1 / 98
1章 高校を中退した私…
1話 今日のランチはじめます!
しおりを挟む「じゃぁ結花ちゃん、今日もお願いね?」
「はいっ。すぐにお店開けてきます」
「頼んだ!」
お店の奥からの声を聞き、私はもう一度頷いてお店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。ランチタイムお待たせしました」
「お、結花ちゃん今日も元気そうだね?」
「はぃ、今日も頑張っちゃいますよ!」
いつもお昼ご飯を食べに来てくれる近所の会社員の人、紹介されたフリーペーパーなどを見て来てくれたカップルなど、小さなお店の客席は毎日開店と同時に埋まってしまう。
注文を聞き、その間にもカウンターに並べられたものをお客さんのテーブルに運んでいく。
特に平日のランチタイムは時間も勝負だから、席待ちで並んでいる人にもメニューを渡して、先にオーダーを承っておく。場合によっては途中でテイクアウトに切り替えるときもある。
「菜都実さん、本当に結花ちゃんてよく働くよね。最初はこっちも心配だったけどさ。どっからあんなにいい子見つけてきたんだい?」
「本当に。結花ちゃんが来てくれて、助かってるんだよ。あっという間にうちの看板娘になったからね。結花ちゃんは頑張り屋さんだから」
レジでお会計をしているお客さんとこのお店の奥さん・菜都実さんのそんな会話を後ろで聞いた。
「じゃぁな結花ちゃん、また明日もよろしく!」
「はぃ、ありがとうございました!」
すぐにテーブルを片付けて、新しくセッティングをし、待っているお客さんのグループの人数を頭の中で確認していく。
これはこれで頭を使うの。店内を見回りながら、空いたテーブルを片付けると同時に厨房にお願いをして、次のお客さんが席についてすぐに出来たてを出せるようにタイミングを調整するのも私の役目だから。
「結花ちゃん、お疲れさま。食事用意しておいたよ?」
午後1時半を過ぎると、ぐっとお客さんの数も減るから、厨房にいたご主人の秋田保紀さんが賄いご飯を用意してくれている。
「ありがとうございます。すぐ食べちゃいますね」
「ゆっくりしておいで。さっきのお客さんもお世辞じゃなくてさ。うちも本当に大助かりの大活躍なんだからね!」
菜都実さんに肩をたたいてもらって裏に入ると、奥の小部屋のテーブルに今日の日替わりランチメニューが用意されていた。
手作りのコーンクリームコロッケとエビフライ、どちらも大きなサイズが二つずつ。コンソメスープとライスにオレンジジュースという組み合せ。
箸を入れてみると湯気が立つくらいに熱々で、残り物などではなく私のために作ってくれているのが分かる。
ふとカレンダーを見上げて思う。
「そっか、もうそんなに経ったんだ……」
このお店でお仕事をさせてもらって、この5月末で気がつけば8ヶ月が過ぎていた。
こんなに誰かの役に立っていると言ってもらえるのが嬉しくて、夢中で毎日を駆け抜けてきた。
きっと今の自分の姿は1年前の私からは想像もつかないに違いないんだもの。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
星渦のエンコーダー
山森むむむ
ライト文芸
繭(コクーン)というコックピットのような機械に入ることにより、体に埋め込まれたチップで精神を電脳世界に移行させることができる時代。世界は平和の中、現実ベースの身体能力とアバターの固有能力、そして電脳世界のありえない物理法則を利用して戦うレースゲーム、「ネオトラバース」が人気となっている。プロデビューし連戦連勝の戦績を誇る少年・東雲柳は、周囲からは順風満帆の人生を送っているかのように見えた。その心の断片を知る幼馴染の桐崎クリスタル(クリス)は彼を想う恋心に振り回される日々。しかしある日、試合中の柳が突然、激痛とフラッシュバックに襲われ倒れる。搬送先の病院で受けた治療のセッションは、彼を意のままに操ろうとする陰謀に繋がっていた。柳が競技から離れてしまうことを危惧して、クリスは自身もネオトラバース選手の道を志願する。
二人は名門・未来ノ島学園付属高専ネオトラバース部に入部するが、その青春は部活動だけでは終わらなかった。サスペンスとバーチャルリアリティスポーツバトル、学校生活の裏で繰り広げられる戦い、そしてクリスの一途な恋心。柳の抱える過去と大きな傷跡。数々の事件と彼らの心の動きが交錯する中、未来ノ島の日々は一体どう変わるのか?
