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学園編
33:反芻*
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伯爵家から帰ると、すぐ学園に報告や手続きを済ませた。
別荘近辺での募集を調べていたところだが無駄になり、良い条件もあっただけに少しばかり残念。
リヴィアンの就職活動はこれにて終了。
要するに、ライト伯爵家と契約を交わしてきた。
卒業したら荷物を纏めて屋敷に身を寄せる。
それにしても、またもダヤンの後輩になるとは。
親しい相手が一人でも居れば安心感は格段に違い、むしろ楽しみですらある。
さて、今度こそ残り僅かな学園生活が自由になった。
決して退屈ではないにしろ。
巣立ちの準備を進めつつも朝から図書館に籠もり、夜はこっそり寮生の友人達とパジャマパーティー三昧なんて気楽な日々。
卒業前となれば何かと浮かれがち。
夜中に脱走されるより良いかと、騒ぎなどを起こさない限りは監視も緩かった。
今までのリヴィアンなら上手に優しく断るところだったが、ここに来て積極的な参加。
何故ってそんなの、夜の自室に居たくないからに決まっている。
消灯時刻から一時間、あのノックの音を聴かずに済むならば何でも良かった。
本当にロキが来ているのかは分からないが、カーテンを開けっ放しにしておいている点で察してほしい。
室内はベッドにすら誰も居ない真っ暗闇。
パジャマパーティーの日はそのまま友人の部屋で夜を明かすので不在である。
一応ベランダの外に「あなたがこれを読んでいるということは」から始まる手紙でも置いてやろうかとも思ったが、もうロキとの接触は避けねば。
例え雨や雪で空が荒れようとも駄目だ。
「扉を開けてはいけない」というお伽噺は幾らでもあるもので、何だか七匹の仔山羊の心境。
仔犬が狼にならなければ、もう少し長く続いただろうか。
招かれねば入ってこられない辺り、やはり怪物だったのかもしれない。
幼い頃はとびきり可愛くても、成獣になると手に負えなくなりやがて喰い殺されてしまう。
「あー……うぅ……」
朝食を済ませて自室に戻ると、リヴィアンはベッドの上で軽く伸びをしながら唸る。
女性二人ならシングルベッドでも身を寄せ合って横になれるが、多少は身体を縮こまらせることになるので翌日は眠い時も。
夜遊び自体はロキとも散々やったものだが寮で眠る時は一人きりだった。
他人同士の顔で朝を迎える為、自分のベッドへ帰らねば。
そういえば結局、ロキが使える魔法の正体は掴めず仕舞い。
大体の察しは付いているかもしれないが、魔女であるリヴィアンの持つ力が正確にどんなものなのか彼は知っているのかどうか。
エナジーヴァンパイアは種を殺すことも出来るので孕むか否かは自分で決められる。
ただし魔法に使える世界でのみ可能と限定されるが。
妊娠しなければ良いなど、そういう問題ではない。
あの時、ロキを突き動かしていたのは愛や情欲よりも支配欲。
物にしたい、壊したいと、目茶苦茶にされそうだった。
けれど"私"は悪女としてこの世界に来たのだ。
本物のリヴィアンを殺してまで立っている舞台、そう易々と他人に身を委ねたり出来るか。
もうこの心は魔物、母になる道など考えられぬ。
せめてロキが成人して医者として自立出来ていたらまた話は違う、別荘でのことがあるので二人での暮らし自体なら想像が容易い。
早朝のトレーニングから帰って迎え入れられる時、食事を作ってテーブルを囲む時、一つのベッドで眠る時、確かに幸福感はあった。
とはいえ現実的に考えて今は未成年の学生、正直なところ幸福になれる未来など描けない。
