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第2章「慌ただしい日常」
第26話「雪まつりは俺のもの」
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アスチルベ目線
____________________________________________
……やばい、ヨウタがしんどい。
何がしんどいかって、わかり易い恋心丸出しで言いよってくるのだ。
「あ!アスチルベおはよう!!送るよ!」
「え、いやグラデウスがいるから…」
「そうだ。若造は帰れ。」
「嫌っす。だいたいグラデウスさんはアスチルベの何ですか?」
静かに火花を散らす二人を放っておいてさっさとマスターの元へ向かう。
「アスチルベ!デート行かないか?」
「遠慮しとく。」
「帰れ若造。貴様はいらぬ。」
「グラデウスさんこそ帰ってくださいよ。年の近い俺のほうがアスチルベも話しやすいんじゃないっすか?」
「……ハァ……。」
「よ。大変そうだな糞ガキ。」
「そう見えたなら助けてくださいよ。」
「い・や・だ・ね。俺様は面倒事が何よりも嫌いだ。」
「はいはい。元々期待すらしてませんでしたけどね。」
言い争いを続ける二人を店の外へ連れ出すと、いい看板娘もとい、看板青年として働いてもらう。
二人共顔が良いので、いいご婦人ホイホイになってくれるのだ。
「頑張ってね。」
「「はいっす!/勘弁してくれ…。」」
さて、邪魔者はいなくなった。本題に入ろう。
「マスター。例の機械は何だったのか分かりましたか?」
「……あれは盗聴器だ。簡単に言えばな。」
「盗聴器…私達の会話を記録していた……ということですか?」
「いや、少し違う。こいつは無機物の『記憶』を吸い取るものだ。」
「記憶?」
「この机にも、ペンにも記憶ってにはある。映像としてこいつらは記憶を残し続けている。」
「へぇ。」
「だがそれを見ることはユニークスキルでしか有り得ねぇ。」
「ユニークスキルであればこの盗聴器モドキは要らないのでは?」
「恐らく直接触れる等の条件を満たさないと見れねぇらしい。その欠点を補う機械ってことだ。」
「わ~。ずる賢い……。」
思わず苦笑してしまうと同時に、私の商品を盗む為にそれ程の手間暇を向こうはかけている。
よっぽど私のレシピを重要視しているのだろう。
「でもユニークスキルは本来他人に明かさないでしょう?」
「よく考えてみろ。俺様の店に不法侵入する事はまずあり得ねぇ。」
あ、この人は自分の店の防犯にS級のアイテム使ってたんだ。
どうやらS級の腐れ縁の友人がいるらしく、数年に一回更新しに来てくれるらしい。
「じゃあ……知り合いってことですか?」
「そうだ。少なくとも糞ガキと俺は違う。」
「つまり、この店のお客様に犯人紛れ込んでるってことですか?!」
「そういうことだな。」
うわぁ~最悪や。出来ればお客様は疑いたくなかった……。
だって只でさえここに来てくれるお客様はマスターのお気に入りしかいないので、ほぼ常連客。
既に殆どの人達と顔を合わせていて、数人仲がいい人もいる。
その中から犯人を探すとなると結構精神的に病みそう。
「……俺様ぉ出来れば疑いたくねぇよ。だがこうして証拠品も出てきたんだ。」
一体誰なんだ。嫌な予感しかしないのは私だけなのだろうか。
………………………………
…………………
………
「いらっしゃいませ!本日はどんなご用事ですか?」
笑顔で接客が私独自のルール。いい加減マスターの店の印象を変えないと。
「アスチルベちゃん久しぶり!僕の事覚えてる?」
「あ!勿論だよ!よく塩を売ってくれるおじさん!!」
「お、おじさん…僕一応二十前半なのに……。」
「嘘嘘。塩のお兄さん!」
この常連客は、よくこの店に貴重な塩を比較的安く売ってくれる人だ。
ベレー帽子に茶色のサルペット。一見新聞記者か荷物運びに見えるがれっきとした天才若手の商人だ。
名前は未だに知らん。教えてくれない謎に包まれたお兄さんである。
