異世界転生少女奮闘記

Don't tach me

文字の大きさ
上 下
12 / 84
第1章「今の故郷」

第11話「やっぱ肉ですな」

しおりを挟む
アスチルベ目線
__________________________________________________

うーん、何作ろっかなー。

((ヤギ畜生が舐める岩塩で何を作るというのだ?))

 
 只今、キッチンにて頭を抱えております。えー、いきなり何を作れと言われましても……料理人じゃないよ私は。

 お腹減ったな……肉、肉……

「ステーキ食べたい!!今の私のお腹はステーキを欲している!!」

((すてーき?))

「ふっふっふ。よく見てなさい!」

 急いでステーキの作り方を思い出そうとした。……分からん。

 えー、どうしよう。確か……



……………………………


……………


……







 「き、奇跡だ!私天才!?」

((驚いた…。いきなり魔物討伐用の刃物を取り出し始めたから失敗すると思っていたんだが……))

「なんか、できた。」


 奇跡的なステーキは、焼き色がしっかりと付いていて食欲を唆る香しい香り。
 竹串のような細い調理器具で刺してみるとジュワリと肉汁が吹き出てくる。


「あ、レシピ!!」

((手順は我が覚えた。安心するといい))

「ナイス!大好きグラデウス!」


  ドヤ顔をするひよこちゃんを撫でながらステーキを味見。
 皆が日常で食べている兎と鼠をかけ合わせたような『ラビッス』は、猪程の大きさで油が十分に乗っている。

 そこに塩や香辛料をかけることで更に美味しくなった。(少なくともこの世界では)



 あ、料理人の神様ここに見参って感じ。

「どれ。我が味見してやろう。」

 勝手に肉の端切れを口に放り込む人間姿のグラデウス。
 ピタッと動きが止まった。

「……美味い。」

「よし。早速この目で項垂れるアシュレイを見に行こう!!」

 あの・・グラデウスが褒めたんだ!絶対この勝負勝つに決まってる!!













___翌日____


 二度目の定期市場にて、今回はグラデウスと私の二人できた。
 ジャック達は2日連続で貴重な労働力が買い出しに行くのは勿体ないという話になり、お留守番。
 悔しがる三人をおいて、全く労働力にならない私と近所のお兄さんという立ち位置でいるグラデウスで来たのだった。


「よ。待ってたぜ狂れた親子。まさか本当に一日で作り上げてくるとは……。
 よっぽど自信がおありだなぁ?」


 皮肉げに私達を睨みつけ、料理を出せと催促させる。


 ドンッ!っと例のステーキをアシュレイの前に置くと、片眉を潜め訝しげに此方を見つめた。

 そして肉の香り、肉汁、恐らく彼の頭にある合格項目をチェックしているにだろうか。


「……。」

 やっと口に欠片を運び、数口噛むと、動きを止めチラリと此方を見る。





「……不味いな。」



「え?」



 冷徹に言い放たれた言葉が私の心を突き刺した。時間はそんなに掛かってはいないが、自分の作ったものを他人に汚されるのは、やはりいいものとは言えない。

「…….そ、んな……。」

 でも、確かに前世の職人が精一杯料理を勉強した物をそっくりそのまま表現するのは不可能だ。


「俺の勝ちだな。」


 アシュレイの手元には契約書があり、灰のように崩れ消えていった。
 
「……っ!なにこの文様?!」

 崩れたと同時に首に文様が浮かび上がり、触っても変化はないが、首輪のように見える。


「契約の能力だ。負けた奴に文様がつき、絶対に約束を守りきるまで離れない。」

「ウウ……最悪。」

「ふむ。見た目は悪くないぞアスチルベ。」

「グラデウスのたまに出るSは何なの?」

「お前ら親子じゃねぇよな。前から思ってたけどよ。」

「な、なんで分かった?」

「当然だ。俺様がどんだけ日々人間の観察してると思ってんだ?これ位見抜けねぇと商売出来ねぇよ。」


 ゆっくりとカウンターから出て来たアシュレイ。私の目の前に来ると顎を乱暴に捕まれる。

「お前、いくつだ?」

「……11歳。」

「ほぉ……未来があるな。おい、あの肉売るぞ。」



………。




「はぁ?!」


「あ"ん?聞こえなかったのか?
あの肉売るぞ。」

「え、だって不味いって……」

「クックック ……。」


 え、なんでグラデウスも笑ってるの?!


「おいおい、お嬢さん。よく契約書の内容を思い出してみろよ。」

「え?別に何も変な所はなかったはず…」

「何が勝敗を決めるかを明記して無かっただろ?その場合、契約書を保持していた俺様が決着方法を決めれる。
 どっちにしろお前は負けてたって訳だ!」


「そ、そんなのズルだ!!」

「喧しい!いい勉強なったと思え。
よかったなぁ、平和ボケの糞ガキ。」

「グラデウスはなんで教えてくれなかったの?!」

 悔し紛れにグラデウスに当たると、不思議そうに目を開け、首を傾げる。


「気分?」


 貴方と契約した意味が御座いません。
おーい、血を返してー……


「おい、これから3ヶ月。俺の奴隷な」

 上から新しい玩具を見つけたようなゲスな笑みが降ってくる。
 うわー、最悪な人に捕まった……

「離さないぜ?


 宝石の原石様よぉ…。」














To be continue⇨




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。 魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。 ・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」 ・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」 ・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」 ・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」 4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた! しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!! モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……? 本編の話が長くなってきました。 1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ! ※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。 ※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。 ※長期連載作品になります。

処理中です...