「子供の子供は作れない」の一言に尽きる。
社会人一年目で大きな腹を抱えろとでも言うのか。
結婚すれば責任を取れるというものでもなし。
恋人や夫婦間だとしても、この国では相手の合意が無い性行為も避妊をしないのは違法。
少なくともそうした認識が当然とされている。
孤児院にはその結果で生まれた子供達も多いのだ。
ロキだって知らないとは言わせない。
怒りや悲しみや失望も確かにあるが、それが全てであらず他にも諸々。
決して一色の感情だけではない。
胸に渦巻くマーブル模様は実に複雑だった。
別れの決定打は場所の問題もある。
異世界を巡る度に本を読み漁っている"彼女"にとって図書館とは聖地。
本一冊を粗末に扱われても無表情でいられなくなるというのに、あんなこと以ての外。
ここで切らねば、放課後の度カーテンの中で求めてくるようになる恐れもあった。
約一年、ロキとのことは後悔しまい。
愛していたのは動かぬ事実。
雪が降りそうな中庭、初めて出逢った時はほんの子供としか思っていなかったのに。
そう、キスされるまでは。
直後の告白を受け入れたのは自分の意志なので言い訳しない。
可愛い顔して相当な助平だったのは意外だったが。
それとも中等部などあんなものだろうか。
男のことは分かるのだが、男の子のことはよく分からない。
もしくはリヴィアン自身の所為か。
色々と許してしまったし、教え込んでしまった。
仮の話、性生活が控えめならあの時だって凶行にまでは至らなかったかもしれない。
夜は都合さえつけばロキが来ていた。
習慣化していただけにハードルは低くなり、嫉妬心でエンジンに火が着いてしまったのか。
突き詰めれば、止められなかったのは情欲に負けたのが原因でもある。
普通の女ならば死ぬよりも辛い傷を心に負う。
しかし魔物は襲われても怖くなどない、ただ一つ興味があった。
あの狂気すら帯びた妖艶な目。
果たしてロキは底無し沼の欲を埋めてくれるのかと。
結果からはっきり言えば、この身体になってから最も溺れた。
刹那的ながら満たされる感覚。
或いは、彼なら自分を殺せるかもしれない。
重々に分かっているが、それは一時の夢。
少年の望みは共に生きること。
向ける矢印が最初から違っていたのだろう、結局のところ。
どうして、ここに居ないの。
こんなにも恋しいのに。
もう終わったのだと何度言い聞かせても、リヴィアンの中で情欲は相変わらず素直に泣いていた。
いっそ繋がりが身体のみなら、どんなに溺れても躊躇いなく切り捨てられたのに。
お互いにさっさと忘れて、後腐れ無く。
ああ、心とは何と厄介な物か。
魔物に成り果てても愛は失わない。
この痛みを味わって、生きていることを実感する。
カーテンを閉め切って、部屋の中に薄闇を作った。
外は平穏な陽光に満ちて遠くから生徒達の声。
あの時の図書館によく似た空間。
校舎内に入る時は制服という規則、いつものように図書館へ行く為に着替えたのだがそれは後で。
ベッドに横たわると白いシーツに黒いスカートの裾が乱れた。
誰が見ている訳でもなし、脚を立ててショーツを引き抜く。
ジャンパースカートとブラウスの制服、その下のビスチェともどかしい指で釦を外す。
布から解放された白い乳房が重たく揺れた。
「ン……っ、ふぁ……」
理性が拒絶しても情欲に身体を支配されてしまう。
浅ましくも下腹部に指を伸ばした。
愛しい男のことを五感が確かに覚えている。
それこそ目を閉じたら再び現れる程、鮮やかに。
妖艶に潤んだ濃藍の目。
吐息混じりの柔らかで甘い声。
シトラスが潜む汗の匂い。
細やかに動く骨張った長い指。
絡まる舌に、鋭く突き立てられる牙。
