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学園編
27:後夜祭*
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貫通まで頑張ったロキにはひとまず労いを。
銀髪を撫でてあげると、尻尾を振りそうな顔で笑う。
ピアスを開けた後は極力動かさず、洗う時も直接触らずに泡立てた石鹸でそっと。
圧迫したり引っ掛けてしまう恐れがあるので、しばらくは仰向けでないと寝られないだろう。
本で読んだことを思い出していると、リヴィアンの耳に仔犬の牙。
それこそ噛み痕が残りそうな強さで。
「ん、痛っ……」
「ごめんなぁ、リヴィ先輩……消えるまでは、耳が隠れるように髪結んであげるから」
まったく勝手なことを言ってくれる。
腹立たしく思いつつも、吐息の熱を直に浴びて背筋が震えた。
耳の傷や痛みを共有したかっただけかもしれない。
それから、やはり興奮しているようだ。
ピアスを開ける時から潤んでいたロキの目には欲情が光として宿っていた。
手当のように噛み痕を舐められると許してしまう。
そして少年の耳を刺し貫いた感触の生々しさで、密かにリヴィアンが色めき立ったのも事実。
まるで処女喪失を思わせる一幕。
更に、髪型が違うと印象が変わるもので今日のロキは何だかいつもと違う。
ハーフアップは顔周りがすっきりと整い、下ろしている時よりも大人びた雰囲気になる。
羽化する年頃の彼には恐ろしく似合っていた。
被虐的な行為を願い出て悦ぶこともあれば、加虐的な笑みを向けて求めてくることもあり、欲は決して一つでない。
今は後者、匂い立ちそうな妖艶さ。
リヴィアンもピアスを開けるだけで終わりとは思っておらず、最初から拒む気は無いのだが。
執拗に耳を舐めしゃぶっていた舌が下っていき、首筋まで唾液で濡らしていく。
その流れで寝間着の襟を捲り、ボタンを外していく手際の良さ。
クリスマスなら赤いランジェリーが定番か。
この世界にも見えないところでお洒落する概念はあるので、12月の下着屋には実用性よりも色気を演出する為の派手な商品が目立つ。
透けたり紐で簡単に脱げたり、サンタ帽付きまで。
どちらかといえばリヴィアンの好みは反対の青系なのだが。
日頃あまり身に着けない色を今日だけの為に用意するのも気が引ける。
ロキへのプレゼントはピアス二つにホールでもう勘弁してほしいところ。
これ以上は流石に欲張り過ぎ。
下着姿を眺めて悦ぶ趣味はあるらしいので、こちらも手持ちの物で迎え入れる支度くらいはするが。
まだロキにも見せていない物なら何枚か。
リヴィアンも冬物の寝間着姿とはいえ、その下はこれから床に就く者の格好ではなかった。
「……ロキ君、初めて見た?」
腰から下にガーターベルトとストッキング。
同じデザインのビスチェとショーツ、どれも仄かに青を帯びて雪を思わせる白。
ランプの光で浮かび上がるグラマラスな身体に粉砂糖を振り掛けたようで、その甘さは微毒性すら感じさせる。
こうも熱い視線を浴びていると、本当に今更ながら裸より羞恥が強くなってきた。
それでも感情を隠すのは得意、大人として余裕を装ってみせる。
ガーターベルトもストッキングも色気が強い物ではあるが、これは別に夜の為だけのアイテムではない。
それどころか歴史的には男性貴族の正装である。
片足ずつ履くタイプのガーターストッキングはトイレの度に下ろさず、腰回りの締め付けが無く快適、どちらかが伝線しても替えが効く。
そういう訳で飽くまでも実用性で時々履いていた物だったのだが。
本来なら寝間着の下に履いたりしないので、今までロキに見せる機会も無かった。
「あぁ、やっぱり……リヴィ先輩、綺麗なんね……」
確実な効果があったことは確かなのだが、こういう時ロキは欲望のままに喰い付いたりしてこない。
