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37.隠れ○○発覚
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さて、一段落ついたことだし次はこっちだな~。
説明しなきゃいけないことは山のようにあるし、聞きたいことだってあるだろう。従魔のこともあるしね。
ウィズの予想じゃ雨が降りそうって話だし、今日は勉強会ってところかな。
「おまたせ。終わったよ」
「何があったか聞いても良いかい?」
朔弥が待ってましたとばかりに食い気味に顔を寄せて聞いてくる。
ちょっと顔が近すぎるんじゃないかな~。
「ん? うん。簡単に言うと、冒険者が魔獣に襲われていたみたいだから逃げるのを手伝った。ってところだね」
細かい経緯とかは抜きにして簡潔に事実だけを述べれば、そういうことなんだよね。
「どうやって知ったんですか? それに逃げるのを手伝ったって言っても、ずっとここに居ましたよね?」
あ~、やっぱりそこは気になるよね。
となると、全部説明する必要があるな。説明しなくて良いようにさらっと言ったんだけどな~。
「それは、外に居る僕の従魔が念話っていうスキルで伝えてくれたんだよ。で、従魔に指示して冒険者が逃げる隙を作ってもらったんだ。今は無事だと思うよ」
「従魔…念話…スキル…」
「悪い、いまいちピンと来ないんだが…」
「だよね。いちから説明するよ」
そう言うと皆揃ってキョトンとした顔をしている。
ん? ん~? 今の話の流れだと、説明する感じだよね?
「あれ? 今日は移動するんじゃなかったっけ?」
あぁそっか。昨夜寝る前に「明日も歩く」って言ったんだっけ。
そのためにも目立たないように日本で来てた服から、こちらの世界の一般的な服に着替えてもらったんだった。
「中止。雨が降りそうなんだって」
「晴れてるよ?」
朔弥が窓から見える青空を指差して不思議そうにしている。
山の天気は変わりやすいとは言うけど、人では気付けないことも野生の動物のほうが敏感だから、ここはウィズの天気予報を信じるつもりだ。
だから今日は移動しない。
「今は晴れてるけど雲行きが怪しいみたいだから。雨の中で歩くのは体温を奪われるし、雨でぬかるんだ足場じゃ体力も使う。視界も悪いから今日は予定を変更して勉強会にしようかと思って」
「ゲッ! 勉強ってマジか…」
剛磨が勉強と聞いて、あからさまに嫌な顔をして呻いている。勉強がそんなに嫌ならどうして大学に通ってんだろう。
実業団とかに入る選択肢もあったんじゃないの?
「勉強って言っても、こちらの世界の基礎知識を教えるってだけだよ。あと魔法の使い方」
「魔法!」
魔法と聞いて一気に色めき立っている。
分かるよ~、地球には魔法なんて無いもんね。ワクワクしてるのが表情や仕草に出てるもん。
でもその前に―――。
「…の前に基礎知識、ですよ?」
「そうだった~…」
僕が言う前に樹が代わりに窘めてくれた。こういうところを見ると、やっぱり先生だなって思う。
そして樹に言われて肩をガッカリと落とす学生組の様子に思わず笑いが溢れる。
「はははっ。それじゃあ、こちらの世界について何か知ってること、ある?」
「何かって?」
「例えば…こちらの世界をどう呼んでるか、とか」
「知らない」
「さぁ?」
「なぁ?」
「…やっぱり、そこからか~。予想してたとはいえ…うん」
皆の答えに今度は僕が肩を落とす番になった。ついでに溜め息も出てしまう。
昨夜は質問攻めにあったから知らないだろうとは思っていたけど、やっぱり何も知らなかったんだな…。
グランディオ様、ちゃんと仕事してくださいよ。一般常識は魂に刷り込ませておくって言ったじゃないですか。
僕に丸投げなんて酷いじゃないか。
……なんてぐちぐち考えても仕方ないな。過ぎたことはどうにもならないんだから諦めよう。
僕の仕事が増えたことと、職務怠慢に関しては後で話をするつもりだけど、それは一旦置いといて。
「あの、ルーティス君。大丈夫ですか?」
「やっぱり疲れてるんじゃ…。眠いんじゃないかい?」
「寝不足は良くないぞ」
肩を落とした状態で考え事をしていたせいか、体調が悪いのかと心配されてしまった。
ただ考え事をしていただけだから、どこも何とも無いんだけどね。
「いや、大丈夫。何ともないよ」
「そうかい?」
「うん。ありがとう」
顔に笑みを浮かべて笑いかければ納得したのかやっと退いてくれた。
「朔弥さんとルーティスさん…良いなぁ…。朔弥さんはカッコいいしBL…いや、ルーティスさんを男装の麗人ってことにしてGLでもイケるかも…? うふ、ふふふ…ふふふ」
小声の呟きだったせいか誰も聞こえなかったみたいだけど、残念ながら僕は聞こえてしまった。
香菜って隠れ腐女子だったんだ~…。高校に居た時は全然気付かなかったよ…、上手く隠してたんだね。
まぁ妄想するのは自由だけど、言葉にしたり文字に残したりしないでね?