交わした熱を反芻しては呼吸が乱れる。
あの後、ロキがどう触れてきたか。
最初に出された後、そのまま抜かずの二度目。
深く抉られる度に精液で水音が粘付く。
しゃくり上げて泣きながらも、その痛みですら高まりつつある身体は快楽に従順。
駆け抜けてくる痺れを逃さぬものかと勝手に動いてしまう。
「うぁっ、そんなギュウギュウにされたら……僕、また……ッ」
「や、あぁ、だめ……っあうぅ……ッ!」
ロキの濡れた声が最後の一手。
苦しげな表情を見上げながら、今度こそリヴィアンも達した。
こうなると自分の意志では止まらず。
擦り付けるように腰を揺すって締め上げ、噴き出された二度目の精液を搾り取る。
最奥は鈍いので注がれる感覚までやはり分からない。
ただ、咥え込んだ花弁から埋まった辺りまでは力強い脈動が伝わっていた。
未発達だったリヴィアンの身体は指や舌でないと快楽を得にくい。
時間を掛けてそれだけの回数を重ね、最近ようやく挿入で達することを覚えてきた。
ロキとタイミングを合わせるまでに慣らされて。
「ん、リヴィ先輩も一緒にイけたんね……嬉しいわぁ」
腕を縛り付けて図書館の薄闇で事に及んでおきながら、どうしてこんなにもロキは柔らかく笑うのか。
荒い呼吸を繰り返すリヴィアンに唇を重ねてくる。
強引な行為に相応しくないどころか、どこか不気味さすら感じる甘さで。
無垢な者ならば混乱して怖気付くであろう。
だが魔物の"彼女"はよく知っている、これは狂気だと。
二回分の精液を受けたともなると、流石に腹の中が苦しい気がする。
ずっと硬いままの異物で貫かれていては当然か。
流石に少しは落ち着いたかと思いきや、リヴィアンの腰を掴む手は緩まない。
もう一方の手で、その戦慄く下腹部を撫でられる。
それはそれは愛しげに。
「ああ……いっぱいだから、抜いたら出てきちゃうんね……勿体ないから栓したまま続けさせてもらうわ」
まだ終わらせないという宣言。
狂気に任せて打ち止めまで流し込むつもりか。
少年の身体は体力も情欲も無尽蔵。
執着を向けている相手ならば尚更のこと。
乱れた銀髪の隙から濃藍の目が言っていた。
その深淵を埋めて、満たして、自分の物にしたいと。
リヴィアンの下腹部から滑る指先が今度は胸元に触れてきた。
男の手でも溢れてしまう大きさの乳房をすくい上げ、これ見よがしに揺らしてみせる。
「母乳出るようになったら、もっと大きくなっちゃうんね」
「痛ッ、あぁ……っ」
含み笑いの微風にくすぐられた後、上を向く乳首に噛み付かれた。
鋭い痛みに思わず背が跳ねる。
吐き出す度に少年の凶暴性と艶は増していく。
エナジーヴァンパイアに種を与えても芽吹かない。
それとも拒絶の心が折れるまで挑むつもりか。
繋がったまま体勢を変えて、脚を絡め合い、何度も果てた。
精液で回復する魔物は弱ったりしないが、それだけに蓄積されるのは快楽のみ。
恐怖も苦痛も無いということは却って危険。
ブレーキが壊れてしまう。
他の誰かに見られやしないかという気掛かりも、やがてスパイスになる。
無法地帯の薄闇で二人きり。
先が見えずに目眩を覚えても、もう少しだけここに居たかった。
出て行く時は、別れだと知っているから。
「んぅ……ッ、や、あぁ……ロキ君……」
花弁に呑み込まれた指が水音を掻き鳴らす。
甘い波が引いた後に抜き取ると、蜜が香り立つ。
一身に浴びた激情が何よりも熱を高くする。
そうして指遊びで果てることは出来ても、まだ届かない。
もっと満たされることを知ってしまったからには焦がれるのみ。
この身体は彼の物、離したくないと情欲は訴える。
そうもいかない。
"私"はもう人ならざる者なのだから。
それだけでもいけない。