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
『Happiness 幸福というもの』
設樂理沙
ライト文芸
息子の恋人との顔会わせをする段になった時「あんな~~~な女なんて
絶対家になんて上げないわよ!どこか他所の場所で充分でしょ!!」と言い放つ鬼畜母。
そんな親を持ってしまった息子に幸せは訪れるでしょうか?
最後のほうでほんのちょこっとですが、わたしの好きな仔猫や小さな子が出て来ます。
2つの小さな幸せを描いています。❀.(*´◡`*)❀.
追記:
一生懸命生きてる二人の女性が寂しさや悲しみを
抱えながらも、運命の男性との出会いで幸せに
なってゆく・・物語です。
人の振れ合いや暖かさみたいなものを
感じていただければ幸いです。
注意 年の差婚、再婚されてる方、不快に思われる台詞が
ありますのでご注意ください。(ごめんなさい)
ちな、私も、こんな非道な発言をするような姑は
嫌いどす。
・(旧) Puzzleの加筆修正版になります。(2016年4月上旬~掲載)
『Happiness 幸福というもの』
❦ イラストはAI生成有償画像 OBAKERON様
◇再掲載は2021.10.14~2021.12.22
ノアのワタシブネ ~フェリー会社 ルートボエニアの営業日誌~
小倉 悠綺(Yuki Ogura)
ライト文芸
父の跡を継いで船会社ルートボエニアの社長になったノア・ディストピアは、全く船会社の仕事を知らない素人社長だった。
一日でも早く仕事を覚えようと業務に営業に経理と奔走する中、ある日会社が大手船会社、王国汽船に買収される危機に瀕していることを知る。
厳しい船出を迫られたノアは会社を守るため、ある大きな決断をしたのだった――!
※他サイトにも掲載
ろくでなしと笑わない天使
吉高 樽
ライト文芸
《30日以内に『価値のある人間』にならなければ、君の命は神様に奪われる》
無気力で淡泊な三十路手前の人生を送っていたその男は、あるとき美しい天使が「見えるように」なった。
生まれてからずっと傍で見守っていたという天使は、しかしながら男に非情な宣告を告げる。
惰性で生きるろくでなしの男は30日以内に『価値のある人間』になれるのか、『価値のある人間』とは何なのか、天使との半信半疑な余命生活が始まる。
※注:これはラブコメではありません。
※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
『♡ Kyoko Love ♡』☆『 LOVE YOU!』のスピン・オフ 最後のほうで香のその後が書かれています。
設樂理沙
ライト文芸
過去、付き合う相手が切れたことがほぼない
くらい、見た目も内面もチャーミングな石川恭子。
結婚なんてあまり興味なく生きてきたが、周囲の素敵な女性たちに
感化され、意識が変わっていくアラフォー女子のお話。
ゆるい展開ですが、読んで頂けましたら幸いです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
亀卦川康之との付き合いを止めた恭子の、その後の♡*♥Love Romance♥*♡
お楽しみください。
不定期更新とさせていただきますが基本今回は午後6時前後
に更新してゆく予定にしています。
♡画像はILLUSTRATION STORE様有償画像
(許可をいただき加工しています)
雨読くんと私-雨の日の幻聴と会話してたら男装の死神に目をつけられました-
よくうつ
ライト文芸
病院帰りの駅の中で、少女が聴いたのは"雨の日の駅"で出会った謎の存在「雨読くん」だった。そしてそれを追う男装の死神と……ー少女と謎の声、男装の死神による不思議な日々が今始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる