異世界転生少女奮闘記

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第1章「今の故郷」

第19話「愛しい愛しい人」

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ジャック目線
____________________________________________________

 彼女の顔は見えない。昨夜の行為は自分でも最悪だと理解している。
 だが、そうしたかった。
 しなければ精神は壊れ、心は廃れていくとこだった。
「ん……ムニャムニャ…」
 寝台に広がる柔らかそうな薔薇色の髪。シルクの布のように艷やかだ。
 愛おしい気持ちが疼き、その美しい髪に唇を落とす。
「『アスチルベ』。愛しているよ。どうしようもない程にね。」
 昨夜の淫らな姿を思い出し、下半身に熱が集まり始めるのに呆れる自分がいる。
「昨晩はすまなかった。もう、会わない。今日ここを発つよ…」
 名残惜しくて頬や手にも順々に口付けていく。
 もうこれ以上するとまた寝込みを襲ってしまいそうなので、寝台から降りようとした瞬間…。
 小さな手が俺の腕を掴んだ。
「まだ、理由…聞いてない。」
 驚いて後ろを振り返ると、真剣な表情したアスチルベ、いや、『女性』が引き止めていた。
「理由無しに幼女を抱かないでしょ?何があったのか、教えてくれるよね?」

















アスチルベ目線
____________________________________________________

 私を抱いている時、加害者はジャックのくせに、どこか傷ついた表情を浮かべていた。
 抵抗したくても出来ず、押し返したいけど物理的に無理。
 結局2回まで続けられ、奇跡的に私ジャックのモノを受け入れることができた。
 まぁ、物凄く腰は痛くて、本当に立ち上がれないけどね。
 そのあとは精神は大人(?)でも体力が持たず、結局理由は聞けずに意識を手放してしまった。
 そして今、ジャックが独り言を炸裂させながら私の髪をいじっている。
 これは聞くチャンスではなかろうか??
 もうベットから降りようとしているジャックの腕を掴んで必死引き止める。
「まだ、理由…聞いてない。」
 喉が乾燥して上手く声が出せず、ハスキーボイスが出てきた。
 それでも構わず更に言葉を重ね、理由を聞き出そうと全力を出す。
 彼は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐにいつもの様に片眉を下げ、困り顔。
 どうしてそんなに申し訳なさそうなのかやっぱり分からない。
「オチビちゃん…起きてたんだね。身体の調子、大丈夫そう?」
「うん。心配してくれてありがとう。でも、話をはぐらかさないで。」
 諦めたようにため息をついたジャックはベットの端に座る。
 私も彼の隣に座り、肩を並べる。
「……何から話せばいいのかな…。」
 そうしてポツリポツリと話し始めてくれた。
 要約すると、ここ最近、ジャックが働いている傭兵ギルドにて、ここの一帯を統治する『シェルヴェン侯爵』の騎士団に勧誘されたらしい。
 彼は喜んでその勧誘を受け取り、出て行こうとしたのだが……親が猛反発。
 母親は彼が幼少期の頃に亡くなっており、男手一つで育ってきた。
 元騎士団長だった父親を心の中で密かに尊敬していたジャックは反対された事が衝撃だったのだ。
「俺は強かった親父を尊敬していたし、強い事がどんなに大切なのかを身を持って知っていた。なのに……」
「…ジャック。もっと別の想いがあるんじゃない?」
「……ハハ。本当にオチビちゃんには敵わない。」
 降参したかのように笑うと、毛布を肩にかけてくれる。
「ごめん。ちょっと俺に刺激が強い格好だから隠してくれ。」
「え?……あっ!」
 引き止める事に集中していたせいで、自身が生まれたままの姿、つまり裸体だった事に気が付き、慌てて毛布で体を包む。
「あ、りがとう……。」
「いや、気にしないで。元は俺が原因だしな。」
 恥ずかしさの余り、目線を下げ寝台の下に敷いていた獣の毛皮を見る。
 気まずい空間。それを破ったのはジャックの方だった。


「アスチルベ。俺と、生きてくれないか?」


 はい?急展開過ぎて、暫く言われた言葉の意味を理解出来なかった。
「自己中心的な事を言ってしまうけど、俺はこんな所で終わりたくない。
 もっと俺にしか出来ない事がある筈と昔から考えていた…。
 この手で、広い世界を見てみたい。親父の様に、ここで強さを廃れさせたくない。」
 彼は拳を強く握り、自身の願いがどれほど強いのか訴えかけている。
「それにはこの村を出ていく必要がある。そして、二度と戻ってこない。
 帰る場所が無ければ後々楽だろうと思っていた・・・・・から。」
 過去形?
「君に会うまではね…。」
 私の心臓が跳ねた感覚がした。
「俺は、いつ頃からは分からないけど気づいたら君を追いかけていた。
 遠出のあとも、君の『おかえり』を聞くために君の側へいち早く帰った。
 いつの間にか、俺の帰る場所になっていたんだ。」
 彼から流れ出す愛の言葉。さっきから心臓の鼓動が激しい。
 嬉しい…嬉しいんだ私。
「頼む。君を一生守るから、どうか家で帰りを待っていてくれないか?俺達の家を建てて、子供は何人でもつくろう!それで、育児は勿論喜んで手伝うし、俺は君の為なら幾らでも稼いでやる。」
 きっと、楽しい日々を送れるかもね。私は彼の帰りを待ちながら、育児に励む。
 小さな家で、自然に囲まれて、いっぱい遊べるほど広い草原…。

 でもね、違う気がする。私は、もっと…

「……ごめんっ、ごめんなさい…。私、私ね。やりたい事とか、夢とか薄ぼんやりしてる。ジャックの言う生活はとても素敵だとも思う。……でもね、私は自分の力で世界を見たい。自分の力で生きていきたい。自分の力で……ハッキリとしたやりたい事や夢を見つけてみたい。」
 視界がぼやけ、頬に温かいような冷たいような雫が伝っていく。
「誰かに寄生して、生きていきたくない。」
 ジャックの表情は視界が悪いせいで見えない。でも、大きくて温かい手が涙を拭き取ってくれる感触はある。
「ごめんね、我儘で。俺は最低だ。11歳にするような話じゃなかった…。もう、お眠り。疲れただろ?」
 優しげに語りかける言葉と共に、首後ろに強く鋭い衝撃。
 強制的に意識を手放させられた。
「お休みアスチルベ。俺の愛しい人。」
 小さなか細い声は、私の心の深部に深く深く突き刺さった。






To be continue⇨




 なんか最近書き方変えてみたり、シリアス話が続いたりと色々申し訳ないです。
 あと少しでいつも通りの日常(?)に戻すので……タブン。




    
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