異世界転生少女奮闘記

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第2章「慌ただしい日常」

第23話「ハロー日常」

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アスチルベ目線
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 記憶が戻って約5年はたった。
その間には、本当に様々な事件が起こったり、この体に慣れたりと大変だった。
 なにかと幼女の体は不便だったし……。一旦何が起こったのか整理しよう。

 まず私の名前は「アスチルベ」。名字とうはお貴族様でしかつけられないらしい。
 そして……

((……いったい誰に対しての会話だ?))

 いいじゃん誰でも。取り敢えず、この偉そうな口調のひよこちゃんが「グラデウス」。実は伝説級の魔物らしいけど、馴染んじゃったせいか最近全くその実感がわかない。人間にも変幻でき、髪がきもち短くなった……様な気がする。
 相変わらず一纏めにして、最近はお団子の様に纏めている日が増えた。
 
「アスチルベ!朝ご飯できたよ?」
「今行く!」

 栗色のフワフワした天パの天使様は、私の姉に当たる「アマリリス」。本当に彼女にはお世話になっていて、何から何まで教えてくれた。
 そして今日はまだ会ってないけどいずれ会う天使ことお姉ちゃんの彼氏、「ミュール」。
 明るめのベージュ色をした可愛らしい… いや、最近男らしくはなった彼は、お姉ちゃんに相変わらず一途。
 見ている此方が恥ずかしくなってくるくらいだ。

「いただきます!」
「ゆっくりお食べ。」
「今日も俺の天使達は可愛いなぁ……」
「なに言っているのよあなた・・・……」

 朝から熱い母「アンヌ」と、その夫であり私の父である「ノーモット」。
 二人はこの村でも美男美女カップルであり、仲が良いことで有名である。
 こんな色々と濃い人達に囲まれて生活しております……。

「あら、アスチルベ。今日はアシュレイさんの所に行かなくてもいいのかしら?」
「あ!やばいそろそろ出なきゃ!」

 丁度いいタイミングでグラデウスが家のドアを叩き始めた。
 急いで支度を完了させ、父を最後にして家族全員へ順番にキスをしていき、家をあとにする。

「ごめんグラデウス!今日は飛んで!」
「あい分かった。どうせそう言うだろうと思い、翼を温めておいた。」
「流石グラデウス。建てに数年間一緒に過ごしてきた仲だね。」

 グラデウスの龍姿、いや本来の姿の背中に乗りしっかりと角を掴む。
 
 皆の中には、もう既にマスターとの契約が切れたのではという疑問をもつだろう。
 しかし、言い訳させてほしい。
実はマスターとの契約は切れたあと、彼は全く放してくれなかった。いや、正確には精神的に放してくれなかったというのか。
 初めこそは何もなかったが、段々辞めさせまいと工夫をしてきて、お金の魔力を使い、私を雇うという形に留まさせられた。
 お陰で今溜まっているお金で家一軒は帰る程だ。

「おい、着いたぞ。」
「有難う!今日も同じ位の時間に向かいに来て。」
「承知。」

 グラデウスから降りて急いで店に向かう。やばいあと2分!!

「おはようございます!!」

 また鉛筆が壁に刺さった。
 実はこれ、恒例行事になっていて、毎日壁にめちゃくちゃ穴が開く。
 お陰で壁の傷を塞ぐという魔法を覚えてしまったぐらいだ。

「おせぇ。早く仕事着に着替えて働け。」
「はいはい。そんな怒らなくても……」
「あ"?」
「また盗作されましたか?」
「正解だ。これで何度目だぁ?」
「おそらく5回以上かと……」
「いい加減アイツをどうにかしねぇと商売にもならねぇ。」

 この数年間、相変わらずあの『ハイエナ野郎』改め、ようやく名前を知った『デニス』は盗作し続けている。
 初めこそはそんな利益を見込めない脱水症状対策の飲み物など、いずれレシピを無料公開する予定だったものを盗作。
 そこまでだったら百歩……いや、千歩譲って許せた。
 しかしこの前の棒付きキャンディーのような物の『スティック』を盗作されたときはもう駄目だやろう殺ろうっと殺気が滲み出た。

デニム・・・野郎め……」
デニス・・・だ。いや、名前で呼んじゃいけねぇよ。人間以下だ。」
「それもそうですね。それにしても一体どうやってレシピを盗んでいるんですかね?」
 
 幾ら経路を辿ろうとしても、尻尾すらも掴めない。商業ギルドの七不思議とされているらしい。
 
「おい、品定めに行くぞ。」
「お!待ってました!!」

 多分この仕事をやっていて一番楽しい事が『品定め』だと思う。
 4ヶ月に一回開催される恒例の『マーチェ市場』にて、商業ギルド用に掘り出し物が売られる場所がある。
 民間人それぞれの家宝や、掃除の時に出てきた物を売り出すバザーのようなものがそこで催しており、ギルドの職人たちがこぞって見に来るのだ。
 ある事例では、国宝級であるS級の剣がその場所で発見されたらしい。
 普段お目につかない掘り出し物が埋もれているかもしれないので、商業ギルドにとっては欠かせないイベントなのだ。
 そして、私もその砂漠に落ちた金塊達を見つけるため、こうやって駆り出されている。
 世界各国の独特な陶器や、人形、織物などが見られるのでぶっちゃけ嬉しい。

「あ!マスター、これはどうですか?」
「それは葛だ。でもその隣にある紅の耳飾りは悪くねぇな。B級の下ってところか。」

 この様に品定めをして、利用価値がありそうな物を探し出していく。
 私は何かと運が良いようで、ほんのたま~にA級のアイテムが見つかることがある。

「そういえばマスター。そのアイテムの階級ってどんなふうに識別されているんですか?」
「説明してなかったか…。あー、人間でいう冒険者の階級と同じだ。
 S級からD級まであり、当然のことだが階級が上がっていくにつれて希少価値が高い。」

 一切目線を目の前にある商品から離さずに説明し始める。

「そんで、アイテムを扱うにあたって一つルールが存在している。」
「ルール?」
「薬草や薬などの消耗品は関係ないが、武器や防具などの一生物は話が別だ。
 階級に見合ったアイテムを使わねぇと、回数制限でぶっ壊れる。」
「へ?」
「つまり、D級の奴がS級の剣を使うと数回で壊れちまうってことだ。」
「S級が脆いってこと?」
「違う。アイテムは人間の力を図り、自身を扱う権利はあるのかを見定めているってことだ。S級の冒険者はどんな階級のアイテムを使っても一生扱える。
 逆にD級の様に弱かったら糞な武器しか使えねぇってこった。」
「それって……実力がなきゃ何も出来ないってことじゃ……」
「そうだ。冒険者っていう世界はいわば弱肉強食。自力で自身の力を強めねぇと、上に上がれないってことだ。」
「不正が出来ないって言い換えることができますね。」
「ああ。金持ちが幾ら息子に強い防具を与えたとしても数回で壊れちまうから意味がねぇ。地道に強くなっていくしか道がない。」
「アイテムは生きているんですね。」
「かもな。」

 アイテムという仕組みが分かったところでお腹が鳴った。

 マスターは呆れたため息をついたあと、ようやく私に目線を寄越し苦笑した。

「飯にするか。」
「はい!!」

 乙女としての恥らいはなく、元気よく返事を返す御年15歳。
 今日も今日とて元気だけはある。








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