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27.朝の一悶着
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昨日までは剥き出しのナイフみたく人を寄せ付けない雰囲気だったのに、打ち解けると意外とパーソナルスペースが狭いのか距離が近い。
僕の隣で鍋を覗き込んで匂いを嗅いでは腹の虫が煩いくらい主張している。
「なぁ、腹減った」
「全員揃ってからね」
「腹鳴ってんの聞こえねーの?」
「聞こえてるよ、煩いから止めて」
「無茶言うなよ。無理だっつの! 腹減ったー!」
「大声出す元気あるじゃん、まだ大丈夫そうだね」
「鬼っ! ふざけんな、こっちは腹鳴ってんだぞ」
「我慢して」
「食わせろよ」
剛磨とくだらない言い合いというか、攻防を続けていると眠そうな顔で起きてきたのは樹と朔弥だ。
「おはようございます。何を騒いでいたんですか?」
「おはよう。剛磨くん、煩いよ」
「なんでオレだけに言うんだよ、てめぇは?」
「おはよう。ごめん、煩かった?」
やっぱり煩かったよね。だんだんヒートアップして声も大きくなってたし。早朝ということが頭から抜けていた。
剛磨は朔弥へとターゲットを変えたようで僕から離れて彼女へと向かっていった。
「まぁ起きたのは俺達だけですから、大丈夫だと思いますよ」
「でもイツキとサクヤは起こしちゃっただろ、ごめん」
「いえ、元々朝食は用意しようと思っていたので、むしろちょうど良かったです」
「そうなの?」
「はい」
樹はまだ口調がくだけないか…。さすがに昨日の今日では無理な話だったみたい。
ちらりと朔弥達のほうを見ると、向こうは予想通りに剛磨がつっかかって朔弥は受け流し……てないな。思いっきり口論している。
「なぁ、お前はなんでオレにだけ口悪ぃんだよ。つか煩いっつーならアイツもだろ」
「君の態度が悪いからじゃないか。それにルーティス君の声は聞こえなかったよ。煩いのは剛磨君だけだったからね」
「ぁあ!?」
「ほら、君は声が大きいんだよ」
「てめぇは可愛げねぇな!」
「………知ってるって言わなかったかい?」
あ………剛磨の奴、やらかしたな。朔弥の雰囲気が剣呑なものに変わった。
女の子に可愛げないって言ったらダメじゃないか。
このままじゃ埒が明かない。仕方ない、仲裁しますか~。
「2人共、そろそろ…」
「剛磨君、朔弥さん、いい加減にしなさい。剛磨君、貴方の声は実際大きいんです。少し声量を落としなさい。朔弥さん、煩いって言ったばかりですよね? 貴女が煩くしてどうするんですか」
「……チッ」
「あ…ごめんなさい、樹さん。やりすぎちゃったよ」
「分かってくれたなら良いんですよ、朔弥さん。剛磨君は、分かりましたか?」
「へいへい、わかりましたよ」
「では、喧嘩両成敗ということで良いですね?」
「僕は構わないよ」
「オレもそれでいーわ」
さすが先生。喧嘩の仲裁にも慣れてるのかな? 僕の出る幕無かったよ。
樹が仲裁に入ったので僕は《無限収納》から桶を3つ取り出して、生活魔法でお湯を張って顔を洗うように勧めた。ついでにタオルも用意しておいた。
「ありがとうございます。しっかり目が覚めましたよ」
「ありがとう、さっぱりしたよ」
「オレはもうちょい熱いほうが良いんだけど」
「どういたしまして。タオルはそのまま待ってて良いよ」
「助かります」
タオルなどの生活用品は常に予備をたくさん常備してるので皆に配っても問題ない。
それよりも問題なのは、また剛磨と朔弥の口論が始まりそうなことだよね。
「じゃあ君は次から熱湯にしたらどうだい?」
「火傷すんだろが!」
「熱いのが好きなんでしょ?」
「限度があんだろ」
「………続けますか?」
「「あ」」
樹の静かな怒りの表情で2ラウンド目は速やかに終わりを告げた。
「あ、ねぇ、ルーティス君。ちょっと良いかい?」
「ん?」
気まずい雰囲気の中、朔弥に話しかけられた。なんだろう?
「さっきのお湯はどうやって出したんだい? ヤカンみたいなの無いみたいだけど」
「あぁ、生活魔法だよ。昨夜ちょっとだけ話したやつ」
「へぇ! どうやったのか教えてもらえるのかな?」
「あとで教えてあげるよ」
「楽しみだな!」
朔弥はそう言って本当に楽しそうにニッコリと笑みを浮かべた。
一悶着ありながらも、それぞれ挨拶を交わすと(いや、剛磨は挨拶してないけれど)暖炉の中の鍋を覗き込んでいる。
「良い匂いですね、美味しそうです」
「本当だね、すっごく良い匂い」
「朝食まで作ってもらってなんだか申し訳無いです」
「気にしないで良いよ。僕が勝手にやったことだし」
「………あ!」
「「「え?」」」
朔弥がいきなり声を上げたので、3人揃って彼女のほうを一斉に振り向くと朔弥のほうが驚いた顔をしている。
「どうしたんですか?」
「何かあった?」
「…」
三者三様に問いかけられて気まずそうに朔弥が喋り出す。
「いや、あのさ……すっかり忘れてたんだけど、昨日の朝作ったお弁当、鞄に入ったままなんだよね」
「あ~……そう言われればそうですね。俺も弁当が鞄に入ってます」
「あ、オレもコンビニで買った弁当とかあったな」
「…え………?」
あれ、僕、スープ作んなくても良かったかも?
