49 / 63
■第6章: ニヤ国を守れ!
【 第4話: エイト公との交渉 】
しおりを挟む日が明ける前に俺たちは、ヤーシブへと向かった。
ジョセフ(馬)は、グリフに選び抜かれただけあり、走力・持久力が群を抜き優れていた。
いくつかの山を越え、見えてきたのは、整備された大きな道だった。
その手前に、門のような大きな扉があり、そこに2人の衛兵らしき者が立っている。
「止まれーーっ!! お前は何者だ!」
「俺は、ニヤ国第2859代の王子、『タロー』だ! エイト公に会いにきた! ここを通して欲しい!」
俺がそう言うと、衛兵たちは、すんなりとその関門を通してくれた。
門を入ると、そこは、整備の行き届いた綺麗な赤茶色の砂利が敷き詰めてある、幅20mほどある道が続いていた。
その道の両側には、綺麗に丸く刈られた緑の木々が植えられている。
『ザクザクザクザク……』
その道をしばらく馬に乗っていくと、正面にニヤ国よりも遥かに巨大なお城が姿を現した。
城のセンスは、ニヤ国よりも趣味が良く、かっこいい……。
色といい、形といい、とても統一感のある、まさに『ザ・お城』だ。
城に近づいていくと、両側にヤーシブの軍隊らしきヤツらがズラッと並ぶように立っている。
その光景から、俺がヤーシブに来ることを、既に伝令か何かで伝えられているように感じた。
そして、その巨大な城の門の前まで辿り着いた。
そこで、エイト公がやったように、俺もこう大声で名乗った。
「やあやあ我こそは、ニヤ国の王子、『タロー』なり! ニヤ国への攻撃を中止させるため、ここに参った!」
すると、門が開き、俺たちを囲むように、槍を持ったヤツらが先導して、門の中へと迎え入れた。
人数にしておよそ100人くらいか。
今、ここで何かあったら、俺は確実にやられる。
俺が馬を降り、ジョセフと一緒に城の入口まで来ると、エイト公が城から出てきて、徐にこう言った。
「やあ、これはこれは、先日会ったニヤ国の冴えない『タロー王子』じゃないか。今日は一人でノコノコと何しに来たのだ?」
「エイト公……。お願いがあるんだ……」
「今さら、私に何の用なのかね?」
「ニヤ国を攻撃するのは、やめてくれないか……」
「はっはっはっはっ……。面白いことを言うね。タロー王子は。私はもう決めたのだ。ミャー姫にああも拒絶されては、私のプライドが許さない。悪いがその件なら、お断りだ。帰ってくれたまえ」
「エイト公、聞いて欲しい。俺は、ニヤ国の人たちも、ヤーシブ国の人たちも、誰も傷つけたくはない。だから、こんなことはよさないか?」
「もう決まったことだ。私のプライドが傷ついたのだ!」
「どうしても、争いは止められないのか……?」
「タロー王子よ! 私は二度は言わぬ! もう『賽は投げられた』のだ!!」
エイト公のその目は、本気だった……。
恐ろしいまでの迫力を感じた。
このままでは、ヤーシブ国の兵力からすれば、ニヤ国が滅びるのも時間の問題だ。
俺は、決心をした……。
「エイト公、俺の命と引き換えに、ニヤ国を攻めるのをやめてはもらえぬか?」
「んっ? タロー王子の命と引き換え? 貴様も面白いことを言うな。貴様は、名古屋国の王子でもあるのだろう? そうなれば、ニヤ国だけじゃなく、名古屋国も困るんじゃないのか?」
「俺は……、本当は……、名古屋国の王子でも何でもないんだ……」
「はっはっはっはっ、貴様は名古屋国の王子ではないのか? それは滑稽だ。はっはっはっはっ、通りで王子にしては品がないと思っていたよ。はっはっはっはっ……」
エイト公は、高らかに俺のことを笑っていた。
しかし、それが嘘偽り無い現実だ……。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる