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第3章「不幸の連続」
第42話「超はっっぴーな話だね!!」
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痛い痛い痛い!!
なにこれ、、、
痛みで視界が歪み、吐き気さえも湧き出てきた。
「てめえと会わなければ、あの時追い返してれば・・・・。」
激痛で立っていられず濡れた地面に崩れ落ちた私を見下ろしたマスターは、ひたすらぶつぶつと何かをつぶやいている。
彼はすぐに怒るしすぐに笑う。しかしどこか冷静さは常に持っており、慎重だ。
そんな彼の瞳には今、狂気に染まっているのがわずかに見える。
体に張り巡らせている血管の隅々に小石が突っかかっているような痛み。ゴリゴリと体内から何かを削られている感覚があり、意識を手放しそうになる。
グラデウスを呼ぼうとしたが応答がない。
「よくやったねアシュレイ。」
聞いたことがある声が木々の隙間からする。なんとか意識を保ちつつ顔をそちらのほうへ向ける。
荒々しい雷が耳をつんざいた。
「塩・・・のおにい、さん?」
いつも細目で瞳なんて見えなかったのに、、、今日はしっかりと見えた。
薄桜色の瞳が怪しく輝き、地面に這いつくばる私をあざけるように見下ろす。
「正しくはシオン。『シオン・ヴェラット・エタニティー』。この国の第二皇子さ。」
「シオン・・・。」
「嗚呼、アスチルベ。君が主人だったなんて。本当にまったくの偶然だったんだ。この村に来たのは。」
一切状況が理解できない。マスターは何かの道具を握りしめひたすら棒立ちしている。シオンと名乗る男はまるで劇場の舞台に立っているかのような口ぶりだ。
「痛そうだね。まあそれはそうか。なんせあの黒龍様との契約を力づくで壊そうとアシュレイのアイテムたちが頑張ってくれてるからね!」
「ぐら、デウス・・・。」
「むだだよ。そもそもこのS級アイテムというのは黒龍様自身が作ったものなんだ。抗えるわけがない。」
マスターが近づいてきて私の頭にてを乗せた。
腕が振るえている。
「なんで・・・・なんで。てめえが・・・・っ!」
激しい破裂音とともに頭に置かれた手がはじき返される。
「さすが黒龍様。S級アイテムをあるだけ使っているのにまだそんな抵抗ができるのですか。少々億劫ですが仕方ありませんね。」
私に向かって手をかざした彼が何かを唱える。
「あああああぁあああぁぁああああああぁっ!」
さらなる激痛が走り顔すらも地面に突っ伏してしまう。自身の腕には血管が浮き出てるのがみえ、視界が赤く染まり始める。目、耳、鼻と体中から血が流れ始めたことを理解した。
再度マスターが頭に手を置き、何かをつかむしぐさをするな否やゆっくりと上に腕を上げる。
メリメリと何かがはがれていく感触がし始める。
グラデウスが私から離されていくと直感的に感じ抵抗を試みたが、マスターのもう片方の腕が首を絞め動きを抑えてきた。
初めて会った時、お互いの印象は最悪であった。
女好きで酒好きで人使いが乱暴なマスター。しかしアイリスさんを大切に見守り面倒見がいい一面もあった。
ほぼ不正な契約で私を働かせた彼だが、結局私はその場に残って働いた。長い間一緒に仕事をしてきたのでいつの間にかなくてはならない存在になっていった。不器用な彼が大好きだった。
兄として、保護者として、そして相棒として。
朦朧としてきた頭ではそんなことをぐるぐると考えていた。
「アシュ・・・レイ、さん。」
「・・っ。」
息をのむ音。今にも胃がひっくり返りそうな気分。
「・・・アシュレイ。やめないでね?」
ぶちっという感触がした。
その瞬間心にあった温もりが消え、それと同時に視界が暗転する。
「あはは。やっと手に入った。ありがとうアスチルベちゃん。君のことは決して忘れないよ。」