僕の隣で鍋を覗き込んで匂いを嗅いでは腹の虫が煩いくらい主張している。
「なぁ、腹減った」
「全員揃ってからね」
「腹鳴ってんの聞こえねーの?」
「聞こえてるよ、煩いから止めて」
「無茶言うなよ。無理だっつの! 腹減ったー!」
「大声出す元気あるじゃん、まだ大丈夫そうだね」
「鬼っ! ふざけんな、こっちは腹鳴ってんだぞ」
「我慢して」
「食わせろよ」
剛磨とくだらない言い合いというか、攻防を続けていると眠そうな顔で起きてきたのは樹と朔弥だ。
「おはようございます。何を騒いでいたんですか?」
「おはよう。剛磨くん、煩いよ」
「なんでオレだけに言うんだよ、てめぇは?」
「おはよう。ごめん、煩かった?」
やっぱり煩かったよね。だんだんヒートアップして声も大きくなってたし。早朝ということが頭から抜けていた。
剛磨は朔弥へとターゲットを変えたようで僕から離れて彼女へと向かっていった。
「まぁ起きたのは俺達だけですから、大丈夫だと思いますよ」
「でもイツキとサクヤは起こしちゃっただろ、ごめん」
「いえ、元々朝食は用意しようと思っていたので、むしろちょうど良かったです」
「そうなの?」
「はい」
樹はまだ口調がくだけないか…。さすがに昨日の今日では無理な話だったみたい。
ちらりと朔弥達のほうを見ると、向こうは予想通りに剛磨がつっかかって朔弥は受け流し……てないな。思いっきり口論している。
「なぁ、お前はなんでオレにだけ口悪ぃんだよ。つか煩いっつーならアイツもだろ」
「君の態度が悪いからじゃないか。それにルーティス君の声は聞こえなかったよ。煩いのは剛磨君だけだったからね」
「ぁあ!?」
「ほら、君は声が大きいんだよ」
「てめぇは可愛げねぇな!」
「………知ってるって言わなかったかい?」
あ………剛磨の奴、やらかしたな。朔弥の雰囲気が剣呑なものに変わった。
女の子に可愛げないって言ったらダメじゃないか。
このままじゃ埒が明かない。仕方ない、仲裁しますか~。
「2人共、そろそろ…」
「剛磨君、朔弥さん、いい加減にしなさい。剛磨君、貴方の声は実際大きいんです。少し声量を落としなさい。朔弥さん、煩いって言ったばかりですよね? 貴女が煩くしてどうするんですか」
「……チッ」
「あ…ごめんなさい、樹さん。やりすぎちゃったよ」
「分かってくれたなら良いんですよ、朔弥さん。剛磨君は、分かりましたか?」
「へいへい、わかりましたよ」
「では、喧嘩両成敗ということで良いですね?」
「僕は構わないよ」
「オレもそれでいーわ」
さすが先生。喧嘩の仲裁にも慣れてるのかな? 僕の出る幕無かったよ。
樹が仲裁に入ったので僕は《無限収納》から桶を3つ取り出して、生活魔法でお湯を張って顔を洗うように勧めた。ついでにタオルも用意しておいた。
「ありがとうございます。しっかり目が覚めましたよ」
「ありがとう、さっぱりしたよ」
「オレはもうちょい熱いほうが良いんだけど」
「どういたしまして。タオルはそのまま待ってて良いよ」
「助かります」
タオルなどの生活用品は常に予備をたくさん常備してるので皆に配っても問題ない。
それよりも問題なのは、また剛磨と朔弥の口論が始まりそうなことだよね。
「じゃあ君は次から熱湯にしたらどうだい?」
「火傷すんだろが!」
「熱いのが好きなんでしょ?」
「限度があんだろ」
「………続けますか?」
「「あ」」
樹の静かな怒りの表情で2ラウンド目は速やかに終わりを告げた。
「あ、ねぇ、ルーティス君。ちょっと良いかい?」
「ん?」
気まずい雰囲気の中、朔弥に話しかけられた。なんだろう?
「さっきのお湯はどうやって出したんだい? ヤカンみたいなの無いみたいだけど」
「あぁ、生活魔法だよ。昨夜ちょっとだけ話したやつ」
「へぇ! どうやったのか教えてもらえるのかな?」
「あとで教えてあげるよ」
「楽しみだな!」
朔弥はそう言って本当に楽しそうにニッコリと笑みを浮かべた。
一悶着ありながらも、それぞれ挨拶を交わすと(いや、剛磨は挨拶してないけれど)暖炉の中の鍋を覗き込んでいる。
「良い匂いですね、美味しそうです」
「本当だね、すっごく良い匂い」
「朝食まで作ってもらってなんだか申し訳無いです」
「気にしないで良いよ。僕が勝手にやったことだし」
「………あ!」
「「「え?」」」
朔弥がいきなり声を上げたので、3人揃って彼女のほうを一斉に振り向くと朔弥のほうが驚いた顔をしている。
「どうしたんですか?」
「何かあった?」
「…」
三者三様に問いかけられて気まずそうに朔弥が喋り出す。
「いや、あのさ……すっかり忘れてたんだけど、昨日の朝作ったお弁当、鞄に入ったままなんだよね」
「あ~……そう言われればそうですね。俺も弁当が鞄に入ってます」
「あ、オレもコンビニで買った弁当とかあったな」
「…え………?」
あれ、僕、スープ作んなくても良かったかも?
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