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24.朝食の用意

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 さて何を作ろうかな~。と言ってもたくさんレパートリーがあるわけじゃないから限られてるんだけれどね。
 日常生活で困らない程度で料理が出来るってだけで、別に得意ってわけじゃないしな~。
 作業しやすいように適当な木箱を運んできて台代わりにして、その上にまな板を乗せる。もちろん洗浄済みだ。
 鍋に水を注ぎ入れて細かく切った干し肉も入れて暖炉のフックにかけて出汁だしを取る。干し肉は保存食でそのまま食べられるものだから、入れたままにしていても問題ない。
 出汁を取っている間に食材の下拵したごしらえを済ませないとな。
 ビッグボアの肉を取り出して一口サイズに切り分けて、フライパンで焼き目を付けて肉汁を閉じ込める。

『ん~、良い匂いだね~。美味しそう』
『ルー。ボク、食べたい』
『焼いただけだよ?』
『食べたい』
『わかった。ちょっと待ってて』
『うん』
『テトは?』
『うん。欲しい』

 ゼファーはこのままでも食べられそうだな。テトはもう少し小さく切って、それぞれ皿によそって床に置くと早速食べ始める。
 肉自体に旨味があるから、ただ焼くだけでも充分美味しいんだよね。
 でも僕らが食べる分は、もう少し手を加えていく。
 肉を一度皿に移し変えて、テトが集めた茸もざく切りにして同じフライパンでサッと炒めて焼き目をつけておく。
 焼き目がついてあるほうが香ばしくなり、少ない調味料でも味がしっかりと感じられる。むしろ今は調味料が無いから、こうでもしないと味が薄いだろうしね。
 出汁を取っていた鍋に肉と茸を入れて、そのまま煮込んでいく。あとは放置でいいかな? たまに焦げてないか様子を見ればいいよね。

「スープはこれで良いけど主食がな~。パンも無ければ米も無い。小麦粉とまでいかなくても代用出来るのがあれば良かったけれど、贅沢は言うまい」
『代用ってなに使うの?』
『あ~…、芋とかトウモロコシとか、まぁ雑穀だね』
『探してこようか?』
『いや、良いよ。結構具だくさんだし、なんとかなるんじゃない?』

 僕の呟きに反応したテトが探索を申し出るけれど、急ぎで必要な訳じゃないしお断りした。森を出るまでに見つかるかもしれないしね。
 まだ時間に余裕はあるから他にも作っておこうかな~。
 《無限収納》から透明のティーポットとガラスジャーを取り出して、ティーポットには水をガラスジャーには蜂蜜を入れて準備しておく。
 林檎、柚子、葡萄、クランベリーをざく切りにしたものはそれぞれティーポットに、柚子を輪切りにしたのはガラスジャーに入れて、経過時間を加速させる魔法をかけておく。
 これで朝食に間に合うかな?

『それは?』
『これはハチミツレモン的なもの。レモンじゃなくて柚子だけど同じ柑橘類だし。こっちは果実水。地球だとデトックスウォーターとか呼ばれるみたいだけれど、それの簡易版…かな』
『後でそれ飲みたい』
『うん、出来たらあげるよ』
『えへへ~、楽しみだな~』

 料理中なので撫でてあげることは出来ないから、代わりに額を擦り合わせる。
 あとジャムを……蜂蜜足りるかな? んー…少しずつなら作れそうかな。
 あ、でも時間が厳しいかもなぁ。これはまた今度にしよう。

『ルー、空が明るくなったね』
『そうだね。そろそろ皆も起きてくるかもね』

 テトに言われて窓を見ると、確かにもうすっかり明るくなっていた。
 最後にフライパンの中に拾った銀杏を入れて暖炉の火の上で転がしながら、煎って殻に割れ目が出来るのをジッと待つ。
 パキッと割れ目が出来るとゼファーがうなり始めた。

『ルー、それ、くさーい』
『あ~…。ごめん、ゼファー。鼻が利くゼファーには匂いがキツかったね』
『うん、くさーい』

 人でも好みが分かれるもんなぁ~。ゼファーには酷だったか…、ごめん。

『本当、ごめん。でも、もうちょっと待ってて。もう少しで終わるから』
『………うん』

 あ~…本当にごめん!! 終わったらすぐにしまうから、もうちょっとだけ待ってて!
 心底嫌そうな顔をしてるゼファーに申し訳ない気持ちになりつつも、途中でやめる訳にもいかず手早く終わらせて紙に包んで《無限収納》にしまい、匂いは風魔法で外へと逃がすとやっと一息つけたようだ。

『ごめん、ゼファー』
『今度、一緒に散歩。それで許してあげる』
『ふふっ。わかった、散歩ね。約束』
『うん』

 背中をかけ上がって肩に乗ってきたゼファーが僕の頬にすり寄ってきたので、お返しに僕からも頬を擦り合わせた。
 さて、そろそろ皆も起きてくるだろう。
 窓を開けて空気の入れ替えをして、大きく伸びをして深呼吸をして空を見上げた。
 
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