異世界転生少女奮闘記

Don't tach me

文字の大きさ
上 下
53 / 84
第4章「改めた新たな世界」

第49話「嬉しくない歓迎」

しおりを挟む
目が覚めると夕方であった。
多分ハジメ副団長と話して数時間寝てしまったのだ。
「おきたか?」
「はい!」

 汗臭い服は脱ぎ去りそばに用意されてあった服を着る。
 やはり同年代の男性用の服らしく少し大きい。

「もう夕食の時間だ。食堂に行けるか?」
「行きます!」
 盛大におなかを荒らしながらドアに手をかけた。




 勢いよくドアを開けるとラフな袴に着替えたお侍さんが出迎えてくれた。
 少し会話をした後食堂へ向けて歩き出す。さり気なく歩幅の小さい私にスピードを合わせてくれる当たり、相当の数の女性を虜にしたのだろう。

「あ、そういえばお名前聞いてませんでした。私はアスと言います。」
「ああ。俺はハジメという者だよろしく頼む。第十三傭兵団の副団長を務めている。」
「副団長?あの坊主フェードカットの男じゃないんですか?」
「ボウズフェ……?あーウォレッドのことか?
この第十三傭兵団は特例で副団長が二人いる。
 何かと問題が多いからな……。」

 そう言ってハジメ副団長は胃を擦る。
多分全部の面倒事を抱えているのだろう。

 食堂に着くと先程まで大騒ぎだった食堂が私を見るなり一斉に静かになった。
 え、なに??私なんか変だった?

 慌ててフードを被るが相変わらず目線が八方から注がれる。

「よお小僧!昨日は災難だったなあ。」
「あ、えっとメカ・・・ドグロさん?」
「正解。なんだハジメ副団長もこの食堂に来たのか?珍しいなー。いつもは騒がしいところは気に入らないって飯は部屋で食ってたのに。」

「今日はこいつがいるから仕方が無い。貴様らに任せておけないのでな。」
「なんだ?やっぱソッチの趣味がおありか?」
「言っておけ。」

 煩わしそうにハジメ副団長はドグロさんの顔を押し退けカウンター席に座る。

「アス。覚悟しておけよ。」


 


「は?」





 急に私に背を向け意味不明なセリフを言うハジメ副団長。
 その瞬間……。





「「「「第十三傭兵団にようこそ!」」」」」



 という言葉とともに頭から赤ワインを樽でぶっ掛けられる。

「えええええええ!?」


 あっという間に食堂の人々に囲まれて口々に昨日の殴り合いは痺れただの、意外とやるじゃんだの賞賛の声を掛けられる。
 無理やり掴まされたジョッキにはなみなみと酒が注がれ乾杯を何度もされる。
 歓迎会、のようなものだと思う。

「な、そんな簡単に受け入れられていいのか?」

 ドグロさんに思わず疑問を投げかけてしまった。

「なに言ってやがる!アノ・・バロウ団長の血を流させた英雄だぞお前は。」


 どうやらあの殴り合いは入隊の試験のようなもので、普通・・の人はバロウ団長に触れることすら出来ずに最後には降参してしまうらしい。少しでも彼に傷をつけることができれば晴れて入隊を許可される。
 ましてや今回はあのブチ切れたバロウ相手に果敢に挑み、図付きをもろに食らわせた新人が入ったらしいと聞きつけた団員達は興味津々。
 また数人はその試験を眺めていたので私が入ることを大歓迎しているらしい。

「でも、あれはなんていうか偶然というか。」
「勿論それは全員知ってる。だが、俺達のような特殊な奴らは常に刺激を求める傾向にあってだな……面白そうなものが大好きなんだ。」

 つまり、私は面白そうな玩具として歓迎されていると……。

 嬉しくねええええええ。










 数時間後。

 主役であるはずの私を頬って置いて団員達は酒や料理を頬張っていく。
 多分歓迎会といって酒を飲んで暴れただけだったのだろう。

 浴びせられた赤ワインに火を着火させられそうになったり、喧嘩に誘われたりしてヘトヘトになってカウンター席に座る。
 
「お疲れ。すまねえな毎年恒例なんだ。」
「コレがですか??……はあ。」
「まあ喜べ!例年よりも歓迎会に参加している人数が多いしすぐ馴染めるだろ。」

 ハジメ副団長とドグロさんからそれぞれ言葉を掛けてもらう。納得いかんし喜べん。

「……なんで僕、ここに入ることを許可されたんですか?」
「「今更??」」

「だってバロウ団長から明らかに殺意感じてたし。」

「そうだった。今後の話を一切していなかったな。君が意識を失っている間にバロウ団長を含めもう一度話し合った。
 その結果、アス、君はここの第十三傭兵団の新人として受け入れることになった。
 理由は2つある。
 1つ目に入隊試験を通過したからだ。偶然であろうがなかろうが、その機会を生かして足掻いたのは称賛できる。
 
 2つ目に君の過去が関係する。」






 私の、過去??


    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

処理中です...