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第2章「慌ただしい日常」
第32話「二度目……。」
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アスチルベ目線______________________________________________
目が覚めた後はあっと言う間に物事が進んでいった。
まずあのシヴァという男は消えており、「後はヨロシク(♡)」と言ったふざけた置き手紙が残されていた。
グラデウスとヨウタが回復した魔力で魔物を一掃してくれて、一週間経って只今雪祭りが英雄二人を称える感謝祭となっていた……。
すれ違う人々の殆どが二人に感謝を伝え乾杯を交わしていく。
あの司会者さんもこの騒動で褒め称えられていたらしいが、私達とは会わずにどこかへ去っていってしまった。
「英雄に乾杯~!!!」
「「フウウーーーー!!」」
数人の酔っぱらいおじちゃん達に囲まれた二人を横目に、奢ってもらった牛串をついばむ。
「よ、ようやく抜け出せたッスね…。」
「もう二度と人間は助けぬ。」
心底疲れ切った顔をしたグラデウスとヨウタ。
「アスチルベ。」
耳元でグラデウスの声が囁いた。ビクっと思わず肩が跳ねる。
「……あー、すまん。驚かせてしまったようだな。」
「い、いやいや全然?!驚いてませんけど?」
「アスチルベ…ごめんなこの前。」
「もう忘れて!私もアレは必要なことだったからやっただけ。
気にしたら負け!!」
お互いの気まずい空気のなか会話を交わしているとグラデウスが美人集団に捕まった。
絡まれたら面倒くさいのでヨウタと私で別の場所へと移動する。
「でも、俺は君の事が…っ」
それ以上の言葉を発さないようヨウタの目を下から覗き込む。
「ヨウタにとって私がどんなふうに映ってるかは分からない。けど、多分思い浮かべているその像は私の本性じゃない。」
「っ確かにそうかもしれないけど、俺は君と暮らしていく内にもっと想う気持ちが膨らみ上がっていったんだよ。
じゃあこの気持ちはなんだと言うんだ?」
「ただの幻想だよ……その想いというものは。」
冷たく突き放すような口調になっちゃったけどいい機会かもしれない。
出会ってそんなに経ってないけど彼がいかに良い奴なのか良く分かった。
だから、、、変な期待をさせないほうが彼にとっていい方法なのだと考えていた。
真っ直ぐで純粋無垢な彼。こんなに素敵な青年が私の偽姿を追い求めて人生を無駄にさせたくない。
「………俺の、想いは、、、偽物?」
笑顔が絶えなかった彼の表情は苦虫を噛み潰したように顔が歪んでいく。
「あっ、違う…えと、その……。」
思った以上にきつい言い方をしてしまい、言った本人が言葉を詰まらせた。
辺りはお祭り騒ぎであるというのに、ヨウタと私の空間は静寂で満ちている。
「………っ友人として君の元気そうな姿を見れて良かったッス。
それじゃあ、この前はお世話になりましたお疲れ様ッス。」
やけに強調された友人という言葉。語尾も初めてあった時に戻った。
彼は彼なりに私から距離を取ったのだ。寂しいと感じる自分に嫌気が指しながらも、ヨウタの大きな背中に目を向ける。
「ごめんなさい。」
何に対して謝罪をしているのか分からない。でも謝らなければ気がすまなかった。
後ろから誰かが近づいてきた。この少し足を引きずるように歩く音はグラデウスだ。
「…。」
「ごめんグラデウス。一人にして。」
「……了解した。但し危機が迫ったら我を呼べ。」
「うん。」
周りの人も気づいていいくらいなのに目も向けない。
あ、グラデウスが気を遣って錯覚魔法をかけて見れなくしてたんだ。
「……なんかモヤモヤする。……ええい!今日はやけ食いじゃやけ食い!」
視界に入るもの全ての料理を買い漁り、口に頬張りまくる。傍から見ればただのデ暴食女だけど今日はいいもん。