「アシュレイはご在宅?」
「今いるよ。マスター!」
「……チッ面倒くせぇ奴が来たな。何の用だ。」
「相変わらず冷たいなぁ~アシュレイは。元気?」
「世話話に来たなら糞ガキに相手してもらえ。」
「えちょっと待って!せっかくいいニュースを持ってきたのになぁ……」
「早く教えろ。」
「甘いドルチェと苦いビターどっち欲しい?」
「……入れ。」
このダサい合図は依頼の合図だ。
二人は奥へ引っ込んでしまう。マスターは商人だけど、絶対別のこともやってる。
私には詳細は教えてくれないけど、時たまお手伝いはさせてくれるのだ。
まあ、手紙を届けたり錯覚魔法を小包にかけたりとほぼパシリ役だけどね。
「いらっしゃいませ~。」
こうして警戒をしながら地道に客をさばいていく。
最近はお客様増えた気がするのは私のお陰かな!ごめんなさい調子乗りました。
「アスチルベ!祭り出るんだって!?」
勢いよく扉が開くと同時に頭が震えるほど大きな声でヨウタが入ってきた。
「え、うん。そうだけど…。」
「…なら俺が買ったらデートしてくれないか?」
「「は?」」
「若造……勝手に物事を決めるな。アスチルベも困っているぞ。」
「だって、こうでもしないとデートさせてくれないから!」
「いや、えっと……」
「面白れぇ。糞ガキ、そうしてやれ。そんでもし糞ガキが買ったら馬鹿坊主がここで働くことになるぞ。」
いきなり奥から出てきたマスター。塩のお兄さんは私に手を振りお店から出ていった。
「了解!!よぉ~し勝つぞぉ!!!」
シャツの袖をまくりあげ、ニッコリと八重歯が見えるくらいに大きく笑う。
グラデウスはその後ろで頭を痛そうに抱え込んでいる。
私の意識は何処に行くのでしょうか。
「給料上がる……一ヶ月間ボソ…」
「勝ちましょうグラデウス!!」
こうしてまんまとマスターの口車に乗せられ、雪まつりへの準備も着実に進めていった。
To be continue⇨
主人公の情緒が不安定ですいません。彼女も作者もどうすればいいのか悩んでいます。
温かい目で見守って下さい。
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……やばい、ヨウタがしんどい。
何がしんどいかって、わかり易い恋心丸出しで言いよってくるのだ。
「あ!アスチルベおはよう!!送るよ!」
「え、いやグラデウスがいるから…」
「そうだ。若造は帰れ。」
「嫌っす。だいたいグラデウスさんはアスチルベの何ですか?」
静かに火花を散らす二人を放っておいてさっさとマスターの元へ向かう。
「アスチルベ!デート行かないか?」
「遠慮しとく。」
「帰れ若造。貴様はいらぬ。」
「グラデウスさんこそ帰ってくださいよ。年の近い俺のほうがアスチルベも話しやすいんじゃないっすか?」
「……ハァ……。」
「よ。大変そうだな糞ガキ。」
「そう見えたなら助けてくださいよ。」
「い・や・だ・ね。俺様は面倒事が何よりも嫌いだ。」
「はいはい。元々期待すらしてませんでしたけどね。」
言い争いを続ける二人を店の外へ連れ出すと、いい看板娘もとい、看板青年として働いてもらう。
二人共顔が良いので、いいご婦人ホイホイになってくれるのだ。
「頑張ってね。」
「「はいっす!/勘弁してくれ…。」」
さて、邪魔者はいなくなった。本題に入ろう。
「マスター。例の機械は何だったのか分かりましたか?」
「……あれは盗聴器だ。簡単に言えばな。」
「盗聴器…私達の会話を記録していた……ということですか?」
「いや、少し違う。こいつは無機物の『記憶』を吸い取るものだ。」
「記憶?」
「この机にも、ペンにも記憶ってにはある。映像としてこいつらは記憶を残し続けている。」
「へぇ。」
「だがそれを見ることはユニークスキルでしか有り得ねぇ。」
「ユニークスキルであればこの盗聴器モドキは要らないのでは?」
「恐らく直接触れる等の条件を満たさないと見れねぇらしい。その欠点を補う機械ってことだ。」
「わ~。ずる賢い……。」
思わず苦笑してしまうと同時に、私の商品を盗む為にそれ程の手間暇を向こうはかけている。