生涯ずっと彼を捕らえることになる。
愛された記憶とは呪縛の強さ。
持って行くのは残骸のみと決めて、夢から覚める。
目を開けたら一人きり。
別荘近辺での募集を調べていたところだが無駄になり、良い条件もあっただけに少しばかり残念。
リヴィアンの就職活動はこれにて終了。
要するに、ライト伯爵家と契約を交わしてきた。
卒業したら荷物を纏めて屋敷に身を寄せる。
それにしても、またもダヤンの後輩になるとは。
親しい相手が一人でも居れば安心感は格段に違い、むしろ楽しみですらある。
さて、今度こそ残り僅かな学園生活が自由になった。
決して退屈ではないにしろ。
巣立ちの準備を進めつつも朝から図書館に籠もり、夜はこっそり寮生の友人達とパジャマパーティー三昧なんて気楽な日々。
卒業前となれば何かと浮かれがち。
夜中に脱走されるより良いかと、騒ぎなどを起こさない限りは監視も緩かった。
今までのリヴィアンなら上手に優しく断るところだったが、ここに来て積極的な参加。
何故ってそんなの、夜の自室に居たくないからに決まっている。
消灯時刻から一時間、あのノックの音を聴かずに済むならば何でも良かった。
本当にロキが来ているのかは分からないが、カーテンを開けっ放しにしておいている点で察してほしい。
室内はベッドにすら誰も居ない真っ暗闇。
パジャマパーティーの日はそのまま友人の部屋で夜を明かすので不在である。
一応ベランダの外に「あなたがこれを読んでいるということは」から始まる手紙でも置いてやろうかとも思ったが、もうロキとの接触は避けねば。
例え雨や雪で空が荒れようとも駄目だ。
「扉を開けてはいけない」というお伽噺は幾らでもあるもので、何だか七匹の仔山羊の心境。
仔犬が狼にならなければ、もう少し長く続いただろうか。
招かれねば入ってこられない辺り、やはり怪物だったのかもしれない。
幼い頃はとびきり可愛くても、成獣になると手に負えなくなりやがて喰い殺されてしまう。
「あー……うぅ……」
朝食を済ませて自室に戻ると、リヴィアンはベッドの上で軽く伸びをしながら唸る。
女性二人ならシングルベッドでも身を寄せ合って横になれるが、多少は身体を縮こまらせることになるので翌日は眠い時も。
夜遊び自体はロキとも散々やったものだが寮で眠る時は一人きりだった。
他人同士の顔で朝を迎える為、自分のベッドへ帰らねば。
そういえば結局、ロキが使える魔法の正体は掴めず仕舞い。
大体の察しは付いているかもしれないが、魔女であるリヴィアンの持つ力が正確にどんなものなのか彼は知っているのかどうか。
エナジーヴァンパイアは種を殺すことも出来るので孕むか否かは自分で決められる。
ただし魔法に使える世界でのみ可能と限定されるが。
妊娠しなければ良いなど、そういう問題ではない。
あの時、ロキを突き動かしていたのは愛や情欲よりも支配欲。
物にしたい、壊したいと、目茶苦茶にされそうだった。
けれど"私"は悪女としてこの世界に来たのだ。
本物のリヴィアンを殺してまで立っている舞台、そう易々と他人に身を委ねたり出来るか。
もうこの心は魔物、母になる道など考えられぬ。
せめてロキが成人して医者として自立出来ていたらまた話は違う、別荘でのことがあるので二人での暮らし自体なら想像が容易い。
早朝のトレーニングから帰って迎え入れられる時、食事を作ってテーブルを囲む時、一つのベッドで眠る時、確かに幸福感はあった。
とはいえ現実的に考えて今は未成年の学生、正直なところ幸福になれる未来など描けない。
「子供の子供は作れない」の一言に尽きる。
社会人一年目で大きな腹を抱えろとでも言うのか。
結婚すれば責任を取れるというものでもなし。
