ニヤ国のサイキック・ヴァンパイア ~カプッとしちゃうぞ♪~

星野 未来

文字の大きさ
上 下
2 / 63
■第1章: 王子さまと王女さま?

【 第2話: ドロボウ猫? 】

しおりを挟む
「何だよ、こんな薄気味悪いところに逃げ込みやがって! 返せ、このやろう!」
「ニャ~」
『チリリリン……』

 その子猫は、ピョンピョンと跳ね上がるように、軽快に路地の奥の方へと逃げていった。
 俺は、その子猫の様子が、何やら喜んでいるようにも見えた。

「こいつ! 俺をからかってるのか!? 待ちやがれ!」
「ニャ~」
『チリリリリン……』

 そして、俺はその子猫を遂に追い詰めた。
 そう、その先が行き止まりだったのだ。
 道幅はかなり狭くなっていたが、その子猫では乗り越えることができないほどの高いコンクリートの壁がそこには立ちはだかっている。

 もう、この子猫の逃げ場はない。
 俺は、薄暗いジメッとしたこの湿度のある狭い路地で、その子猫と対決することになった。

「へへへ……、子猫ちゃんよ。もう、これでとうめんこ(名古屋弁で通せんぼ=行き止まりの意味)だぎゃ」
「ニャ~」

「もうええ加減、大人しくしなかんぞ~(大人しくしないといけないよ)」
「ニャ~」

「そんなかわええ声出しても、許さんがや。おみゃ~、きゃーさなかんぞ。(お前、返さないといけないよ)」
「ニャ~」

 俺は、何故かその時、10年ぶりに自然と『名古屋弁なごやべん』をしゃべっていた……。
 その子猫は、逃げることを諦めたのか、暗闇の中でも、その瞳を輝かせ、俺の方をじっと見つめている。
 俺は、湿ってヌルヌルした路地を一歩一歩、子猫の方へと歩みを進めた。

「おみゃ~さんの咥えとるもん、だゃーじなもんだで、きゃーさなかんで。(あなたの咥えているもの、大事な物だから、返さないといけないよ)」

 俺は、ゆっくりと子猫に近付き、両手を広げて子猫の行く手をはばんだ。
 しかし、その子猫は俺のことを怖がる素振りを一向に見せない。何故だ……。
 俺をちっとも怖がらない。おかしい……。何かが、おかしい……。

 そう思いながらも、俺は更にその子猫に近付いていった。
 あと数十センチのところで、子猫がピクリと動き、俺の顔をそのかわいいお目々で見つめてくる……。

「(か、かわいい……、いやされる……。何だこの子猫は……。何でそんなつぶらな瞳で俺のことを見るんだ……?)」

 俺は、それが不思議でならなかった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...