よっぽど私のレシピを重要視しているのだろう。
「でもユニークスキルは本来他人に明かさないでしょう?」
「よく考えてみろ。俺様の店に不法侵入する事はまずあり得ねぇ。」
あ、この人は自分の店の防犯にS級のアイテム使ってたんだ。
どうやらS級の腐れ縁の友人がいるらしく、数年に一回更新しに来てくれるらしい。
「じゃあ……知り合いってことですか?」
「そうだ。少なくとも糞ガキと俺は違う。」
「つまり、この店のお客様に犯人紛れ込んでるってことですか?!」
「そういうことだな。」
うわぁ~最悪や。出来ればお客様は疑いたくなかった……。
だって只でさえここに来てくれるお客様はマスターのお気に入りしかいないので、ほぼ常連客。
既に殆どの人達と顔を合わせていて、数人仲がいい人もいる。
その中から犯人を探すとなると結構精神的に病みそう。
「……俺様ぉ出来れば疑いたくねぇよ。だがこうして証拠品も出てきたんだ。」
一体誰なんだ。嫌な予感しかしないのは私だけなのだろうか。
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「いらっしゃいませ!本日はどんなご用事ですか?」
笑顔で接客が私独自のルール。いい加減マスターの店の印象を変えないと。
「アスチルベちゃん久しぶり!僕の事覚えてる?」
「あ!勿論だよ!よく塩を売ってくれるおじさん!!」
「お、おじさん…僕一応二十前半なのに……。」
「嘘嘘。塩のお兄さん!」
この常連客は、よくこの店に貴重な塩を比較的安く売ってくれる人だ。
ベレー帽子に茶色のサルペット。一見新聞記者か荷物運びに見えるがれっきとした天才若手の商人だ。
名前は未だに知らん。教えてくれない謎に包まれたお兄さんである。
「アシュレイはご在宅?」
「今いるよ。マスター!」
「……チッ面倒くせぇ奴が来たな。何の用だ。」
「相変わらず冷たいなぁ~アシュレイは。元気?」
「世話話に来たなら糞ガキに相手してもらえ。」
「えちょっと待って!せっかくいいニュースを持ってきたのになぁ……」
「早く教えろ。」
「甘いドルチェと苦いビターどっち欲しい?」
「……入れ。」
このダサい合図は依頼の合図だ。
二人は奥へ引っ込んでしまう。マスターは商人だけど、絶対別のこともやってる。
私には詳細は教えてくれないけど、時たまお手伝いはさせてくれるのだ。
まあ、手紙を届けたり錯覚魔法を小包にかけたりとほぼパシリ役だけどね。
「いらっしゃいませ~。」
こうして警戒をしながら地道に客をさばいていく。
最近はお客様増えた気がするのは私のお陰かな!ごめんなさい調子乗りました。
「アスチルベ!祭り出るんだって!?」
勢いよく扉が開くと同時に頭が震えるほど大きな声でヨウタが入ってきた。
「え、うん。そうだけど…。」
「…なら俺が買ったらデートしてくれないか?」
「「は?」」
「若造……勝手に物事を決めるな。アスチルベも困っているぞ。」
「だって、こうでもしないとデートさせてくれないから!」
「いや、えっと……」
「面白れぇ。糞ガキ、そうしてやれ。そんでもし糞ガキが買ったら馬鹿坊主がここで働くことになるぞ。」
いきなり奥から出てきたマスター。塩のお兄さんは私に手を振りお店から出ていった。
「了解!!よぉ~し勝つぞぉ!!!」
シャツの袖をまくりあげ、ニッコリと八重歯が見えるくらいに大きく笑う。
グラデウスはその後ろで頭を痛そうに抱え込んでいる。
私の意識は何処に行くのでしょうか。
「給料上がる……一ヶ月間ボソ…」
「勝ちましょうグラデウス!!」
こうしてまんまとマスターの口車に乗せられ、雪まつりへの準備も着実に進めていった。
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主人公の情緒が不安定ですいません。彼女も作者もどうすればいいのか悩んでいます。
温かい目で見守って下さい。
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