度数の高い酒でも煽った後のような溜息。
「で……これ、脱がしたりしても良えの?」
「ショーツだけで良いのよ」
リヴィアンが自分で脱ごうとすると、骨張った指を絡められての制止。
これでは互いに手が封じられてしまった状態なので禄に動けず、どうしたものか。
しかし、ロキも牙を引っ込めた訳ではない。
下腹部に顔を近付け、ショーツの端を噛んで口で引き摺り下ろそうとする。
とはいえ、仰向けで寝ている体勢からでは難しい。
力任せでは破いてしまうかもしれないし。
「リヴィ先輩、お尻上げて」
平らになった腹に顎を乗せながら、乳房越しに向けてくる上目遣い。
可愛らしい口調のようで、その実、これは命令。
そういう気分なのか今のロキはやはり妙に強気。
つい先程ピアスを開ける時、涙目になっていた少年とは別人である。
ランプの光を弾く耳朶の金色が目に痛い。
それならこちらも応えよう。
今更ベッドでちょっとやそっとのことじゃ動じない。
流石に口で脱がされるのは少し抵抗があるが、羞恥はスパイス。
軽く尻を浮かせて、緩めた膝からショーツが抜かれていくのをリヴィアンは黙って見ていた。
「うん、良い子なんね」
濃藍の目を細めて笑う。
少年にこう言われてしまうと、やたらむず痒い。
再び膝を閉じようとしたが叶わず。
白いストッキングに包まれた太腿の間を割って、ロキの頭が入り込んできた。
剥き出しにされた金色の繁みの奥、湿り気を帯びた花弁。
仔犬になりきった舌に愛でられ始める。
寝ても起きても時間が余っている別荘の時と違って、原則として規則正しい生活の寮は夜が短い。
若さに任せて何かと無茶をしがちな年頃だが、思考力の低下や健康に悪いことを考えて徹夜はしない主義。
なので、頭の片隅で時計を意識しながらの情交になりがち。
特に今日はピアスを開けることから始まったものでいつもよりリミットが近い。
「ロキ君、なんか、今日……しつこくない……?」
「折角だから、これ着けてるリヴィ先輩もっと味わいたいんよ」
ロキも分かっている筈なのだがどことなく掴みどころない態度。
本音は妖艶な笑みに隠される。
そうして指が絡み合う形でリヴィアンの手を押さえ付け、全身を舐めたり噛んだり。
夏に女の身体を知ってからというもの、色事の場で恐ろしい程に妖しさが濃くなっていく少年のこと。
今は冬、ロキもまた身体が男に近付くにつれて欲望の手綱を握りつつあるようだった。
指や舌だけでなく笑い方、視線、声など。
無自覚だったそれらを武器として使えるようになってからは、リヴィアンを魅せて離さない。
口で寝間着のボタンを外したこともあるくらい器用。
ビスチェの留め金は一番上が取れるだけで、豊かに実った乳房が弾けるようにカップから零れ落ちた。
先端に軽く歯を立てられ、硬くなったところを更に吸われる。
仔犬の舌は時間を掛けて甘い汗や蜜を啜り取り、飴でもしゃぶっているかのように唾液が溢れてきた。
もうこちらの身体は潤って開いているにも関わらず。
ただ、手が使えなくても誘い方など幾らでも。
片脚を上げて、自分に覆い被さるロキの肩に乗せた。
一際朱く染まった花弁がよく見えるように。
「……頂戴」
唇を舐めて濡れた声でリヴィアンが強請る。
とびきり甘く装ってみせたものの別に演技でなく、飾り一枚下は飽くまでも本音。
それこそ瑞々しい果実じみた身体を彩るランジェリーのような物。
繋がりたいのはロキも同じで、リヴィアンの一言は箍を壊すに事足りる。
むしろ待っていたのかもしれない。
喰い付く前、溢れた呼吸は何とも荒々しい色。
避妊具だけは最後の理性。
余裕を脱ぎ捨ててからは凶暴さすら滲ませて、やはりこちらも牙で袋を引き千切る。
リヴィアンの膝の裏を掴んで脚ごと持ち上げる、骨張った手。
天を仰ぐ屹立が花弁の蜜で滑る。