恋人や夫婦間だとしても、この国では相手の合意が無い性行為も避妊をしないのは違法。
少なくともそうした認識が当然とされている。
孤児院にはその結果で生まれた子供達も多いのだ。
ロキだって知らないとは言わせない。
怒りや悲しみや失望も確かにあるが、それが全てであらず他にも諸々。
決して一色の感情だけではない。
胸に渦巻くマーブル模様は実に複雑だった。
別れの決定打は場所の問題もある。
異世界を巡る度に本を読み漁っている"彼女"にとって図書館とは聖地。
本一冊を粗末に扱われても無表情でいられなくなるというのに、あんなこと以ての外。
ここで切らねば、放課後の度カーテンの中で求めてくるようになる恐れもあった。
約一年、ロキとのことは後悔しまい。
愛していたのは動かぬ事実。
雪が降りそうな中庭、初めて出逢った時はほんの子供としか思っていなかったのに。
そう、キスされるまでは。
直後の告白を受け入れたのは自分の意志なので言い訳しない。
可愛い顔して相当な助平だったのは意外だったが。
それとも中等部などあんなものだろうか。
男のことは分かるのだが、男の子のことはよく分からない。
もしくはリヴィアン自身の所為か。
色々と許してしまったし、教え込んでしまった。
仮の話、性生活が控えめならあの時だって凶行にまでは至らなかったかもしれない。
夜は都合さえつけばロキが来ていた。
習慣化していただけにハードルは低くなり、嫉妬心でエンジンに火が着いてしまったのか。
突き詰めれば、止められなかったのは情欲に負けたのが原因でもある。
普通の女ならば死ぬよりも辛い傷を心に負う。
しかし魔物は襲われても怖くなどない、ただ一つ興味があった。
あの狂気すら帯びた妖艶な目。
果たしてロキは底無し沼の欲を埋めてくれるのかと。
結果からはっきり言えば、この身体になってから最も溺れた。
刹那的ながら満たされる感覚。
或いは、彼なら自分を殺せるかもしれない。
重々に分かっているが、それは一時の夢。
少年の望みは共に生きること。
向ける矢印が最初から違っていたのだろう、結局のところ。
どうして、ここに居ないの。
こんなにも恋しいのに。
もう終わったのだと何度言い聞かせても、リヴィアンの中で情欲は相変わらず素直に泣いていた。
いっそ繋がりが身体のみなら、どんなに溺れても躊躇いなく切り捨てられたのに。
お互いにさっさと忘れて、後腐れ無く。
ああ、心とは何と厄介な物か。
魔物に成り果てても愛は失わない。
この痛みを味わって、生きていることを実感する。
カーテンを閉め切って、部屋の中に薄闇を作った。
外は平穏な陽光に満ちて遠くから生徒達の声。
あの時の図書館によく似た空間。
校舎内に入る時は制服という規則、いつものように図書館へ行く為に着替えたのだがそれは後で。
ベッドに横たわると白いシーツに黒いスカートの裾が乱れた。
誰が見ている訳でもなし、脚を立ててショーツを引き抜く。
ジャンパースカートとブラウスの制服、その下のビスチェともどかしい指で釦を外す。
布から解放された白い乳房が重たく揺れた。
「ン……っ、ふぁ……」
理性が拒絶しても情欲に身体を支配されてしまう。
浅ましくも下腹部に指を伸ばした。
愛しい男のことを五感が確かに覚えている。
それこそ目を閉じたら再び現れる程、鮮やかに。
妖艶に潤んだ濃藍の目。
吐息混じりの柔らかで甘い声。
シトラスが潜む汗の匂い。
細やかに動く骨張った長い指。
絡まる舌に、鋭く突き立てられる牙。
交わした熱を反芻しては呼吸が乱れる。
あの後、ロキがどう触れてきたか。
最初に出された後、そのまま抜かずの二度目。
深く抉られる度に精液で水音が粘付く。
