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第1章「今の故郷」
第22話「私の故郷」
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アスチルベ目線
____________________________________________________
記憶が戻ったのは数年前の春。そこから結構な事件に巻き込まれた。
伝説級の生物にあったり、恋をしてたり、マスターに嵌められたり。
散々な目にあっては来たけど、それなりに楽しかったなぁ………。
思い出にふけっていると、黄葉した落ち葉が目の前を舞った。
「秋が過ぎて行きますねぇ」
((ああ))
「さつまいも食べたいですねぇ」
((ああ?))
「作りますか!」
((好きにしろ。我は寝る))
「駄目!!燃えそうな紙持ってきて!」
((ニュースペーパーでいいか?))
「うん。」
新聞を取りに行くため、気だるげに翼を生やし、飛んでいった。
やっぱり秋は芋だよねぇ~。
本日は店はお休みなので、久々に休暇を貰った。夜勤明けのサラリーマンみたいな開放感がする。
「絶対ブラックだよあそこ……。」
「これでいいか?」
「フギャ!!ぐ、グラデウス?!」
「なんだその色気のない叫び方は」
いや、誰でも耳元で腰が砕かれそうなボイスで囁かれたらびっくりするわ。
そしてどうして人間の姿なんだよ……。
「お主の姉、アマリリスとその番いだ。途中で会って連れてきた。」
身長の高い彼に隠れて出てきたのは、愛しのお姉ちゃんと、良き友人のミュール君だった。
「アスチルベ、私も一緒にいい?」
「よ。アスチルベ。」
「いいよ~、ミュールは久しぶりだね。」
二人はもう成人に近くなってきて、ミュールの可愛げな外見は大人へと変化し、男性になっていく。
お姉ちゃんは着実に美人へと成長している。
「大人になったなぁ…二人とも。」
「「いや、誰目線よ/だよ」」
「シンクロ~」
仲良く言葉がかぶってお互い恥しそう。可愛いいなこのカップル。
「焼くなら焼け。」
グラデウスの言葉で焚き火をしていたのを思い出し、二人にサツマイーモを渡す。
「はいこれ。一緒にやこう!」
火の粉を散らす焚き火をぐるりと三人で取り囲むと、サツマイーモを洗った枝に突き刺して焼き始めた。
「わ、火が!!」
「馬鹿、早く消せ!」
「もう!おっちょこちょいなんだからアスチルベは。」
記憶が戻る前、いやもっと昔からこんな風景だったかもしれない。
一人増えて、一人減った。
様々な出来事が起こって大変だし、まだこの世界について何もわかっていない。
しかも前世の『私』についても謎が深まるばかりだ。
「美味しいわ!」
「本当だ。」
「お主も食え。冷めるぞ。」
「………うん、今食べるよ。」
でも、まぁ……そんな焦る必要はないと思う。ゆっくりと、慣れていこう。
これが、私の故郷。
これが、今の『私』の人生。
第一章「今の故郷」完
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記憶が戻ったのは数年前の春。そこから結構な事件に巻き込まれた。
伝説級の生物にあったり、恋をしてたり、マスターに嵌められたり。
散々な目にあっては来たけど、それなりに楽しかったなぁ………。
思い出にふけっていると、黄葉した落ち葉が目の前を舞った。
「秋が過ぎて行きますねぇ」
((ああ))
「さつまいも食べたいですねぇ」
((ああ?))
「作りますか!」
((好きにしろ。我は寝る))
「駄目!!燃えそうな紙持ってきて!」
((ニュースペーパーでいいか?))
「うん。」
新聞を取りに行くため、気だるげに翼を生やし、飛んでいった。
やっぱり秋は芋だよねぇ~。
本日は店はお休みなので、久々に休暇を貰った。夜勤明けのサラリーマンみたいな開放感がする。
「絶対ブラックだよあそこ……。」
「これでいいか?」
「フギャ!!ぐ、グラデウス?!」
「なんだその色気のない叫び方は」
いや、誰でも耳元で腰が砕かれそうなボイスで囁かれたらびっくりするわ。
そしてどうして人間の姿なんだよ……。
「お主の姉、アマリリスとその番いだ。途中で会って連れてきた。」
身長の高い彼に隠れて出てきたのは、愛しのお姉ちゃんと、良き友人のミュール君だった。
「アスチルベ、私も一緒にいい?」
「よ。アスチルベ。」
「いいよ~、ミュールは久しぶりだね。」
二人はもう成人に近くなってきて、ミュールの可愛げな外見は大人へと変化し、男性になっていく。
お姉ちゃんは着実に美人へと成長している。
「大人になったなぁ…二人とも。」
「「いや、誰目線よ/だよ」」
「シンクロ~」
仲良く言葉がかぶってお互い恥しそう。可愛いいなこのカップル。
「焼くなら焼け。」
グラデウスの言葉で焚き火をしていたのを思い出し、二人にサツマイーモを渡す。
「はいこれ。一緒にやこう!」
火の粉を散らす焚き火をぐるりと三人で取り囲むと、サツマイーモを洗った枝に突き刺して焼き始めた。
「わ、火が!!」
「馬鹿、早く消せ!」
「もう!おっちょこちょいなんだからアスチルベは。」
記憶が戻る前、いやもっと昔からこんな風景だったかもしれない。
一人増えて、一人減った。
様々な出来事が起こって大変だし、まだこの世界について何もわかっていない。
しかも前世の『私』についても謎が深まるばかりだ。
「美味しいわ!」
「本当だ。」
「お主も食え。冷めるぞ。」
「………うん、今食べるよ。」
でも、まぁ……そんな焦る必要はないと思う。ゆっくりと、慣れていこう。
これが、私の故郷。
これが、今の『私』の人生。
第一章「今の故郷」完
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