そう自分に言い聞かせて全店舗制覇を目指して歩き回る。
「___い。おい!!クソガキ!!!」
「っうぐ…ちょっと、マスター!驚いて食べ物が喉に詰まっちゃったじゃん!!」
久々(?)に聞くマスターの鼓膜を震わす大きな声に驚き、危うく窒息するところだった。
「知るかんなこと。それより無茶してぶっ倒れたのを見たぞ。」
「ん?どうやって??」
若干焦る。倒れたって…どこで見たのさ。
「正確には落ちたと言ったほうがいいか。あのどデカい映像みたいなもので。」
あー、あれか。ナルホドね。
「一体どうやってそんな直ぐ回復出来たんだよ。運良く回復ポーション持ってたのか?」
「まあね。私準備が良い方ですから。」
「……まあ、回復が早ければいい。それでいい……が、、、」
ゴツンっと理不尽な拳骨を食らう。頭にたんこぶはできるは、混乱するは、訳なのわからない状況。
「え?え?なんで??」
「うるせぇ。自分の家族を心配させんじゃねぇよ。」
また、マスターの優しさ。
「マスターって、家族を大切にしますよね。」
「あ"?んな訳ねぇだろ。」
「だって家族の大切さを知らなければそんなセリフ吐きませんよ。」
「っ。」
また同じ箇所に拳骨が飛ぶ。
「痛っ!!私の脳細胞が……。」
でも確かにマスターの言うとおり、家に帰ってきたら家族全員に全力でハグをされ、息苦しかった。
いや、息苦しいほど強く抱きしめられた。よっぽど心配をかけてしまったのだろう。いつも饒舌な父もその時は黙っていた。
「ごめんなさい…。」
「俺に謝んな。迷惑をかけた奴らに謝れ。」
「はい。」
「あと、例のやつの分析が終わった。」
「はい……っえ??」
さらりと重要なことを言ったマスターは眉をひそめている。
あのマスターの机にくっついていた物を更に詳しく分析し、犯人を突き止めてくれと「塩のお兄さん」に依頼していたのだ。
正体が分かったってこと?
To be continue➡
実は犯人は今まで出てきた人達の中にいます。誰でしょうか?
※塩のお兄さんは「雪まつりは俺のもの」にて少し登場しました。忘れてたら是非もう一回読み直してみてね
目が覚めた後はあっと言う間に物事が進んでいった。
まずあのシヴァという男は消えており、「後はヨロシク(♡)」と言ったふざけた置き手紙が残されていた。
グラデウスとヨウタが回復した魔力で魔物を一掃してくれて、一週間経って只今雪祭りが英雄二人を称える感謝祭となっていた……。
すれ違う人々の殆どが二人に感謝を伝え乾杯を交わしていく。
あの司会者さんもこの騒動で褒め称えられていたらしいが、私達とは会わずにどこかへ去っていってしまった。
「英雄に乾杯~!!!」
「「フウウーーーー!!」」
数人の酔っぱらいおじちゃん達に囲まれた二人を横目に、奢ってもらった牛串をついばむ。
「よ、ようやく抜け出せたッスね…。」
「もう二度と人間は助けぬ。」
心底疲れ切った顔をしたグラデウスとヨウタ。
「アスチルベ。」
耳元でグラデウスの声が囁いた。ビクっと思わず肩が跳ねる。
「……あー、すまん。驚かせてしまったようだな。」
「い、いやいや全然?!驚いてませんけど?」
「アスチルベ…ごめんなこの前。」
「もう忘れて!私もアレは必要なことだったからやっただけ。
気にしたら負け!!」
お互いの気まずい空気のなか会話を交わしているとグラデウスが美人集団に捕まった。
絡まれたら面倒くさいのでヨウタと私で別の場所へと移動する。
「でも、俺は君の事が…っ」
それ以上の言葉を発さないようヨウタの目を下から覗き込む。
「ヨウタにとって私がどんなふうに映ってるかは分からない。けど、多分思い浮かべているその像は私の本性じゃない。」
「っ確かにそうかもしれないけど、俺は君と暮らしていく内にもっと想う気持ちが膨らみ上がっていったんだよ。
じゃあこの気持ちはなんだと言うんだ?」
「ただの幻想だよ……その想いというものは。」