蒸気暖房を焚いているとはいえ冬の夜、肌寒い部屋の中で擦れ合った高熱。
飢えを自覚して涎が溢れ、吐息も乱れる。
呼吸を整える暇もない。
そこから先はもう欲望をぶつけ合う時間。
「…………あっ」
不意に、またもピアスを開けた時の一幕と重なる。
力を込めたら壊れそうな柔らかな場所に、硬い切っ先を突き刺した。
躊躇いを殺して、息を呑むような瞬間。
あの感覚に似ているのだろうか。
はて、分からない。
何度他人の身体を借りて悪役を演じても、男になったことはないだけにそれは未知。
身体の真ん中を深く貫いた情欲。
腰を振り合い、細い背中に爪を立ててしがみつく。
一度吐き出す程度では止まらない。
あまりに激しく動くものだから、ハーフアップを纏めているヘアピンがずり落ちてきた。
そうして零れ落ちた銀髪の先と、金色のピアス。
薄闇に揺れる光はなんて眩しいのだろうか。
幻想を誘って、何だか夢の中と錯覚させる浮遊感。
唇を重ねて、意識を繋ぎ止めた。
ここに居ることを確かめるように。
一息吐いたのは、もう日付が変わる頃。
クリスマスの終わり。
どんなに疲れ果てても、眠るなら自分のベッドで一人きりになってしまう。
帰るのを惜しんで抱き合っていた。
また朝になれば顔を見るのに、この寂しさは何なのか。
「リヴィ先輩はピアス開けたりせんの?」
「ん……今のところ予定は無いわね」
取り留めのない話を繰り返す中の一つ。
女優時代は敢えて開けていなかったが、ロキから指摘されて選択肢があることに初めて気付いた。
耳どころか、身体にだって幾らでも自由。
カスタマイズなんて今更。
乗っ取った頃からもう何年もかけて、自分が使いやすように変えていったのだし。
「いつか先輩が開けるなら、その時は僕やるんね」
「そうねぇ、気が向いたらね……」
何とも曖昧な言葉はすぐ夜に溶けていった。
約束と呼びたいのなら、互いに覚えていなければ、その「いつか」の時に隣に居なければ。
春にこの部屋を出ていくリヴィアンには、指切りなど出来なかった。
銀髪を撫でてあげると、尻尾を振りそうな顔で笑う。
ピアスを開けた後は極力動かさず、洗う時も直接触らずに泡立てた石鹸でそっと。
圧迫したり引っ掛けてしまう恐れがあるので、しばらくは仰向けでないと寝られないだろう。
本で読んだことを思い出していると、リヴィアンの耳に仔犬の牙。
それこそ噛み痕が残りそうな強さで。
「ん、痛っ……」
「ごめんなぁ、リヴィ先輩……消えるまでは、耳が隠れるように髪結んであげるから」
まったく勝手なことを言ってくれる。
腹立たしく思いつつも、吐息の熱を直に浴びて背筋が震えた。
耳の傷や痛みを共有したかっただけかもしれない。
それから、やはり興奮しているようだ。
ピアスを開ける時から潤んでいたロキの目には欲情が光として宿っていた。
手当のように噛み痕を舐められると許してしまう。
そして少年の耳を刺し貫いた感触の生々しさで、密かにリヴィアンが色めき立ったのも事実。
まるで処女喪失を思わせる一幕。
更に、髪型が違うと印象が変わるもので今日のロキは何だかいつもと違う。
ハーフアップは顔周りがすっきりと整い、下ろしている時よりも大人びた雰囲気になる。
羽化する年頃の彼には恐ろしく似合っていた。
被虐的な行為を願い出て悦ぶこともあれば、加虐的な笑みを向けて求めてくることもあり、欲は決して一つでない。
今は後者、匂い立ちそうな妖艶さ。
リヴィアンもピアスを開けるだけで終わりとは思っておらず、最初から拒む気は無いのだが。
執拗に耳を舐めしゃぶっていた舌が下っていき、首筋まで唾液で濡らしていく。
その流れで寝間着の襟を捲り、ボタンを外していく手際の良さ。
クリスマスなら赤いランジェリーが定番か。
この世界にも見えないところでお洒落する概念はあるので、12月の下着屋には実用性よりも色気を演出する為の派手な商品が目立つ。
