異世界転生少女奮闘記

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第1章「今の故郷」

第1話「まず初めに」

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 私こと、「アスチルベ」は、数日前に記憶を取り戻した。
 前世は基礎的知識と、自分が女性であり、恐らく大人であるとしか分かっていない。

 ここはマルガリータ村。
大陸の内側なので海から遠く、年間降水量は1000mmいくか行かないぐらいだ。
 森林があり、農業が出来るのでなかなか内陸の村にしては発展している。

 名産物は、前世の牛と羊を掛け合わせような『カウ』という動物の副産物だ。前世とそう変わらない乳製品や、かりとれるフワフワした毛からつくる服類などなど……。
 
 更に嬉しいのは野菜も種類豊富である所だ。
人参のようなニンシン。芋のようなイモ。
 流石農家と言わざるを負えない。

 今の春の時期は、種まき&冬に大分消耗させた薪を補充に忙しく、村人は慌ただしく働いている。

 私も例外ではなく、こうして薪を拾う係へと駆り出されている。

 記憶を取り戻して数週間。








___森にて___


「おいおい、オチビちゃん。薪落ちてるぞー。」

「うるさい。知っている。」


 相変わらずジャック・姉・私の三人で腰を犠牲に拾っている。


「アスチルベ!ジャックさんに失礼でしょう!」

「だって…」

 このあと小さなたんこぶができるのが定番になってきた。まあ可愛いいので是非……変態になるのでこれ以上は言わない。


「おーーーーい!アマリリス!!」


 あ、こっちに向かってくる見覚えありな少年。『ミュール』君。


「げっ……ミュール………」


 珍しく顔をしかめたお姉ちゃん。
でも私はわかります。ミュール君は誰の目に見てわかるほど熱烈にお姉ちゃんに迫っているのだ。
 お姉ちゃんもミュール君の気持ちを察していて、非常に気まずいみたいだ。

 私は認めない……と思っていたのが、ここ数週間の様子を観察し、涙ぐましい努力からこっちのほうが泣けてきた。

 しょうがないやい!許してやる!


「アマリリス、俺も一緒に行ってもいいか?」

「え、ええ。勿論……」


 ミュール君お得意一生懸命な眼差し。
リリーお姉ちゃんKOですね完全に。

 二人のどぎまぎした甘酸っぱい雰囲気。
自然と私とジャックはその場から距離を取った。


「おや?オチビちゃんもそういうの分かんの?」

「わからない方がおかしいでしょ。」

「ふーん?結構大人だね?」

「あたりまえ。」

 
 目選を一切合わせず会話を進める。私達の目線先には甘酸っぱい恋愛場面。


「あっちは頬っておいて俺とデート、する?」


 新しい玩具を見つけたような小学生の無邪気笑顔を向けてくる。


「かんべんして。」


 バッサリと会話を切り、素早く目標以上の薪を集めようと動き出す。
 ジャックは断られるのを知っていたかのように肩をすくめ、私の薪籠を奪い取ると先程落とした薪を拾い入れる。


「一応俺、力あるからオチビちゃん薪を拾って、俺が薪持ちってのはどうだ?」


 悔しいがそれが一番効率がいい。
渋々そういう役割で拾い集め、お姉ちゃん達の分まで拾うと村へ一足先に帰った。








____村の入口_____


「ジャック、あなたのの可愛いいオヒメサマたちがいる。よかったね」


 ジャックの意気揚々としていた表情が一気に曇る。まるでうんざりしたようなため息。


「いつもならよろこんでかけよるのに……
どうしたの?」

「あ?あー、んー……」


 気まずそうに目線をずらし、明後日の方に目線を向ける。


「いやー、今はそういう気分じゃないっていうか、プライベートゾーンというか。」

「??」


 変なの。女関係にプライベートゾーンとかあるのか。男視点にならないと理解し難い心情だな。


「「「ジャック君~~♡」」」

 文字に表さなくても分かる黄色い声色に、♡の語尾。私は憂鬱そうなジャックの背中を押し、自分はサッサと自宅へ帰った。
 恨めしそうな顔で睨まれたが無視無視。



















___自宅にて____


 母こと『アンヌ』は夕飯支度に取り掛かっており、私はえんどう豆のようなエントウの筋を取っている。


「ただいまー。」


 お、ようやくお姉ちゃんの帰宅だ。
あの後どうだったか気になる……が野暮なことはしない。


「あら、おかえりアマリリス。薪を小屋に置いたら夕飯の支度を手伝って頂戴?」

「はーい。」


  そしてじゃがいもっぽいシャガイモの皮を向き始めたお姉ちゃんにこっそり耳打ち。


「あの後どうだった?」


 先程の決意はどこいったのかと突っ込みたい人はいるだろうが、知らん。
 気になるものは気になる。


「ブフォ!!な、ななななな何も、ナニモナイ……。」

 
 なんて分かりやすい。流石天使なだけある。
絶対接吻交わしたなこりゃ。
 おめでとうございます!!

 脳内はお祭り状態。
 ああ、落ち着いてください!この尊さは公平です!分け合ってー!

 と、一人寸劇できるくらいだ。


「あらー、アマリリス。恋人でもできたの?
なんて可愛いいの♡お相手は?」


 アマリリスの綺麗な栗色の髪色を与え、私にストレートな髪質をくれた母アンヌ。
 ほっそりとした細見に、整ったクリクリの二重。実はこの村トップクラスの美人さんだった事にも頷ける。

 父もとい『ノーモット』もこの村((以下省略 で、今はダンディなおじさんとなった人。私静かに燃える灯のような渋い朱の髪色と、釣り上がったツリ目をくれやがった。

 そう、私は結構キツめな見た目なのだ。
恨むぞお父さん。


「お、お母さん、楽しんでるでしょ……」

「ええ、勿論よ! だってようやく我が子にも青春が来たのだもの!」


 頬を赤く染め、見るからに喜んでいる母の姿はまさに女神。私は天国にいるのだろうか?


「俺は認めないぞぉおぉぉお!!!!」


 ドアを蹴破る勢いで入ってきた父ノーモットは、女子会盗み聞きの刑で、湯船を沸かせる係を一週間やるはめとなった。





 









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