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■第7章: 雪上決戦!
【 第9話: さようなら、ミャー 】
しおりを挟むニヤ国のみんなが協力して作ってくれた、この巨大な穴とこの仕掛け。
このヒントは、俺がこの国にやってきた時に体験した『パラレルワールド』へのチューブ状の滑り台からだった。
こうすれば、ニヤ国の人も、ヤーシブ国の人も、誰も傷付けず、殺さずに済むと考えたのだ。
今日は幸いにも、昨夜降り積もった雪が、彼らたちの滑りをよりスムーズにさせてくれた。
これが俺の考えた『全員の命を守るための作戦』だったんだ……。
「やったぁーーーーっ! 成功だぁーーーーっ!!」
「やったぞ、みんなーーーーっ!!」
「うおぉぉーーーーっ! やった、やったぁーーーーっ!!」
「ヤーシブを全員、穴に落としてやったぞぉーーーーっ!!」
「うおおおぉぉぉーーーーーーっ!!」
ニヤ国の人々は、口々にこの作戦の成功を喜んだ。
――ただ一人を除いては……。
『ドサッ!』
ミャーが突然、地面へと倒れてしまったのだ。
「ミャー!! 大丈夫か!!」
『Mecchan Co』の魔法で、巨大な仕掛けのロープを全て解いたため、全身の力を使い切ってしまったようだ。
俺は、急いで見張り台から降りると、身に纏っている鎧を脱ぎ捨て、ミャーの元へと駆け寄った。
「ミャー!! しっかりしろ!!」
俺は、ミャーを抱きかかえる。
ミャーは、疲れ切った表情を見せている。
元気がなく、顔も少し血の気が足りない……。
「ミャー!! しっかりするんだ!!」
「タ、タロー……、ヤーシブたちは……」
「大丈夫だ! 全員、地下へと滑り落ちていった……」
「そ、そう……、良かった……」
「ミャー、しっかりするんだ! もう大丈夫だから……」
「タ、タロー……、ありがとう……」
ミャーは、目に涙を溜めながら、力なく俺の腕でグッタリとしてしまった。
そして、ミャーはゆっくりと目を閉じると、ガクッと頭を後ろへ倒し、右手がダラリと力を無くした……。
「ミャー……? おいっ、しっかりしろ……。ヤーシブはみんな穴に落ちたから……。ミャー……、目を覚ましてくれ……。お願いだ……。ミャー……、ミャーーーーーーッ!!」
俺は、力を失ったミャーの体を力強く抱きしめた。
ミャーの短い髪を右手に掴み、左手を背中へ回し、顔をミャーの頬に擦り付けて、人目を憚らず泣いた……。
ミャーは、自分の全ての力を、この魔法に使ってしまったんだ……。
ニヤ国の人々のために……。
「ミャーーーーーーーッ!!」
一人も死なせないと約束したはずだったが、その約束を守ることができなかった……。
俺にとって、一番必要な人、一番大切な人、一番約束を守らなければならなかった人を死なせてしまったことで、果てしない後悔と、ニヤ国の人たちへの申し訳ない気持ちで、俺の心は一杯だった。
どうして、あの時、助けてあげられなかったのか……。
「ごめんよ……、ごめんよ……。ミャー……」
俺は、ミャーを最後にもう一度強く抱きしめ、頬を擦り合うように押し当て、涙を流しながら何度も謝った……。
こんなにも、ミャーのことを俺は、愛してしまっていたんだ……。
さようなら、ミャー……。
……
『カプッ……』
……
『チュー、チュー、チュー……』
「んっ? カプッ……? チューチューチュー……?」
「タロー、おいしいにゃ~……♪」
「って、俺の血、また吸っちゃってんじゃーーーーんっ!!」
ミャーは、俺の生き血で、見る見るうちに、顔色を良くしていった……。
俺の生き血は、ミャーにとっての究極の栄養ドリンクのようだ……。
「タロー、復活したにゃ♪ ありがとにゃん♪」
いつもの猫ニャンニャンの手と、かわいらしい八重歯を見せた笑顔で、そう無邪気に笑うミャーだった……。
俺の涙を返せ……。
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