異世界転生少女奮闘記

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第1章「今の故郷」

第8話「ご飯……美味しくしようよ」

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アスチルベ目線
________________________________________________




「………。」

「どうしたの?アスチルベ。」


 ご飯の手を止めた私を心配したのか覗き込んできた天使。
 いや、どうもしてないけど……。

 なんか、物足りない。


「アスチルベ?」

 お母さんも向かいの席から心配そうに首を傾げる。
 
「な、なんでもない!それよりお父さん今夜はおそいの?」


 春が一巡し、記憶を取り戻して二度目の夏が顔を出し始めた。生命が騒ぎ出し、毎日がせわしなく動き回る。
 その暑い夏の中盤。お父さんは忙しそうに番人の仕事をしている。

 そう、明日から4ヶ月に一回の大規模な『マーチェ市場』が一週間開催される。異国の反物や食べ物が華やかに並べられ、一種の祭りのような騒ぎになる。
 まだ私は行ったことがないので、是非とも行きたい。そして、あわよくば塩が欲しい。

 ここの料理ははっきり言って物足りなく、薄ぼんやりした味付けがする。
 前世?多分前世では、確か保存料として香辛料が発達していたと思うが、この世界では保存などは魔法で出来てしまう。
 
 なので自分の舌を満足させたいがために、塩をどうしても入手したいのだ。

 考え事をしいている中で、お母さんと天使リリーお姉ちゃんが話で華をさかしている。

「私もマーチエ行きたい。」

「「駄目!」」

「えぇぇぇえええ!?」


 まさか二人に即答で否定されるとは……
しかし納得がいかない。


「どうして?!」

「アスチルベはここ最近行方不明になったじゃない。」

「しばらくはアンセイ安静にしないと!」

「やだやだやだ!!私も行きたい!!」

「ダーメ!!」



 こうして子供の特権。『駄々コネ』を使って交渉を重ね、結局夜遅く帰ってきたお父さんも加わってきて負けた。












____翌朝_____


((クックック……。))

「煩いひよこちゃんめ。」

((いや、あんなに駄々をこねたのに結局行けずじまいかと思うと……クック。))

「うう……くそぉ……。あ、そうだグラデウスが付いてくればいいんじゃないの?!」

((断る。))

「なんでぇ?!」

((気分が乗らん。我にどんなメリットがある?))

「……ある、かのしれない。」

((ほれ見ろ。ないであろう?))


 嫌味たっぷりの言い方。
肩にちょこんと座っている雛ちゃん。
しかし腹の中は真っ黒け。



「やぁ、オチビちゃん。君も結構子供らしい可愛さも持ってるんだね。」

「うわぁ!なんだジャックか。」

「どういう反応だよ。」

 今日も輝かんばかりの整った顔。
よく動く表情はいつも嬉しそう。


「あ、いいこと思いついた!!」

「え?」

 ジャックは何かを察したのか、困ったように眉を下げる。


「ジャック、私をマーテェに連れて行って欲しい!!お願いします!!」

「……あー、実は俺、信頼失ってるから君の両親が許してくれるかどうか……」


 そう言って決まり悪そうに首をかくジャック。多分あの事件のせいか……


「私は信頼してるから大丈夫!!」

 私は知ってるから。
 あの事件後、一人鍛錬を続けて強くなろうとしていること。

「……。」

「………。」


 え、なにこの沈黙。私変な事言った?

「………うん。君はそういう子だったね。
うん。」

 何度も頷きブツブツと何かを言ったジャックがようやく顔を上げる。
 

「分かった。君の両親に相談してみるよ。」

「やったぁぁ!!」

「君の初デートは俺が貰うから。」

「やったぁ……ん?あ、そうだね。」

 さら~りという甘い言葉をいつもの様に受け流し、早速お父さんお母さんの元に連れ出そうとした。

「待て。我も行こう。」

 ふわりと体が持ち上げられたかと思うと、誰かの腕の中に収まった。
 聞き覚えのある声。

「グラデウス?」

 いきなり登場したグラデウス。
貴方、先程気分が乗らないって言ったじゃん!

「……お久しぶりですね。おじさん。
今日はどのようなご用事ですか?」

 ツウーっと冷や汗が……
ジャックの時々やる冷徹の瞳。こっわ……

「我もこの村の近くに住んでいる。
なにか用事がないと入っては駄目なのか?」

「いえ、別に。しかし勝手に俺たちの会話に入ってくるのは些か横暴ではないかと。」

「フンッ。若造には分かるまい。
アスチルベは我が連れて行く。なにせ『命の恩人』であるからな。」

「……『あの事件の』でしょう?」

「弱者に我のアスチルベは預けられん。」

「っ!」

 
 うわわ。これが一触即発場面か。
この二人なんでこんな仲が悪いのかな…。


「はぁーいストップ!二人とも来ればいいじゃん!」

「「は?」」

「だってどっちか一人より、二人の方が絶対安全でしょ?」

「「……。」」


 黙りこくる二人の手を引っ張りなんとか家に着く。
 交渉開始!…………数秒で解決?

「い、いの?!」

「ええ。この二人方がいれば絶対に大丈夫だわ。但し!……ちゃんと手を繋いで逸れないようにね。」

 お母さんが許可を出してくれた。
お父さんは男二人が((以下省略 等と猛反対していたが、お母さんの威圧で沈黙。

 お姉ちゃんは付いて来ることになった。
そしてミュール君も自動で付いて来る訳で ……。
 結局お子様遠足の様になってしまった。

 おーっと。男二人がイライラしております。いい加減仲良くしなよ。









 こうして明日、5人で市場もといマーテェに出かけることにした。














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