べ物にもならない。
「アス・・・君?ちゃん?あんた性別はどっちなのよ!ややこしいわね」
「それは、私も気になってた。」
「えーそれは今関係なくない?」
お侍さん、もといハジメ副団長から譲ってもらった全身をすっぽり覆い隠してくれるマント。フードをかぶれば完全に不審者と化す。性別は分からないはずだ。念入りにさらしを巻いており、実は下に詰め物を詰めてかりそめのアレを作っている。一応男のつもりだ。
「俺も気になるわ。教えろよw。」
「なんでyっ!!ちょ、なんでお前がここに。」
ドレッドヘアーの男がいつの間にか目の前を立ちふさがっていた。
もう少しで広場につくはずだが、この男のせいで先に進めない。
「・・・戦士君と勇者君は?」
「あんなの雑魚過ぎて話になんねぇよw。さっさと眠らせてきた。」
「へ、へー強いんだね。」
「くだらねえ会話を続けて逃がそうとすんじゃねえよ阿保だろw。」
ばれてたか。意外と頭いいなこいつ。
やばい私、ほんとにグラデウスに頼ってたからな戦闘。自分自身の戦闘能力はどれくらいかはたかが知れている。
負ける未来しか見えない。
「おいお前ら、女二人は頼んだ。俺はこいつとやり合う」
「「「「「アイアイサー!」」」」
おいいいい。なんでタイマンの状態をつくっちゃうんだよ。
やばいやばい。
「顔くらい見せろよ不公平だろw。」
「いやだ。」
「・・・俺好奇心旺盛だからさ、隠されたものは暴きたくなるタチなんだよっな!」
「うっわ!こっわよしよく避けた自分!」
「ほらほら次行くぜ?」
ニヤニヤと完全にお遊び程度のテンションでジョブを繰り返してくる。
ふざけんなこっちはマスターの拳骨を避け続けてきたんだぞ。それくらい避けられるわ。
「意外とやんじゃねぇかw!」
段々と拳の軌道が読めなくなってきた。彼が少しづつ本気を出し始めたのだろう。
目の前に来る拳を避けようとさらに集中しようと気を引き締めた瞬間。
足蹴りされて後ろに倒れてしまった。してやられたのだ。
「はは!戦いなれてねぇ野郎が調子乗ってんじゃねえぞw。」
男に上に乗っかられ両足を固定されてしまう。両手をつかまれると凄い力で上に固定され抵抗する隙も無くなってしまった。
一見細いと見せかけて、近くで見ると筋肉の筋が服の隙間から見える。
さすが戦闘民族。
現実逃避が済んだところで今、フードを取られた。
「・・・。」
「・・・。」
なんだろうこの無言の時間。
目が合った状態で数十秒。その間向こうは瞬きすらしなかった。
「、、、。」
「・・・。」
隙あり。
「い”っっっで!!何しやがる!!」
「うるさい。」
よし。わずかな魔力を使い足にだけ力のバフをかけ思いっきり彼の大事なところを蹴り上げてやった。
完全に油断してたので隙をついたのだ。
「「「「り、リーダーーーーー!!」」」」
「君たちのリーダーを倒したんだからもう文句はないだろ?そこを通してもらおう。」
戦闘民族だから弱肉強食の規則が根付いていると信じて言葉を紡ぐ。
私の予測はあっていたらしく、無抵抗で道を譲ってくれた。
「魔法使いちゃん、僧侶ちゃん大丈夫?」
私が勝てると思っていなかったのかぽかんと口を開けて驚く二人を連れて、集合場所に着いた。
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