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Opening
しおりを挟むおはよう異世界。
さようなら前世。
初めまして知らない天井。
うっすらと瞼を上げ、知らない天井。うん。そこまではいい。
でも知らないおじさん、おばさん、そして子供が私の顔を覗き込んで穴という穴から色々垂れ流す姿。
いや、それはびっくりしちゃうよね。
よかったよかったと手を取り合う三人に一言。
「だれですか?」
今思えばもう少し気の利いた言葉を投げかければよかったと後悔。
高速で医者らしき人を呼ばれ、取り敢えず寝ていなさいと寝台に閉じ込められる。
どうやら三人は私の家族らしい。
いや、家族だ。
この体がそう私に呟いている。
辞書を引いて読み上げるかのごとく情報が次々と頭に詰め込まれ………
「もう、むり……」
結果熱を引いて寝台へ後戻り。
いったい何が始まるというのか………
ボヤボヤとする視界には姉『アマリリス』がおでこに乗る冷たいタオルを変えてくれている。
「『アスチルベ』、早く良くなってね。」
私の名前を呼んでくれた。
そうだ、今のお母さんが自由に生きて欲しいという想いを込めて付けてくれた名前。
「お姉……ちゃん?」
「アスチルベ!?まだ寝てなきゃ駄目!」
たった2歳の違いですっかりお姉さんとなっている、今年12歳の少女。
可愛すぎじゃないだろうか……いや、日本語が可笑しいかった。
可愛すぎて鼻血が出そう……だ。
「リリーお姉ちゃん。可愛すぎてハゲ……そう……ガク」
「何言ってんのよ!早く寝なさい!」
意識が遠のく中からお姉ちゃんがプリプリ怒りながらも意外と元気そうな私に安心しているようだった。
_________翌朝___________
案外ぱっちり目が覚める。
昨日のような騒がしさはなく、まだ日の出る前に目覚めたらしい。
生活音が聞こえない。
私の寝台には看病に疲れたのか、寝ているリリーお姉ちゃん。
肩に毛布をかけ、少し自分の頭を整理する為に外に出ることにした。
外は少し湿気ており、若葉が芽吹いている。
昨日雨であったのか草木に雫がついており、村が目の前に広がっていた。
そうだ。ここはマルガリータ村。
今世の私の故郷。
前世の私はただの日本人で平凡な……年齢は忘れた。でも大人だった気はする。
駄目だ自分の事になると全然思い出せず、前世の世界のことや料理など、基礎的な知識のみ残っていた。
可笑しいな。転生はテンプレだろ?
ん?転生?テンプレ?
……私は携帯小説を熟読していたらしい。
しかし今世の私ついては鮮明に思い出せる。
四人一家の一般農家生まれで、性格は大人しめ。御年10歳である。
母と父は中津まじいらしく、毎朝父の門番仕事中に行く前のキスが熱烈。
まったく子供のまえだぞ!っと突っ込みたい。
「アスチルベ?」
「リリーお姉ちゃん?」
「朝早いね。記憶……戻った?」
心配そうに顔を覗き込んでくれる。
天使ですねどうも。
「だい、じょうぶ。ごめん、迷わくかけて……」
「ううん。よかった!記憶が戻って!!
私物凄い心配したんだからね?!」
力いっぱい抱きしめられ、結構苦しいがかわいいので許す!
栗毛色の少し癖がある髪質。成長したら絶世の美女になるであろう整った顔立ち。
「お父さんお母さんが待ってるから。
一緒に帰ろう?」
手を取り合い、私の家に帰る。
「パパの天使ががえっでぎだぁぁあ!!」
「アスチルベ!!」
号泣する父と、涙で目を潤ませ駆け寄ってくる両親に抱きつき、自分は大丈夫だとわからせる。
「いぎなり、アスチルベが、、倒れたと思っだら、ずごいねづで ……っ」
号泣し過ぎて何を言っているのか分からない言葉。翻訳するように母が話す。
「一週間前に、アスチルベが薪をアマリリスと一緒に売りに行く途中で倒れたのよ。
今まで見たことないほど荒い呼吸で、熱のせいで残雪が溶けるほど暑かったわ。
よかった………生きていて……」
強い強い包容。私愛されてるなぁ。
我ながら嬉しくて、口角が上ってしまう。
「ごめんなさい。でも、ありがとう!」
感謝の気持ちを込め、自分カからも抱き返した。
______数日後_____
(時が経つのが早い?知らん。)
「アスチルベ!今日も薪取りにいくわよ!」
「ええ?!やだあ!」
ぽくっと頭にリリーお姉ちゃんの拳が降ってくる。
「あんた、熱で頭もやられたの?
前はもっと大人しく従ってたじゃない!」
「私もセイチョウキだもん!自分でモノゴトを決めたいの!」
可愛すぎなリリーお姉ちゃんには申し訳ないけどまだまだ冬の気温が残る外には出たくない。
が……結局母に追い出され薪を取りに森に行くのだった。
____村の小道にて___
「よお。お嬢さん達は今から薪拾いかい?」
7つ年上であり、この村で結構モテる、『ジャック』が声を掛けてきた。
青みがかった短髪を前髪ごと横に流し、少しヤンチャそうな雰囲気をまとったほぼ大人の青年。
黙っていると私も格好いいと思えるのに、口から出てくる言葉はからかいばかり。
そこが好きな子達が幸い多いらしいが、私はまず年齢が若すぎる。
ここではっきり言ってしまうが私のストライクゾーンは20後半~なので、興味がない。
最もリリーお姉ちゃんは違うけどね……
チラーっと横目でお姉ちゃんを見ると、頬を真っ赤に染め上げ、熟した林檎のようになっていた。
うぬぬ……天敵め!
「なんの用だ。テンテキめ。
お姉ちゃんをたぶらかすな。」
呂律がうまく回らない。
多分この世界の身体に慣れていないのが原因かも。
まぁ、いずれ慣れて来るでしょ。
「いやー、別に誑かした覚えは…」
「あっちいけー」
「ちょっと、アスチルベ!失礼でしょう年上に向かって!!」
またポコンと頭にお姉ちゃんのかわいい拳が降り注いだ。その様子を面白ろいのか口元を隠して笑いを堪えるジャック。
「何がおもしろい!このやろー!」
顔がいいから更に苛つく。
精神年齢?という謎のものは私の脳内辞書にはない!遠慮なく飛びかかる。
「うお!ごめんってオチビちゃん。
じゃあ笑ってしまったお詫びに薪拾いを手伝ってやるよ。」
「「ええー!」」
2つの声色が真逆の声が重なる。
皆のご想像通り、喜ぶお姉ちゃんと残念がる私の声だ。
「それじゃあ出発進行ーっなんてね。」
お姉ちゃんと私の間に無理矢理入ってくると、勝手に話を進め、出発音頭も取られる。
更に私の機嫌が悪くなったのは言うまでもない。
To be continue⇨
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