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4.小屋を目指して

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 他の皆も落ち着いたところで自己紹介を続けよう…としたけど、忘れてた事があったのを思い出した。
 ビッグボア自体は《無限収納インベントリ》にしまったけど、流れた血の後始末が済んでいなかったんだよね。
 僕はもう一度、振り返って魔法を発動させる。

「《清潔クリーン》」

 生活魔法の1つである《清潔クリーン》で地面に染み込んでしまった血まで全て取り除く。うん、綺麗になったね。
 満足して彼らの方へ向き直り、自己紹介の続きと今後のことについて詳しく話し合うためにも落ち着ける場所へと移動することにしようか。

「とりあえず…こんなところにいるのもなんですから、場所を移動しませんか? どこかに休憩できる小屋とかがあると思うので」
「あ、そうですね。ここは危ないですか?」
「見通しが良すぎるんです」
「見通しが良くてなんでダメなんだよ?」
「…狙われやすいでしょう」

 樹に提案して話していると、口論してた時に大声を出していた男性が口を挟んできた。その内容にちょっと呆れつつも顔には出さずに返事をする。

「ふーん、そんなもんか」

 興味無さげに適当な返事をしてくる。今、本当についさっきに、危険な目に遭ったよね? それでその反応は無いと思うけどな~。

「だから、できるだけ早く移動した方が良いんですよ。ついてきてください」
「わかりました! 皆、彼についていきましょう」

 全員頷いて僕と樹の後ろから大人しくついてくる。良かった、揉めたりしないで来てくれて。
 ここに向かう途中で簡素な造りだったけど、小屋らしき物も見つけていた。というか、森に住む精霊達が教えてくれたからチラッとだけど見たから大丈夫だと思う。
 精霊達は普通の人には見えない存在。エルフやドワーフなどの精霊との関わりが深い妖精族には割と身近な存在で見えるけれどね。
 僕はまぁ、色々と特殊なせいもあって普通のくくりからは外れてるから、問題なく見えるし話せるけれど。

「なあ、あんた何歳? 随分と若く見えんだけど」

 さっきから喧嘩けんか腰というか、妙に敵対心を込めた感じで話しかけて来るんだよね。僕、何かしたかな? 覚えがないんだけど。

「19歳ですよ」
「19歳!? まだ未成年じゃねーの? それで案内人かよ、ホントに大丈夫かよ」

 過剰に反応するな~。19歳っていうのは嘘じゃないけど、全てが真実でもない。見た目は間違いなく19歳だけどね。
 ちなみにこちらの世界で人族(地球で言う人間)は16歳で成人するので、19歳は既に大人で、更に言うなら結婚適齢期でもある。
 だから、学生も含めて漏れなく大人というわけだ。

「16歳で成人ですから、大人ですね」
「マジ!? じゃあ俺らも皆、大人ってことかよ」
「私達、まだ高校生なのに…」
「さすが異世界だね」

 雑談をしながら歩き続けること30分程で目的の小屋が見えてきた。使い込まれた感じで意外と綺麗だな。これなら大丈夫そうだね。
 ちょうど辺りも薄暗くなってきたことだし、ここで一晩泊まって翌朝、出発した方が安全だろう。
 夜に歩き続けるのは勿論だけど、中途半端に進んで野宿するのは心身共に負担が大きい。野営できる準備は整ってるけど、雨風がしのげるならそれに越したことはない。

「ここで今晩は休みましょう。そろそろ体力的にも苦しいでしょうし」
「やった~! もう歩けな~い」
「疲れたね、足が棒みたいだよ」
「のど渇いたし、腹も減ったな~」

 我先にと小屋へと走り出していく。あれ、言ってることと行動が一致してないと思うんだけど、まぁいっか。

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あれ、自己紹介終わらせるつもりだったのに予定が狂いました。
その前に血をなんとかしなきゃとか、場所移動したほうが良いんじゃないかとか考えて入れたら…。

なるべく早めに続きを書きたいと思っています。
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