意識を失う最後の記憶で、誰かが静かに私の髪を口づけた気がした。
なにこれ、、、
痛みで視界が歪み、吐き気さえも湧き出てきた。
「てめえと会わなければ、あの時追い返してれば・・・・。」
激痛で立っていられず濡れた地面に崩れ落ちた私を見下ろしたマスターは、ひたすらぶつぶつと何かをつぶやいている。
彼はすぐに怒るしすぐに笑う。しかしどこか冷静さは常に持っており、慎重だ。
そんな彼の瞳には今、狂気に染まっているのがわずかに見える。
体に張り巡らせている血管の隅々に小石が突っかかっているような痛み。ゴリゴリと体内から何かを削られている感覚があり、意識を手放しそうになる。
グラデウスを呼ぼうとしたが応答がない。
「よくやったねアシュレイ。」
聞いたことがある声が木々の隙間からする。なんとか意識を保ちつつ顔をそちらのほうへ向ける。
荒々しい雷が耳をつんざいた。
「塩・・・のおにい、さん?」
いつも細目で瞳なんて見えなかったのに、、、今日はしっかりと見えた。
薄桜色の瞳が怪しく輝き、地面に這いつくばる私をあざけるように見下ろす。
「正しくはシオン。『シオン・ヴェラット・エタニティー』。この国の第二皇子さ。」
「シオン・・・。」
「嗚呼、アスチルベ。君が主人だったなんて。本当にまったくの偶然だったんだ。この村に来たのは。」
一切状況が理解できない。マスターは何かの道具を握りしめひたすら棒立ちしている。シオンと名乗る男はまるで劇場の舞台に立っているかのような口ぶりだ。
「痛そうだね。まあそれはそうか。なんせあの黒龍様との契約を力づくで壊そうとアシュレイのアイテムたちが頑張ってくれてるからね!」
「ぐら、デウス・・・。」
「むだだよ。そもそもこのS級アイテムというのは黒龍様自身が作ったものなんだ。抗えるわけがない。」
マスターが近づいてきて私の頭にてを乗せた。
腕が振るえている。
「なんで・・・・なんで。てめえが・・・・っ!」
激しい破裂音とともに頭に置かれた手がはじき返される。
「さすが黒龍様。S級アイテムをあるだけ使っているのにまだそんな抵抗ができるのですか。少々億劫ですが仕方ありませんね。」
私に向かって手をかざした彼が何かを唱える。
「あああああぁあああぁぁああああああぁっ!」
さらなる激痛が走り顔すらも地面に突っ伏してしまう。自身の腕には血管が浮き出てるのがみえ、視界が赤く染まり始める。目、耳、鼻と体中から血が流れ始めたことを理解した。
再度マスターが頭に手を置き、何かをつかむしぐさをするな否やゆっくりと上に腕を上げる。
メリメリと何かがはがれていく感触がし始める。
グラデウスが私から離されていくと直感的に感じ抵抗を試みたが、マスターのもう片方の腕が首を絞め動きを抑えてきた。
初めて会った時、お互いの印象は最悪であった。
女好きで酒好きで人使いが乱暴なマスター。しかしアイリスさんを大切に見守り面倒見がいい一面もあった。
ほぼ不正な契約で私を働かせた彼だが、結局私はその場に残って働いた。長い間一緒に仕事をしてきたのでいつの間にかなくてはならない存在になっていった。不器用な彼が大好きだった。
兄として、保護者として、そして相棒として。
朦朧としてきた頭ではそんなことをぐるぐると考えていた。
「アシュ・・・レイ、さん。」
「・・っ。」
息をのむ音。今にも胃がひっくり返りそうな気分。
「・・・アシュレイ。やめないでね?」
ぶちっという感触がした。
その瞬間心にあった温もりが消え、それと同時に視界が暗転する。
「あはは。やっと手に入った。ありがとうアスチルベちゃん。君のことは決して忘れないよ。」
意識を失う最後の記憶で、誰かが静かに私の髪を口づけた気がした。
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