透けたり紐で簡単に脱げたり、サンタ帽付きまで。
どちらかといえばリヴィアンの好みは反対の青系なのだが。
日頃あまり身に着けない色を今日だけの為に用意するのも気が引ける。
ロキへのプレゼントはピアス二つにホールでもう勘弁してほしいところ。
これ以上は流石に欲張り過ぎ。
下着姿を眺めて悦ぶ趣味はあるらしいので、こちらも手持ちの物で迎え入れる支度くらいはするが。
まだロキにも見せていない物なら何枚か。
リヴィアンも冬物の寝間着姿とはいえ、その下はこれから床に就く者の格好ではなかった。
「……ロキ君、初めて見た?」
腰から下にガーターベルトとストッキング。
同じデザインのビスチェとショーツ、どれも仄かに青を帯びて雪を思わせる白。
ランプの光で浮かび上がるグラマラスな身体に粉砂糖を振り掛けたようで、その甘さは微毒性すら感じさせる。
こうも熱い視線を浴びていると、本当に今更ながら裸より羞恥が強くなってきた。
それでも感情を隠すのは得意、大人として余裕を装ってみせる。
ガーターベルトもストッキングも色気が強い物ではあるが、これは別に夜の為だけのアイテムではない。
それどころか歴史的には男性貴族の正装である。
片足ずつ履くタイプのガーターストッキングはトイレの度に下ろさず、腰回りの締め付けが無く快適、どちらかが伝線しても替えが効く。
そういう訳で飽くまでも実用性で時々履いていた物だったのだが。
本来なら寝間着の下に履いたりしないので、今までロキに見せる機会も無かった。
「あぁ、やっぱり……リヴィ先輩、綺麗なんね……」
確実な効果があったことは確かなのだが、こういう時ロキは欲望のままに喰い付いたりしてこない。
度数の高い酒でも煽った後のような溜息。
「で……これ、脱がしたりしても良えの?」
「ショーツだけで良いのよ」
リヴィアンが自分で脱ごうとすると、骨張った指を絡められての制止。
これでは互いに手が封じられてしまった状態なので禄に動けず、どうしたものか。
しかし、ロキも牙を引っ込めた訳ではない。
下腹部に顔を近付け、ショーツの端を噛んで口で引き摺り下ろそうとする。
とはいえ、仰向けで寝ている体勢からでは難しい。
力任せでは破いてしまうかもしれないし。
「リヴィ先輩、お尻上げて」
平らになった腹に顎を乗せながら、乳房越しに向けてくる上目遣い。
可愛らしい口調のようで、その実、これは命令。
そういう気分なのか今のロキはやはり妙に強気。
つい先程ピアスを開ける時、涙目になっていた少年とは別人である。
ランプの光を弾く耳朶の金色が目に痛い。
それならこちらも応えよう。
今更ベッドでちょっとやそっとのことじゃ動じない。
流石に口で脱がされるのは少し抵抗があるが、羞恥はスパイス。
軽く尻を浮かせて、緩めた膝からショーツが抜かれていくのをリヴィアンは黙って見ていた。
「うん、良い子なんね」
濃藍の目を細めて笑う。
少年にこう言われてしまうと、やたらむず痒い。
再び膝を閉じようとしたが叶わず。
白いストッキングに包まれた太腿の間を割って、ロキの頭が入り込んできた。
剥き出しにされた金色の繁みの奥、湿り気を帯びた花弁。
仔犬になりきった舌に愛でられ始める。
寝ても起きても時間が余っている別荘の時と違って、原則として規則正しい生活の寮は夜が短い。
若さに任せて何かと無茶をしがちな年頃だが、思考力の低下や健康に悪いことを考えて徹夜はしない主義。
なので、頭の片隅で時計を意識しながらの情交になりがち。
特に今日はピアスを開けることから始まったものでいつもよりリミットが近い。
「ロキ君、なんか、今日……しつこくない……?」
「折角だから、これ着けてるリヴィ先輩もっと味わいたいんよ」
ロキも分かっている筈なのだがどことなく掴みどころない態度。
本音は妖艶な笑みに隠される。
