異世界転生少女奮闘記

第2章「慌ただしい日常」

第35話「嫌な予感※」

アスチルベ目線＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



……。


頭が、頭が痛い。

吐き気も酷く、冷や汗もかいている。

目を開けても白い視界。

薄ぼんやりと自身の部屋が見える程度。

……今日は土砂降りだ。でも、行かなきゃ。マスターとお客さんが待ってる。

「アスチルベ。今楽にしてやる。」
「グラ、デウス?」

　体調が悪いと何故か人肌が恋しくなってしまうのは分かって欲しい。
　思わず彼を引き寄せ抱きつく。

「……っ辛いか?」

　最近こういったグラデウスの壊さないよう包み込むような優しさが増えてきた気がする。
　背中に腕を回してくれて、彼の鼓動が聞こえるくらい密着した状態。
　
「……こっち向け。」

　そして優しく、愛しむような湿った唇が重なった。

「水はいるか?」
「い、らない。」

　胃が常にのど奥にある感覚で、少しの刺激で戻してしまうかもしれないほど気持ちが悪い。

「飲ましてやろう。恐らく頬って置けば干からびるであろう?」

　多分そうなる。

　そして再び唇が重ねられるが、先程とは違う力強さ。無理矢理口をこじ開けられ、熱いような冷たいような舌が侵入してきた。
　喉奥まで侵されるようなキスに惑わされ、冷たい水が入ってくるまで頭がフワフワしていた。

「ん……っ。あ、美味しい……。」
「お主に教えてもらったレモネードだ。栄養を少しでも補給しておかないとな。」

　口移しってキスが上手くないと出来ないって聞いたことがある。
　なんの違和感もなく飲めたのは、グラデウスが経験達者な事を暗示していることになる。

「…今日はもう大人しくして寝ていろ。あ奴・・・には我が事情を説明してこよう。」
「うん。グラデウス、いつもありが…。」

「……もう寝たのか。寝付きは相変わらず良いな。」








　この頭痛はこれから起こる不幸な出来事のほんの始まりに過ぎないことは誰にも分からなかった。