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【 第六話: 夫の裏切り 】
しおりを挟む寝室の扉の前で、もう一度、その声を確認する。
聞こえてくるのは、間違いなくこの扉の向こう側。
私は、両手が震え出し、胸が強く衝撃を受けるように締め付けられた。
頭の中は、真っ白になり、脳の激しい血流が今にも音を立てて、聞こえてきそうだ。
つい数時間前まで幸せだったあの日常が、夢だったのか……。
それとも、この出来事が夢なのか……。
冷静になろうと、一度キッチンでお水を飲む。
しかし、まだ心は落ち着かない。
確かめなくてはならない。
確かめなければ、真実が明らかにならない。
私は、あるものを手に、意を決して震える手で、勇気を振り絞りゆっくりとドアノブを回す。
『ガチャ……』
扉を開けると、そこには見知らぬ女性が、夫とベッドを共にしていた……。
まだふたりはベッドの中で激しく愛し合い、私の存在に気付かない。
私は力が抜け、思わず手にしていたものを床に落とす。
『カシャン……!』
大理石の床に落ちたそれは、大きな音を部屋中に響かせた……。
その大きな音に気付いたふたりが、ベッドの中で動きを止める。
「だ、誰だ……!」
「きゃあ! お、奥さん……?」
彼とその見知らぬ女性は、布団から顔を出して、こちらを驚いた表情で見ている。
(ま、また……。あの時と同じだ……)
呆然と見つめる私の半分だけ開かれた目からは、冷たい人間の分泌液が止め処なく頬を伝って床に散らばっていった。
また、私は暗闇の中へとこの時、ひとり落ちて行ったんだ……。
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