正直な話、自分が妄想の対象になるのは遠慮したいけど、頭の中で考えるだけなら文句言えないしね。
にしても、実際に居るんだなぁ~。現実の人で妄想する人。
説明しなきゃいけないことは山のようにあるし、聞きたいことだってあるだろう。従魔のこともあるしね。
ウィズの予想じゃ雨が降りそうって話だし、今日は勉強会ってところかな。
「おまたせ。終わったよ」
「何があったか聞いても良いかい?」
朔弥が待ってましたとばかりに食い気味に顔を寄せて聞いてくる。
ちょっと顔が近すぎるんじゃないかな~。
「ん? うん。簡単に言うと、冒険者が魔獣に襲われていたみたいだから逃げるのを手伝った。ってところだね」
細かい経緯とかは抜きにして簡潔に事実だけを述べれば、そういうことなんだよね。
「どうやって知ったんですか? それに逃げるのを手伝ったって言っても、ずっとここに居ましたよね?」
あ~、やっぱりそこは気になるよね。
となると、全部説明する必要があるな。説明しなくて良いようにさらっと言ったんだけどな~。
「それは、外に居る僕の従魔が念話っていうスキルで伝えてくれたんだよ。で、従魔に指示して冒険者が逃げる隙を作ってもらったんだ。今は無事だと思うよ」
「従魔…念話…スキル…」
「悪い、いまいちピンと来ないんだが…」
「だよね。いちから説明するよ」
そう言うと皆揃ってキョトンとした顔をしている。
ん? ん~? 今の話の流れだと、説明する感じだよね?
「あれ? 今日は移動するんじゃなかったっけ?」
あぁそっか。昨夜寝る前に「明日も歩く」って言ったんだっけ。
そのためにも目立たないように日本で来てた服から、こちらの世界の一般的な服に着替えてもらったんだった。
「中止。雨が降りそうなんだって」
「晴れてるよ?」
朔弥が窓から見える青空を指差して不思議そうにしている。
山の天気は変わりやすいとは言うけど、人では気付けないことも野生の動物のほうが敏感だから、ここはウィズの天気予報を信じるつもりだ。
だから今日は移動しない。
「今は晴れてるけど雲行きが怪しいみたいだから。雨の中で歩くのは体温を奪われるし、雨でぬかるんだ足場じゃ体力も使う。視界も悪いから今日は予定を変更して勉強会にしようかと思って」
「ゲッ! 勉強ってマジか…」
剛磨が勉強と聞いて、あからさまに嫌な顔をして呻いている。勉強がそんなに嫌ならどうして大学に通ってんだろう。
実業団とかに入る選択肢もあったんじゃないの?
「勉強って言っても、こちらの世界の基礎知識を教えるってだけだよ。あと魔法の使い方」
「魔法!」
魔法と聞いて一気に色めき立っている。
分かるよ~、地球には魔法なんて無いもんね。ワクワクしてるのが表情や仕草に出てるもん。
でもその前に―――。
「…の前に基礎知識、ですよ?」
「そうだった~…」
僕が言う前に樹が代わりに窘めてくれた。こういうところを見ると、やっぱり先生だなって思う。
そして樹に言われて肩をガッカリと落とす学生組の様子に思わず笑いが溢れる。
「はははっ。それじゃあ、こちらの世界について何か知ってること、ある?」
「何かって?」
「例えば…こちらの世界をどう呼んでるか、とか」
「知らない」
「さぁ?」
「なぁ?」
「…やっぱり、そこからか~。予想してたとはいえ…うん」
皆の答えに今度は僕が肩を落とす番になった。ついでに溜め息も出てしまう。
昨夜は質問攻めにあったから知らないだろうとは思っていたけど、やっぱり何も知らなかったんだな…。
グランディオ様、ちゃんと仕事してくださいよ。一般常識は魂に刷り込ませておくって言ったじゃないですか。
僕に丸投げなんて酷いじゃないか。
……なんてぐちぐち考えても仕方ないな。過ぎたことはどうにもならないんだから諦めよう。
僕の仕事が増えたことと、職務怠慢に関しては後で話をするつもりだけど、それは一旦置いといて。
「あの、ルーティス君。大丈夫ですか?」
「やっぱり疲れてるんじゃ…。眠いんじゃないかい?」
「寝不足は良くないぞ」
肩を落とした状態で考え事をしていたせいか、体調が悪いのかと心配されてしまった。
ただ考え事をしていただけだから、どこも何とも無いんだけどね。
「いや、大丈夫。何ともないよ」
「そうかい?」
「うん。ありがとう」
顔に笑みを浮かべて笑いかければ納得したのかやっと退いてくれた。
「朔弥さんとルーティスさん…良いなぁ…。朔弥さんはカッコいいしBL…いや、ルーティスさんを男装の麗人ってことにしてGLでもイケるかも…? うふ、ふふふ…ふふふ」
小声の呟きだったせいか誰も聞こえなかったみたいだけど、残念ながら僕は聞こえてしまった。
香菜って隠れ腐女子だったんだ~…。高校に居た時は全然気付かなかったよ…、上手く隠してたんだね。
まぁ妄想するのは自由だけど、言葉にしたり文字に残したりしないでね?
正直な話、自分が妄想の対象になるのは遠慮したいけど、頭の中で考えるだけなら文句言えないしね。
にしても、実際に居るんだなぁ~。現実の人で妄想する人。
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