異世界転生少女奮闘記

Don't tach me

文字の大きさ
上 下
22 / 84
第1章「今の故郷」

第21話「終止符」

しおりを挟む
アスチルベ目線
____________________________________________________

 非常に憂鬱な気分。なんで自分でフッたのに落ち込んでいるんだろう?
 情緒不安定かよ。
「おい、着いたぞ。」
 何でこんな気分で働かないならんのだ!普通に一週間くらい休みたい。
「ありがとう…。」
((そんなに好いていたのか?))
 黒いひよこがつんつんと頬を突く。
「…らしいね。私もこんな落ち込むとは思ってなかった。」
((お主らしくない。もっと馬鹿騒ぎするのかと思っていたが…。))
「ええい煩い!いいもん直ぐに立ち直ってやる!!」
 半ばやけくそになって、店の扉を勢いよく開く。
「おはようございます!!」
 
 ガンッと顔の横の壁何かが刺さる。よく見てみると、、鉛筆であった。
 え、あれって石に刺さるっけ??
「よぉ……昨日はお疲れのようだったじゃねぇか。こんなクソ忙しい時期に休みやがって……」
 このブラック企業め。一日休んだだけでこんな怒ります?
 もう早く辞めたい~
「あの、えと、寝てましたよ?ちゃんと。」
「寝てなかったら俺はお前を殺してんぞ?」
「ヒャイ……ツギハキヲツケマス。」
 しょぼしょぼと店の手伝いを始めようと、掃除道具入れに向かった。
「……おい。これ・・はなんだ?」
 先程とは違う腹の底から出てくる唸り声。いきなり服の後ろ襟を摘まれると持ち上げられた。
「うわわ!え、何ですか?!」
これ・・は何だと聞いている。」
 トントンと首筋の後ろを突かれた。
「……あ、それはその、何でもないです!マスターには関係ないというかなんというか、」
 ジャックによって付けられた跡だ。よっぽど強くつけたかったのか、まだまだ残っている。
 恐らくそれの事だろう。
「関係ねぇ……だぁ?」
 顎を掴み取ると、無理矢理マスターの方向へと向かされた。
「誰にされた。俺の知っている奴か?」
 何故か異常に引っ掛かるマスター。なんかこの眼差し知ってる……。
 あ、お父さんの目だ。異様に私の事を心配してくれる保護者の目。
 まぁ、確かにまだ11の子供が性行為の跡がある事がそもそも異常だ。
 誰でも気になる。
「関係ないっ!」
 それでも言いたくなくてマスターを拒絶しようとしたら、顎を掴む手からの圧力が強くなった。
「少なくとも、俺様は、今、てめぇを、雇っている、側なんだよ。事件に巻き込まれたら面倒くせぇ。いいから、話せ。」
 圧力が凄く、呼吸もしにくい。
「……。」
「おし、てめぇの両親のとこ行くぞ。」
「ぇえ?!やだやだ!お願い何も言わないで!同意なの!私とジャックが同意してやったこtっ!」
 やっちゃったー、はい言っちゃったー。馬鹿ですか私。慌てて口を抑えたげど意味ないですね。
ジャック・・・・?毎日一緒に来てたあの男か?」
 更に機嫌悪くなる。眉頭に皺が集まる。
「同意……ねぇ……。」
 嘘は言ってない。いざとなればグラデウスに頼ることだって出来た。
 でも、やらなかった…。
「…チッ。」
 首後ろを掴んでいた腕の力が急に抜け、強制的に床に降ろされる。
「まだ幼さが残るうちに、大人になろうとすんじゃねぇ。」
「……ごめんなさい。」
 マスターの大きな手ががさつ・・・に頭を撫でた。
 乱暴過ぎて、髪の毛がグシャグシャになったけど、彼のできる精一杯の優しさなのだろう。
「…昔、お前みてぇな年齢の子供が無理矢理働かせられていた。毎日痣作って、糞親父の酒代を稼いでた。」
 ボソリと呟く。
「…アイリスさんですか?」
「……ああそうだ。あいつに会ったのは俺様も同じ位の年齢だった。お互い汚ねぇ格好しててよぉ……俺様は裏の子供だったからな。」
 裏の子供とは、住む場所もない子供達の事で、発展している町の路地裏に住んでいる。
「知らなかった……」
「言ったこともねぇからな。俺様は運良く商人のじじいに拾われて店を継げた。」
 成程。壮絶な人生を歩んだのに、こんな自信満々の俺様系になったんだ……まぁその方がいいのかも?
「アイリスはあの見た目だからな。金持ちの両親に拾われて、見事お嬢様生活を手に入れたってわけだ。」
「…でも全く嬉しそうじゃなかったです…」
「元々礼儀もお上品さも縁がない生活から一変して、いいとこのお嬢様。そりゃ誰でも嫌になる。しかも最近婚約者が決まった。」
「マスターはいいんですか?」
「あ"?なにが?」
「アイリスさんの事。諦めるんですか?」
「……自分の事は鈍感なくせに、人のことに関しては敏感だな。」
「えへへ…」
「褒めてねぇ。」
 拳骨が降る。でもいつもよりかは覇気が足りない気がする。
「大人には複雑な事情があんだよ。糞ガキは首を突っ込むな。」
「えぇ……つまんないぃー…いでっ!」
 これ以上叩かれたら馬鹿になっちゃうんですけどぉ?!
「本当に両親には言わねぇつもりか?」
「……うん。余計な心配は掛けたくないし、同意だったから。」
「じゃあせめて俺様に話せ。一応ここでは俺様が糞ガキの保護者だからな。」
 うわ保護者とか似合わな。
「おい、考えが丸見えだ。もう一回殴られてぇのか?」
「遠慮しときまーす。」




 言われるがままマスターにジャックとの間に何が起こったのか洗いざらい話し、結局拳骨を食らった。
 どうして食らわしたのかは言わなかったが、何となく分かった気がする。
 周りを頼れと言いたいのかもしれない。



 こうしてジャック事件は幕を閉じた。









To be continue⇨
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

処理中です...