冷たく突き放すような口調になっちゃったけどいい機会かもしれない。
出会ってそんなに経ってないけど彼がいかに良い奴なのか良く分かった。
だから、、、変な期待をさせないほうが彼にとっていい方法なのだと考えていた。
真っ直ぐで純粋無垢な彼。こんなに素敵な青年が私の偽姿を追い求めて人生を無駄にさせたくない。
「………俺の、想いは、、、偽物?」
笑顔が絶えなかった彼の表情は苦虫を噛み潰したように顔が歪んでいく。
「あっ、違う…えと、その……。」
思った以上にきつい言い方をしてしまい、言った本人が言葉を詰まらせた。
辺りはお祭り騒ぎであるというのに、ヨウタと私の空間は静寂で満ちている。
「………っ友人として君の元気そうな姿を見れて良かったッス。
それじゃあ、この前はお世話になりましたお疲れ様ッス。」
やけに強調された友人という言葉。語尾も初めてあった時に戻った。
彼は彼なりに私から距離を取ったのだ。寂しいと感じる自分に嫌気が指しながらも、ヨウタの大きな背中に目を向ける。
「ごめんなさい。」
何に対して謝罪をしているのか分からない。でも謝らなければ気がすまなかった。
後ろから誰かが近づいてきた。この少し足を引きずるように歩く音はグラデウスだ。
「…。」
「ごめんグラデウス。一人にして。」
「……了解した。但し危機が迫ったら我を呼べ。」
「うん。」
周りの人も気づいていいくらいなのに目も向けない。
あ、グラデウスが気を遣って錯覚魔法をかけて見れなくしてたんだ。
「……なんかモヤモヤする。……ええい!今日はやけ食いじゃやけ食い!」
視界に入るもの全ての料理を買い漁り、口に頬張りまくる。傍から見ればただのデ暴食女だけど今日はいいもん。
そう自分に言い聞かせて全店舗制覇を目指して歩き回る。
「___い。おい!!クソガキ!!!」
「っうぐ…ちょっと、マスター!驚いて食べ物が喉に詰まっちゃったじゃん!!」
久々(?)に聞くマスターの鼓膜を震わす大きな声に驚き、危うく窒息するところだった。
「知るかんなこと。それより無茶してぶっ倒れたのを見たぞ。」
「ん?どうやって??」
若干焦る。倒れたって…どこで見たのさ。
「正確には落ちたと言ったほうがいいか。あのどデカい映像みたいなもので。」
あー、あれか。ナルホドね。
「一体どうやってそんな直ぐ回復出来たんだよ。運良く回復ポーション持ってたのか?」
「まあね。私準備が良い方ですから。」
「……まあ、回復が早ければいい。それでいい……が、、、」
ゴツンっと理不尽な拳骨を食らう。頭にたんこぶはできるは、混乱するは、訳なのわからない状況。
「え?え?なんで??」
「うるせぇ。自分の家族を心配させんじゃねぇよ。」
また、マスターの優しさ。
「マスターって、家族を大切にしますよね。」
「あ"?んな訳ねぇだろ。」
「だって家族の大切さを知らなければそんなセリフ吐きませんよ。」
「っ。」
また同じ箇所に拳骨が飛ぶ。
「痛っ!!私の脳細胞が……。」
でも確かにマスターの言うとおり、家に帰ってきたら家族全員に全力でハグをされ、息苦しかった。
いや、息苦しいほど強く抱きしめられた。よっぽど心配をかけてしまったのだろう。いつも饒舌な父もその時は黙っていた。
「ごめんなさい…。」
「俺に謝んな。迷惑をかけた奴らに謝れ。」
「はい。」
「あと、例のやつの分析が終わった。」
「はい……っえ??」
さらりと重要なことを言ったマスターは眉をひそめている。
あのマスターの机にくっついていた物を更に詳しく分析し、犯人を突き止めてくれと「塩のお兄さん」に依頼していたのだ。
正体が分かったってこと?
To be continue➡
実は犯人は今まで出てきた人達の中にいます。誰でしょうか?
※塩のお兄さんは「雪まつりは俺のもの」にて少し登場しました。忘れてたら是非もう一回読み直してみてね
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