そうして指が絡み合う形でリヴィアンの手を押さえ付け、全身を舐めたり噛んだり。
夏に女の身体を知ってからというもの、色事の場で恐ろしい程に妖しさが濃くなっていく少年のこと。
今は冬、ロキもまた身体が男に近付くにつれて欲望の手綱を握りつつあるようだった。
指や舌だけでなく笑い方、視線、声など。
無自覚だったそれらを武器として使えるようになってからは、リヴィアンを魅せて離さない。
口で寝間着のボタンを外したこともあるくらい器用。
ビスチェの留め金は一番上が取れるだけで、豊かに実った乳房が弾けるようにカップから零れ落ちた。
先端に軽く歯を立てられ、硬くなったところを更に吸われる。
仔犬の舌は時間を掛けて甘い汗や蜜を啜り取り、飴でもしゃぶっているかのように唾液が溢れてきた。
もうこちらの身体は潤って開いているにも関わらず。
ただ、手が使えなくても誘い方など幾らでも。
片脚を上げて、自分に覆い被さるロキの肩に乗せた。
一際朱く染まった花弁がよく見えるように。
「……頂戴」
唇を舐めて濡れた声でリヴィアンが強請る。
とびきり甘く装ってみせたものの別に演技でなく、飾り一枚下は飽くまでも本音。
それこそ瑞々しい果実じみた身体を彩るランジェリーのような物。
繋がりたいのはロキも同じで、リヴィアンの一言は箍を壊すに事足りる。
むしろ待っていたのかもしれない。
喰い付く前、溢れた呼吸は何とも荒々しい色。
避妊具だけは最後の理性。
余裕を脱ぎ捨ててからは凶暴さすら滲ませて、やはりこちらも牙で袋を引き千切る。
リヴィアンの膝の裏を掴んで脚ごと持ち上げる、骨張った手。
天を仰ぐ屹立が花弁の蜜で滑る。
蒸気暖房を焚いているとはいえ冬の夜、肌寒い部屋の中で擦れ合った高熱。
飢えを自覚して涎が溢れ、吐息も乱れる。
呼吸を整える暇もない。
そこから先はもう欲望をぶつけ合う時間。
「…………あっ」
不意に、またもピアスを開けた時の一幕と重なる。
力を込めたら壊れそうな柔らかな場所に、硬い切っ先を突き刺した。
躊躇いを殺して、息を呑むような瞬間。
あの感覚に似ているのだろうか。
はて、分からない。
何度他人の身体を借りて悪役を演じても、男になったことはないだけにそれは未知。
身体の真ん中を深く貫いた情欲。
腰を振り合い、細い背中に爪を立ててしがみつく。
一度吐き出す程度では止まらない。
あまりに激しく動くものだから、ハーフアップを纏めているヘアピンがずり落ちてきた。
そうして零れ落ちた銀髪の先と、金色のピアス。
薄闇に揺れる光はなんて眩しいのだろうか。
幻想を誘って、何だか夢の中と錯覚させる浮遊感。
唇を重ねて、意識を繋ぎ止めた。
ここに居ることを確かめるように。
一息吐いたのは、もう日付が変わる頃。
クリスマスの終わり。
どんなに疲れ果てても、眠るなら自分のベッドで一人きりになってしまう。
帰るのを惜しんで抱き合っていた。
また朝になれば顔を見るのに、この寂しさは何なのか。
「リヴィ先輩はピアス開けたりせんの?」
「ん……今のところ予定は無いわね」
取り留めのない話を繰り返す中の一つ。
女優時代は敢えて開けていなかったが、ロキから指摘されて選択肢があることに初めて気付いた。
耳どころか、身体にだって幾らでも自由。
カスタマイズなんて今更。
乗っ取った頃からもう何年もかけて、自分が使いやすように変えていったのだし。
「いつか先輩が開けるなら、その時は僕やるんね」
「そうねぇ、気が向いたらね……」
何とも曖昧な言葉はすぐ夜に溶けていった。
約束と呼びたいのなら、互いに覚えていなければ、その「いつか」の時に隣に居なければ。
春にこの部屋を出ていくリヴィアンには、指切りなど出来なかった。
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