しゃくり上げて泣きながらも、その痛みですら高まりつつある身体は快楽に従順。
駆け抜けてくる痺れを逃さぬものかと勝手に動いてしまう。
「うぁっ、そんなギュウギュウにされたら……僕、また……ッ」
「や、あぁ、だめ……っあうぅ……ッ!」
ロキの濡れた声が最後の一手。
苦しげな表情を見上げながら、今度こそリヴィアンも達した。
こうなると自分の意志では止まらず。
擦り付けるように腰を揺すって締め上げ、噴き出された二度目の精液を搾り取る。
最奥は鈍いので注がれる感覚までやはり分からない。
ただ、咥え込んだ花弁から埋まった辺りまでは力強い脈動が伝わっていた。
未発達だったリヴィアンの身体は指や舌でないと快楽を得にくい。
時間を掛けてそれだけの回数を重ね、最近ようやく挿入で達することを覚えてきた。
ロキとタイミングを合わせるまでに慣らされて。
「ん、リヴィ先輩も一緒にイけたんね……嬉しいわぁ」
腕を縛り付けて図書館の薄闇で事に及んでおきながら、どうしてこんなにもロキは柔らかく笑うのか。
荒い呼吸を繰り返すリヴィアンに唇を重ねてくる。
強引な行為に相応しくないどころか、どこか不気味さすら感じる甘さで。
無垢な者ならば混乱して怖気付くであろう。
だが魔物の"彼女"はよく知っている、これは狂気だと。
二回分の精液を受けたともなると、流石に腹の中が苦しい気がする。
ずっと硬いままの異物で貫かれていては当然か。
流石に少しは落ち着いたかと思いきや、リヴィアンの腰を掴む手は緩まない。
もう一方の手で、その戦慄く下腹部を撫でられる。
それはそれは愛しげに。
「ああ……いっぱいだから、抜いたら出てきちゃうんね……勿体ないから栓したまま続けさせてもらうわ」
まだ終わらせないという宣言。
狂気に任せて打ち止めまで流し込むつもりか。
少年の身体は体力も情欲も無尽蔵。
執着を向けている相手ならば尚更のこと。
乱れた銀髪の隙から濃藍の目が言っていた。
その深淵を埋めて、満たして、自分の物にしたいと。
リヴィアンの下腹部から滑る指先が今度は胸元に触れてきた。
男の手でも溢れてしまう大きさの乳房をすくい上げ、これ見よがしに揺らしてみせる。
「母乳出るようになったら、もっと大きくなっちゃうんね」
「痛ッ、あぁ……っ」
含み笑いの微風にくすぐられた後、上を向く乳首に噛み付かれた。
鋭い痛みに思わず背が跳ねる。
吐き出す度に少年の凶暴性と艶は増していく。
エナジーヴァンパイアに種を与えても芽吹かない。
それとも拒絶の心が折れるまで挑むつもりか。
繋がったまま体勢を変えて、脚を絡め合い、何度も果てた。
精液で回復する魔物は弱ったりしないが、それだけに蓄積されるのは快楽のみ。
恐怖も苦痛も無いということは却って危険。
ブレーキが壊れてしまう。
他の誰かに見られやしないかという気掛かりも、やがてスパイスになる。
無法地帯の薄闇で二人きり。
先が見えずに目眩を覚えても、もう少しだけここに居たかった。
出て行く時は、別れだと知っているから。
「んぅ……ッ、や、あぁ……ロキ君……」
花弁に呑み込まれた指が水音を掻き鳴らす。
甘い波が引いた後に抜き取ると、蜜が香り立つ。
一身に浴びた激情が何よりも熱を高くする。
そうして指遊びで果てることは出来ても、まだ届かない。
もっと満たされることを知ってしまったからには焦がれるのみ。
この身体は彼の物、離したくないと情欲は訴える。
そうもいかない。
"私"はもう人ならざる者なのだから。
それだけでもいけない。
生涯ずっと彼を捕らえることになる。
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